- 話し合いとは自分の考え方を変える(=慣れ親しんだものが見慣れないものに変わる)ためにするものである。
- 授業の2パターン:
- (1)哲学的なテーマを含んだ身近な事例を提示する→賛否両論を聞いた上で,学生同士を対話させる→対話から導かれた重要な論点を明らかにする→対話のポイントを哲学者の思想をもとに解説する→そこから導かれる新たなテーマを提示する。
- (2)前の講義から導かれた論点を振り返る→哲学者がそれに対してどう考えたかを紹介する→それを検証するための身近な事例を提示する→賛否両論を聞いた上で,学生同士を対話させる→対話から導かれた新たな論点を明らかにする。
- 白熱教室を生み出す3つの要素:(1)モラルディスカッション,(2)参加型プレゼンテーション,(3)自立的な学習コミュニティ
- 私たちを主語にして授業を進める。参加者は講義を一緒に作るパートナーであり,過去の哲学者も授業の重要な参加者として位置づける。
- ハーバードの学生は,はじめに的外れなことを発言していても,回を追うごとに着実にレベルアップする。事前に文献を良い,学生同士で対話を重ね,用意周到で授業に臨むため。東大ではそれがなく,もともとの能力の差よりも,圧倒的な勉強量の差が生み出す違い。
- 対話のファシリテーションサイクルは,(1)探求に火をつけ,参加を促す,(2)対話に巻き込み,流れを作る,(3)思考をかき回し,創発を生み出す,(4)学びを紡ぎ,新たな問いに誘うの4つ。
- サンデル教授は2つの問いを使う。1つはジレンマを含む事例の判断やその根拠に関する具体的な問い,もう1つは哲学的な原理に関する抽象的な問いで,講義全体で考えるテーマを示したり,対話を通じて生まれた新たなテーマを提示するのに使う。
- 問いを作る際には,対話が持続できるものになっているかどうかが重要。
- 問いは上手に一定のバインドをかける。アメリカ人は原爆投下に道義的責任があるか→オバマは日本に謝罪すべきか。ただし,バインドは誘導や思考操作にもなる点に注意。
- 教員の役割は,偉大な哲学者がまるでそこにいるかのようにすることで,学生の考えに挑んだり擁護したりする。
- 参加者は固有名詞として扱う(これを忠誠心についての○○のジレンマと呼ぼう)。
- ワンセンテンス・ワンパーソン。一つのセンテンスの途中で,語りかける人を変えない。順番に一人ずつ話しかける。動かして止める。ただし,それをするにはメッセージがシンプルでなければならない
- ファシリテータは,論点を常に明確にするのが役割。はじめから違う論点を言う人もいるが,そういう時に素早く戻す。
- なぜ×5は重要だが,きりがなく,根源的な問題にあたって議論が止まる。白熱教室では,道徳的な原理や原則が現れた段階で止めている。
- 授業ではあえて知織化せず,自主的な知識化を促す。質疑応答は,安易な正解を求めて自分で思考しようとしないので,そもそも質疑応答しないことも重要。
- コンテンツではなく,プロセスから得られた成果をまとめとする。互いの理解が深まった,問題の重要性が認識できた,論点が明確になった。白熱教室では,自信と美徳の力を得ることができた,意見が一致しなくても互いに学び合うことができた,正義についてともに考える力を見せてくれた。
- 一人の自律した人間として公の問題に関わり,公の場で話し合うことが白熱教室であり,これが社会の中で公共的生活を実現できるやり方である。
- ファシリテータには,論理的な頭の回転の速さ(発言の本質を見抜いたり,論点を整理してわかりやすい言葉で言い換える)と,感情的な頭の回転の速さ(場の空気を読み取り,ホットスポットを見つけ,今おこっていることを洞察する)の2つが必要。IQとEQ。
FDの教材や授業研究のヒントにもなる視点が多数埋め込まれている良書。