沼上幹(2003)『組織戦略の考え方』ちくま新書
- 本書は、日本の組織の本質的な部分を維持しながら経営していくにはどうしたらよいか、という問題意識で書かれている。本質的な部分とは、コア人材の長期雇用を前提とするということ。
- 組織設計の基本は官僚制で、官僚制組織がしっかりしているから、その上に創造性や戦略性の発揮が可能になる。組織設計上の工夫は官僚制組織に付加する形で行われる。
- 官僚組織でルーチンワーク(例外処理)が多くなった場合は、現場の知的能力アップ、意志決定の補佐役の創設、情報技術の装備、小規模な自律的組織の創設、水平関係の創設(マトリックス組織)の5つで構造的に解決する。
- 人材育成の基本は、決まり切った仕事をミスなく処理し、若干の例外に創意工夫で対応できる熟練者、例外事例を分析し、バランスのとれた決断をする管理者、戦略を思考できるトップの3つ。これらは、どれか一つを行うのではなく、全て同時に行う。現場、ミドル、トップを分離した組織を設計しておいて、3つの仕事を混ぜた仕事ができるように組織設計を行うべき。
- ボトルネックは、優秀な人材ほど雑務までしている状況で出やすい。
- 日本の(大学)教育では、ゴールが多様であるという言い訳によって、自分が楽をするだけの方を自然に選び、教育効果を考えていない人が多すぎる
- 組織は、仕事の邪魔はしても、自動的に仕事の処理はできない。組織論では、ある構造下で働くヒトに注目しないといけない。ほとんどの場合、ヒトの問題であるのに、組織が悪いということで、だれも傷つかないコンセンサスをしてはいけない。
- マズローの欲求階層説では、美しく安上がりな自己実現を要求しやすいが、本当に大事なのは、承認・尊厳の欲求。ポストで報いられないなら、全員自己実現できるようにと考えるのは誤解。成功体験をさせることがミドルの役割で、承認・尊厳欲求の充足。
- 組合にはフリーライダーの問題があり、組合費は強制徴収せざるをえない。(組合が公共財を提供している役割があると考える)。しかし、フリーライダー問題は根本的な解決ができず、責任感の強い人材を採用・育成する前提で、組織の長期的な運命と自分の運命が密接に関連していると思う人を作るだけ。
- 決断は単なる意志決定ではなく、何かを捨てて何かを取るような、大胆で不連続な側面を持つ意志決定で、出せば批判され、出さなければ批判されるもの。
- 決断不足の兆候としては、フルスペックの改善案、全方位全面対応型の戦略計画がでること、経営改革検討委員会の増殖、見当違いの人材育成(今の問題の解決には人材の育成が時間的に間に合わない状況)の3つ。
- 決断は、トップがしなければならない。トップが決断することで、ミドルも決断を迫られる。
- 組織内のエースを明確に認識し、重要な仕事が回るように決断することも重要。
- 組織のパワーには、賞罰、正当性(服従が当然の状況)、同一化(カリスマ)、情報(専門的知識)の4つ。情報パワーをベースに、正当性と賞罰を一致させれば、組織設計は最適になるはず。
- このバランスを乱すのが、厄介者。多くの人が優等生の組織では、厄介者が理不尽であっても、ことを荒立てないために、組織として通るケースが出てしまう。
- もう一つのおかしなパワーが狐の権力。顧客のため、社長の意向、という伝聞を活用する方法。複数部門を調整するリエゾンポストを作らないこと、シニアになったら外圧を利用しないの2つが、これの予防。
- 内向きマネジメントでは、組織価値を高める議論が何一つ含まれない。スキャンダル対応では、組織価値を高めるための議論をすることが重要。そのためには、トップマネジメントを3,4人で行う、内向きの評価基準を使わない、の2つ。