2013/07/28

若田部昌澄(2013)『もうダマされないための経済学講義』光文社新書


  • 経済学とはインセンティブとトレードオフが重要。
  • 経済成長に必要はものはイノベーション。制度派の観点からは,所有権の保全と自由で競争的な市場機構の確立,政治の干渉を最小限にすること。ただし,知的所有権については保全を強化しすぎると弊害が大きくなる可能性もある。
  • 年金制度は負の遺産。制度を始めるときに積立がなかったために,人口成長率に依存する賦課方式となってしまった。フリードマンが国営年金に反対する理由は,貧困の問題は貧困の解決で対応し,高齢者と貧困者を同一してはいけないため。とはいえ,政治には制度を変えるインセンティブがない(シルバー民主主義のため)。
  • 工場等制限法で利を得たのは中京圏。
  • 現在の1万円札の製造原価は約20円。つまり刷りすぎの恐れがあるため,供給管理が必要(不換貨幣は管理通貨)。
  • 日本政府は,デフレを需給ギャップが大きいと説明するが,ものが余っていることと,貨幣が足りないことは同値。しかし,政府がマネーが原因とは言わない。1つは日銀に関わる話しであることと,需給ギャップとマネー問題が同値であることを理解してないため。
  • マネーより需給ギャップの方が,多くの人にとって腑に落ちる説明。マネーが足りないから増やすべきというと理解されない。
  • 第一次大戦後のドイツは,賠償金支払いを反故にするために,経済をどんどんデフレにし,相手国に賠償金が取れないことを見せた。しかし,その過程で失業率も上昇してナチスの台頭を許した。
  • 政府が支出する際に,増税でまかなっては,お金の供給が国民からの吸い上げになり効果が小さい。デフレ不況の時は,借金をして赤字財政にしてでも支出を行うのが正解。その際,日銀が国債を引き受けることで,財政政策=政府の支出増と金融政策=日銀のマネー供給を同時にやれる。
  • 最低賃金を上げて景気が回復した例はない。労働時間の制限も同じ(規定外時間の残業代が労働費用の増大になるため)。
  • インフレで貧困層の生活がより苦しくなるという心配があるが,歴史ではマイルドなインフレであれば所得の方がインフレ率よりも上がる。よって,マイルドなインフレにした方がよい。
  • インセンティブを決めるのは制度である。今の法律は日銀が独立しすぎており,物価の安定の成果を自ら評価している状態。金融政策の失敗の責任がない。
歴史から得られる教訓が豊富な1冊だが,それのみに依拠しすぎて,現在の問題への思考停止にならないかが気になる点でもある。