ディーフィンク,L.(2011)『学習経験をつくる大学授業法』玉川大学出版部
- 意義ある学習経験は,プロセスと結果の2つの領域を持つ
- プロセス:(1)エンゲージ:学生は自分の学習にエンゲージされた状態にある,(2)高いエネルギー:クラス内のエネルギーが高いレベルにある
- 結果:(1)意義があり長期に及ぶ変化:科目の結果,学生に意義ある意識変化をもたらし,科目履修後・卒業後もその意識変化が続く,(2)人生における価値観:授業終了後も学んだことが個人の生活に影響を与え,その後の人生において価値観を形成する可能性を持つ。
- 授業の質がよくなければ,カリキュラムがよくても学習経験の質が落ちる。
- ドリーミングとイメージング:学生は指示したことは何でもこなし,どんな文献も読みこなし,どんなレポートも作成でき,期日も守り,できばえも完璧である時,あなたな学生にどんな影響を与えたいと思うか。科目終了後の1・2年後,受講者と非受講者で違うところがあるとすればどんなことか。教えた学生にはっきりと影響を残したものは,具体的に何か。
- 学んだことを実生活で活用したり応用したりできるようになっている。
- 世の中をもっとよくするような道を見つけている。
- 強い好奇心を持つ。
- 生涯にわたって学び続ける。
- 学びの楽しさをつかんでいる。
- 型にはまらない問題解決能力を持っている。
- 批判的思索者として成長し続ける。
- 知識労働に必要な能力(Gardiner 1994,Redesigning Higher Education)
- 人柄,責任感,信頼性
- 首尾一貫した品格の備わった行動力
- 読み書きのコミュニケーション能力
- 協調性とチームワーク
- 判断力と問題解決力
- 自分と異なる人をありのままに受け入れる能力
- 環境変化への適応力
- 常に学ぼうとする向上心と熱意
- 授業の4要素
- 科目内容に関する知識:大学院で研究する課程で身につける
- 授業デザイン:ごく少数の教員しか身につけていない
- 学生との意思疎通:講義,討論指導,学生相談,メールでのコミュニケーションなどの社交性・社会常識
- 授業の運営:授業内の様々なことを準備し,組織だって行うこと。課題を用意する,試験を速やかに返却する,評価基準を明示するなど
- 前2つは授業の開始前に,後ろ2つは授業開始後に起こる
- コースデザインは教員の抱える問題を解決する可能性がある
- 学生の授業準備:学生が課題をやってこない
- ペナルティを重くする
- 学生を励ます
- なぜその課題が必要かを学生が理解できる設計にする
- 学生の飽き:テーマに飽きてしまう
- 講義力を高める
- 先端的研究をもっと紹介する
- 講義に能動的学習を取り入れる
- 身につかない知識:試験をしてもすぐに忘れてしまう
- もっと良質な試験を出す
- 学期間で補習授業を開講する
- 学んだことについて体験できる授業に設計し直す
- 優れた授業とは
- 意義ある学習に学生を挑戦させる
- 能動的学習形態を用いる
- 科目・学生・教育や学習の面倒見のよい教員である
- 学生とよく交流する教員である
- フィードバックやアセスメント・採点のための優れたシステムを持っている
- 意義ある学習のカテゴリー
- 基礎的知識:説明や予測を可能とする科目や関連する概念の十分な理解を深めること
- 応用:(1)技術:ライティング,議論,プログラミング,実験機器の操作,(2)複雑なプロジェクトの管理,(3)思考の一般的概念:考える方法を学ぶこと(分析して評価する批判的思考,新しい方法を見つける創造的思考,質問に答えたり問題を解決する実践的思考)
- 統合:(1)学際的学習:2つ以上の専門分野から問題を見る方法を学ぶ,(2)ラーニングコミュニティ:外部の人と学ぶ,(3)別の生活領域とつなぐ:現場で作業する
- 人間の特性:(1)自分について学ぶ,(2)他者について学ぶ,他者についての広い概念を持つ
- 関心を向ける:(1)感情・関心・価値の変化に関心を向ける:学生に興奮してほしい,好奇心を持ってほしい,そのために現象,思考,自分の研究,クラス内の他者,学習の過程に関心を向ける(?)
- 学び方を学ぶ:(1)どのように優れた学生であるかを学ぶ:深いアプローチで学べること,(2)知識を構成する:コンセプトマップを活用する,(3)自立的学習者になることを助ける
- コースの作り方には2つある。1つはトピックリストアプローチ,教員の関心かテキストの目次からトピックを作り,数回の試験を加えて授業にする。早く簡単にできる。もう1つは,統合的アプローチ,線形モデルではなく,学習目標,授業・学習行動,フィードバック・アセスメントを統合的に決める。
- 統合コースデザインのステップ
- 重要な状況要因(前後関係,外部集団の期待,科目の性質,学習者の性質,教員の性質,教育上の課題)を確認する
- 重要な学習目標を確認する
- 適切なフィードバックとアセスメントの手順をつくる(将来自己アセスメントできるようにする)
- 効果的な授業・学習行動を選択する
- 主要構成部分が統合されていることを確かめる
- 授業の主題の構成をつくる
- 教授戦略を選ぶ・つくる
- 全ての学習行動の枠組みをつくるため,授業構成と教育的な戦略を統合する
- 成績評価システムを開発する
- 起こりうる問題点をつぶす
- 授業シラバスを書く
- 授業と教え方の評価を計画する
- 意義ある学習目標の動詞
- 基礎的知識:記憶する,理解する,明らかにする
- 応用:使う・批判・運営・解決・評価する,判定・想像・分析する,計算・創造・コーディネートする,決める
- 統合:繋げる,〜の間の相互作用を認識する,関係する,比べる,統合する,〜の間の近似性を認識する
- 人間の特性:自分自身を〜と見るようになる,他者を〜と見なして相互作用するようになる,他者を〜の用語で理解する,こうなろうと決める
- 関心を向ける:〜に興奮する,〜する用意がある,より興味を持つ,〜に価値を認める
- 学び方を学ぶ:効果的に学ぶ用意がある,学ぶ題材を決める,〜の情報のもとを見極める,〜に関する知識を積むことができる,有用な質問群の枠組みをつくる,〜の学習計画をつくる
- 統合コースデザインで授業は本当に変えられるか?→既に実例があるので可能。
- 自分にもできるのか?→全部ではなく,どこか少しだけ変えればよい。
- 変革のレベルが高まればリスクも高まる。若干のことをする,短い活動をする,活動に制限を設けることでリスクは小さくなる。
- 教員が直面する問題:(1)自分たちの習性で動いてしまう,(2)教授法の学習や授業の準備に時間を割かねばならない。
- 授業を変える必要条件:変化の必要性の認識,励み,時間,情報や知識の資源,自分が行う授業について理解している学生,承認と報償
- 授業に関する20%ルール:週3時間の授業に平均6時間準備や評価に使う=1科目週9時間=45時間の20%。ゼロから教える授業は通常の2倍かかる。