2016/10/13

日本教育行政学会研究推進委員会(2009)『学校と大学のガバナンス改革』教育開発研究所


  • 一見,大学は市場のもとで自律的に活動しているように見えるが,資源配分と評価のメカニズムを設定することで,政府による遠隔操作が行われている。(政府・大学・市場の三項対立の構図に基づいて権力の移動を論じるべきでない)。
    • → 変化しているのは権力関係そのものではなく,政府と大学の権力関係の様式である。市場・政府・同僚制(大学寡頭制)のトライアングルモデルは,市場・政府関係をゼロサム関係と把握するので,この変化を表示することはできない。
    • 市場メカニズムが人為的に創出されているものと捉え,政治的要因に注目しなければならない。
  • アメリカ・イギリス・オーストラリアの大学:法人格をもつ=遠隔操作による新たな政府統制を導入しやすい。
  • 日本・中国・台湾。韓国:威信が高くそれぞれの国で規範的役割を果たす=政府立期間,政府の庇護と統制下。
    • 中国:98年法人化,台湾:2003年閣議決定,否決されて未成立,韓国:導入計画中。
  • 国立大学法人制度は,マネジメントにおける自律性を拡大するものではない。
    • 年度計画は前年度3月に認可,前年度の評価結果は機関レベルで次年度6月末に確定後,国立大学法人評価委員会によって9月に確定,=PDCAサイクルに成り得ない。
    • 年度計画・中期計画は文部科学大臣の認可を受けた計画を許可なく変更できない。
  • 国立大学法人の業務はあくまでも運営(教育研究ではない)。
    • 「団体,機関その他の組織又は機構がその機能を発揮するようにそれを活動させて働かさせていくこと」(国立大学法第22条第1項第1号)。
    • ⇔ 「国立大学法人及び大学共同利用機関法人の中期目標期間の業務実績評価に係る実施要領」は教育研究に対する業績評価そのものを行う(法人と大学の区分があいまい)。
  • 不効率な大学運営は転換する必要があるが,学長のもとに権限を集中してリーダーシップを強化すれば成功すると考えるのは,企業モデルの思いこみで大学の重層性を理解していないといわざるをえない。


  • アメリカのアクレディテーション:最低基準を保証する評価で,大学がその目的や目標をどの程度まで達成しているかを評価するものではない。
  • 州交付金の一般的な算定方法は,Formula Budgeting(設定された算定式から交付金を算出)。= 教育や学生サービスの質を加味できない。

  • 日本でガバナンスという言葉が頻繁に使われ出したのは90年代の後半から。サッチャー政権が用いた民営化政策による統制手法をニューガバナンスと呼んだのがきっかけといわれる。
  • 独立行政法人の枠を残しつつ国立大学としての独自性を発揮できるような検討が加えられた成果が,(1)学長を自らの組織で選考できること,(2)中期目標・中期計画を自ら決定することができるとした点。
    • 大学にとっての不幸は,この程度の修正で国立大学法人化という大事業を鵜呑みにしてしまったこと。
    • 基本設計にみる国立大学法人化の要点は,(1)トップダウン型の大学運営,(2)学外者の大学経営への参加,(3)評価の重視による競争原理の導入。= 独立行政法人と何ら変わらない。これで大学を含めて大かたの公的サービスに対応できると考えたとしたら,その発想はずいぶんと浅く貧しい。
  • トップの仕事:長年にわたって努力されてきた教育・研究の成果をじっくりと見定め,それらを支援すること=トップができるのは環境条件を整えることのみ。
  • 国立大学法人の運営は,教授会中心のボトムアップ型から大学執行部が自らの提案を評議会に降ろすトップダウン型に変わった。= 評議会も教授会も合議制の審議機関から連絡調整会議と化した
  • 法人化後の体制で注意が必要なのは大学執行部の実態:本当の執行部の範囲がどのように設定されるかは学長・学長側近の判断による。
    • 通常は学長・理事・監事・副学長(執行責任者)の範囲で非公式の会議を設置して大学執行部を構成。= 人数が少ない分だけより集権的な意味合いの濃い会議。
  • トップダウンといっても,本来はそれが正常に作動するためには要所要所で適切なチェックが効かなければならない。
    • それをすべて外すと,学内は無秩序になり,学長執行部以外はすべてフラットな組織になる。
  • 法人化3つの誤謬:
    • 国立大学法人の設計に独立行政法人を下敷きにしたこと。
    • NPM自体の評価:行政改革の手段として卓越した手法であったか疑問。
    • エラーマネジメント:独善的トップダウン,意欲ある教員の離職。