冨田知世(2015)「「進学校」制度の普及過程に関するミクロレベル組織分析」『教育社会学研究』96,283-302
- 東北地方に所在する公立高校組織をめぐる「進学校」制度の普及過程を事例とし,その過程における教師の行為を明らかにするとともに,制度の普及を担う教師というアクターを捉える概念を検討する。
- 制度論:組織構造や組織内のアクターの行為が,制度というマクロレベルに適合する形で形成される側面を強調。
- 進学校制度=進学校としての組織構造や教師の振る舞いを形成する制度。
- 制度的ルール=進学校制度下で取り込むべき組織構造や教師の振る舞いの個別具体的なもの。
- 進学校制度の中で,一種の社会的な約束事と化した制度的ルールとして,教師が進学指導と称する行為に着目。
- 進学校制度の普及をミクロレベルから捉える理由:
- 制度に対して受動的に埋め込まれるだけではなく,能動的に反応するアクターの 2 面性を同時に捉えるため。(進学指導の受容先の学校組織において,教師の行為を制度の受容ではなく創造と見ることで能動的な行為を捉える。)
- 文化-認知的制度:教師文化ほど広範な影響力を持たないが,組織文化ほど単一の組織への狭い影響力を想定しない = 組織の境界を越えた影響力(一定のまとまりを持つ行為や思考パターン)。
- 制度の普及を担うアクター=制度的運搬者。
- 象徴システム(重要な情報が含まれた象徴的な枠組み),関係性システム(個人間・組織間のつながり),ルーティン(行為者によって伝えられる戦略的知識を反映したパターン化された行為),人工物(人間の創意によってつくられた物的文化)の 4 つに分類できる(Scott)。
- 下位組織から見ると,新たな制度の創造者(制度的企業家)。
- 他組織とつながることで別の制度に気づき,自組織に代替する可能性をもたらし,制度変化を起こす。
- 制度的運搬者概念と制度的企業家概念の積=制度的移植者。
- 制度変化をトップダウンに行わず,一度自組織に「埋め込んだ後で」制度変化を引き起こす。
- 進学校の構成要素:教師個人が 各々授業を展開するのではなく,共通理解(特定の大学への合格者輩出という明確な目標)や大枠をもって足並みをそろえていく。
- 制度の創造
- 教師間関係変化(月1飲み会→資料や情報の共有→負担軽減,指導内容共通化)
- 生徒教師間関係変化(なんでできないの?→どのまでわかった?,個別指導→一斉指導=上位者を同じクラスへ)
- 時間配分変化:部活中心→学習課題・週末課題の導入
- 抵抗はあったが移植者の実践は埋め込まれた ← 同僚教師の中に理解があった+変化を期待する雰囲気があった(そんな理由?そのプロセスが重要なのに)
- 制度の普及
- 移植者が他校の進学指導を説明,他校は進学指導を文書化。
- Y校が進学実績トップという事実=進学校制度のルールとして機能(権威付与)。← 教師ABはここで,進学校制度に埋め込まれた経験を持つ。→ 移動先で新制度を普及。← 環境条件として,(1)XはYに次ぐ進学実績,(2)ABが同時異動,(3)既存の価値よりも進学校制度の方が上位の教師文化に合致した。