本稿は、私立大学の授業料がどのような変数で説明できるかを検討する実証研究である。
分析の前に、育英主義と市場主義という二つの概念が重要となるのでまずこれを示す。育英主義の下では威信の高い大学ほど授業料が安く、能力が高く努力した者が安くて良質の教育を受けることができる。これは国立大学の授業料設定を説明する考え方である。逆に市場主義の下では、良質で威信の高い大学ほど教育コストがかかり、授業料が高く設定される。この視点で日本の私立大学を見ると、威信の高い大学ほど授業料が安いという実態が観察でき、育英主義に近い。
決定要因の分析は回帰分析で行うが、授業料を入学難易度(1から20の値をとる変数)に回帰するだけである。結果は医学部だけが負の効果で、他は全て正の効果があることが示される。すなわち、入学難易度が1単位上がると(係数β×入学者数)円だけ授業料が上げられるという市場主義を支持する結果である。
いうまでもなく本論文の分析は大幅な改善の余地があり、その後の研究を追う必要があるだろう。今後の研究課題としては、大学教育の需要側の価格弾力性推計がポイントになるのではないかと思われる。先行研究からすると重要な問題でありながら、日本で全く取り組まれていない研究である。