2026/03/07

相原君俊(2025)『組織文化形成メカニズム』中央経済社

  • 文化は他者に対する意見と偏見を持ち,自分の文化はいつでも正しいと考えるため,異文化を受け入れることは大きな文化的挑戦となる(Schein 2016)
  • 組織文化論:80年代に経営学でブーム
    • 組織文化を計画的に変革する組織開発論と日本的経営の成功
    • → 組織の顕在的側面に注目してきた組織論は,組織の潜在的側面を分析して変革の対象とした
    • 組織文化研究は,共有された意味体系としての組織が,学習能力や自己変革能力,メンバー同士あるいは環境との社会的相互作用を通じて,長い間に進化する能力を持っていることを明らかにした(野中・竹内 2020)
  • 組織文化は長期的視点から管理すべき
    • 強い文化=多くの人が文化を共有している
    • 人は群れる:自分と似た価値観・思考パターン・認識の仕方を持つ人が周囲にいると嬉しい
  • 組織文化とは(山倉 1998):メンバーによって共有されている価値・規範・信念
  • 組織部下とは(伊丹・加護野 2003):組織の価値観、人々に共有されたパラダイム、行動規範の共有の意義の3つからなる
    • 価値:人が組織内で何に価値を置くか、何が大切で何が大切でないか
    • パラダイム:認識と思考のパターン=メンバーが認識・判断・行動に至るプロセスで行われる思考の中の共通項
    • → これらは抽象的でどのようにでも解釈できる → 具体的には行動規範
  • 小原(2007)
    • 機能主義的組織文化論:環境そのものを所与ととらえ,組織の外にある客観的実在物として扱い,外部環境の変化に対して,組織もそれに適応させて受動的に変化し,適応する結果として理解されるもの
    • 解釈主義的組織文化論:環境は組織内部の個々人の間主観的,意識的な相互作用の産物である意味世界,いわば社会的な構成物であり,組織は,組織内部の個々人自らが主体的.自律的に環境に働きかけ,組織内外の環境を可能な範囲で変革したり,創造したりするプロセスに中心が置かれるもの
  • 多くの支持を受ける組織文化モデル(Schein 1989):ある特定のグループが外部への適応や内部統合の問題に対処する際に学習した,グループ自身によって,創られ,発見され,または,発展させられた基本的仮定のパターン
    • 組織文化が他の諸概念と異なる重要な特徴:組織のメンバーによって共有された基本的仮定のパターンとして理解している点
  • 組織文化の4つの特徴(咲川 2018)
    • 構成員によって共有されている、当該組織と他組織を区別する、組織や職場の中に根付いている、意味を持ち象徴となる
  • 本書の定義:組織構成メンバーが組織内で学習を行った結果,組織自身によって創られ,共有された,組織特有の共通の価値観 パラダイム,行動規範をベースとする,意味の解釈 および思考のパターン
    • 組織文化には学習の要素が欠かせない
  • 組織文化の逆機能(伊丹・加護野 2003):思考様式の均質化(思考の多様性を奪い個性を殺した集団になる危険)、自己保存本能(組織の存続より組織文化の存続が目的になる)
  • 現地化成功企業=知識移転と技術移転が優れている
    • → 形式知と暗黙知の両方が伝わることは必須
    • 共通言語とは、言葉だけでなく、言葉+その言葉に付随する暗黙知
  • シンボリックマネジャー(Deal and Lennedy 1982):強い文化を持つ組織で率先して文化を維持・形成する人
    • 多くの時間を、文化の価値管理、英雄、儀式にについて考えることに費やす
  • 日本組織は高コンテクスト文化、組織文化に依存する割合が高い
  • 学習をもたらす組織文化:放任も管理も必要、組み合わせて学習を促進する組織文化を形成する
  • 実践コミュニティ(Lave and Wenger 1991)とは:安定した物理的な場所でなく、実践に参加している人の協働の活動を通じて結び合わされた関係のネットワーク→ 参加者の目標・価値観・位置取りも多様で非公式
    • 実践コミュニティは誕生・成長・死のサイクルがある
    • 実践コミュニティの成功は個人の情熱に負うところが大きい(Benger et al 2002)
  • Lave(2019)の批判:実践コミュニティで高まるのはKnowledgeabilityであり、知識ではない、知識は部分的に切り離された単体の固形物、メンバーの頭の中に部分的にしか存在しない、Knowledgeabilityは他者との関係の中で作られるソーシャルライフと継続した実践の一部である学習が両立して高まる
  • 優れた実践コミュニティでは、メンバーがコアグループ・アクティブグループ・周辺グループの間を行き来する
  • 実践はメンバーが参加する中から生まれるので、メンバーが多すぎると共有をうまくできない(トムソン 2017)
  • 実践コミュニティの構成要素:相互関与・共同事業・共有されたレパートリー
    • 相互関与=意味の交渉プロセス、参加と物象化が相互に作用する中で起こる
    • 意味の交渉プロセス:実践コミュニティへの参加やそこでの対話 非言語コミュニケーションを通じて得た体験を,時間をかけて形に変え,自身のコンテクストを修正するプロセス
    • 意味は既存ではなく、一から構築するものではなく、すべて交渉のプロセス、意味は常に交渉の産物
    • 特定人物による既存の専門知識やマニュアルなど物証化されたものを利用することだけで成り立つ活動では意味の交渉は存在しない、意味が固定かされコントロール下に置かれるなら実践コミュニティではない
  • 実践コミュニティを理解する分析概念:文化的透明性(Cultural Transparency)
    • ブラックボックス=文化的に不透明な人工物
    • グラスボックス=文化的に透明な人工物
      • コーラの瓶を見たことがない人は神聖なものと思うかも
  • バウンダリーオブジェクト:実践コミュニティ間におけるそれぞれの視点をつなぐもの
    • 複数の実践コミュニティが相互に接続することを組織化できる物象化の形=文書・用語など
    • 組織間協働を推進できる
    • ただし、他の実践コミュニティで物象化された人工物を他のコミュニティに持ち込んでも文化的透明性を欠くことが多い
  • 心理的安全なチーム:必要なことを発言したり,試してみたり,挑戦してみたりしても安全(罰を与えられたりしない)と認識されていること(外交的である、アットホームで結束してる,すぐ妥協する生ぬるい職場、ではない)
  • ミクロレベルでの実態を考察しなければ,組織文化の形成を説明することは不可能、実践コミュニティは組織文化との親和性も高く,ミクロのレベルで考察可能、組織文化形成には,学習の共通体験が必要不可欠であり,学習の共通体験を考察するには,実践コミュニティに着目するとよい