2013/07/22

藤屋伸二(2012)『世界一わかりやすいドラッカー博士の戦略思考の授業』かんき出版


  • ドラッカーが経営学者ではないという人がいるが,それはある意味当然で,本人は社会生態学者と考えており,社会が急速に会社を中心とした組織社会に移行することに気付いて経営コンサルタントを行ったからである。
  • 戦略思考とは,目的を持ち,その方向に向かって目標を定め,計画的に活動して区個と。この思考を身につけるには,(1)ビジョンを持つ,(2)仕事に誇りを持ち,完璧を求める,(3)日常の中に継続学習を組み込む,(4)定期的に検証と反省を行う,(5)期待を記録して結果と比較する,(6)新しい仕事が要求するものを徹底的に考える,(7)これらの前提として,どのような人として記憶されたいかを決める。
  • 戦略思考の特徴は,将来は今日つくる点にあり,現在の業績を上げるための仕事と,将来を作る仕事の2つを統合することである。(現在と将来を同時に経営するのが会社。)
  • Management by Objectives and Self-Controlは,複数の目標と自己規制によるマネジメントだが,目標を単数にして自己規制を落として訳した人が,目標管理と呼んでしまい,現在と将来を同時に経営する目標を見失い,個人の主体的な貢献を無視したノルマ管理となってしまった。
  • 今やっている仕事が正しいかどうかは,自分たちが決めるのではなく,経営環境が決める。環境の変化は,まず現場に現れるので,中間管理職が上の指示を待たずに対応を考えなければならない。
  • 目標は大きく2つに分けられ,戦略目標(ビジョン)とその到達目安となる短期目標の2つ。前者は5年,後者は1年程度が一般。
  • 経営で変えてはいけないものは,顧客にニーズに応えることであり,そのためなら戦略を変えることは悪いことではない。
  • 戦略策定の前提には,経営方針(自分のポジショニング)が経営環境,事業目的,自社の強みの3つが現実に合致していて,3要素が互いに合致していないといけない。その上で,戦略を決める(事業の選択と資源の集中配分)ために,誰に,何を,どのように売るかの3要素(ビジネスモデルの骨格)を決める。
  • マーケティングの基本はセグメンテーション。
  • 選択と集中は誤解されやすい。コダックは世界一のフィルムメーカーで,フィルムに集中して失敗したが,富士フイルムは写真光学と化学に集中し,フィルムから医療用機器や化粧品に進出した。
  • 強みは分かる言葉で表現しなければならない。商品がおいしいというのは,他社も同じ,絶妙は焼き上がり,口の中にふわっと広がる風味といわないと,他者に伝わらない。
  • 強みは基準が必要。どのような状態であれば強みと言えるのか。1つは,シェアNo1などの相対評価。もう1つは,中核となるノウハウの特定(コアコンピタンス)。
  • 強みを発見するには,当たり前のことができていることに気付くこと。例えば,なぜ顧客は買ってくれるのか,なぜ他社が自社をまねしないのかを考えること。
  • イノベーションはマーケティングに基づいて行うことが基本。技術に基づいて行ってしまいがちだが。
  • イノベーションを行うには,チャンスを分析し,関心を持ってよく見る・聞く・質問する,簡単で焦点を絞ったものにする,小規模に始める,小さい範囲でいいからトップを狙う。
  • 人は求められるレベルに成長する。できると思われるよりも大きな目標を与えることが重要。具体的には,確実にできる仕事,少し難しい・広い範囲の仕事,一部にイノベーションを起こさないと達成できない仕事の3つを組み合わせて部下に与える。
  • 人材にはいろいろは問題があるが,致命的じゃない弱みは無視して強みを強化する方が,生産性が上がる。
戦略思考の授業という題目であるが,内容は至って一般的なドラッカー入門書で,他の文献を読んでいるならあらためて学ぶ内容は少ない。世界一わかりやすいかどうかは別として,ドラッカーを全く知らない人が読むなら,いい入門書になるだろう。