「大学組織を問い直す」『IDE現代の高等教育』2013.5
- いかなる組織においてもそうであるように,大学教育が革新的であるためには,業務の担い手である教職員が,組織の置かれている環境と課題を明確に理解し,自分の部署の最適化だけでなく,組織全体を展望した活動を行うことが求められる。
- 優れたマネジメントは,構成員のモチベーションを高め,能力を引き出し,組織の価値を共有させるマネジメントであり,マネジメントの役割は大きい。
- しかし,人間は自分の所属する世界がよければ,組織全体や社会全体のあり方には関心を持たないものである。マネジメントは万能薬ではなく,柔軟性に欠け,現状維持に陥りがちな大学教職員の行動様式を変容させていく仕掛けが,組織に内包されていく必要がある。
- 公私立は,将来も研究組織に基づいて教育組織を編成と考え,学長・部局長・学科長間での葛藤が小さいが,国立は学長だけが将来教育組織を研究組織を分離と考え,ギャップがある。分離型は,柔軟な組織運営の条件づくりと,学部学科を超えた教員手段を形成して,規模・範囲の経済を活かした組織の活性化を目指す。急速に変化する知識生産と需要に対応した活動が可能なように,需要業務である教育と研究を遂行できる教員組織のあり方が課題になってきた。
- 研究とは,確立したパラダイムをもとに,新しい知見を加えることで学者コミュニティに認知されるプロセスであるため,パラダイムを変革するイノベーションは,研究者の地位を危うくする。よって,研究者は意識的・無意識的に依拠する枠組みを維持し,変化を拒否する。
- 組織改革には,組織にはまって行動する教員のハビトゥスを変化させる高度な戦略性が必要である。そのために求められるマネジメントは,行動様式の変容を視野に入れた組織の移行マネジメントであるが,現状はFDに特化され,肝心の能力論に組織的社会性が欠落している。
- よって,単純な組織改革モデルではなく,各機関・組織の状況に対応した多様な組織移行モデルが提示される必要がある。
- 機関内の組織多用戦略:並行して部局横断型で学際融合型研究組織を設置
- 機関内の部局横断・学際融合型教育の推進:教員が複数の組織に属し,教育プログラムを担当(組織のマトリックス化)
- 機関内の組織的分業化:情報センター,学習支援センター,図書館などが学生の教育を担う
- 大学間の組織柔軟戦略:連合大学院
- 札幌大学の教学組織に求められる特性は,(1)教育ニーズの多様化・流動化に柔軟・機動的に対応できること,(2)よりコンパクトな教職員組織によって運営可能であること,(3)変革への意思を顕示し,社会の期待感を醸成するものであることに絞った。
- その上で,3つの学部制の限界を示した。(1)専門学部制では学生のユニバーサル化に対応しきれない(低学力者に専門教育を低年次から学ばせる悪循環),(2)教員数の削減と共に必置科目の制約が強まること,(3)学部間の障壁が総合力の発揮を妨げること。
- 名古屋経済大では,法・経済・経営の専門共通基礎科目を新設し,3学部全員の必修科目を3クラス編成にして,ここの科目を3名の教員が担当する方式をつくった。
- 日本は大学組織をあるべき形を規則によって組み立てようとするが,アメリカでは個々の活動が合理的になされるように組織化している。日本は組織を入れ物の集合体,アメリカは協調した行為の体系と見る。日本は大学には学部を置く,大学院を置くなど内部組織まで法規で定めるが,アメリカでは個々の大学がその活動に則して組織するため,ファカルティ,スクール,カレッジ,インスティテュート,ディビジョンなど多彩。(辞書的にも学校は入れ物,スクールは学ぶ者の集まりの意)。
- よって,大学組織は,学術の固有の法則と学ぶ者のニーズに従って組み立てる。