2015/01/13

土谷茂久(2005)『大学の組織戦略』霞出版社


  • 環境変化が重要で質的変化を意味する場合は,組織の結合をタイトにし,トップダウンで分析型の戦略決定を行うべきだという。これは大学の本質に反するもので,成功した事例はほとんどない。
  • 教授会は責任をとるものではない。
  • 大学組織の特徴は(1)専門性であり,ますます細分化していく,(2)自律性の増大は専門の間の距離がますます開いていく,(3)知識の探求に終わりがない,(4)知識が過去からの思い遺産を持っている(クラーク)。→ 組織が異常にフラット,結合が緩やか,多数の専門の小部屋が並んでいる状態 → 管理が分散,意思決定の権限が細断。目標が広く曖昧であるために,目標の達成も失敗もあり得ない。
  • 大学組織の特徴は,(1)部門間にまたがる結合は個人ベース(それが学問の自由という観念で補強されている),(2)教員は遅れた・混乱したフィードバックに基づいて行動する,(3)合意形成が困難なので,決定は極力あいまいでさまざまな解釈が可能な形で行われる,(4)学科が支配的な単位として際立ち,学科は研究を支配的な活動と位置づけ,研究は個別的で孤立した仕事・技術からなる(ワイク)。
  • 学長の直面する4つの曖昧さ,(1)目的の曖昧さ,組織の目標が何であり,行動はどう正当化されるか,(2)権限の曖昧さ,学長は何ができるのか,(3)経験の曖昧さ,さまざまな出来事から何を学ぶべきか,(4)成功の曖昧さ,どういうときに成功したと言えるか,どのように評価するか。
  • 日本の私立大学:(1)理事長・学長が,多様な専門的技術や知識を全て理解することは不可能で,教育の目標も不確定なため,個人の業績を評価する明確な基準設定が困難,(2)よって大学はルースカップリングにならざるを得ない,学長が行使できるコントロールは資金と人事案件の最終承認のみ,(3)教育・研究面の決定は委員会制度を通じて行われ,権力が広く分散されている=経営面の権力とアカデミックな権力は分離されている,アカデミックな決定は行政的に行われず,資源が所与であるため個別最適の傾向がある,(4)教員個人は委員会制度で同僚のコンセンサスを必要とするために,イニチアティブをとることがまれ。
  • 私立大学の本質:(1)私的発意:建学の精神が欠如するとその大学は正しいあり方を示せない,(2)自主性:私大のあり方に関する自主性,教学に関する自主性,管理に関する自主性の3つがある,(3)公共性:私益追求の具に用いてはならない,(4)強固な学問共同体性(?),(5)非国家的性格:非国家的性格の主張が許される,そのために国際性を有する(相良)。
  • 大学の自由=学問研究の自由と教授の自由(研究成果発表の形態をとるところ),この2つの自由を学問の自由という。
  • ルースカップリングの7つの特徴(ワイク)
    • 環境に生ずるここの些細な変化に対して組織が反応しなければならない可能性が低下する。
    • 敏感な感応機構を提供する = ルースカップリングでは,多くの独立した感応システムを保持する → タイトな組織よりも良く環境を把握できる ⇔ 気まぐれな反応をしやすいという欠点あり。
    • 局部化された適応にとって優れたシステム。標準化が必要な場合に短所になる。
    • 多くの変革と斬新な解決策を保持できる。
    • 障害の局地化に優れたシステム ⇔ 欠陥のある要素の修理が困難。
    • 行為者による自己決定の余地が大きい,自己実現の機会が多い ⇔ 抵抗が高まる。
    • 調整の費用が少ない,運用が安価 ⇔ 資金配分について非合理,変化の手段に用いることができない
  • プロセス型戦略論の有効性:曖昧さへの対処,偶発性への対処,戦略の柔軟化,イノベーション創発の促進,現場の戦略化 ⇔ 分析型戦略論
  • ルースカップリングでは,組織と構成員が解釈枠組みの「共約性を持つこと」が必要。← もともと共約性は低い。→ 組織のメタ学習の促進が必要。
  • 解釈枠組みは,環境の分析可能性(分析可・分析不可)と環境に対する態度(受動で実験回避・能動で実験遂行)の2つによって,4つのモードに分かれる(Daft and Weick 1984)
    • 受動・分析不可:傍観:知識創造は場当たりで,決定や行動は提携。
    • 能動・分析不可:創出:知識創造は実験的で,決定や行動は試行錯誤。
    • 受動・分析可能:制約された観察:知識創造は定型的で,決定や行動はプログラム化された行動。
    • 能動・分析可能:発見:知識創造は分析的で,決定や行動は論理と分析。
  • 個人の知識が組織の知識になるには,個人の知識が共有され正当化される必要がある。しかし,ルースカップリングでは,個人の学習と組織の学習が結びつきにくい。
  • ルースカップリングでは,ワイクの論理の想定(何らかの秩序が存在すると仮定すること,出来事間の論理的因果的つながりを埋める方法の1つ,presumption of logic)・原因マップ(論理の想定に基づいて心に描く地図,変数と因果結合でつくりあげた構造,cause map)が学習を可能にする。(?)
  • 私学の特徴:(1)ルースカップリング,(2)解釈枠組みが傍観モードに陥りがち,(3)大学・役員・教員・職員の解釈枠組み共約性が低い
  • 外部の経営資源をキーポストに導入 = 異質な解釈枠組みを抱える(モードの転換の契機)
  • 共約性向上のプロセス:(1)組織学習の源泉は個人学習で,組織の解釈枠組みのモードはメタレベル学習を通じてもたらされる,(2)情報技術が個人の学習を支援し,解釈枠組みのモード変異可能性を高める,(3)その結果,情報技術は組織の学習も支援する,(4)構成員の相互学習の支援にもなる,(5)結果として共約性が高まり,個人的知識が組織内で容易に受け入れられやすくなる。
  • 企業経営の手法を取り入れた大学改革は失敗する。大学の意思決定方式を容認した上でのリエンジニアリングが必要。それには,理事長・学長・理事・教職員が組織の特徴を理解して,全員が大学の経営に参加s区している運命共同体意識を持つところから始まる。