Kezar, A. and Dee, J. (2011) "Conducting Multi-paradigm Inquiry in the Study of Higher Education Organization and Governance: Transforming Research Perspectives on Colleges and Universities," in Smart, J. and Paulsen, M. (eds.), Higher Education: Handbook of Theory and Research, 26, Ch.7, 265-315.
- マルチパラダイム研究への導入を行う。
- パラダイム:研究コミュニティで共有されている仮定,実践,合意。
- パラダイムが違う:3つの仮定が異なる。
- 存在論:客観的存在か主観的構築か。
- 認識論:知識に歪みがないか社会的に構築されるか。
- 方法論:演繹的か帰納的か。
- 3つのパラダイム
- Functionalist:客観的対象を実証的に分析。演繹的研究設計。
- Interpretive:多様な解釈から最も現実をとらえられる共通部分を取り出す。(質的研究と混同されるが,Functionalistも質的研究を行う。)
- Critical:より平等な社会と労働のために問題を暴くことが目的。
- パラダイムシフト:研究者グループ内で前提の変化が起こること。
- Bolman & Dealの貢献は,複数の見方を持ち込んだこと。(ただし,フレーム分析は1パラダイムに依拠した見方。)
- シェアドガバナンス,リーダーシップ,ダイバシティ,組織変革は,マルチパラダイムな研究分野。
- 高等教育では,Functionalistが支配的。信頼や組織学習が見過ごされてきた。
- Functionalistの高等教育研究:
- (1)組織構造はそのプロセスの理解が明確,(2)権威,集権・分権,階層,役割が明確,(3)合理性,効率性,効果性が重要。
- それは一面的という批判:マルチバーシティ,プロフェッショナル官僚制,全学戦略チームなど。
- Interpretiveの高等教育研究:
- 個別化された文化や文脈が重要,分析対象は組織内の言葉,議論,情報交換のパターン。
- 組織構造よりも関係性,信頼関係がより重要と考える:ゴミ箱モデル,特別チーム,コンフリクトなど。
- 優れたガバナンスは大学によって違う。扱いが難しいが,信頼が中心。
- Criticalの高等教育研究:
- 教職員の努力にもかかわらず,結局とトップだけで意思決定される現実:実は,シェアドガバナンスは表面的。トップはシェアされている演出をしている。
- 予算削減による専任教員減と非専任教員増 → トップダウンガバナンスを促進。(アカデミックキャピタリズムの本質は,教員のパワーのそぎ落とし。)オンライン教育も増える。
- Postmodernの高等教育研究:
- 丁寧な説明と議論による全員一致を目指す意思決定は,反対意見者がもう意見を言いたくないという状況まで追い込んで意思決定をすること。→ 丁寧な議論が大事なのではなく,反対意見を積極的にとりあげるリーダーシップが重要。
- マルチパラダイム研究への進み方
- 大きく,Review,Research,Theory Buildingの3つのアプローチがある。
- Reviewのための技法:
- Bracketing(別のパラダイムを添え木にする):リニア戦略による分析を中心にして,戦略を理解する文化や価値観の重要性を分析に入れる。
- Bridging:リニア戦略とカオス理論の併置,リニア戦略を戦略の進行中も戦略策定時と同じ条件を想定していいのかという長期における戦略の妥当性を考察。
- Researchのための技法:
- Sequential:異なるパラダイムによる分析を順次行う:データによる実証研究 → 予想と反する結論 → 分厚い記述で実証結果がもたらされる個別文脈を記述。(笑顔と売り上げの反比例研究など)。
- Parallel:異なるパラダイムによる研究を同時に行う:組織文化研究はこの方法でないと難しい。
- Theory Buildingの技法:
- Interplay:異なるパラダイムを並置して,矛盾を導く。
- 基本的には,研究テーマを決めたら2つのReviewを行い,SequentialかParallelのどちらかにいくかを決める。それぞれの研究をしたら,Interplayへ進むのが基本手順。
- マルチパラダイム研究の課題
- そもそも研究者が学んでいない。大学院生にも教えられない。(しかし,大学院生が行うには時間がなさ過ぎる研究。)
- 基本的には,異なるパラダイムの研究を常に読んでスキルを磨く+異なるパラダイムの研究者と共同研究を行う。これは中堅教員以上が取り組む課題。