- 意思決定に多くの人が参加すると,モデル1が多数派となり,学習体系はより複雑化する。
- 意思決定プロセスへの大衆参加は,その問題解決力と合わせて考えるべきである。そのような能力は,立場や属性ではなく,心の中にどのような前提を抱いているかと大きく関係している。
- 学習を改めるには,ワークショップやセミナーの活用がある。オープンな問題解決の議論が行われることがあるが,通常業務に戻ると同じアプローチが採用されない。人間は,モデル2を理解したり信奉したりしても,行動を実践できるとは限らない。
2013/12/26
クリス・アージリス(2007)「「ダブル・ループ学習」とは何か」『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2007年4月号,ダイヤモンド社
2013/12/04
小玉重夫(2013)『学力幻想』ちくま新書
- アメリカで一定数以上の教員が必要となるのは,学級のためではなく,子どものためであり,この子ども中心の考え方があるため指導法やカリキュラムも個別的なものとなる。日本は,標準法に示されるような学級をベースとする教育になり,全国一律の学級と全国一律の教育が平等に保障される。
- ゆとり教育は,具体的には総合的な学習の時間の導入であり,それは,学習指導要領における法的な拘束力の部分的な解除である。またそれは,教科横断的で従来の教科の系統的学習へのアンチテーゼである。
- 教師の指導性が弱くなると,階層的なものの影響が大きくなり格差が広がる。学校の中で授業が完結しないと,学習をサポートする親か否かで差が出てしまう。
- ○○力メタファは,学力の定義を曖昧にしたままそれを全人格的な人間性へ拡張する。これは,努力と工夫次第で誰でも身につけられるものととらえられ,○○力が身に付かないのは個人の努力不足となってしまう。
- みんながイチローにはなれないが,みんながエネルギー問題や放射線の問題を考えることは身につけたい。公教育の役割はその中に見いだされる。
- 問題なのは子どもの学力低下ではなく,問題を子どもに転嫁し自らの学力低下を棚上げにする教師の問題である。子どもへの関心が肥大化すると教育における権威が喪失し,公的世界が解体してしまう。
- 学力の低下を教授法の革新によって解決する発想は,教育が解決困難な課題を抱え込んでしまう。学力問題が教育方法の問題に還元されると,教育の内容に対する関心が薄くなる。教師が身につけるべきは,特定の専門科目に習熟することである。
- 出生によってこの世に到来することは,すでに存在するものに遅れて参入することである。教育において,正解への責任は権威の形式をとるとは,教育者がこうした出生のパラドックス(過去についての教えに関わる一方で,未来の修復に乗り出すよう動機づける or 人種や民族の違いを包摂する)を引き受ける覚悟を指す。
- 級は能力別編成やメリトクラシーの意味があり,組には学力に関わりなく同じ年齢の子どもが席を同じくする意味がある。
- 公教育は有能性を養うメリトクラティックな学力のみに還元されない教育を引き受けなければならない。そしてそれは,教師個人ではなく制度的・システム的に保証されなければならない。そのためには,教師である前に市民であれる教師教育の構築や,教師のサバティカルによる政治参加があってよい。
2013/11/27
児美川孝一郎(2013)『キャリア教育のウソ』ちくまプリマー新書
- 俗流キャリア教育の3ジャンル:自己理解系,職業理解系,キャリアプラン系
- キャリア教育でやりたいことにこだわると,(1)日本の雇用慣行では,ジョブに応じた採用や育成がされないことが多い,(2)やりたいことの見つけ方が主観的になる,(3)やりたいことを実現可能性,社会的意味との関係で理解しないという3点で危険。
- 進路を考える上で,やりたいこと,やれること,やるべきことの3つをバランスよく考えて,その積で進路を決める方が実現可能性が高まる。
- 帝国データバンクによれば,企業の設立から廃業までの平均は30年超。
- 学習は,知識やスキルを預金のように溜め込む銀行型から,料理の仕方を習い,将来さまざまなレシピを参考にしながら自分で料理を作る料理教室型へ移行していくべき。
現状のキャリア教育批判は論理的で鋭いものの,代替案として提示する筆者のあるべきキャリア教育像があいまいすぎる上に論理的でないので,バランスの悪さを感じる一冊。
2013/11/26
堀公俊(2011)『白熱教室の対話術』TAC出版
- 話し合いとは自分の考え方を変える(=慣れ親しんだものが見慣れないものに変わる)ためにするものである。
- 授業の2パターン:
- (1)哲学的なテーマを含んだ身近な事例を提示する→賛否両論を聞いた上で,学生同士を対話させる→対話から導かれた重要な論点を明らかにする→対話のポイントを哲学者の思想をもとに解説する→そこから導かれる新たなテーマを提示する。
- (2)前の講義から導かれた論点を振り返る→哲学者がそれに対してどう考えたかを紹介する→それを検証するための身近な事例を提示する→賛否両論を聞いた上で,学生同士を対話させる→対話から導かれた新たな論点を明らかにする。
- 白熱教室を生み出す3つの要素:(1)モラルディスカッション,(2)参加型プレゼンテーション,(3)自立的な学習コミュニティ
- 私たちを主語にして授業を進める。参加者は講義を一緒に作るパートナーであり,過去の哲学者も授業の重要な参加者として位置づける。
- ハーバードの学生は,はじめに的外れなことを発言していても,回を追うごとに着実にレベルアップする。事前に文献を良い,学生同士で対話を重ね,用意周到で授業に臨むため。東大ではそれがなく,もともとの能力の差よりも,圧倒的な勉強量の差が生み出す違い。
- 対話のファシリテーションサイクルは,(1)探求に火をつけ,参加を促す,(2)対話に巻き込み,流れを作る,(3)思考をかき回し,創発を生み出す,(4)学びを紡ぎ,新たな問いに誘うの4つ。
- サンデル教授は2つの問いを使う。1つはジレンマを含む事例の判断やその根拠に関する具体的な問い,もう1つは哲学的な原理に関する抽象的な問いで,講義全体で考えるテーマを示したり,対話を通じて生まれた新たなテーマを提示するのに使う。
- 問いを作る際には,対話が持続できるものになっているかどうかが重要。
- 問いは上手に一定のバインドをかける。アメリカ人は原爆投下に道義的責任があるか→オバマは日本に謝罪すべきか。ただし,バインドは誘導や思考操作にもなる点に注意。
- 教員の役割は,偉大な哲学者がまるでそこにいるかのようにすることで,学生の考えに挑んだり擁護したりする。
- 参加者は固有名詞として扱う(これを忠誠心についての○○のジレンマと呼ぼう)。
- ワンセンテンス・ワンパーソン。一つのセンテンスの途中で,語りかける人を変えない。順番に一人ずつ話しかける。動かして止める。ただし,それをするにはメッセージがシンプルでなければならない
- ファシリテータは,論点を常に明確にするのが役割。はじめから違う論点を言う人もいるが,そういう時に素早く戻す。
- なぜ×5は重要だが,きりがなく,根源的な問題にあたって議論が止まる。白熱教室では,道徳的な原理や原則が現れた段階で止めている。
- 授業ではあえて知織化せず,自主的な知識化を促す。質疑応答は,安易な正解を求めて自分で思考しようとしないので,そもそも質疑応答しないことも重要。
- コンテンツではなく,プロセスから得られた成果をまとめとする。互いの理解が深まった,問題の重要性が認識できた,論点が明確になった。白熱教室では,自信と美徳の力を得ることができた,意見が一致しなくても互いに学び合うことができた,正義についてともに考える力を見せてくれた。
- 一人の自律した人間として公の問題に関わり,公の場で話し合うことが白熱教室であり,これが社会の中で公共的生活を実現できるやり方である。
- ファシリテータには,論理的な頭の回転の速さ(発言の本質を見抜いたり,論点を整理してわかりやすい言葉で言い換える)と,感情的な頭の回転の速さ(場の空気を読み取り,ホットスポットを見つけ,今おこっていることを洞察する)の2つが必要。IQとEQ。
2013/11/25
おちまさと(2011)『相手に9割しゃべらせる質問術』PHP新書
- 上司がつまらないのではなく,上司のいいところを発見できないのは自分の熱意が足りないから。その程度と思っているなら,その程度の話しか聞き出せない。
- 緊張するのは,自分以上の自分を見せようとするからで,それをまずやめる。
- 1問目は自分のことが好きですか?そもそも〜で相手の核心に近づくことができる。
- 相手の話を要約してタイトルを付ける。
- 間接的にほめる方が本当ぽい。つぶやきか,一般化した褒め言葉。
- 現在,過去,現在,未来の順で聞く。この特徴は?そもそもその発想はどこから?だから今○○なのか。次の計画は?
質問術とあるが,ありのままの自分でいること,相手をリスペクトすることの2つが肝要で,テクニックで聞くものではないというのが本書の肝。それ以外の部分は,やや冗長。
2013/10/01
高橋知音(2012)『発達障害のある大学生のキャンパスライフサポートブック』学研教育出版
- 大学生に比較的よく見られる3つの障害
- 注意欠陥多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder):3つの基本症状,
- 不注意(集中できない,気が散る,聞き落とし,不要な情報を無視できない),
- 多動性(じっとできない),
- 衝動性(予測や考えなしに行動する,待てない)
- 7歳までに2つ以上ある時に判断される。子供時代は保護者がいるため表面化しないが,自己管理の問題として出る。(90分集中できない,指示を聞き逃してミスが多い,提出物をなくす,期限を忘れるなど)
- 自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder,自閉症・アスペルガー症候群):3つの主要障害,
- 社会性障害(他人への関心乏しい,集団の中で適切に振る舞えない,相手の気持ちを察せない),
- コミュニケーション障害(紋切り型など独特の話し方,抑揚が不自然,自分の興味を一方的に話す),
- 想像性障害(限定された対象に熱中,特定の手順にこだわる,空想と現実の切り替えが困難)
- 学習障害(Learning Disabilities/Learning Disorder):知的能力は低くないのに学習効果が上がらない状態を言う
- 教育的定義(文科省):読む・書く・計算する・聞く・話す・推論するのいずれかでつまずいている状態
- 医学的定義:読字障害・書字表出障害・算数障害が含まれる
- 話を聞きながらノートを取れない,読むのが遅,特定科目の成績が極端に悪い,簡単な計算に間違いが多い
- 共同作業が不可欠な課題で困難が出るものの,身体の障害と比べて周囲から理解されにくい上,本人にも分からない場合も多い。よって,大学が支援する場合は,障害に対して支援するのではなく,学生が直面する課題を把握して合った支援をすること。
- 発達障害は,生まれつき・ごく早期から持っている特性であり,その根本的性質は終生続く。生活上の困難は,個人特性と環境の相互作用に依るものであり,環境の調整と周囲の理解で適応可能な状況を増やすことができる。
- 発達障害学生は,視覚的に整理された環境や,やることが明確な指示で判断や行動がしやすくなる傾向があるが,大学は構造化されていない(みんな時間割が違う,席が決まっていない,授業形態が多様,評価方法が多様,ホームルームがない)ため,戸惑いやすい。
- しかし,大学生活は失敗から学べるチャンスでもあり,大学で学ぶ意義は大きい。
- 発達障害者支援法第8条2,大学および高等専門学校は,発達障害者の状態に応じ,適切な教育上の配慮をするものとする
- 大学が必ず行うのは,学ぶ権利を保障することであり,学生の特性に合わせた配慮は特別扱いではなく他の学生と同じ土俵に乗るための権利保障である。組織的に対応するためには,ガイドラインの作成と授業の代替措置が求められる。代替措置では,課題の本質は変えない(専門領域の中核的な部分の学習)ことが重要で,機能面の弱さが単位修得に影響を及ぼしにくい専攻へ進路変更することも視野に入れる。
- ただし,単位認定基準,卒業要件の緩和,過度な負担のかかる支援はするべきではない。
- 信州大の学生支援コーディネータは,アメリカのスクールサイコロジストをモデルとした。心理教育的アセスメント,コンサルテーション,コーディネーションを中核的機能として持つ。学生につながる経路は,他の支援スタッフからの要請(カウンセラー・校医)やキャリアカウンセラー,教職員など。つなぎ方は,直接学生に会う,スタッフへ対応を提案するコンサル,スタッフと学生を交えた三者面談。
- コーディネータは,関係者を集めて会議を開くなど,部局を超えて連携して支援全体をマネジメントする。学部教員に単独で交渉しにくい場合は,プロジェクト推進メンバである副学長,学生支援課長から事前に話を通すことで部局対応を容易化する。
- このように,相談室で話を聞くことを主たる業務とせず,コーディネート(=人と人をつなぐ)を主たる業務とすることのメリットは大きく,コーディネータには日常的に教職員と情報交換をし,大学の教職員をよく知っていることが求められる。限られた資源の中でコーディネータを探すには,ピアサポートと学外資源を使う必要がある。
- 多くの文献を読む作業(=環境からの要請)→読みに困難(=特性)→期限内にレポートできない(=折り合いがつかない状況)
- 支援方法を探る5つの問い,(1)トレーニングや治療で改善できるか,(2)得意な部分で補えるか,(3)やり方の工夫で補えるか,(4)支援技術や道具で補えるか,(5)環境側が変わることができるか
- (1)はSSTや薬物療法がある,(2)は対面議論からオンライン化など,(3)は読まない部分を隠して読むなど,(4)はITツールなどの例がある。結局はオーダーメイドの支援。
- 支援ニーズの把握については,大学生精神健康度調査の新入生ガイダンス・健康診断での実施を活用。
- 学生の理解では,何ができないのかに焦点が当てられがちだが,何ができるかも重要な手がかりであり,理解には学生の特性の理解と,学生を取り巻く状況=環境の理解が重要。
- 支援計画作成においては,中長期目標と,短期目標の設定の2つが重要。これに支援提供者,支援内容,評価を加えた5領域の横軸と,学習面,心理・行動面,社会面,生活・健康面,進路面の5分野を加えたマトリックスで計画を考えるとよい。
2013/08/23
一橋大学経済学部(2013)『教養としての経済学』有斐閣
- パソコンとインターネットの普及で,知的能力の高い人と低い人の生産性の差が歴然と出る時代となった。この知的能力を鍛える場が大学であり,大学で学ぶことはパソコンの使い方ではなく,新たな価値を生み出す思考方法である。
- 大学生が多すぎるかは,あるべき大学論に基づくのではなく,中学レベルの数学をやり直しても卒業時にエンジニアとしてやっていけるという,本人にとって進学がよかったかどうかを問うことで考える。(そういう教育機関は称賛されるべき)。
- 今後,高卒労働者を吸収してきた生産現場の仕事が海外へ移転し,大卒労働者の需要が増えるなら,大学生は多すぎるとは言えない。
- 個人の合理的な選択と,社会としての合理的な選択が相反する状況を社会的ジレンマという。
2013/08/22
「大学組織を問い直す」『IDE現代の高等教育』2013.5
- いかなる組織においてもそうであるように,大学教育が革新的であるためには,業務の担い手である教職員が,組織の置かれている環境と課題を明確に理解し,自分の部署の最適化だけでなく,組織全体を展望した活動を行うことが求められる。
- 優れたマネジメントは,構成員のモチベーションを高め,能力を引き出し,組織の価値を共有させるマネジメントであり,マネジメントの役割は大きい。
- しかし,人間は自分の所属する世界がよければ,組織全体や社会全体のあり方には関心を持たないものである。マネジメントは万能薬ではなく,柔軟性に欠け,現状維持に陥りがちな大学教職員の行動様式を変容させていく仕掛けが,組織に内包されていく必要がある。
- 公私立は,将来も研究組織に基づいて教育組織を編成と考え,学長・部局長・学科長間での葛藤が小さいが,国立は学長だけが将来教育組織を研究組織を分離と考え,ギャップがある。分離型は,柔軟な組織運営の条件づくりと,学部学科を超えた教員手段を形成して,規模・範囲の経済を活かした組織の活性化を目指す。急速に変化する知識生産と需要に対応した活動が可能なように,需要業務である教育と研究を遂行できる教員組織のあり方が課題になってきた。
- 研究とは,確立したパラダイムをもとに,新しい知見を加えることで学者コミュニティに認知されるプロセスであるため,パラダイムを変革するイノベーションは,研究者の地位を危うくする。よって,研究者は意識的・無意識的に依拠する枠組みを維持し,変化を拒否する。
- 組織改革には,組織にはまって行動する教員のハビトゥスを変化させる高度な戦略性が必要である。そのために求められるマネジメントは,行動様式の変容を視野に入れた組織の移行マネジメントであるが,現状はFDに特化され,肝心の能力論に組織的社会性が欠落している。
- よって,単純な組織改革モデルではなく,各機関・組織の状況に対応した多様な組織移行モデルが提示される必要がある。
- 機関内の組織多用戦略:並行して部局横断型で学際融合型研究組織を設置
- 機関内の部局横断・学際融合型教育の推進:教員が複数の組織に属し,教育プログラムを担当(組織のマトリックス化)
- 機関内の組織的分業化:情報センター,学習支援センター,図書館などが学生の教育を担う
- 大学間の組織柔軟戦略:連合大学院
- 札幌大学の教学組織に求められる特性は,(1)教育ニーズの多様化・流動化に柔軟・機動的に対応できること,(2)よりコンパクトな教職員組織によって運営可能であること,(3)変革への意思を顕示し,社会の期待感を醸成するものであることに絞った。
- その上で,3つの学部制の限界を示した。(1)専門学部制では学生のユニバーサル化に対応しきれない(低学力者に専門教育を低年次から学ばせる悪循環),(2)教員数の削減と共に必置科目の制約が強まること,(3)学部間の障壁が総合力の発揮を妨げること。
- 名古屋経済大では,法・経済・経営の専門共通基礎科目を新設し,3学部全員の必修科目を3クラス編成にして,ここの科目を3名の教員が担当する方式をつくった。
- 日本は大学組織をあるべき形を規則によって組み立てようとするが,アメリカでは個々の活動が合理的になされるように組織化している。日本は組織を入れ物の集合体,アメリカは協調した行為の体系と見る。日本は大学には学部を置く,大学院を置くなど内部組織まで法規で定めるが,アメリカでは個々の大学がその活動に則して組織するため,ファカルティ,スクール,カレッジ,インスティテュート,ディビジョンなど多彩。(辞書的にも学校は入れ物,スクールは学ぶ者の集まりの意)。
- よって,大学組織は,学術の固有の法則と学ぶ者のニーズに従って組み立てる。
2013/08/20
原田勉(2010)『実践力を鍛える戦略ノート』東洋経済新報社
- 経営戦略を効果的に学習するには,理論的な学習は最低限にして,出来るだけ多くのケース演習を積み重ねる中で戦略的思考や問題解決能力を身につけることがポイント。
- ケース演習の目的は,事前に想定した正解を得ることではなく,各自が知力を振り絞って何らかの解にたどり着くこと,その解を参加者同士で議論しながら何らかの教訓(=分析のポイントや注意事項≠正解)を引き出すことにある。
- この本では,経営戦略を「資源配分+シナリオ」と定義する。経営戦略は必ず資源配分を伴い,その背後にあるシナリオを綿密に計画することで成功の蓋然性を高める。
- 戦略が資源配分であるなら,戦術は資源運用であるが,この線引きは簡単ではなく,むしろ両者は相対的な概念である。戦略の立案は簡単であることも多く,戦術の立案こそ,現場の経験,知識,ノウハウ,知恵が要求される。戦略立案は事業部に数名で十分だが,社員の大半が戦術立案・実行者であることの方が重要。
- シナリオは,経営資源と外部環境との適合をつくり出すことである。強みがはっきりしているなら,強みを強化すればよいが,環境が適合しないならこだわると危険。よって,両者を別々に検討して,組み合わせをチェックする方がよい。
- PPMは単純に考えるためのもので,横軸に市場シェア,縦軸に市場成長率(市場魅力度)を取ってシナリオを描くもの。ただし,PPMは事業をどのように定義するかで結果が全く異なる点に注意(カメラメーカーとして定義するか,フィルム事業部,デジタルカメラ事業部ごとに定義するか)。
- 事業戦略では,事業のコンセプト(誰に,何を,どのように)を定義することから始まる。具体的には,同じ要望を持つ特定の顧客層にターゲットを絞り,顧客が感じる主観的な価値や効用を定め,いかにしてそれを提供するかであるが,競争優位の差につながる部分は価値の提供方法にある。
- 事業コンセプトは,視点を変えると顧客,競争相手,自社,販売網という4つのCを取り巻く関わりを考えることでもある。この中で最も重要なのは,競争相手ではなく顧客を見てコンセプトを構想する点にある。
- 組織を分析するための組織図は,事業コンセプトを考える際には不都合。組織図は,内部の都合を表したもので,顧客を中心に検討されたものではないため。
- 戦略グループマップは,2つのレベルの競合状態を2次元軸で表したもの。例えば,戦略グループ間と戦略グループ内(軽自動車中心の企業と,フルラインメーカー)など。
- 業界構造分析をしなさい,とは業界の魅力度を評価するもので,競合企業間の敵対度,顧客の交渉力,供給業者の交渉力,新規参入の脅威,代替品の脅威の5つを評価すること。具体的には次の点。
- 敵対度:業界成長率,企業の集中度,付加価値に占める固定費の割合,過剰設備の存在,製品差別化の程度,ブランド識別力,スイッチングコスト,情報の複雑性,競合企業の多様性,退出障壁
- 顧客の交渉力:顧客の集中度,購買量,スイッチングコスト,顧客の持つ情報,顧客の利益,価格への反応度,全購買に占める割合,製品差別化,プラン度識別力,後方統合への能力,品質や成果へのインパクト,意思決定者のインセンティブ
- 供給業者の交渉力:スイッチングコスト,インプットの差別化の程度,供給業者の集中度,代替インプットの存在,供給業者にとっての量の重要性,インプットのコストや差別化への影響,前方・後方統合への脅威,総コストに占める割合
- 新規参入の脅威:規模の経済性,ブランド識別力,必要投下資本量,製品差別化の程度,スイッチングコスト,販売網へのアクセス,習熟効果の程度,インプットの確保,既存企業からの反撃可能性,政府による規制
- 代替品の脅威:代替品のコストパフォーマンス,スイッチングコスト,顧客の代替嗜好性
- SWOTは戦略オプションを考えるために使うもので,SWOTの要因列挙だけでは意味がない。その戦略オプションの基本パターンは,コストリーダーシップ,差別化,集中の3つ。
- SWOTでは,みんなが脅威と感じていることに機会を見出すことに成功の鍵がある(アスクルの系列販売網を持たないことなど)。
- 損益分岐点に達するとは,売り上げから変動費を引いた利益(=限界利益)が固定費をカバーしたとき(=損益ゼロ)。
- 限界利益率=限界利益/売上=(売上ー変動費)/売上=価格ー単位当たり変動費
- 損益分岐点=固定費/限界利益率
ケース学習を演習問題型で提供する点は,とてもよい試みだが,前置きとなる解説が多すぎる点が残念で,もっと演習中心で編集してもよかった。このケースブックでは,事例に示された数字を正確に読み取る力を重視している。実際に問われるケースクエスチョンは,大雑把でケース独特のものではなく,どのケースでも共通するもの。
2013/08/19
青井博幸(2011)『経営戦略教室』PHP研究所
- クリエイティブな組織をつくるには,クリエイティブな人が評価される仕組みが必要。これは,クリエイティブ重視による性善説に基づいたマネジメントがアイディアを出すための前提。
- 戦略立案上の判断基準となる経営理念やビジョンに,社員が幸せになるという項目を入れる。この戦略を実行して本当に社員が幸せになれるかを真面目に考えるようになる。
- 20世紀型MBAは,経営戦略が株主のために必要であるとはっきりしていたため,簡単に従業員を使い捨てる考え方で戦略を立案してきた。
2013/07/29
苅谷剛彦(2012)『イギリスの大学・ニッポンの大学』中公新書ラクレ
- ワールドクラスの大学を標榜することは,「世界の問題」と知的に格闘すること,すなわち,戦火のやまない国の学生が宗教的民族的対立の根源を知りたい,経済成長著しい国の学生が急速な変化をもたらす社会の矛盾を考えたい,欧米トップの学生が著名教授の推薦状付きで原著論文と共に来るという,世界の問題の縮図が大学の教育・研究の素地・資源となっていること。
- 大学では,何を勉強しているかを聞く際に,What do you studyといわず,What are you readingと聞く。学ぶことの中心に読むことがあり,何を読んで知識や教養を身につけたかが共通の理解として類推でき,そうした時間の積み重ねが教育の中核を占めている。
- 専門外の試験の採点に関われるのは,特に文系において,読むべき文献や学生が身につける知識や能力について,大学として共通の了解が成立しており,書くことで表現された思考の痕跡を思考力として評価することを重視するため。どの専門でも,どれだけ明晰に問いが立てられ,論理的に思考を展開したか,どれだけ説得的な文章で書かれているかを判断できるため。
- 日本で学ぶ知識は教授が伝授する知識であり,その受容とは体系的に知識を理解し,再現することを意味するため,毎回の授業で何を伝達するかを示すシラバスが重視され,15回行われたかという回数のチェックが重視される。オックスフォードでは,知識の伝授は課題文献で行われ,その知識を用いて書く学習が続き,議論を通じて知識の生産・再生産を行う。そのためチュートリアルが中心となる。
- 高等教育とは,生涯にわたる学習やキャリアの再生を人々に準備するものであり,生涯を通じて社会に対しan educated citizenとして貢献するための準備を与えるものである。高等教育とは,批判的な思考をリベラルな教育を通して発達させることであり,そのような科目を通じてであれ個人のコミュニケーションと批判の能力を発展させることである。そこでの特徴は,いずれ時代遅れとなる知識を常にアップデートする方法を学ぶ能力を身につけることである。高等教育がキャリアにつながるという意味は,プロフェッションの世界において省察力を持った実践かを育てることにある。
- 日本ではエリート主義の問題を正面から論じず,それを避けながら,市民社会を市民について考える傾向があるが(市民や市民社会は,自立した個人が対等な関係を通じて織りなす自由な社会というイメージ),オックスフォードでは選ばれた学生に特別な教育を提供して教育された市民を育てることにためらいがない。
- 面接では,日本のように漠然と人物を見るのではなく,ちょっと意地悪な質問にも,頭の回転,論理的思考力,柔軟な発想力,言語による表現力を確かめるものとなる。
- 顔の見えない大衆教育社会では,教育された市民を十分に育成できない。特権的な環境を誰に提供するかという資源配分問題に手を付けずに,○○力の育成の問題を論じても,教育された市民の育成の道筋は見えない。
- 大学は,社会的な上昇移動の主たる手段であるから,その機会を狭めることはフェアでない。日本は,フェアネスの問題よりも,大学教育が親からの贈与である点が大きい。授業料や財政支援の仕組みは,この問題に切り込まないと,受益者負担やフェアネスに関する議論は深まらない。
- 日本ではカリキュラムの体系化はしにくい。週1回であること,実質3年で単位を取ること,大人数講義が多いこと,授業料依存度が高く退学者を出せないことから,学生は学習を要しない生活を送る。これは,採用側も訓練のしやすさを示すシグナルだけを求めていたことも影響する。つまり,日本社会にとっての大学は体験学習の機会であり,基礎知識は高校までに習得して,大学では課外活動,ボランティア,アルバイト,海外旅行を通じて高校まででは得られない体験を積む場である。
- オックスフォードでは,大学は学問の場である。それは,グローバルな競争環境の下で学生が出願するのみならず,教員もグローバルな競争環境に置かれ,学生に自由な時間を与える体験学習の場といったことが許されない環境にあるためである。
- チュートリアルは,文献の読み方,文章の書き方,議論の仕方をしつける過程そのものであり,知識の理解に加えて知識をどう組み替えるかという議論の方法=技・アーツが教えられる。そのため,担当する教授は知の再生産と生産に関わる研究者出なければならない。すなわち,既存の知を伝えるだけでなく,既存の知を用いていかに新たな知を作り出すのかを自ら体験し,再現できる学者がチューターとなれる。
- 日本は顔を持った個人と対面して一緒に働き,仕事の出来具体を自分の目で判断する対面文化を育ててこなかった。人間の判断力を信用せずに危険視した。しかし,国際社会は顔を持った個人として相手に印象づけられるかどうかで決まるコネ社会である。
2013/07/28
若田部昌澄(2013)『もうダマされないための経済学講義』光文社新書
- 経済学とはインセンティブとトレードオフが重要。
- 経済成長に必要はものはイノベーション。制度派の観点からは,所有権の保全と自由で競争的な市場機構の確立,政治の干渉を最小限にすること。ただし,知的所有権については保全を強化しすぎると弊害が大きくなる可能性もある。
- 年金制度は負の遺産。制度を始めるときに積立がなかったために,人口成長率に依存する賦課方式となってしまった。フリードマンが国営年金に反対する理由は,貧困の問題は貧困の解決で対応し,高齢者と貧困者を同一してはいけないため。とはいえ,政治には制度を変えるインセンティブがない(シルバー民主主義のため)。
- 工場等制限法で利を得たのは中京圏。
- 現在の1万円札の製造原価は約20円。つまり刷りすぎの恐れがあるため,供給管理が必要(不換貨幣は管理通貨)。
- 日本政府は,デフレを需給ギャップが大きいと説明するが,ものが余っていることと,貨幣が足りないことは同値。しかし,政府がマネーが原因とは言わない。1つは日銀に関わる話しであることと,需給ギャップとマネー問題が同値であることを理解してないため。
- マネーより需給ギャップの方が,多くの人にとって腑に落ちる説明。マネーが足りないから増やすべきというと理解されない。
- 第一次大戦後のドイツは,賠償金支払いを反故にするために,経済をどんどんデフレにし,相手国に賠償金が取れないことを見せた。しかし,その過程で失業率も上昇してナチスの台頭を許した。
- 政府が支出する際に,増税でまかなっては,お金の供給が国民からの吸い上げになり効果が小さい。デフレ不況の時は,借金をして赤字財政にしてでも支出を行うのが正解。その際,日銀が国債を引き受けることで,財政政策=政府の支出増と金融政策=日銀のマネー供給を同時にやれる。
- 最低賃金を上げて景気が回復した例はない。労働時間の制限も同じ(規定外時間の残業代が労働費用の増大になるため)。
- インフレで貧困層の生活がより苦しくなるという心配があるが,歴史ではマイルドなインフレであれば所得の方がインフレ率よりも上がる。よって,マイルドなインフレにした方がよい。
- インセンティブを決めるのは制度である。今の法律は日銀が独立しすぎており,物価の安定の成果を自ら評価している状態。金融政策の失敗の責任がない。
2013/07/22
藤屋伸二(2012)『世界一わかりやすいドラッカー博士の戦略思考の授業』かんき出版
- ドラッカーが経営学者ではないという人がいるが,それはある意味当然で,本人は社会生態学者と考えており,社会が急速に会社を中心とした組織社会に移行することに気付いて経営コンサルタントを行ったからである。
- 戦略思考とは,目的を持ち,その方向に向かって目標を定め,計画的に活動して区個と。この思考を身につけるには,(1)ビジョンを持つ,(2)仕事に誇りを持ち,完璧を求める,(3)日常の中に継続学習を組み込む,(4)定期的に検証と反省を行う,(5)期待を記録して結果と比較する,(6)新しい仕事が要求するものを徹底的に考える,(7)これらの前提として,どのような人として記憶されたいかを決める。
- 戦略思考の特徴は,将来は今日つくる点にあり,現在の業績を上げるための仕事と,将来を作る仕事の2つを統合することである。(現在と将来を同時に経営するのが会社。)
- Management by Objectives and Self-Controlは,複数の目標と自己規制によるマネジメントだが,目標を単数にして自己規制を落として訳した人が,目標管理と呼んでしまい,現在と将来を同時に経営する目標を見失い,個人の主体的な貢献を無視したノルマ管理となってしまった。
- 今やっている仕事が正しいかどうかは,自分たちが決めるのではなく,経営環境が決める。環境の変化は,まず現場に現れるので,中間管理職が上の指示を待たずに対応を考えなければならない。
- 目標は大きく2つに分けられ,戦略目標(ビジョン)とその到達目安となる短期目標の2つ。前者は5年,後者は1年程度が一般。
- 経営で変えてはいけないものは,顧客にニーズに応えることであり,そのためなら戦略を変えることは悪いことではない。
- 戦略策定の前提には,経営方針(自分のポジショニング)が経営環境,事業目的,自社の強みの3つが現実に合致していて,3要素が互いに合致していないといけない。その上で,戦略を決める(事業の選択と資源の集中配分)ために,誰に,何を,どのように売るかの3要素(ビジネスモデルの骨格)を決める。
- マーケティングの基本はセグメンテーション。
- 選択と集中は誤解されやすい。コダックは世界一のフィルムメーカーで,フィルムに集中して失敗したが,富士フイルムは写真光学と化学に集中し,フィルムから医療用機器や化粧品に進出した。
- 強みは分かる言葉で表現しなければならない。商品がおいしいというのは,他社も同じ,絶妙は焼き上がり,口の中にふわっと広がる風味といわないと,他者に伝わらない。
- 強みは基準が必要。どのような状態であれば強みと言えるのか。1つは,シェアNo1などの相対評価。もう1つは,中核となるノウハウの特定(コアコンピタンス)。
- 強みを発見するには,当たり前のことができていることに気付くこと。例えば,なぜ顧客は買ってくれるのか,なぜ他社が自社をまねしないのかを考えること。
- イノベーションはマーケティングに基づいて行うことが基本。技術に基づいて行ってしまいがちだが。
- イノベーションを行うには,チャンスを分析し,関心を持ってよく見る・聞く・質問する,簡単で焦点を絞ったものにする,小規模に始める,小さい範囲でいいからトップを狙う。
- 人は求められるレベルに成長する。できると思われるよりも大きな目標を与えることが重要。具体的には,確実にできる仕事,少し難しい・広い範囲の仕事,一部にイノベーションを起こさないと達成できない仕事の3つを組み合わせて部下に与える。
- 人材にはいろいろは問題があるが,致命的じゃない弱みは無視して強みを強化する方が,生産性が上がる。
2013/03/11
飯田泰之(2012)『思考の「型」を身につけよう』朝日新書
- 経済学における合理性とは,主観的な幸せを最大化することであり,その人がよいのならいいという割り切りの考え方。これは,個人主義を基礎(他人の意思や価値観を傷つけない限りで個人の意思や価値観は最大限尊重される)とする。
- 以前の経済学は,労働価値説(商品の価値は製作に要した労働力で決まる)という客観価値説をとっていた。しかし,これでは採掘するだけの貴金属がなぜ高いか,大卒と高卒の労働の価値の差はどう決まるかという,処理する問題が増える。
- 主観価値説を認めることは,他人も主観的な価値に基づいて合理的に行動していることを受け入れることになる。他人の非合理な行動は,その人の合理的な行動である。
- 1年後の100万円をもらう問題,今日95万をもらうか,90万もらうか,85万もらうか,97万でもらった人は,割引率3%と考える。
- 割引率は,待つことの心理的費用と理解できる。
- 割引率が20%の人は,今の80万円と1年後の100万円が同じ価値,金利が20%以下なら,その人はお金を借りてしまう。
- 逆に3%の人は,金利が3%以上ならお金を使わず貯金をする。
- 割引率が低い人は資産を持ち(将来の充実を重視し),高い人は借り入れ(現在の快楽を重視)する。
- 仮に割引率を5%とすると,月割引率は1.05^(1/12)=0.4%,よって,1年後の100万と今の95万,1ヶ月後の100万と今の99.6万,1日後の100万より今の99.986万が同一。
- ところが,実際はこれよりも少ない額を人は留保する。これは,近い将来は大きく割り引き,長い将来は小さく割り引くため(=双曲割引)。締め切り1ヶ月前の執筆計画は立てられるが,当日になると守れない。
- 双曲割引がある場合は,選択肢を絞るコミットメントが有効(通常は選択肢は多い方がよい)。高額な教材を買う(サンクコスト),他店より1円でも高い商品は値下げしますなど。←これは双曲割引とは関係ない。
- 市場の長所は,顔が見えないことによって,嫉妬心とは無縁に損得勘定ができる点。人は嫉妬する生き物で,周囲に裕福な人が多いと,幸福度が下がる。金銭の授受の匿名性を高めたり,顧客に質素な姿を見せるとよい。
割引率の説明は,初学者向けにとてもよいものだが,それ以外は冗長でもっとコンパクトにできる余地がある。
2013/03/10
松田正男(2011)『わが子の「やる気」スイッチを入れる』朝日新聞出版
本書の主張は,基本的にSelf-directed Learningの重要性を説くもので,新しいものではない。
文中でも述べるよう,やる気スイッチは入れるものではなく,入るものであるが,タイトルに入れるとしてしまったのは著者の不誠実さと欲がでた証拠だろう。
文中でも述べるよう,やる気スイッチは入れるものではなく,入るものであるが,タイトルに入れるとしてしまったのは著者の不誠実さと欲がでた証拠だろう。
2013/01/29
青木幹喜(2006)『エンパワーメント経営』中央経済社
- エンパワーメントとは,本来,人間が持っているスキルや能力が発揮されること,および,発揮される場づくりである。
- 本書では,エンパワーメントを,新しい戦略を創造しうる能力と考える。これは,リストラのように模倣が容易な競争力と異なるものである。
- また,一般的な権限委譲に加え,やればできる(自己効力感・自己決定感)という心理的状態もエンパワーメントととらえる。
- 組織能力は,トップ・ミドル・組織構造・組織文化などから構成されるが,関係性の中で定義される能力であるため,わかりにくい。
- 組織能力は,個人が創造性を発揮する定性的能力(個人学習)と,創造性を発揮した結果をリンケージする能力(組織学習)で決まる。
- エンパワーメントに関する混乱は,パワーを社会学的にとらえるか(社会的交換理論),心理学的にとらえるか(モチベーション)にある。
- 促進要因が媒介変数を通じて成果に影響するモデルを考える。
- 促進要因(独立変数)には,組織特性,トップ行動,ミドル行動,権限委譲,人事制度を取る。
- 媒介変数には,サイコロジカル・エンパワーメントを取る。
- 成果(結果変数)には,創造的学習,挑戦意欲の向上,能力発揮,創造性の発揮を取る。
- 組織特性:現場歩き(貴社の社長は,経営方針・理念を浸透させるために,常日頃から現場歩きなどを行っていますか。貴社の社長は常日頃から現場歩きを行っていますか。),経営者特性(貴社の社長は,経営者としてどのような特性を備えていますか,管理者精神強⇔企業家精神強),危機感の醸成(貴社の社長は,日頃から現状に甘んじることなく高い目標を掲げ,社内に危機感を醸成していますか)
- ミドル行動:上下・左右コミュニケーション(ミドルは日常的に上下のコミュニケ−ションやミドル同士の左右のコミュニケーションを積極的に働きかけていますか),経営方針の大枠提示・具体的目標(ミドルは従業員に対し,経営方針の大枠や個人が行うべき短期の具体的目標を示していますか),トップへの影響力(貴社のトップは,新製品開発のアイディアに関して,ミドルからの提案をどの程度重要視していますか。ミドルは経営方針の大枠の下でトップに企画案を提出し,戦略策定に影響を与えることが頻繁にありますか。ミドルは部下から上がってくるアイディアを評価し,その実現に向けて上司に積極的に働きかけていますか),部下からの情報重視(ミドルは部下から上がってくる市場や技術情報をどの程度重視していると思いますか)
- 権限委譲:貴社の従業員は,仕事のやり方やスケジュールを自分自身でどの程度決めることができますか。(研究所研究員,営業部門,本社管理部門それぞれについて)
- 人事制度:失敗評価(新しいことに挑戦して失敗した人を,従来通りやって並の成果を上げた人と比べてどのように評価しますか,低⇔高),能力開発の支援(貴社の能力開発制度は,同業他社と比べてどの程度充実していますか。現行業務内容に関連する能力開発への支援はどの程度行われていますか。現行業務に限定せず個人の潜在能力を高めるため,自己啓発型能力開発への支援はどの程度行われていますか。),人事評価結果の説明(人事評価の結果説明については,被評価者に対してどのような説明が行われていますか,十分時間を取る⇔あまり行われない),人事評価と報酬の結びつき(開発された能力について,その後の人事評価で何らかの処遇に結びついていますか)
- サイコロジカル・エンパワーメント:全体感(給与や昇進のためでなく,仕事そのものが好きで熱心に働いている従業員が多いですか),自己効力感(自分の職務遂行能力に自信を持っている従業員は多いですか),有意味感(数値目標を除く貴社の経営方針・理念は,どのくらいの割合の従業員が理解していますか,一般職と管理職について。将来の事業の方向性は,どのくらいの割合の従業員が理解していますか,一般職とミドルについて)
- 結果変数:挑戦意欲(従業員に習慣を打ち破り,新しいことに挑戦しようとする意識はどの程度備わっていますか,現状維持⇔挑戦的),能力発揮(貴社の従業員の能力は,入社以来,概ねどの程度高められていますか,またどの程度発揮されていますか,本社・研究所について,あまり発揮されない⇔十分発揮),創造性発揮(従業員は,有用かつオリジナリティのあるアイディアをどの程度生み出していますか,多いに⇔あまり)
- これを,メーカー計800社弱に送り,回答者を対象企業に一任する。
2013/01/24
田久保善彦(2011)『社内を動かす力』ダイヤモンド社
- 仕事の成果=プラン×実行度と定義すれば,プランはそこそこでもやり切る方が,当然成果は高くなる。
- まず個人として信頼を高める。次に人脈を作る,特に。そして,有効に使う(=きちんと根回しをする,しっかり事前に伝える人には事前に伝える)。
- 社内を動かす力は,パワー基盤を作る,基本的なプランを構築する,実行に取りかかる,実行を継続する,自ら成長し続けるの5つからなる。
- パワー基盤を作るには,個人としての信頼の残高を増やす,意味ある人脈を作る,健全な根回しをするの3つが重要。
- 特に2点目は,意外な気づきをくれる人,困ったときに相談できる人を指す。
- プランを作るには,動画イメージが湧く動くプランを作る。特に,関わる人の力量(マインドセット,ビジネススキルなど)を前提にしたプランを作る。また,ミッションやビジョンとの整合性の担保は,つらいとき・困難なときに重要。他には,やらないことの設定やマイルストーンの設定も大事。
- 実行する際に重要なことは「スモール・ウィン」。普通の人はホームランを打てない。
- そのためには,最も効果の上がることをやる。そのためには,最悪の状況のもの,最も簡単に改善できそうなところ,最も困っている人にヘルプするなどがいい。
- そして,スモール・ウィンを積み上げるには,成果を賞賛することでチームの士気を高める。いい経営者は必ずやっている,飲みに行くも含め。できる→やりたい→やるのが楽しみ。そして,共に闘う仲間を作る。
- リーダーになると,小さな成果を祝うことを,忙しいという理由でついやめてしまう。
- 頭のいい人と仕事をやるよりも,絶対に裏切らない人と仕事をすることが大事。
- メンバーを巻き込むには,自分の想いを伝えて態度で見せる。具体的には,関係者が7W2Hについて,同じ言葉を語れる状態を作っておくこと。これなしには,しっかりしたコミュニケーションをしたことにはならない。
- 実行の継続の原則は,コミュニケーション。
- 聞き手と話し手には温度差がある。プロジェクトが始まってしばらくすると,相手と前提が異なることを忘れてしまう。Said≠Heard,Heard≠Lisetened,Listened≠Understood,Understood≠Agreed,Agreed≠Convinced,Convinced≠Action taken,Action taken≠Performance
- 最後に,自ら成長し続ける,これ抜きに誰もついてこない,誰も真面目にきいてくれない。
- 自己成長には,(1)その時のベストを尽くす,(2)ロールモデルを頭に描く,(3)メンターを持つ,(4)自らを振り返る時間を持つ,(5)身の回りにあること全てから学ぶ姿勢を持つ,(6)学び方を学ぶ,(7)集団での成長(周りの成長)を意識する
- やらされ感の問題は,「意味づけ」の問題。「何のためにこの仕事をしているのか。」これは立場に関わらず,自分の仕事の意味づけを話すことが最大の解決方法。
- 新しいやり方に移るには,聞いてもいい人から伝えてもらうか,スモール・ウィンを作る。ただし,自分のやり方に本当に固執しているか,アイディアが取るに足らないから採用されないかは見極めないといけない。
- 年配が堅くなるのはある意味当然。直接指摘すればはじかれて当然。過去の実績があって今のポジションにあるのだから。ここでもスモール・ウィンが正攻法。または,同世代の人で堅くない人から語ってもらう。
- 新規事業を本当にやりたければ,質の高い紙に落とし込む。本当に説得力のある紙ができたなら,仲間が増えるはず。ただし,ネットワークがなければ上に提案するルートがないことになる。
- 人脈は意図的・戦略的に作りにいかなければ,広がらない。ネットワークの維持・メンテナンスも時間・お金がかかるが,それでもやらないと散逸してしまう。
- 反対派の対応は,ポジションにつけること(能力がある場合)。万年野党がいけないので,与党にすること。
- リーダーシップで重要なことは,エンパワーメントだが,実際にできる人は本当に少ない。自分がやった方が早い,責任問題になる前に引き取りたいなど。
- 誠意を見せ続けるには,とにかく同じ空気を吸う。たまにしか合わない人から指示されて嬉しい人はいない。メールもこまめ&クイックレス(5分以内)。姿勢を見せる。
- リーダーの問題は,最後生き方の問題になる。自分は何が好きで,何をしたく,何を世の中に残したいかを考えることが必要。
エッセンスをまとめてしまえば,「お前がやれ」。できないのは,やっていないから。
2013/01/18
村山正治・中田行重(2012)『新しい事例検討法 PCAGIP入門:パーソン・センタード・アプローチの視点から』創元社
- PCAGIPでは,事例が主役ではなく,事例提供者が主役であり,事例提供者が事例を提出してよかったと元気になることが大切。
- ルールは,批判をしないことと,事例検討中はメモを取らず,黒板で記録を取り,質問や情報,展開過程を可視化すること。
- 少しずつ情報が出てくることが,参加者を引き込む。
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