佐古秀一・曽余田浩史・武井敦史(2011)『学校づくりの組織論』学文社
- 組織の有効性研究は消えない:(1)あらゆる組織モデルの中心に位置する,(2)究極の従属変数である,(3)有効性判断の必要性に常に直面している。
- 効果のある学校の5つの特徴(Edmonds):(1)校長の教授・学習上のリーダーシップ,(2)教員集団の意思一致,(3)安全で清潔で静かな学習環境,(4)公平で積極的な教員の姿勢,(5)学力測定とその活用。
- 学校の有効性のモデル
- 目標モデル(学力,ドロップアウト率,進学率)
- 内部プロセスモデル(リーダーシップ,コミュニケーション,参加,協働,組織風土,文化)
- 非有効性モデル(葛藤,逆機能,困難,欠陥)
- 資源-インプットモデル(入学者の質,施設設備,財政支援)
- 関係者満足度モデル(政府,理事会,管理者,保護者,生徒の満足度)
- 正当性モデル(一般の人との良好な関係,公的イメージ,アカウンタビリティ)
- 組織学習モデル(内部プロセスのモニタリング,プログラム評価,人材開発)
- 組織論と有効性
- 構造アプローチ:学校を工場ととらえ,学校組織は,測定可能な目標を効率的に達成するために固有の役割と機能を持つ諸要素を組み立てた機械と見る。
- 合理的な構造化と計画化をすれば(=教職員の活動を統制すれば)学校はうまく機能して効率的に目標を達成できる
- 人的資源アプローチ:個人が職場の中で仕事にやり甲斐や意義を見出し,組織目標達成に必要な資源(=エネルギー・アイデア・才能)を獲得すれば組織はうまく機能する。
- オープンシステム論:組織の外部に目を向ける。(⇔上の2つは内部に注目)
- 組織は相互作用・相互依存する複数の下位システム(構造・人間,・文化・政治・技術等)から成り立つ有機体であるため,組織の全体性や他の部分との相互調和が重要。(⇔ 組織=機械=部品の交換で前回が改善できる)
- 組織は複数の目的を持ったシステム(研究,教育,社会貢献。学力保障,人格完成,進路保障)。
- 組織は外に開かれていて絶えず相互作用するので,問題解決プロセスとしてオープンなコミュニケーションが重要。
- オープンシステムにとっての有効性は,長期にわたって環境に適切に対処していく能力を持つこと
- ベニスの組織の有効性基準:(1)環境を積極的に支配する(適応性),(2)まとまりのあるパーソナリティを示す(アイデンティティ),(3)周りの世界と事故を正しく認識する能力がある(現実のみきわめ)
- 組織学習と有効性
- オープンシステム論や学習する組織論が重視するのは,経験からの学習や日々の実践を通しての学習。
- シングルループとダブルループの違い:今日の学校が置かれている状況に対して,閉じた防衛的なスタンスで向き合うのか,開かれた探究的なスタンスで向き合うかの違い。
- アージリスとショーンにとって有効な組織は,ダブル・ループ学習を促進することのできるスタンスと力をもった組織
- 有能なチェンジリーダーはメンバーを参加させる手腕に長け,深い共通理解と変革の目的に対する純粋なコミットメントを育てる。
- 場と力
- ○○力の問題:もともと力とは関係づけられていなかった概念に「力」がプラスされることで,自己啓発や能力開発,教育の対象として措定されるようになった。
- 場:人々が参加し,意識・無意識のうちに相互に観察し,コミュニケーションを行い,相互に理解し,相互に働きかけ合い,共通の体験をする,その状況の枠組みのこと(伊丹)
- 場の論理と力の論理:互いに二律背反ではないが,双方の論理を共存させて物事を判断することは難しい。(起こってしまった事故は力の論理で解決,事故を未然に防ぐには場の論理が有効に働く)。
- 目標構造図:いくつもの異なる目的性を有した活動が学校には多い。→ 目的の多様性が失われたかたちで位置づけられると,単一目的の尺度から評価されるため,活動の意味は過小評価される。
- アカウンタビリテイの発想からするならば,学校組織経営の論理として正当性をもちやすいのは力の論理。
- いかに組織を動かすか → どのように動いているか(ルースカップリング,ゴミ箱モデル)
- 合理的な組織運営を主張する組織論=リーダーにどう行動すべきかを示唆する ⇔ どのように動くかの組織論=組織の動きを観察,その特徴を記述するで成立した後付け」の理論。
- 「これをしなさい」という強制はしていないが,「何かを考えろ」「自由にしてみろ」ということは強制している。
- 改革の初発の段階におけるリーダーシップは場の設定に向けて発揮されている。
- ゴールが固定されていない,暖昧さを残した課題設定のもとで多様な参画者が時間と空間とを共有する機会が存在する。これが意思形成において重要な位置づけを担っている。
- コミュニケーションの中から派生してくるこぼれ球を拾い上げ,育てていくプロセスが存在している。
- 学校の意思決定を校長に集権化する動向は,2000年の学校教育法施行規則の改正で,職員会議が校長の円滑な執行を補助する機関として明示された。新しい教職員人事評価でも,校長・教頭の評価者としての役割が明確化され,人事管理における校長の実質的な権限が増大した。
- 学校組織の特徴(ワイク)
- 教育における目標が不明確
- 教師が用いるべき技術が明らかでない
- 管理者が多数の教師を相手にしなければならない(管理者の統制範囲が大きい)
- 監督と評価(組織的統制)がほとんど機能しない
- ルースカップリング論によって提示された学校組織は,教員の裁量性に依拠した組織。
- 学校組織の独自性
- 学校における教育の目的は多義的で包括的(拡散的)な傾向がある。このことは組織・組織行動を統御する基準軸としての目標が暖昧にならざるを得ない。
- 職務遂行の標準化(標準的な技術)が成立しがたい。
- 教育活動の対象となる児童生徒の不確実性と多様性がある。
- → 課業の標準化に準拠した一元的な管理統制システムは機能的ではなく,教員の裁量性に依拠した組織が機能的。
- 学校組織の問題
- 教員の個人的な力量を越えた問題に対して,学校の問題解決能力が脆弱。
- 児童生徒に対する学校教育の連続的で蓄積的な教育成果を保証することが困難。
- 結局,学校の教育活動の質や水準は,相当な程度,個々の教員の意識と行動に依存せざるをえないという特徴がある。
- すでに個々の教員の自己完結的な教職の遂行に依存するシステムとしての学校では乗り切れなくなっている。
- 教員の自律性を喚起することを助長しながら,一定の組織的統合性を可能にする装置としての組織(教職の独自性に適合した組織化)のあり方と可能性を探究することが必要。
- → 統制化と協働化は相反するプロセスではなく,むしろ相補的な関係で進展できる。
- 協働性を構築することによって教員の自律性と学校の組織化を促進しかつ教育活動の具体的改善に資する方途を見出したい。