2014/09/11

向後千春(2014)『教師のための「教える技術」』明治図書出版


  • 教えるトレーニングをせずに教えられるのは,(1)教える内容が決まっている,(2)相手が先生と見なしていることで,何とか教えられる。しかし,うまくいかない時には,教える技術を持たなければ教えられない。
  • 教師のための教える技術は,(1)一定の水準が求められる=プロ,(2)大人数を扱うという点が特徴。
  • 教える手順に沿えば誰でも教えられる(=ガニエの9事象)。
  • うまくいかない原因を相手にしてはいけない。教師は自分が一生懸命になるのではなく,相手が知らないうちに一生懸命になってしまうことに力を注ぐ。
  • 学習者検証の原則=教え方の成果は相手ができるようになったかだけで測る。できない原因がやる気がない → 動機づけるのが仕事,努力が足りない → 努力する方法を教えるのが仕事,勉強の仕方がわからない → 勉強の仕方を教えるのが仕事。
  • 教師力=教える技術(心理学),授業デザイン力(ID),クラス運営力(アドラー心理学)。
  • 子どもが身に付ける技能=教師が教える内容は5つ
    • 運動技能:書き順を手に覚えさせる
    • 知識獲得技能:反対の意味を知っている(=宣言的知識)
    • 問題解決技能:へんとつくりで意味を推測する(=手続き的知識)
    • 学習方略技能:効率のいい覚え方を見つける
    • 態度技能:漢字を覚えることを面倒ではなく便利だととらえる
  • 運動技能は(1)スモールステップで教える,(2)即時(1分以内)フィードバックが原則
    • 褒め言葉は過剰ではいけない(褒められないときの我慢,相手の評価を気にするようになる)
    • てきないときに罰をつかわない
  • 宣言的知識(言葉やイメージに関する知識)は事実,概念(同じ特徴を持つ対象をまとまりにする),原理(因果関係)の3つに分けられる。
    • 新しい知識は,自分に関係があることを示して注意を引く。これを必ず最初に行う。
    • その後で,既有の知識とリンクさせる。その際に,誤概念も出す(間違いは学びのチャンス)。
    • その後で,情報を整理して提示する(体制化,図式化)。
    • その後で,新しい知識を定着させる。それは,関連するさまざまな情報と結びつけて長期記憶に定着させる(=精緻化リハーサル)。
    • これらのプロセスを通じて,メンタルモデル(=事実・概念・原理が形成された状態)が形成される。このメンタルモデルを作り出していくことが,「知識の獲得」である。
  • 問題解決技能は,既にある知識を活用すること。
    • 問題には明確なもの(良構造問題:算数の文章題)と曖昧(不良構造問題:武家社会の成立について800字で書け)なものがある。
    • 良構造問題は,状況性や文脈性をあえて無視し,注目すべき変数を見つける抽象化に焦点をあてる。
    • それができたら,別の例で数多く行う(=転移)。
    • 聞く・読むの場合:教師は「わかりましたか?」と聞いてはいけない。ノートを取れば理解したかがわかる(=理解したことを表現する)。その場合,図を書かせるとうまくいく。
    • 書く・話すの場合:型があることを教える(例:読書感想文の段落構成)。
  • 学習方略技能:(1)目標を設定し,計画を立てる技能,(2)計画を実行し,それをコントロールする技能,(3)フィードバックを次に活かす技能,(4)取り組んだことを振り返る技能
    • 2は自分との約束をする。「計画以外のことをしない」=机に座っているだけでいい。
    • 3は,テストの後に同じ問題で満点をとってもらう。
  • 態度技能は,指示命令で教えられない(自発性のパラドックス)。目的や意義を丁寧に説明することに重点を置く。
    • やる気がない理由は,(1)やることの意味がわからない → どんないいことがあるかを説明,(2)やる意味はわかるがうまくできない(ので恐れている)→ スモールステップの原則,の2つ。
    • なかなか変われない相手:共感を示す,どんな自分になりたいかを聞く,抵抗につきあって「がんばってみたら?」,自己効力感へ。
  • 授業デザインの基本はガニエの9事象で授業を設計すること。
    • 授業を魅力的にするためのARCSモデル
  • クラス運営の方法は3つに集約される。
    • 自分自身がどのようなタイプの教師であるかを知ること。
    • クラスの崩壊は一人の子どもの荒れから進展するので,そのプロセスを知ること。
    • クラス会議をして相互尊敬と相互信頼の雰囲気をクラスに作り出すこと。
  • 教師のタイプは3つに分かれる。
    • 放任=ルールはないので自由にして下さい。← 自主性を大事にしたい ⇔ まとまりがない
    • 独裁=私が決めたルールに従って下さい。← 使命感強い ⇔ 重い雰囲気
    • 民主=みなさんが自分たちでルールを決めて下さい。← まとまりを重視
  • クラスが悪くなるプロセス:注目をひく→権力争い→復習→無気力
  • クラス会議で雰囲気をよくできる。
    • 子どもがちょっと困っていることを議題提案要旨に書いて議題箱に入れておく。
    • 週1回授業時間外に,10〜30分のクラス会議の時間をつくる。
    • 議題箱の議題を読み上げ,話し合うかどうかを決める。
    • 議題について,解決策を提案し,検討して,決める。
    • 解決策の実行期限は,次回のクラス会議までとして,そこで再検討する。
  • この経験は,子どもの見方を変える。=自己表現の練習
    • 解決策を考えたり実行できることで,自分には勉強以外にそういう能力があるという認識をもつようになる。
    • クラス内の人間関係において,自分が必要とされている認識と,自分の能力を使ってクラスに貢献することができる認識を持てる。
    • 自分の態度や行動は自分で決めることができるという認識を持ち,自分の人生に影響を与えるだけの力が自分にはあるという認識につながる。
  • 子どもの行動はシンプル。自分の居場所を作ることを目的に行動している。