本論文は、対面教育と同等の教育を行うための、オンライン教育における技術の使い方について述べたものである。対面教育と同等の教育とは、バーチャルシステムによる授業配信のような技術を活用して対面教育を忠実に再現するという意味ではなく、対面教育で得られる学習経験と同じ学習経験をオンラインでも行うという意味である。ここでいう学習経験は、知識の習得、他者との共同作業や討論、学習成果の発表などが含まれる。
同等の教育経験を獲得するための技術の組み合わせは、Equivalency Theoryという考え方に基づく。Equivalency Theoryは、通信技術の進展に伴い、オンラインにおいても適切な技術を組み合わせることで、教材の配信、教員と学生・学生間のコミュニケーション・コラボレーション、課題の提出とフィードバックなどが対面教育の学習経験に近づけることができるという考え方である。ここでは、それを実現するための方法論を以下の4点でまとめる。
(1)技術の検討:これには2つのステップがあり、(i)最も効率的に学習できる抽象度(Cone of Experience)を決める(効率的 vs 効果的)(ii)最低限必要となる技術を決める、である。
(2)学習成果の決定:ここでは、さまざまな技術を使って学習成果を示させることが重要になる。よく用いられる効果的な方法として、昨年度の学生の成果を提示し、その批判的検討をさせる課題が有効であることを多くの実践者が指摘している。
(3)学習経験の特定と適切な技術とのマッチング:先に指摘したように、対面教育の学習経験と同等の学習経験を得ることは、対面学習のバーチャル配信ではないため、対面教育の授業計画と同一ではなく、むしろ根本的に異なる。本論文では、その具体的技術マッチングについて、掲示板など様々な方法に触れているが、現在ではCMSがあれば解決できる問題がほとんどであるため、この点は問題とならないだろう。
(4)学習経験の配信:最後に学習計画のフィックスを行う。オンラインの学習プロセスの特徴は、教員からのアプローチと学生の自学自習の二つの側面がある(対面教育でも同じだが)。プロセスを大きく分けると、リニアモデル、枝分かれモデル、学生主体モデルの4つになる。リニアはスモールステップでプログラム学習的に進める学習、枝分かれはリニアにいくつかの階層を持つものである。学生主体になると、学習のペースは完全に学生に委ねられる。リニアであれば、前のチャンクの学習を引き継ぐ形で設計できるが、学生主体の場合、前のチャンクからの時間が個人により変わるため、学習目標の獲得を保証するには各チャンクでの完結性が求められる。
本論文の指摘は、オンライン教育の領域で一定のコンセンサスを得たものということであるが、ガイドラインを語ってはいるもののこれだけで授業実践者がその意図するところを汲み取れるかというと疑問が残る。また、本論文の主旨は基本的に賛同できるものであるが、こうした議論の土台となる根拠が見えにくい。おそらく学習心理学によるところが大きいと思うが、そのロジックをもう少し正確に示さないことには、研究論文としての価値に疑問がついてしまうだろう。