2016/10/07

鈴木宏昌(2004)「人的投資理論と労働経済学」『早稲田商学』401,29−44


  • 人的資本:シュルツ会長講演(1960):経済発展の要因は教育と技能の向上,賃金格差は教育投資の違いで説明できる。
    • この背景は,旧植民地の経済発展の模索。
    • 資本蓄積を柱とした経済政策・工業投資 → 結果は惨憺 → 物的資本の量的拡大と別の戦略を模索。
    • 60年代の主流研究:個人の教育収益率測定。
  • ベッカーの人的資本(1964):教育・訓練の「年数」に応じて個人の職業能力が高まると仮定。
    • さらに,一般訓練と企業特殊訓練を想定。費用負担の合理的行動を示した。
  • 人的資本論の貢献
    • 賃金格差の説明:以前は,労働市場の不完全性と制度的要因による。人的資本論以降は,労働者の質の諭して説明される。
    • 貧困の説明:発展途上国の貧困問題は人的投資が不足しているか高技能雇用機会が不足している。
    • 差別行動の説明:コントロールの残差が差別を説明する。
  • 人的資本論の批判
    • 統計的差別・スクリーニング:教育が生産性を高めるのではない。
    • 制度要因:人事評価と賃金・勤続に相関がない。
    • 内部労働市場:大企業の中核人材は,外部から独立で内部で人的資源配分をし,OJTで特殊技能を形成し,それに応じて賃金が上がる。
  • 60-70年の日本の研究:年功制・年功賃金(労務政策,生活非保証,日本的経営で説明),春闘賃金決定(労働需給,物価上昇,交渉力で説明),労働市場の二重構造(規模間格差を労働者の質で説明)が代表研究。
  • 人的資本論の課題:
    • 人的投資と生産性:賃金≠生産性が実証される,賃金上昇と人事評価に相関なし=制度的要因で賃金決定。これに反論すること。
    • 一般技能と特殊技能:実証の対象にならない,実際は一般的知識と個別の適用。特殊熟練は10-20%(小池)。→ 一般教育と職業教育という区分なら実証可能?
    • 企業の役割の不明確さ:企業組織を人的資本に取り入れる,関連がブラックボックス化されている(ベッカーは一般教育以外に生産性を高める要素があることを示すことを目的にした)。