2008/09/25

米澤彰純・浦田広朗(1996)「私立大学授業料の規定要因」『高等教育費の費用負担に関する政策科学的研究』科研費報告書第3章 pp.55-77.

 本論文は、私立大学の授業料がどのような変数で説明できるかを検討する実証研究である。丸山(1991)との違いは使用する説明変数群の違いであり、授業料を、偏差値、全学学生数、学部学生数、学生教員比、教員平均給与額、学生一人当たり校舎面積、学生一人当たり校地面積、地価、都市ダミー、帰属収入に占める教員人件費比、経常費補助率へ回帰する。
 結果は、全学を対象とした分析では偏差値(-)、校舎面積(+)、都市ダミー(+)、経常費補助率(+)が有意、経済経営系学部対象の分析では学生数(-)、教員平均給与(+)、都市ダミー(+)、経常費補助率(+)が有意という結果である。理系、人文系学部ではあまり有意とならない。このことはヘドニックアプローチが前提とする市場モデルが成立していない(大学間に線形の関係がない)という含意を持つ。逆に、経済経営系は多くの大学が参加できる競争市場が成立しやすい。
 属性別のデータの特徴として、経済・工では、大規模大学は学生数優先、中規模大学は学生数・授業料両立、小規模大学は学生数も授業料も拡大できないというパターンを見る。ここから、大規模大学でさえ授業料を抑えて偏差値と学生数の最大化を図る行動が見られるという。また、時系列では基本的に価格設定者の大学にそって授業料は決まるという。あえて結論を示すと、授業料は各学部の市場固有の要因とその市場競争力の大きさで決まる。
 こうした内容なので、授業料がどう決まるかに対する答えは直接的に示していない。偏差値が55以上の約70大学を対象とした中で、偏差値別の分析は少し無理があると思われる。