2016/04/19

「大学組織と教育組織」『IDE現代の大学教育』No.578,2016,2-3

金子元久「大学組織と教育組織」
  • 学部は意思決定の基本単位・教員所属・学生所属の三位一体組織。
  • 国際的には,大陸欧州の学部型と,英米大学のデパートメント型。
    • デパートメントは教員組織,教育はプログラム単位(デパートメント直結でない)
    • 日本は自己完結性が強い独自の特徴がある。帝国大学が分化大学で構成されたため。
  • 学部型の長所:管理運営の安定(=意思決定の移譲・参加),教育への積極的参加など
  • 学部型の短所:学術体系で規定される知識と学生が必要とする能力がずれる。結果として,専門知識が卒業後に意味を持たない=教育目標・教育方法の設定が曖昧になる。教育課程の柔軟な編成が困難→環境・政策・国際学部。
  • 社会的な需要を基礎として成り立つべき教育機能が,教員組織が固定化されることで需要に応じられなくなる。→ 教員の帰属組織と学生の帰属組織を固定的・限定的なものから間接的・開放的なものへする必要がある。(教教分離)。
  • 教教分離の目的は,3Pに基づく教育プログラムの確立にある。
  • 教育プログラムや学位プログラムが多用される割に,正式な用語でなく,長期的に用いられる標準用語の整備が必要。

徳永保「学位プログラム制の導入提案に至る経緯とその後」
  • 学位プログラムへの移行が必要な背景は,大学の教育研究体制を学問の進展に応じたものとし,国際的な大学間競争に耐えられるようにするため。
  • 設置基準に「一の専攻に限って専任」という規定があった
  • 大学が提供する教育の質の保証を効果的・効率的に行うなら,学位プログラム制が最も簡便(なぜ?)。その場合,大学全体の教員数や施設面積を公的に担保する仕組みはあっても,具体的なプログラムに関する条件整備保証は大学の責任に委ねられるべき。→ そこで,教育情報の公表制を導入(=鵜飼作戦)←公的システム(設置基準・認証評価)とともに,学修成果の保証を基本とする教育の質保証を構成する。

湊長博「大学の組織改革 京都大学の事例」
  • 京都大も2016.4から教教分離,41学系,4学域(人文・社会,自然科学,医・薬学,学際)+全学教員部

伊藤眞「筑波大学における学位プログラムと教育改革」
  • 筑波大は,特別入試(推薦・グローバル)以外に,大括り入試を行う。

三島良直「東京工業大学における教育改革」
  • 東工大は教育革新センターを設置,目的は(1)教育の質保証体制の構築,(2)教育能力の開発,(3)教育学習環境の開発
  • (1)系・コースのカリキュラム設計,授業の設計,シラバス作成の基準策定,達成度評価手法の確立,海外有力大学との教育ベンチマーク実施
  • (2)教員・職員・TA研修,海外大学チーム招聘による英語授業実施方法研修,教育手法開発
  • (3)アクティブ学習企画推進,学習スペース企画運営,ICT活用教育,オンライン講義開発,MOOC(edX)開発
  • Eberly Center,BerkeleyのCTLが,学生の学修過程の多様なデータを収集・分析して,学生の達成度評価のあり方を検討している。
  • 学院長(部局長)は学長指名を2015.4から実現。

芝田・高橋「九州大学の学府・研究院制度」
  • 九州大の教教分離は,教育と研究の組織最適化の矛盾がきっかけ。
  • H11年の学校教育法改正,大学院に「研究科以外の教育研究上の基本となる組織」を置くことが可能になる。
  • 当初は,研究院と学府を1対1でスタート。

田中義郎「「教育最優先」の桜美林大学の仕掛け」
  • 今の時代は,大学とは若者が人生を豊かにするための準備の機会,自己実現のための助走の期間,競争に打ち勝つものではない。
  • 桜美林は教養教育を担うユニバーシティ・カレッジ,First College(基盤教育)を発想。ユニバーシティ・カレッジでは,あらゆる学びの基盤としての教養を強化するためIntegrated Core(統合的中核)アプローチを具体化したかった。
  • それには,教職員の自分たちの職責に対する理解と実践が不可欠だが,多くの人がアメリカ教育を経験していない+実践的(practical)と職業的(vocational)を混同している風潮が阻害。

大崎仁「大学運営のメカニズム第2回 大学設置法人」
  • 大学のガバナンスとは大学の管理運営体制のこと。
  • Middlehurst(HEQ 2013.6):ガバナンスの定義は,異なった文脈で異なった解釈が自由なので,慎重に取り扱う必要があるが,それらの解釈は通常,大学レベル・システムレベルの意思決定の構造と過程という意味を含んでいる。
  • → ガバナンス=意思決定の構造と過程 ← 管理運営よりはよい
  • 法人を動かすのは人=法人の機関という概念ができる(=ロボットを動かす装置に対応)。機関は人そものも,機関となった人は,機関の役割・権限の範囲で行動する。意思決定のためには法人を代表する機関も必要。実際はその職につく人(=職員)が法人を実際に動かしている。
  • その結果,意思決定・代表・執行・諮問・監査の順に,
  • 学校法人:理事会・理事長・理事長と理事・評議員会・監事
  • 国立大学法人:学長・学長・学長と理事・経営評議会と教育研究評議会・監事
  • 公立大学法人:理事長・理事長・理事長と副理事長と理事・経営審議会と教育研究審議会・監事
  • 欧米諸国はほとんどが法人格を有すが2パターン:大学自体が法人(大陸欧州)と,大学の管理機関が法人(英米)。
  • ドイツは学長が法人である大学の代表機関,ただし,教授・他の教員・職員・学生の代表で構成される管理機関が学長の選考・学期の制定・予算の決定などの決定権を持つ=遮断としての意思決定構造。
  • アメリカは理事会を法人として,大学の管理運営を委託する。
  • イギリスはpre92は大学自体に法人格。post92は高等教育法人がそのまま大学を管理する。
  • 国立大学法人は,学長が意思決定機関・代表機関・業務執行の統括機関=学長の意思決定と行動を法的に拘束する学内機関は存在しない。