2008/09/11

Pratt, D. (1993) "Andragogy after Twenty-Five Years," in Merriam, S. eds. An Update on Adult Learning Theory.

 本論文は、これまでのAndragogy の研究が、成人教育の分野にどのような貢献をしたかについて再考するというものである。この問題に取り組むために、本論文では、次の4つの課題を設定して考察する。すなわち、第一に、学習とは何か、第二に、Adult Learningの前提は何か、第三に、Adult Learningをどのように促進したらよいか、第四に、Adult Learningの目的は何か、という課題である。
 まず、Andragogyに関しては、学習の中核的概念がないことは古くから指摘されている。しかし、Adult learningを理論的に特徴づけられるかどうかは、学習の概念に依存する。知識は学習者によって能動的に構築され、学習は個人の経験した世界を理解・統合・転換する総合的プロセスであるという、二つの学習原則にAndragogyは依存している。しかし、Andragogyは学習者の心理的側面のみに着目したものであり、社会的・経済的・文化的・歴史的側面を考慮したものではない。実際の学習者にとっては、学習はキャリアを変えるなどのチャンスであり、社会経済生活と切り離せないものである。Andragogyは学習者個人が学習の中心にいることは自明と考えているが、実際に大人を教育している人は個人と社会の相互作用があると考えている。
 結局のところ、Andragogyは大人を学習者として理解する点においては多大な貢献があったが、大人の学習プロセスを理解する点においてはほとんど貢献がなかったと考えるべきであろう。当初の4つの課題は、次の二つの議論に集約できる。一つは、学習の過程と評価において学習者本位か教師本位かの問題、もう一つは学習に影響を与えるものが人間の生来的特質か社会構造的特質かの問題ということである。
 ちなみに、Knowlsの概念についてまとめておくと、Andragogyの背景には、(1)Self-concept、(2)prior experience、(3)readiness to learn、(4)learning orientation、(5)motivation to learnがあり、Andragogical process designにおいては(1)社会的風土、(2)学習計画に学習者が関わる、(3)学習者の自身のニーズの発掘に学習者が関わる、(4)学習目標の形成に学習者が関わる、(5)学習計画のデザインに学習者が関わること、(6)学習計画の遂行を援助する、(7)学習の評価に学習者が関わること、という7つの要素があると指摘している。
 Andragogyのサーベイとしては大変興味深い文献であるものの、今後の研究の方向については言及していない点が残念である。