欧米では、事実の分析に役立つ知識(教養)や問題解決の道具は標準化されて、エリートの間で共有されている。それは大学・大学院での教育を通じて伝授される。同じ知識・道具であっても、具体的な問題に適用して得られる結論は人により異なる。だからこそ学部の教養教育でも大学院の実学でも、議論が重視される。この知識・道具は実社会での経験で磨かれ、課題解決力へと高められる。根本の部分はエリート層で共有されているので、社内の経営者と社外出身の役員の間でも、経営者と機関投資家の間でも、意見交換が可能である。
一方、わが国の人文・社会科学は欧米のように標準化されておらず、学歴や社会階層との結び付きも弱い。大学で学生が自ら知識・道具を活用することを求められる授業はまれであり、そもそも学生が知識・道具を身に付けずに卒業することに教員も企業も寛容だ。企業人の能力は実践的なものも人格・教養に関わるものも、多くは職場内訓練(OJT)を通じて獲得される。
しかし現在、この仕組みの有効性は減じてきている。第1に、企業が多角化し、企業価値と部門利益の対立が一般化した。第2に、従業員の就業形態や価値観が多様化したため、従業員の利益・やりがいを一つの方向にまとめることが難しくなった。第3に、企業の経営者や従業員に求められる知識・技能が高度化し、知的労働が分業化した。 つまり、同じ会社に勤める人々が同じ言語を話さなくなったため、「下からのガバナンス」があまり機能しなくなった。人事権を持つ経営トップは以前より強大な力を組織内で行使できる。中間管理職の経営者に対する信頼感は低下している。社長の権力基盤が従業員にあるとすれば、その基盤が液状化しつつある。
本稿では、けん制の効いた経営を実現するため、「経営層が知識・道具を共有すること」と「取締役会が権力を分立すること」の2点を提案したい。第1点は「社内の常識は社外の非常識であるから、社外の常識を社内でも共有し活用しよう」ということだ。
ここでの「社外の常識」はいわゆる社会常識ではなく、ファイナンス(金融)、マーケティングや会計のリテラシー(知識)を指す。経理・財務の役員だけでなく、すべての社内・社外の取締役・監査役が一定の知見を有すれば、共通言語で会社の戦略や中期計画を議論できる。そのためには、社内外の取締役・監査役やその候補者に研修を受けさせることを検討すべきだ。
第2点は、社長は絶対的存在ではないと認識し、その言動に他者からの健全な懐疑心が向けられる環境を確保することである。社長を孤独な絶対者にしないために、経営のトップレベルでの相互けん制の仕組みが必要である。そして、権力分立の責任を負うのが社外取締役を含む取締役会である。社外取締役は助言にとどまらず、「監督」機能を果たさなければならない。
2015/09/03
2015/07/28
「アカデミック・カレンダーを考える」『IDE現代の高等教育』No.553,2013 8-9月号
- クォーター制は欧米教授陣をサマースクールに呼べる点がメリット(給与が9ヶ月間なので)。
- 早稲田では,4月初旬に初めて6/7頃に終了する。3Qは9月下旬に始まり11/23までに終わる=オセアニアのサマースクールに行ける。
- 筑波大学は75分×10週で1単位(75分を90分計算)。
- 高知工科大は,月木・火金をセットにしている。全学共通科目・教職科目などの共通授業に水土(=セメスター科目)をとっている。
- Oxford,Cambridgeは3ターム制,各8週間(8週が限界なほどの学習量あり)。
- UCL,バーミンガムなども3タームだが,各10〜12週。
- 春秋を12週,夏を5〜6週にする,ターム中に1週のReadhing weekを置く大学もある。
- アメリカは原則15週×2のセメスター。1時間授業を15週受けると1単位授与,120単位で卒業。
- アメリカで10週×3学期のクォーターもある。1学期が2/3なので,卒業には1.5倍の180単位が必要。
- アメリカの今の関心は3年制学士課程,学費高騰を緩和するため。
- もう1つの関心は,着席時間でなく習得能力判定モデル(comeptency-based model)の採用。筆記試験や課題遂行で修得が証明されれば単位授与で,標準修業年限よりも短い卒業を可能とする。
- 1単位45時間は原則。講義及び演習は15~30時間の範囲で大学が授業時間を決められる。=最低でも1単位15時間確保せよ。
- もともと昭和31年には,「毎週1時間15週の講義を持って1単位とする」=15時間(必要授業時間)と15週(授業期間)がセットで規程。
- 昭和48年改正でこれが切れる。(この時10週または15週が導入,3学期制対応)。
- 平成3年改正で,明らかに効果がある特別な必要のある科目は10・15週より短い期間も可能に。
- 平成25年改正で,特別がとれて弾力的授業回数が可能になる。
- 22条では異年間の授業期間は35週を原則とする(5週の試験・補講期間あり)。
2015/07/20
稲垣佳世子・波多野誼余夫(1989)『人はいかに学ぶか』中公新書
- 学校は現代社会の分業体系の一部であり,知的生産は一握りの人が行い,大多数は知識の消費者としての位置づけを与えられ,教え手を通じて知識を吸収するに過ぎない。大多数の人は伝統的な学習観を信じ,これを疑っていない。
- 現実的必要に駆られて外国語を学ぶ時は,意思の交換という目標の達成へ向けて,粘り強く活動が続けられやすい。これが,効果的に外国語を学ぶのに寄与している。卒論のためにデータを分析するなど,学校教育でも,現実的必要が自然な形で生じるようにすれば,学習が効果的に進むはずである。
- 現実的必要から学ぶ=教えてなしでも学べる,正誤の確認情報が与えられなくても学べる(フィードバックがすぐあるため)。
- 必要から学ぶ=(1)必要が学び手自身が日可決だと実感したものである,(2)必要によって創り出された目標とそれを達成する手段として学ぶことの間に本質的に切り離せない関係がある(小遣いのために漢字を覚えるは入らない)。
- 実験結果の予測討論をした群としない群:観察後にどちらも正しく答えられるが,その理由の説明は討論群の方が十分にでき,観察群は十分できない。また,観察で得た質量保存の原理を他の場面に応用する点でも,討論群が優れていた。
- 理解のためには,新しく入ってくる情報を杞憂の情報と関連づけて,そこに整合的関係を見出すことが必要で,その整合的関係の発見には多くの心的努力が要求される。情報処理に心的エネルギーを使い切っている状態では,理解の達成に力を振り向けられない。つまり,理解を伴う学習は時間がかかる。理解には心的な余裕が必要。
- 人が早く学ぶのは,言語や数の獲得にほぼ限られる。エキスパートになることは,ゆっくりと生じる過程であり,熟達の結果,豊かで構造化された知識を持つようになって初めて効率的な学習が可能になる。
- 集団討論をすると,知的興味が高まり,討論を経て事件を観察するとより深く学べることが確かめられている。人が有能な学び手であるためには他者の存在が必要で,その人は関心を共有しながら視点が異なる人がよい。
- よく定義されていない問題を解くには,知識が必要。後から言われればもっともだという制約条件を補うのが知識。
- 日常生活の中で獲得される概念的知識は,素朴概念・誤概念・誤ったもメンタルモデルになりやすい。その原因は,理解よりもうまくできることの方に価値がおかれやすく,日常生活では現在の生活を維持することが第一義的に目指されるからである。そのため,失敗などの無駄をできるだけ避けようとする傾向がある。
- 学校における討論は,日常生活の活動を超えて理顔を深める働きがある。それは,日常的な以心伝心のコミュニケーションではなく,なぜという問いの答えを見つけることが自然な形で進められるためである。
2015/07/07
進研アド「動き出す入試改革~“多面的評価”の第一歩」『Between』2015, 6-7月号
下村大臣
- モノサシの公平性,客観性ではなく,大学にとってプ ラスになる学生を入学させられるかどうかが大切なはず。
- 姿勢としては全員を面接するぐらいの気概を持って取り組 んでほしい。ハーバードやオックスフォードなど,世界の一流大学ならどこでもやっていること。
- 遅くとも「大学入学希望者学力評価テスト」が始まる2021年度入試の時点で,全国立大学の入学定員の半数以上がAPに基づく新型の入試で入学するという状態を期待します。
- 今後のAPで各大学が求め力=「真の学力」:(1)主体的に課題を解決しようとする能力,(2)クリエイティブな企画力,(3)コンピュータやロボットで到達できない感性・人間性。(?)
- アメリカの大学は開放型(Open,CC向け),一定基準以上入学型(Selective,SATスコアが一定以上,州立大),競争型(Competitive,少数特別者選抜,有名私大)の3種類。
- アメリカは書類審査 ≠ 入試,選抜は職員が行う(大学院は別),随時募集
- エッセイ=志望理由書+過去の取り組み+テーマ付与型小論文
- 志願者がAPに合致するかは,専門職員が話し合う以外に判断できない。
- 東大・京大とも,基礎学力を重視した上で推薦入試。
- 東大の推薦入学者は,別プログラムで学ぶ。京大は同じプログラム。
2015/06/16
「第3期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方について」
- 大学に期待される取組の方向性
- 大学教育については、大学教育全体としてのカリキュラム・マネジメントを確立するとともに、主体性を持って多様な人々と協力して学ぶことのできるアクティブ・ラーニングへと質的に転換する。大学入学者選抜についても改革を進める。
- 大学は、教育内容と教育環境の国際化を徹底的に進め世界で活躍できるグローバル・リーダーを育成すること、グローバルな視点を持って地域社会の活性化を担う人材を育成することなど、大学の特色・方針や教育研究分野、学生等の多様性を踏まえた効果的な取組を進めることが必要。
- 第3期運営費交付金の配分方法
- 各国立大学の機能強化の方向性に応じて、その取組を支援することを目的とした「機能強化促進係数」により一定の財源を確保した上で、改革に積極的に取り組む国立大学に対して運営費交付金を重点配分する仕組みを導入する。
- 学長がリーダーシップを発揮しながら、教育研究組織や学内資源配分等の見直しを促進するための仕組みを導入することとし、現在の区分でいう「一般運営費交付金対象事業費」の中に、「学長の裁量による経費」を新たに区分する。
- 重点配分
- 3つの重点配分以外に,高等教育に関する政策課題のうち国立大学に共通する課題等に関する重点支援として、例えば、新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた大学教育や大学入学者選抜の改革等のように、現在又は今後新たに生じてくる国立大学に関る 政策課題を推進する取組や、附属病院の機能強化、共同利用・共同研究拠点の機能強化などといった国立大学に広く関わる取組を支援する枠組みを設ける。
- 予算配分の決定方法
- 各国立大学法人が、取組構想の内容に応じて、中期目標期間を見通した取組の成果を検証するため、原則として測定可能な評価指標(KPI)を独自に設定するとともに、支援の観点ごとに文部科学省が提示する複数の指標から関連する指標を選択し設定する仕組みとする。
- なお、評価指標は、各国立大学法人独自の指標を精選して設定することを主とし、文部科学省が最低限加えるべきものとして提示する指標を各国立大学法人において選択し設定する。また、各国立大学法人独自の評価指標については、その妥当性を裏付けることができるよう、各国立大学法人において比較すべき指標(ベンチマーク)や客観的な根拠を用意する。
- 学長の裁量による経費
- 各学長がこの経費を活用した教育研究活動や業務運営の改善を行うに当たっては、例えば、大学全体の長期ビジョンの策定、IRの充実、学内予算や人的資源の把握と分析、研究成果等も含めた積極的な情報公開、改革を進めるための新たな仕組みの導入、障害のある学生や外国人留学生等に対する支援の充実、施設・スペースの有効活用、ステークホルダーからのニーズに対する運営への反映、柔軟かつ機動的な教育研究組織を構成する教員組織の編成、外国人・女性・様々な経験を持つ教員な 多様な教員構成、世代別教員構成を考慮した若手教員の雇用促進・テニュアトラック制などの人事給与システムの改善、法令遵守や研究健全化の取組、共同利用・共同研究の仕組みの活用などの観点が重要であり、これらを踏まえた取組を行うことが考えられる。
- 特定研究大学(仮称)
- 産業競争力会議から提案されている「特定研究大学(仮称)」については、グローバルに競争する世界水準の研究大学の形成を図る制度として考えられているが、制度の在り方なども含め大学関係者や有識者の意見も踏まえながら検討を行うことが望まれる。
2015/05/06
岡田昭人(2014)『世界を変える思考力を養うオックスフォードの教え方』朝日新聞出版
- ジェントルマンは,高い教養と礼儀・優しく謙虚に加えて,高いプライドと知的武装・無言の圧力・相手に付け入るスキを与えないを備えた人。
- オックスフォードの人に共通する6つの能力,前3つが人間関係能力,後3つが個人能力
- 統率力:自然に人の上に立ち,他の者をリードする力
- 創造力:模倣を繰り返し,そこから斬新な発想を生む力
- 戦闘力:相手の意思を尊重しながら,結果的に自身の主張を通す力
- 分解力:問題解決の近道として問題の所在を分析する力
- 冒険力:試練や苦難を糧として邁進する力
- 表顕力:自身を深く印象づける力
- チュートリアルの進め方
- 読んできた文献に関してどのような新しい知識が得られたかについて,10分程度説明する。読んだ内容ではなく,読んだ文献からどのような知識を得たかを簡潔に話す。
- 与えられた課題について質問を受ける。
- この言葉の定義は何ですか?
- あなたがこのように考えた根拠は何ですか?データはありますか?
- この記述はあなたの意見ですか?著者の意見ですか?
- 起こったことばかりが書いてあり,あなた自身の解釈や批判的な議論がなされていないのではないか?
- まとめの10分,チュートリアルで何を得たか,今後どのような展開があるかを話し合う。討議ではなく,次の目標に向かって意見交換する。
- やらなくていいことを明確に指示することで学習がスムーズになる
- レポートを書くときに情報を集めすぎない,基本文献は5冊以内
- 発表するときに準備したとおりに進めなくとも構わない
- 教える際の原則
- 紙に書かせる=知識を取り込む習慣を身につける
- 自分の言葉で語らせる=一定の時間を与えて,自身を持って話す雰囲気を保つ
- 適度な休憩を入れる
- 学ぶ内容を限定する=重要な物を3つ程度に決める
- 既に知っている知識に結びつける
- 楽しく意見をぶつけ合う技法
- お互いにしっかり向きあう,批判することは議論を深めること,ゲーム感覚で楽しむの3つを最初に伝える
- 相手の話をよく聞いて受け止める,話を同意部分と非同意部分に分ける,非同意部分のみを批判する,批判には必ず対案を述べる
- ノブレス・オブリージュ:社会的地位の高い人が高報酬や名誉を享受することが許されるのは,大衆を正しい方向へ導き,かつ自己犠牲をいとわない義務や責任を負う限りである。=3つの特質を持つ
- 社会全体に対する自分の役割と責任をしっかりと認識している
- 誰に対しても分け隔てなく公平である
- 寛大かつ忍耐力がある
- OXONではどのような事実もまず疑ってみるという批判精神を持つことの大切さを教える(創造力はゼロから生まれる)。
- 創造力を養う方法
- 情報を一元化したストックノートを持つ
- とりあえず書き出し,人に説明してみる
- 仕事や作業は,区切りのいいところではなく,次の出だしで終わる
- 判断は,日々更新される情報をいかに効率的に入手・分析するかのスキル。決断は価値観や信念などの人の心が選択する際のネック。
- 人は対立したときに5つの態度を取る
- 競争モード:相手を犠牲にして自分の利益を優先して解決,これには圧倒的な差をつけることが必要
- 受容モード:自分の要求を減らして相手の要求を増やすことで解決,多くの人の意見の長所を見つけて取り入れることで議論を活性化させる力が必要
- 回避モード:その場での解決を避けて,対立すること自体を回避して解決,相手のニーズと異なる点に注意をそらす情報力・転換力が必要
- 協調モード:お互いの立場を尊重し,協力しながら解決,目標の一致を確認して努力する
- 妥協モード:お互い妥協して部分的に取り入れることで解決,同上
- 哲学を持て,仮説を立てろの2つが問題を発見して本質を見極める上で必要な力。
- 分解力は,情報を収集し,仮説を立てること,その後で解を導くのが基本プロセス。
- チュートリアルでは,だから何?本当にそうなのか?の2つが最も問われる。So What?,So Why?
2015/04/13
林正史(2015)『英国の大学に学ぶ: 世界標準の学習法とエッセイ論文の書き方』海象社
- 知識を内面化する=知識の獲得+知識を自分の目的にために活用できるようになること。
- エッセイ=情報を収集・分析し,アイディアを創出しながら,自分自身の知識を獲得した上で,それをもとにして自分自身で考え抜いた結果としての独創的見解を明らかにすること。
- コンテントワード=何について答える必要があるのかを示すもの,コマンドワード=どのように答えなければならないかを指示するもの。
- I the British car industry declining? Discuss!
- コマンドワードの例:discus, examine, explore, evaluate, justify, describe, illustrate, compare, assess, define, explain the reason, show your evidence
- 質問の真意はブレーンストーミングで理解する。
- 3000 words のエッセイで,5~6冊の文献を使う。
- エッセイの構成は,序論・本論・結び(1:8:1),本論はサブトピック3程度。
- パラグラフは,トピックセンテンス・ボディーセンテンス・コンクルーディングセンテンスで構成する
- トピックセンテンス:見解を表明する,扱うトピックの焦点や要点を示す,扱うトピックの方向性・範囲・概略を示す
- ボディーセンテンス:主張を裏付ける論拠を示す,トピックセンテンスを別の表現で分かりやすく言い換える・詳しく説明する・補足説明をする,事実や統計で具体例を示す
- コンクルーディングセンテンス:パラグラフの内容を要約する,トピックセンテンスを言い換えで再確認する,結論や解決法を示す,影響や残された問題点を指摘する
2015/02/10
丸野俊一・生田淳一・堀憲一郎(2001)「目標の違いによってディスカッションの過程や内容がいかに異なるか」『九州大学心理学研究』2,11-33
ディスカッションにおける展開パターン
- 階段型:いろいろな視点・話題が順に出され,展開と共に,それらが関係づけられることにより少しずつディスカッションが深まっていく。
- 冗長型:いろいろな視点・話題は出されるが,視点・話題が相互に関連づけられることはほとんどなく,深まらない。
- 足踏み型:いくつかの限られた視点しか出されず,その視点を行ったり来たりしながら展開するが,深まらない。
- ジグザグ型:いくつかの視点を中心に,時には一つのトピックについて深まるものの,もとに戻ったり,また他のトピックに移ったりというようにジグザグに展開していく。
- 拡散一収束型:いろいろな視点が出され拡散していくが,最後には収束に向かつて深まっていく。
- 拡散型:いろいろな視点が出され拡散していき,それぞれの視点の深まりは見られる が,収束させることができないままで展開していく。
- 螺旋型:いくつかの視点を行ったり来たりするものの,次第に深まっていく。
2015/01/28
天野郁夫(2007)「21世紀の高等教育システム構築 : トロウ「理論」再考」『21世紀型高等教育システム構築と質的保証 : 第34回(2006年度)『研究員集会』の記録 : 基調講演』
- ヨーロッパにはマス化した高等教育が機能するための3要件がない=私学セクターがない。
- 高等教育機関の多様性
- 公的な財源以外の収入源の問題
- 社会の要求に柔軟に対応できる機関の不在
- アメリカの独自性とは,
- システム全体に共通の基準を維持し監視する中央機関がない(国家が弱い)
- アメリカシステムが志向しているのは学者集団(生産者)ではなく,学生(消費者・ユーザ)である
- 日本はヨーロッパ型国立とアメリカ型私立を持つ,説明しにくい国。
- 公立であるがゆえに安い授業料で多様な教育機会を誰にでも提供する,オープンドア型のコミュニティカレッジは,アメリカ高等教育の一大発明。しかし日本ではユニバーサルかの中心的担い手にはなり得ない(私学の国庫助成が少ない)。
- 日本は国立と私立の間でスタンダードを保つために様々な制限を加えてきた。ヨーロッパモデルから出発した帝国大学モデルを,私学にも模倣することで単一性の圧力をかけた。その後で,戦後になりアメリカモデルに移行した。
2015/01/27
ディーフィンク,L.(2011)『学習経験をつくる大学授業法』玉川大学出版部
- 意義ある学習経験は,プロセスと結果の2つの領域を持つ
- プロセス:(1)エンゲージ:学生は自分の学習にエンゲージされた状態にある,(2)高いエネルギー:クラス内のエネルギーが高いレベルにある
- 結果:(1)意義があり長期に及ぶ変化:科目の結果,学生に意義ある意識変化をもたらし,科目履修後・卒業後もその意識変化が続く,(2)人生における価値観:授業終了後も学んだことが個人の生活に影響を与え,その後の人生において価値観を形成する可能性を持つ。
- 授業の質がよくなければ,カリキュラムがよくても学習経験の質が落ちる。
- ドリーミングとイメージング:学生は指示したことは何でもこなし,どんな文献も読みこなし,どんなレポートも作成でき,期日も守り,できばえも完璧である時,あなたな学生にどんな影響を与えたいと思うか。科目終了後の1・2年後,受講者と非受講者で違うところがあるとすればどんなことか。教えた学生にはっきりと影響を残したものは,具体的に何か。
- 学んだことを実生活で活用したり応用したりできるようになっている。
- 世の中をもっとよくするような道を見つけている。
- 強い好奇心を持つ。
- 生涯にわたって学び続ける。
- 学びの楽しさをつかんでいる。
- 型にはまらない問題解決能力を持っている。
- 批判的思索者として成長し続ける。
- 知識労働に必要な能力(Gardiner 1994,Redesigning Higher Education)
- 人柄,責任感,信頼性
- 首尾一貫した品格の備わった行動力
- 読み書きのコミュニケーション能力
- 協調性とチームワーク
- 判断力と問題解決力
- 自分と異なる人をありのままに受け入れる能力
- 環境変化への適応力
- 常に学ぼうとする向上心と熱意
- 授業の4要素
- 科目内容に関する知識:大学院で研究する課程で身につける
- 授業デザイン:ごく少数の教員しか身につけていない
- 学生との意思疎通:講義,討論指導,学生相談,メールでのコミュニケーションなどの社交性・社会常識
- 授業の運営:授業内の様々なことを準備し,組織だって行うこと。課題を用意する,試験を速やかに返却する,評価基準を明示するなど
- 前2つは授業の開始前に,後ろ2つは授業開始後に起こる
- コースデザインは教員の抱える問題を解決する可能性がある
- 学生の授業準備:学生が課題をやってこない
- ペナルティを重くする
- 学生を励ます
- なぜその課題が必要かを学生が理解できる設計にする
- 学生の飽き:テーマに飽きてしまう
- 講義力を高める
- 先端的研究をもっと紹介する
- 講義に能動的学習を取り入れる
- 身につかない知識:試験をしてもすぐに忘れてしまう
- もっと良質な試験を出す
- 学期間で補習授業を開講する
- 学んだことについて体験できる授業に設計し直す
- 優れた授業とは
- 意義ある学習に学生を挑戦させる
- 能動的学習形態を用いる
- 科目・学生・教育や学習の面倒見のよい教員である
- 学生とよく交流する教員である
- フィードバックやアセスメント・採点のための優れたシステムを持っている
- 意義ある学習のカテゴリー
- 基礎的知識:説明や予測を可能とする科目や関連する概念の十分な理解を深めること
- 応用:(1)技術:ライティング,議論,プログラミング,実験機器の操作,(2)複雑なプロジェクトの管理,(3)思考の一般的概念:考える方法を学ぶこと(分析して評価する批判的思考,新しい方法を見つける創造的思考,質問に答えたり問題を解決する実践的思考)
- 統合:(1)学際的学習:2つ以上の専門分野から問題を見る方法を学ぶ,(2)ラーニングコミュニティ:外部の人と学ぶ,(3)別の生活領域とつなぐ:現場で作業する
- 人間の特性:(1)自分について学ぶ,(2)他者について学ぶ,他者についての広い概念を持つ
- 関心を向ける:(1)感情・関心・価値の変化に関心を向ける:学生に興奮してほしい,好奇心を持ってほしい,そのために現象,思考,自分の研究,クラス内の他者,学習の過程に関心を向ける(?)
- 学び方を学ぶ:(1)どのように優れた学生であるかを学ぶ:深いアプローチで学べること,(2)知識を構成する:コンセプトマップを活用する,(3)自立的学習者になることを助ける
- コースの作り方には2つある。1つはトピックリストアプローチ,教員の関心かテキストの目次からトピックを作り,数回の試験を加えて授業にする。早く簡単にできる。もう1つは,統合的アプローチ,線形モデルではなく,学習目標,授業・学習行動,フィードバック・アセスメントを統合的に決める。
- 統合コースデザインのステップ
- 重要な状況要因(前後関係,外部集団の期待,科目の性質,学習者の性質,教員の性質,教育上の課題)を確認する
- 重要な学習目標を確認する
- 適切なフィードバックとアセスメントの手順をつくる(将来自己アセスメントできるようにする)
- 効果的な授業・学習行動を選択する
- 主要構成部分が統合されていることを確かめる
- 授業の主題の構成をつくる
- 教授戦略を選ぶ・つくる
- 全ての学習行動の枠組みをつくるため,授業構成と教育的な戦略を統合する
- 成績評価システムを開発する
- 起こりうる問題点をつぶす
- 授業シラバスを書く
- 授業と教え方の評価を計画する
- 意義ある学習目標の動詞
- 基礎的知識:記憶する,理解する,明らかにする
- 応用:使う・批判・運営・解決・評価する,判定・想像・分析する,計算・創造・コーディネートする,決める
- 統合:繋げる,〜の間の相互作用を認識する,関係する,比べる,統合する,〜の間の近似性を認識する
- 人間の特性:自分自身を〜と見るようになる,他者を〜と見なして相互作用するようになる,他者を〜の用語で理解する,こうなろうと決める
- 関心を向ける:〜に興奮する,〜する用意がある,より興味を持つ,〜に価値を認める
- 学び方を学ぶ:効果的に学ぶ用意がある,学ぶ題材を決める,〜の情報のもとを見極める,〜に関する知識を積むことができる,有用な質問群の枠組みをつくる,〜の学習計画をつくる
- 統合コースデザインで授業は本当に変えられるか?→既に実例があるので可能。
- 自分にもできるのか?→全部ではなく,どこか少しだけ変えればよい。
- 変革のレベルが高まればリスクも高まる。若干のことをする,短い活動をする,活動に制限を設けることでリスクは小さくなる。
- 教員が直面する問題:(1)自分たちの習性で動いてしまう,(2)教授法の学習や授業の準備に時間を割かねばならない。
- 授業を変える必要条件:変化の必要性の認識,励み,時間,情報や知識の資源,自分が行う授業について理解している学生,承認と報償
- 授業に関する20%ルール:週3時間の授業に平均6時間準備や評価に使う=1科目週9時間=45時間の20%。ゼロから教える授業は通常の2倍かかる。
2015/01/26
渡邉浩一(2013)「「知識基盤社会」における「学士課程教育」 : 基本概念の批判的検討」『京都女子大学現代社会研究』16,19-34
- Undergraduate=第一学位未取得者。学士課程という訳語は,一歩進んだ解釈。
- 学位はもともと「教授資格」に認定に関わるものだった。第一学位はまず自由七科のカリキュラムに取り組む学生の学位認定だった。
- 学部教育はUndergraduateの適訳とはならない。日本の学部教育は,学士教育の意味に加えて専門分野別の教育という意味がある。
- 「知識社会」とは20世紀中葉にアメリカ で新たに登場しつつあった社会を名指すために用いた言葉。1990年代半ばのEU経済の長期的な停滞を背景に,OECDの科学技術政策担当者たちによって導入された「知識基盤経済(knowledge-driven economy,knowledge-based economy)」という考え方をテコに,「各国の政策に影響を与えるほどの新しい知識社会論へと飛躍させ」られるに至った(阿曽沼)。
- 「ポスト工業社会」なり「知識社会」 なりといった概念は,分析のための図式として導入されたもので,目指されるべき社会像として安易に規範化されるべきでない。知識社会概念が,政策推進のための規範として用いられている。
2015/01/25
Martin Davies "A Model of Critical Thinking in HigherEducation"
- Critical thinking skills
- Lower-level thinking skills (“Foundation”)
- Interpreting
- Identifying assumptions
- Asking questions for clarification
- Higher-level thinking skills
- Analyzing claims
- Synthesizing claims
- Predicting
- Complex thinking skills
- Evaluating arguments
- Reasoning verbally
- Inference making
- Problem solving
- Thinking about thinking
- Metacognition
- Self-regulation
- Critical person
- critical action
- critical self-refrection
- critical reason
2015/01/16
Five top tips for new department heads – and they’re not what you expect
- 職位の権限を使って教員を管理しようとしても無駄。
- 変化は避けられないということを受け入れて,積極的な対応をする。
- 他国の経験に学ぶ。
- 他学部の教員・学生と交流する。
- 大学外の世界の人と交流する。
http://www.theguardian.com/higher-education-network/blog/2014/sep/01/university-head-of-department-five-top-tips
2015/01/13
土谷茂久(2005)『大学の組織戦略』霞出版社
- 環境変化が重要で質的変化を意味する場合は,組織の結合をタイトにし,トップダウンで分析型の戦略決定を行うべきだという。これは大学の本質に反するもので,成功した事例はほとんどない。
- 教授会は責任をとるものではない。
- 大学組織の特徴は(1)専門性であり,ますます細分化していく,(2)自律性の増大は専門の間の距離がますます開いていく,(3)知識の探求に終わりがない,(4)知識が過去からの思い遺産を持っている(クラーク)。→ 組織が異常にフラット,結合が緩やか,多数の専門の小部屋が並んでいる状態 → 管理が分散,意思決定の権限が細断。目標が広く曖昧であるために,目標の達成も失敗もあり得ない。
- 大学組織の特徴は,(1)部門間にまたがる結合は個人ベース(それが学問の自由という観念で補強されている),(2)教員は遅れた・混乱したフィードバックに基づいて行動する,(3)合意形成が困難なので,決定は極力あいまいでさまざまな解釈が可能な形で行われる,(4)学科が支配的な単位として際立ち,学科は研究を支配的な活動と位置づけ,研究は個別的で孤立した仕事・技術からなる(ワイク)。
- 学長の直面する4つの曖昧さ,(1)目的の曖昧さ,組織の目標が何であり,行動はどう正当化されるか,(2)権限の曖昧さ,学長は何ができるのか,(3)経験の曖昧さ,さまざまな出来事から何を学ぶべきか,(4)成功の曖昧さ,どういうときに成功したと言えるか,どのように評価するか。
- 日本の私立大学:(1)理事長・学長が,多様な専門的技術や知識を全て理解することは不可能で,教育の目標も不確定なため,個人の業績を評価する明確な基準設定が困難,(2)よって大学はルースカップリングにならざるを得ない,学長が行使できるコントロールは資金と人事案件の最終承認のみ,(3)教育・研究面の決定は委員会制度を通じて行われ,権力が広く分散されている=経営面の権力とアカデミックな権力は分離されている,アカデミックな決定は行政的に行われず,資源が所与であるため個別最適の傾向がある,(4)教員個人は委員会制度で同僚のコンセンサスを必要とするために,イニチアティブをとることがまれ。
- 私立大学の本質:(1)私的発意:建学の精神が欠如するとその大学は正しいあり方を示せない,(2)自主性:私大のあり方に関する自主性,教学に関する自主性,管理に関する自主性の3つがある,(3)公共性:私益追求の具に用いてはならない,(4)強固な学問共同体性(?),(5)非国家的性格:非国家的性格の主張が許される,そのために国際性を有する(相良)。
- 大学の自由=学問研究の自由と教授の自由(研究成果発表の形態をとるところ),この2つの自由を学問の自由という。
- ルースカップリングの7つの特徴(ワイク)
- 環境に生ずるここの些細な変化に対して組織が反応しなければならない可能性が低下する。
- 敏感な感応機構を提供する = ルースカップリングでは,多くの独立した感応システムを保持する → タイトな組織よりも良く環境を把握できる ⇔ 気まぐれな反応をしやすいという欠点あり。
- 局部化された適応にとって優れたシステム。標準化が必要な場合に短所になる。
- 多くの変革と斬新な解決策を保持できる。
- 障害の局地化に優れたシステム ⇔ 欠陥のある要素の修理が困難。
- 行為者による自己決定の余地が大きい,自己実現の機会が多い ⇔ 抵抗が高まる。
- 調整の費用が少ない,運用が安価 ⇔ 資金配分について非合理,変化の手段に用いることができない
- プロセス型戦略論の有効性:曖昧さへの対処,偶発性への対処,戦略の柔軟化,イノベーション創発の促進,現場の戦略化 ⇔ 分析型戦略論
- ルースカップリングでは,組織と構成員が解釈枠組みの「共約性を持つこと」が必要。← もともと共約性は低い。→ 組織のメタ学習の促進が必要。
- 解釈枠組みは,環境の分析可能性(分析可・分析不可)と環境に対する態度(受動で実験回避・能動で実験遂行)の2つによって,4つのモードに分かれる(Daft and Weick 1984)
- 受動・分析不可:傍観:知識創造は場当たりで,決定や行動は提携。
- 能動・分析不可:創出:知識創造は実験的で,決定や行動は試行錯誤。
- 受動・分析可能:制約された観察:知識創造は定型的で,決定や行動はプログラム化された行動。
- 能動・分析可能:発見:知識創造は分析的で,決定や行動は論理と分析。
- 個人の知識が組織の知識になるには,個人の知識が共有され正当化される必要がある。しかし,ルースカップリングでは,個人の学習と組織の学習が結びつきにくい。
- ルースカップリングでは,ワイクの論理の想定(何らかの秩序が存在すると仮定すること,出来事間の論理的因果的つながりを埋める方法の1つ,presumption of logic)・原因マップ(論理の想定に基づいて心に描く地図,変数と因果結合でつくりあげた構造,cause map)が学習を可能にする。(?)
- 私学の特徴:(1)ルースカップリング,(2)解釈枠組みが傍観モードに陥りがち,(3)大学・役員・教員・職員の解釈枠組み共約性が低い
- 外部の経営資源をキーポストに導入 = 異質な解釈枠組みを抱える(モードの転換の契機)
- 共約性向上のプロセス:(1)組織学習の源泉は個人学習で,組織の解釈枠組みのモードはメタレベル学習を通じてもたらされる,(2)情報技術が個人の学習を支援し,解釈枠組みのモード変異可能性を高める,(3)その結果,情報技術は組織の学習も支援する,(4)構成員の相互学習の支援にもなる,(5)結果として共約性が高まり,個人的知識が組織内で容易に受け入れられやすくなる。
- 企業経営の手法を取り入れた大学改革は失敗する。大学の意思決定方式を容認した上でのリエンジニアリングが必要。それには,理事長・学長・理事・教職員が組織の特徴を理解して,全員が大学の経営に参加s区している運命共同体意識を持つところから始まる。
2015/01/12
大西忠治(1988)『発問上達法』民衆社
- 発問はなくても授業ができるが,説明なしには授業ができない。発問よりも説明の方が重要と考えられるが,この問題は考えられていない。
- 教材の中にいろいろな回答が可能な部分を見つけて発問化する。「教材にあいまいなところを発見し,そこを発問化せよ。」
- いろいろな発問を組み合わせる:3つの発問
- 動かない発問(こどものゆれが少ない)
- 子供がゆれて教師はゆれない発問
- こどもも教師もゆれる発問
- 説明には3つの構成要素がある
- 問題提示=教材内容の提示(学ぶべきものは何かを示すこと)
- 方法提示=教材の理解方法の提示(どういう順序で考えればわかるのかを示す)
- 判断提示=教師の判断の提示(何が正しいかを教える側が到達した結論を示す)
- 授業の基本スタイルは,問題提示に始まり,方法提示をして,判断提示に終わる。
- 提示は,重要なところを示す,子供の知っていることと関係づける,学ぶ方法を示すことが優れた説明の条件。
- 良い説明をするには,教材をしっかり分析してその教材の本質をつかみ,その本質をどの順序・手続きで学べばよいかを明らかにしなければならない。
- 1指示1行動は原則としながらも,これは多指示多行動ができるための基礎となるべき。
- 発問は思考に働きかける指導言,指示は行動に働きかける指導言,説明はその中間で思考にも行動にも働きかけると考える。
- それぞれには長短があり,自分の技量に応じて的確に選んで授業を構成していくことが重要。
- 発問を補ったり修正する発言を助言という。
- 1時間の授業では,3つ以内の提言を行い,1つの提言に5つ以内の助言を打つ。1つの提言は15分。
- 助言こそが授業づくりの鍵。助言は,解答のためのヒントを与える,子供の思考の方向を示し,そちらへ向けて思考を進めるように調整し・促す。
2015/01/09
グラント・ウィギンズ,ジェイ・マクタイ(2012)『理解をもたらすカリキュラム設計―「逆向き設計」の理論と方法』日本標準
- 多くの教師が,学習ではなく指導に焦点を合わせている。教員は,何をどう教えるかについて考えてしまうが,ここでの挑戦は求められている学習に最初から焦点を合わせることで,適切な指導はそこから論理的に導ける。
- 伝統的設計の2つの誤り:(1)心の中の知的なゴールと切り離された活動をする,(2)目的なく網羅する
- 設計の問い:教室を出るときに何を理解しているべきか?その能力を示す証拠は何か?その結果がもたらされる可能性が最大になるのは,どのようなテキスト・活動・方法か?
- 理解とは心的な構成概念であり,多くの個別知識の断片の意味をとらえるために人の知性が行う抽象化である。
- 知識=諸事実,一貫性のある事実のかたまり,実証的できる主張,正しいor誤り,自分が知っていることを手がかりに応答する。
- 理解=諸事実の意味,事実に一貫性と意味を与える理論,誤りに陥りがちな進行中の理論,程度や洗練さにかかわること,それがなぜか・それが何によって知識になるかを理解している,自分が知っていることを活用すべき時と活用してはいけない時を判断する。
- 理解とは転移に関すること。新しい設定,困惑させられる設定に転移させる能力が必要。
- 理解は即席ではなく,大変な努力をしてやっと得られるもの。
- 理解についての証拠を得るには,転移可能性を喚起する評価を作らねばならない。
- 重大な観念は本来的に転移可能である。「効果的に書く人は,どのように読者をひきつけ興味を持続させるのか」
- 理解の6つの側面
- 説明できる:現象・事実・データについて,一般化や原理を媒介して正当化された体系的な説明を提供する。
- 解釈できる:意味のある物語を語る,適切な言い換えをする,イメージ・アナロジー・モデルを使って理解の対象を身近なものにする。
- 応用できる:多様でリアルな文脈で知っていることを効果的に活用して適応させる。
- パースペクティブを持つ:批判的・複数の視点から見たり聞いて,全体像を見る。
- 共感できる:先行する直接経験に基づいて敏感に知覚する。他の人があり得ない・おかしいと思うことに価値を見出す。
- 自己認識を持つ:自分の理解を形作る・妨げる個人的なスタイル・偏見・知性の習慣を知覚する。何を理解していないかに気づく。
- 端的な一文で答えられない問いは,思考を刺激して探求を引き起こし,より多くの問いを呼び起こす。
- 最良の問いは,重大な観念を指し示して強調するものである。
- よい問いとは,ジレンマを引き起こし,自明の真実や正当と認められた真実を覆し,私たちの注意に不調和をきたさせるものである(ブルーナー)。
- 本質的な問いの本質的とは,(1)人生を通して何度も起こる重要な問いである(科学と宗教は両立するか,芸術は好みか原理か),(2)学問における核となる観念と探求を指す(健康的な食事とは何か),(3)核となる内容を学習するのに何が必要かに言及する(光はどのように波と似た振る舞いをするのか),(4)特定の・多様な学習者を最もよく参加させる。
- スキル領域でも,本質的な問いは,(1)鍵となる概念,(2)目的と価値,(3)方略と方策,(4)活用の文脈を中心に考えれば組み立てられる。
- 本質的な問いは,特定のトピックやスキルを乗り越えさせ,より一般的な転移可能な理解を示す。
- 本質的な問いは,相互に関連する問いの組み合わせ(=多様性とバランス)で考える。
- 理解の6側面に基づく問いを引き出す言葉
- 説明:5W1H,〜において鍵となる概念は何か,〜の例は何か,〜の特徴はどのようなものか,これはなぜそうか,どのように私たちは〜を証明・確認・正当化するか,もし〜だとすれば何が起こるか,〜についてよくある誤概念は何か
- 解釈:〜の意味は何か,どのように〜は〜に結びついているか,どのように〜は〜に似ているか,だから何なのか,なぜそれが重要なのか
- 応用:いつ・どのようにこれを活用できるのか,どのように〜はより広い世界で応用されているか,〜を克服するために〜をどのように活用できるか
- パースペクティブ:〜についての異なる視点はどのようなものか,このことは〜の視点から見るとどのように見えるのか,〜に対するあり得る反応は他に何があるか,〜はどのように〜と似ている・異なっているか,〜の長所と短所は何か,〜の限界は何か,〜の証拠は何か・十分か
- 共感:〜の立場に立つとどのようだろうか,〜について〜はどのように感じるか,どのように私たちは〜についての理解に達するか,〜は何を私たちにかんじさせようとしているか
- 自己認識:は和紙はどのように〜をしっているのか,〜についての私の知識の限界は何か,〜についての私の盲点は何か,私はどのように〜を最もうまく見せることができるか
- 理解の定義:(1)理解は熟達者の経験から導かれた重要な推論であり,明確かつ有益な一般化として述べられる,(2)理解は特定のトピックを超えて永続的な価値を持つ,転移可能な重大な観念に言及する。
- 評価者として考えることは,3つの問い:(1)どのような種類の証拠が必要か,(2)パフォーマンスにどのような特定の特徴があることを検討すべきか,(3)提案されている証拠によって,知識・スキル・理解を推論することが可能か。
- 真正な課題=(1)現実的な文脈化がなされている,(2)判断と革新が求められる,(3)することを求める
- 証拠の種類:パフォーマンス課題,アカデミックプロンプト,小テスト,インフォーマル点検
- 6側面に関わる規準
- 説明:正確な,一貫した,正当化された,体系的な,予言的な
- 解釈:有意義な,洞察に満ちた,重要な,例証となる,啓蒙的な
- 応用:効果的な,効率的な,流暢な,順応性のある,優美な
- パースペクティブ:信用できる,啓発的な,洞察に満ちた,もっともな,並外れた
- 共感:敏感な,偏見のない,受容力のある,知覚の鋭い,機転の利く
- 自己認識:自覚的な,メタ認知的な,自己調整する,内省的な,賢明な
- 指導計画におけるWHERETO
- どこへ向かい,なぜなのかを理解する
- 最初に引きつけ,終始注意を引きつける
- パフォーマンスゴール達成に必要な経験・ツール・知識・ノウハウを身につけさせる
- 重大な観念を再考し,進歩を振り返り,作品を修正する機会を多く提供する
- 進歩を評価し,自己評価する機会を組み込む
- 各自の才能・興味・スタイル・ニーズを反映するよう調整されている
- 表面的な網羅でなく,深い理解を最大化するよう組織されている
- スコープは社会生活の主な機能,シーケンスは特定の時点における生徒たちの生活の関心の中心を指す(キャズウェル)。
2015/01/08
「学長のリーダーシップとは」『IDE現代の高等教育』No.567,2015年1月
(松本)
- 国立大学は分科大学の統合で形成されたために,学部自治が大学の自治と混同されていったと思われる。総長は象徴的な大学の代表で,部局の自治が総長の権限に優先すると思われていた。
- 教育研究評議会,経営協議会とも,法人法では審議機関と定義され決定機関ではない。
- 大学の自治は学問の自由のコロラリー。その最重要の1つは,人事の自治(最高裁判例)。「議に基づく」とは,学長は教授会の議に拘束されることである。教授会法改正は,明らかに大学の内部自治のあり方を変えたもの。
- 学長のリーダーシップは,いつの概念で全て議論できるものではない。どのようにあるべきかは,日々の教育の営みの中で判断されるべきこと。
- 学校法人理事長の英文はChancellor(土橋)。Chairman of the Boardは正しくない。アメリカの大学理事会は,設置形態を問わず全員が学外者で無報酬,学長はCEOとして出席。日本の法人理事は執行業務にあたることを前提としている。
- 企業型リーダーシップ論を大学にそのまま当てはめることは危険。
- 私学ではガバナンスは二元的。教学経営全てにおいて最高決定機関は理事会で(私学法36条2項),最終責任者は理事長(私学法37条1項)。学長であっても,理事会の判断を仰がねばならない。教員に経営を任せて失敗しないための仕組みといえる。
- 改革の近道は,理事長・学長が現場教職員と話し合い,理解と協力を得ていくこと。
- 大学教員の専門家としての質が厳しく問われているのが今回の法律改正の本当の問い。
- 神戸大学の若手教員長期海外派遣制度,45歳以下,6ヶ月以上原則,10ヶ月以上推奨,教員のグローバルな体験が大学のグローバル化を支えている。
- 現場と本部のコミュニケーション障壁を取り除くことが学長のリーダーシップの大切な要素。
- 大学におけるリーダーシップの正当性の根拠は,大学の外部(伝達と効率,品質管理,サービスと満足度など)にあり得ない。リーダーシップは,大学の自由と自律を確保するためにこそ行使されるべきもの。
- そのために学長が行うことは,自大学がどのような大学であるかを明確にし,それを学内外に明示すること。
- 学長のリーダーシップは,PとMを発揮していくことに尽きる。
- 学長リーダーシップの制約としての教授会を感じる学長は,国立,入学定員3000人以上で割合が多い。
2015/01/06
マーク・カートイス(2010)「19世紀オックスフォード大学における試験,教養教育,チュートリアル制度」『大学史研究』第24号,92-115
- オックスフォードの教育の目的は,知的能力を訓練することであり,その目的の達成には古典学が理想的。特定の職業ではなく,あらゆる職業に適応させるような種類の教育。
- 狭い職業的な教育は個人を金持ちにするかもしれないが,知的能力を発達される教育を受けた人がリーダーになる方が社会全体の利益が大きい。
- チュートリアルでは,学生は質問に答えることはできるが,教師へ質問することは許されなかった=カテキズムによる教授。教科書や権威ある著作の正確な知識を少しずつ教えるのに適した方法。教育が宗教的に正当であることを保証する方法として,オックスフォードで支持された。教育と学問の自由を制限し,教員・学生双方が正統派の道から外れないために必要だった。
- カテキズムは,高度な学問には効果的な教育方法でなかった。
- エッセイを提出してチューターが批評する教育の焦点は,学生自身の努力如何であった。
- しかし,エッセイから浮かんだ命題について論じるなど,真理の探求による教育というフンボルト理念が結実した可能性もある。
- チュートリアルは,学生の進み具合を監督するため,効率的な方法である=落第者がほとんどいない。
- チュートリアルは私的な相互作用であるため,学習成果を外的な権威によって認定する必要が生じる。そのために試験が必要となる。
- 大学者社会階層の最上位に位置する人々の子弟の教育に携わり続けることが重要である(カーゾン)。これらの人々は,他の誰よりも公的な義務という観点から教育されることが求められる。
2015/01/05
高城幸司(2014)『社内政治の教科書』ダイヤモンド社
- ビジネスは論理的でなければならないが,それは合意を得る必要条件であっても,十分条件ではない。その問題解決に必要なのが政治力。
- 政治力は権限(指揮命令権,職務権限,人事権)と影響力の2つが源泉。前者は反発は摩擦を生み出しがち。
- 影響力は,信頼関係,相手に好かれること,実績,希少性のある専門知識などによって生まれる。社内政治は影響力のゲームである。
- 社内政治は長期戦である。ある程度固定化した人間関係の中では場当たり的な対応は信頼を失う。信頼を貯金したものが長期的には優位に立つ。信頼を得るには,誠実であればよい。
- 味方を増やすには,自分の重要感を持たせること。相手がほしがっているものを与えることが唯一の方法。基本は挨拶,話を聞く,上手に頼み事をする。
- 私心を捨てる必要はないが,大義に結びつける。常に大義を掲げて,考えを尽くすこと。
- 相手に自分の考えを認めさせるには,できるだけ議論を避ける(議論は勝ち負けを生む)。議論から逃げるのではなく,相手の自尊心や優越感を満たしながら,相手の論理に沿うように要求を提案する。ロジックが大切なのは大前提で,相手を言い負かすことをしない。
- 議論は10:0で勝つものではなく,7:3,6:4での決着を目指す。落としどころを推し量り,譲れないポイントを明確にする。
- 情報におぼれないために必要なのは,重要な情報をかぎ分ける嗅覚であり,嗅覚を磨くには明確な問題意識を持つこと。問題意識が明確であれば,自分の情報感度をチェックする感覚で情報にアクセスできる。
- 価値の高い情報を入手するには,自分が価値の高い情報を提供しなければならない。それには,社内の壁を利用した情報の壁(情報格差)を利用するだけでよい。
- 組織を動かしているのは権力(パワー)であり,それが組織統治の原則。組織図にはパワーバランスが描かれている。パワーの指標は,人事権,予算,人員数の3つ。
- 社内政治でべき論は無力であり,組織を動かすのはパワーである。パワーの在処を正確に把握し,あらゆる機会をとらえてパワーバランスの解像度を高める努力を行うこと。
- 課長は,会社の権力構造の末端に位置すると同時に,一般社員で構成される現場の長でもあるという社内で最も難しい管理職である。経営は全体最適を志向するが,現場は部分最適を志向し,その緊張関係の中心に置かれるのが課長である。
- 課長は経営批判をしてはならない。現場の不満に対しては,経営批判の賛否に触れず,打開策を共に考えるスタンスを示す(どうしたらいい?自分たちにできることはある?)。課長クラスが正論を述べても経営は変わらず,それを所与として現実的な対応策を考える。
- 求心力の管理職の共通点は,プライベートを含めた部下のことをよく知っていること,相手の願望に対して公平なえこひいきをすること。
- 経営層に顔を売る際には,現場でしか手に入らない情報で,経営判断に資する情報を提供すること。
- 派閥を否定してはならない。派閥を認めることが組織で働く大前提。
登録:
コメント (Atom)