2025/07/27

竹中亨(2024)『大学改革』中央公論新社

  • 国立大学法人評価は複雑
    • 大学を見る個別評価に、他大学を入れた比較評価を掛け合わせる仕組みだから
  • ドイツとの比較
    • 国立大学が高等教育の主柱、大学は国家が公教育という社会的要請を受けて接地したもの
  • ドイツの評価の簡素化
    • 数値指標:教育=修了者数、研究=外部資金額
    • 研究業績に関する指標が見られない
    • 新たに収集するコストがない
  • イギリスのTEF:アンケートでの学生満足度が主たる評価材料の1つ→成績インフレに
  • ドイツの教員待遇は日本と似ている
    • 待遇で研究者を動かすのは研究者をホモ・エコノミクス視する短絡思考
  • 社会インパクト論
    • 政府側にニーズがあるのはわかるが、それで評価するのは拙速(インパクトは社会側の受け取り方にも左右される:mRNAワクチンの例)
    • つまり、生み出そうとして生み出せない
    • だったら、地域貢献の方がわかりやすい
  • ドイツの大学への基盤的交付金の構造


  • 大学改革=統制強化という考えは、主要国の中では例外
  • ドイツでは、大学の法人格と経営的自律は無関係
    • 法人格を与えるか否かと予算の減額は別問題のはず
    • イギリスではもともと部局自治の伝統だったが、今は大学としての一体的行動が求められるようになり、学長などの経営陣の発言力が強まり、全学的な経営管理が強化された
    • → 政府から大学への権限委譲・学内での経営管理的統制の強化・競争の促進(直接統制から間接コントロールへ)
  • NPM:現場の裁量拡大+大学の統制は目標管理で行う
    • 達成の手段は問わない(終わりよければすべてよし)
    • 現場組織を市場競争的な環境に置く
    • 執行部に企業風のマネジメントを導入する(上意下達色の強い意志決定構造・内部統制の仕組みを設ける)
    • つまり、規制緩和であり、市場メカニズムを使った分権化
    • 日本では成功したとは言えない:規制緩和的な施策が十分に実施されなかったため
  • ドイツでは、学位プログラムの新設は大学の権限、質保証は事後の大学認証のみ
  • 大学はインプット・アウトプットに機械的な相関がない
    • 時間をかければ教育・研究の質が高まるわけではない
    • 個々のユニットの独立性が高くなる、結びつきはフラットで緩やか、構造が斉一的な企業とかなり異なるのに、同様の体制を求めてもうまくいかない→事業部制の方があてはまる
  • ドイツは目標管理という点ではおなじなのに、大学へのコントロールが違う
    • 大学は4年単位で戦略計画を策定し、政府と業績協定を結ぶ
    • 業績協定に記されるのは、大まかな指針のみ
    • 業績協定の目標には質的なものが多い(○○を実現する、○○を目指す)=方向性を幅広に表現する
    • 協定には目標しか記載しない(取り組み方は問わない)
    • 協定は選択的=大学が重要と見なす目標だけを対象とする ⇔ 日本は全ての活動を書く
    • 厳密な検証ができない以上、厳密な応報はできない


  • 自由と規制の矛盾を解決する方法は自己規律しかない(専門家集団に適したコントロールのあり方)
  • ドイツでは自己認証、自らの学位プログラムの質を壬生から審査する
    • 学内に独立色の強い審査部門を設ける ⇔ 学長室に質保証の専門家チームを置いて自己認証の業務を進める
    • お手盛りを防ぐため、システム認証、自己認証がきちんと作動しているかの審査がある
  • 大学コンロロールの類型化
    • クラークの三角形:国家統制(許認可・行政指導)、市場メカニズム(顧客獲得)、教授自治(合議的意思決定)
    • イコライザー論:大学コントロールを5要素に分解し、その強弱の組み合わせで記述する(国家規制・教授自治・外部統制・経営管理的統制・競争の5つ)


    • 今の日本の特徴
      • 法人化の規制緩和が不徹底に終わり、国家規制が強い
      • 大学のアクター化に向けて経営陣の権限を強化したため、経営管理的要素が強い
      • この反動で、教授団の合議的意思決定は交代
      • 外部ステークホルダによる統制は、経営管理的統制の陰で強くならない
  • 高等教育で市場競争が生じるという想定自体に無理がある
    • 競争自体は大きな役割を果たすべき
    • 競争環境なしに大学の自律を拡大するのは無意味、競争に対応するための自律を与えずに大学間競争を促しても意味がない
    • 今の競争は、公的資源を巡る競争
    • 競争は多元的にであるべき=優劣を定める物差しが複数あり、それぞれの物差しで複数の評価が並立する競争
    • 大学自らの意思で、選択と集中を行うことが大事
    • 多元的な競争の中で、大学は独自性を強め、選択と集中は大学間ではなく、大学内部で行われる