2016/10/26

シャイン,E.(梅津裕良・横山哲夫訳)(2012)『組織文化とリーダーシップ』白桃書房


  • 組織文化:文化人類学,社会学,社会心理学,認知心理学の研究。
    • 文化的な現象が関係する場面では,注意深い観察,グループに対する面接,情報提供者に対する焦点を絞った質問で研究。
  • マクロカルチャー(国・民族・宗教) ⇔ 組織文化 ⇔ サブカルチャー(組織内の職業別グループ) ⇔ マイクロカルチャー(組織内外の特定職業マイクロシステム)
  • 文化とリーダーシップの関係は,組織文化とマイクロカルチャーに明確に現われる
    • 文化は究極的にはリーダーによって創成され,定着が促され,育てられ,最終的には操作されるもの。
  • あるレベルの文化を理解するためには,すべてのレベルの文化についての一定の理解が求められる。
  • 文化は抽象的概念だが,文化が生む力は強力。
    • なぜ,部下は変化に抵抗するのか,なぜリーダーが組織を生産性の高い組織にしようとするのに,部下は非生産的な方法を続けたり,グループ間でコミュニケーションを取らないのか。
    • 職業に就くには,その職業に伴う価値化や規範を身につけることが求められる。
    • 細織やグループで共有されている前提認識を検証し,それらを自分自身の前提認識と比較することから文化の分析が始まる。(これができないと,現場で何が起こっているかが理解できない。)
    • 優れた文化という議論は困難。文化が優れているかは環境との関係で決まるので。
  • 文化の概念は,構造の安定性,深さ,広さ,パターン化と統合化を意味している。
  • 文化の定義:パターン化と統合化。
    • グループが外部への適応,内部の統合化に取り組む過程で,グループによって学習された共有される基本的な前提認識のパターン。
    • このパターンはそれまで騒本的に効果的に機能してきたので適切なものと評価され,その結果新しいメンバーに対しこれらの問題に接して,認識し,思考し,感じ取る際の適切な方法として教えられる。
  • 安定したメンバーと共通の学習経験を備えたグループであれば,どのグループもあるレベルの文化を築いている。
    • メンバーやリーダーの間の数多くの離脱,挑戦を含む出来事を経験してこなかったグループは,共有された前提認識がない可能性。= 人がただ集まるだけでは文化は生まれない。
  • 文化のレベル:文化的現象が観察者に見える程度。← 構造的な記述
    • 基本的前提認識:妥協の余地のないもの。アイデンティティや自己尊厳を促す価値観も定義する。
      • 前提認識が違っている場合は,双方が自分たちの一貫性を守ることができる第3の前提認識を見つけないといけない。
    • 価値観:議論の対象として開かれていて,賛成しても賛成しなくてもよい。
      • 分析する際は,すぐれた業績を導く底を流れる信条と合致したものやその組織の理念や哲学の一部を占めるものと,単に将来に対する言い訳または願望にすぎないものを区別しなければならない(教育が大事と言っているが,実際は研究を評価するなど)。
    • 人工物:認識しやすいが,解釈も難しい。それだけでは理解できない。まして,人工物から前提認識を推論することは危険。長時間所属すると,人工物の意味が次第に明確になる。
    • グループの文化を理解するには,共有された基本的な前提認識にたどりつくように努力し,その基本的前提認識が形作られる学習プロセスを理解することに努めるべき。
  • サブカルチャーを生む源泉
    • その組織内の機能組織ユニットで形成されることが多い。← 部署横断的なプロジェクトチームをまとめる難しさの源泉。各自が自分の文化を持ち込むため。(ex. 入試改革という言葉の各部署の意味は?)
    • 共通の(成功)経験を反映して形成される文化。
    • 職業別のコミュニティ。(ex. 学長コミュニティ,国立大学コミュニティ)。
  • 現場の前提認識
    • 自分たちは不可欠の存在,実際に動かしている存在,組織の成功は自分たちにかかっている。
    • 求められる知識・スキルは現場にある,そのために学習が必要,自分たちは協調的なチームを作り,オープンで相互信頼でコミットメントが必要。
    • そのために必要な資源の提供をマネジメントに期待している。
  • エンジニアの前提認識
    • 理想的な世界は,人間の介在なしにプロセスが正確・完璧に機能する世界。
    • 人間は間違いを犯すので,システムに含めずデザインすべき。
    • 自然は統治可能,仕事は優れた成果物を目指すこと。
  • エグゼクティブの前提認識
    • トップは孤高の英雄,全知全能,不可欠の存在をアピールすべき。
    • 部下から信頼できるデータは得られないので,判断はトップしかできない。
    • マネジメントの本質は階層的,階層がコントロールの主要手段。
  • 専門化,グローバル化,ICTの活用で,マイクロカルチャーが生まれやすくなった。
    • 構造ではなく,次元から文化を見る = 組織生存と成長のための外的環境への対応,組織内部の統合のためのマネジメントの問題の2つ。
    • 多様なステークホールダーの期待を調和的に充足することが組織のミッションとなるという論理は,どの組織にとっても変わりはない。
    • そもそもミッションは誰にでも一応の理解はされるが,明白にわかりやすく表現されていない。ゴールについてのコンセンサスを成立させるためには,関係グループは共通の言語表現と前提認識の共有を必要とする。それは基本的なロジスティカルな作業を意味する。つまり抽象的な何か,あるいはミッションの総括的認識を具体化,現実化することである。
    • 組織文化のなかでもっとも重要で,しかも見えにくい要素としてあるものは,「物事の達成がどのようにしてなされるべきか,ミッションはどのように遂行されるべきか,ゴールはどのようにして達成されるべきか」についての前提認識の共有である
    • 内部統合の問題
      • 共通言語と概念分類の創出,グループの境界規定・参入除外の基準設定,権力・権限・地位の委譲,信頼・親密・仲間意識に関する基準,賞罰規程・適用,説明困難なことの説明。
    • 組織における案件の決定は,他の案件と連結・連動することが多く,経験的に処理するかコンセンサスを前提とするかについて,共有された前提認識がなくてはならない。(それはもっとも経験の深い者に決定を委ねよう・多数決で決めようになる。
      • ただし,ここでコンセンサスとは決定の基準(criteria)についてのコンセンサスと,決定のプロセス(decision process)についてのコンセンサスであり,必ずしも決定そのもの,決定の実体を意味することではない。
    • グループが多文化になるほど,コンセンサスの進捗と成立は社会的現実を共有するプロセスは複雑になる。
    • 文化の分類では,現実,真実,情報がどう定義されるかの前提認識が重要。個人にとっては,時間・空間に方向付けできることが基本。
    • 個々人はグループ内のメンバーシップを確実なものにするために,一定の基本的な前提認識に従う。
      • 外から思考や認識の方法を変えることを求めると抵抗する ← グループからの逸脱になるから。
    • グループの進化の段階:
      • グループの形成:前提認識=依存(リーダーは自分たちがなすべきことを理解している)
      • グループの構築:前提認識=融合(自分たちは優れたグループで,お互いを尊重し合っている)
      • グループが稼働:前提認識=稼働(自分たちはお互いを知り認めているので,効果的に仕事ができる)
      • グループの成熟:前提認識=成熟(自分たちは誰で,何を望み,どう実現するかを理解している)
      • 文化の源泉:
        1. 創設者の信条,価値観,前提認識
        2. 組織の成長に連れてグループメンバーが獲得する学習経験
        3. 新しいメンバーやリーダによって持ち込まれる新しい信条,価値観,前提認識
      • 文化の自然な進化のプロセスが遅すぎたり間違った方向の時に,リーダーが管理された変革を起こす。
      • 組織変革の段階
        1. 解凍(変革への動機づけを生む):不当性の証明(データ,データと重要な目標との結びつきなど),生き残りのための不安感や×意識の創成,学習への不安感を克服するための心理的な安心感の創成
        2. 学習(新しい考え方,新しい基準を学ぶ):ロールモデルの模倣と同一化,ソリューション間の選択と試行錯誤による学習
        3. 内面化(新しい考え方,意識,基準の内面化):自己イメージ・自己同一性への統合,継続する諸関係への統合
      • 不当性への反応:
        • (1)拒否(データは妥当でない,一時的なものだ,意味がない),(2)責任転嫁(そのデータは他部門が原因),(3)操作・交渉(データを受け入れる代わりに見返りを要求する)
        • → 生存への不安感・罪意識 > 学習に伴う不安感
        • → 左辺の増大ではなく,右辺の減少にフォーカス。
        • (1)力強い役割ビジョン,(2)公式のトレーニング,(3)学習者の参画(自分のインフォーマルな学習プロセスを管理できる確信が重要),(4)チームに関する非公式トレーニング(新しい前提認識を得るため),(5)実習,コーチング,フィードバックの提供,(6)効果的なロールモデル,(7)学習に伴う問題のガス抜き,支援グループ,(8)新しい思考と仕事の進め方と一貫したシステムと構造
      • 変革のゴールは,文化の変革という文脈ではなく,自分が解決したい問題という文脈の中で具体的に記述されなければならない。
      • 文化に伴う古い部分は,その部分を「担っている」人たちを除去することを通じて打ち壊すことが可能。しかし,文化に伴う新しい部分は,新しい行動が人材を成功と満足に導いたときにはじめて彼らが学ぶことが可能。
      • 文化の変革は,心理的な苦痛を伴う解凍の期間を要求する,トランスフオーメーショナルな,大規模で根本的な変革だ。
      • 学習する文化の姿
        • (1)先取り的発想,(2)学習すること自体が習得すべきスキルという前提認識の獲得,(3)人間の本性についての前向きの前提認識,(4)環境は管理可能という信念,(5)問題に対する解決策は,探究に含まれる深い信念,真実に対する実用主義から生まれる,(6)将来への前向きの指向性,(7)開かれたコミュニケーションへの理解,(8)文化の多様性の理解,(9)体系的な思考への理解,(10)文化の分析に関する理解
      • 学習と変革を人々に強制することはできない。
        • メンバーの貢献と参画は,何が進行しているのかを診断し,何をすべきかを明確にし,実際に学習と変革を進めるプロセスにおいて不可欠。
        • 学習プロセスは,学習を進める社会的ユニットのすべてのメンバーによって共有されていることが求められる。
      • 多文化ユニットの管理
        • 組織の効果性についての理論では,縦系列と横系列にオープンなコミュニケーションが築かれていることの重要性が強調されている。しかしこれらの理論では,文化の垣根を越えたオープンなコミュニケーションも可能であり,そこでは理解と共感を促す文化の島のセッティングが必要とされるという事実を見逃している。
        • 外科医と看護師にお互いにオープンに接することを促すだけでは十分とは言えない。彼らに共通の場と相互理解を築くための文化の島の共通な経験を持たせることが求められている。
        • → サブカルチャーの存在を認識する文化的な視点こそ,組織のリーダーにとって根本的な条件。