2016/08/26

鈴木克明・根本淳子(2013)「教育改善と研究実績の両立を目指して:デザイン研 究論文を書こう」『医療職の能力開発:日本医療教授システム学会論文誌』2 (1):45-53


  • デザイン研究(Design-based Research):実践と研究の両立を可能にする研究方法論,教育改善と研究実績の一挙両得を達成できる手法として魅力的な選択肢。
    • GTA:記述・分析が目的で,介入・改善を指向しない。
    • アクションリサーチ:介入・改善を指向するが,それを支える理論やモデルによる一般化が希薄。
    • デザイン実験アプローチ:うまくいった方法がうまくいった理由を探り,同じようなよい例をたくさん作ることで仮説を確かめる。
  • デザイン研究の特徴(Wang and Hannifin 2005):
    • Pragmatic
      • デザイン研究は,理論と実践の両方を洗練する
      • 理論の価値は,実践の向上に役立った程度で判断される
    • Grounded
      • 設計は理論駆動で,関連する研究理論実践に根づいている
      • 設計は実世界の場面で行われ,デザイン研究の中に組み込まれている
    • Interactive, iterative and flexible
      • 設計者は実践者とともに設計過程に関与する
      • プロセスは分析設計実施再設計の繰り返しサイクルである
      • 初期計画は通常詳細度が不足しているので,必要に応じて慎重に変更を加える
    • Integrative
      • 信憑性(Credibility)を高めるために研究方法を混在させる
      • ニーズや焦点が新たに加わるごとに研究段階に応じて研究方法を変更する
      • 厳密さ(Rigor)は意図的に維持され,開発フェーズに適した規律(dicipline)が適用される
    • Contexual
      • 研究プロセス分かったこと・初期計画からの変更点が文書化される
      • 研究結果を設計プロセスと場面とに結びつける
      • 産み出される設計原理の中身や深さは異なる
      • 産み出された原理を応用するためのガイダンスが必要とされる
  • デザイン研究:日常的な実践場面における学習や教育に潜在的なインパクトを与え,説明を可能にするような新たな理論・人工物・実践を生み出すことを意図した一連のアプローチ。
  • デザイン研究プロセス:
    • 問題の同定と分析:研究者と実践者の共同により実践的な問題を分析する
    • デザイン決定と改善:既存のデザイン原則や技術的介入によって問題解決策をデザインする
    • 結果の整理:実践において問題解決のためのテスティングと改善の反復を行う
    • デザイン原則の提案:デザイン原則の省察や問題解決策を拡張する
  • デザイン研究実践ガイドライン:
    • 設計の実施
      • 設計の重要な要素とそれらの相互関係を同定する
      • 実施時に各要素がどのように用いられているかを抽出しておく
    • 設計の変更
      • もし設計要素がうまく作用していない場合は設計を変更する
      • 変更を1つ加えるごとに新しいフェーズが開始する
      • 各フェーズでの重要な設計要素を特徴づける
      • 変更を加える理由を記述しておく
    • 設計分析の多様な視点
      • 認知的・リソース・対人関係・グループや学級・学校や組織体
    • 従属変数の測定
      • 雰囲気Climateの変数(没入・協同・リスクへの挑戦など)
      • 学習の変数(気質:dispositions・メタ認知・学習方略など)
      • システム変数(採用の容易性・維持可能性・広がりなど)
    • 独立変数の測定
      • 場面・学習者の特徴・技術的サポート・金銭面のサポート・専門的訓練(ProfessionalDevelopment)・実施ルート
    • デザイン研究の報告
      • 設計のゴールと要素・実施場面・各フェーズの記述・得られた成果・学んだ教訓・マルチメディアによる記録
  • デザイン研究の推奨
    1. デ ザイン研究では,すでに統制条件よりも「良い」ものであることが想定されている教育方法で実践が行われる(そうでない場合は,統制群を置く比較をすべきである),
    2. 長期間に及ぶ多段階の影響経路が想定される実践では,要因配置計画がそぐわない,
    3. 介入デザインの効果や適切性を学習者特性との関係で分析することを重視する。