2022/08/26

會澤綾子(2017)「高信頼性組織を支える多様性とは」『赤門マネジメント・レビュー』16(4), 193-203

  • 組織の信頼性とは:信頼性は多様性で支えられる。信頼性を実現するには、必要多様性、dynamic non-event、イナクトメントの3つの要因がある。
  • 必要多様性:「人間は複雑なシステムを管理・運用するために、人間自体がより複雑になる必要がある」(Weick 1987)
  • 集団必要多様性:「多様な個人によるチームやネットワークを組成することで、より大きな多様性を実現できる」
    • 問題発生時に、メンバーが異なる解を探すことが重要
    • 実現には、権限委譲(トップが大局的に物事を見るために必要)と対面コミュニケーション(信頼関係の構築と、信頼関係を土台にした多様な情報の浸透につながる)が必要
  • 信頼とは、目に見えず、何も起きない、動的なものである。退屈で当たり前の日々こそ変化が支えている。
    • 注意深く観察力を持ち、小さな逸脱を見逃さないようにするためには、絶えず疑念を持ち続けることが必要。
    • こうしたことこそ、賞賛されるべき。
  • イナクトメント:「環境に対する解釈、意味づけを行うことにより、その環境をコントロール可能なものとして認知すること(Weick 1979)」
    • 組織化を実行するためのサイクルのひとつ。
    • 人はイナクトメント、淘汰、保持の三つのサイクルを通すことにより、社会システムを意味あるひとつの配列として解釈することができる。
  • 環境が不安定なときにこそ、意味形成の必要がある(環境が不安定だと、そもそも意思決定自体が難しく、変化する環境にラベリングするための意味形成が必要なため)。
    • 意味形成においては集権化が重要。
    • 集権化によって、人は同種の「意思決定前提」「仮定」を扱えるようになり、これを通じて調整のいらない分権化や多様性が実現される(分権化による多様性は、集権化があってこそ機能する)。
    • 集権化から分権化を成立させるには、物語(組織文化)が必要。物語が集権化された価値を思い出させ、多くの事実を結びつけられる。複雑なことも、物語を通じて再構築されると、人間の行動に内在する必要多様性を高めることができる。
  • カップリングがタイトでインタラクションが複雑な組織は、事故が起こりやすい。
  • 組織のマインドフルネス:5つの条件で支えられる状態
    • マインドフルネス=「多角的視点を持ち、文脈への気づきなど、創造的に物事を考えられる状態(Langer 1989)」
    • 5つの条件:「失敗から学ぶ」「単純化を許さない」「オペレーションを重視する」「復旧能力を高める」「専門能力を尊重する」

2022/08/22

白水始(2012)「認知科学と学習科学における知識の転移」『人工知能学会誌』27(4), 347-358

  • 転移と教育は密接に関係する:転移は本来認知現場→転移させると言いがち。
  • 2つの転移の混在
    • ソーンダイク:transfer outとしての転移=すでに起きてしまった現象を指す
    • フロイト:transfer inとしての転移=将来起きる現象を指す
  • 転移と似た概念:陶冶
    • 形式陶冶:あることを学んだ記憶力や抽象化などのスキルが他の分野にも使える(ラテン語を学ぶのはラテン語を使うためではない)
    • 実質陶冶:学んだことの内容そのものが役立つ(←領域知識の転移に相当)
  • ソーンダイクの形式陶冶批判:転移は、転移課題Bの内容が学習課題Aに含まれている場合に起きる(人の転移能力を矮小化したとも言える)
  • 状況論者のレイブ:転移という考え方自体を捨てるべき(実験者の想定した範囲だけで転移を評価している、知識は文脈から切り離せないなずなのに、転移には経験から知識の抽象化が必要と考えている)
  • 認知心理学の転移:知っていれば使える(個人の頭の中に十分な知識が蓄積されれば起きると考える)→状況論の転移:知識を使うには、知識を行使する行為が含まれる、それには知識の持ち主として振る舞うことが許される状況にいるかが転移の成否に影響する。→
  • 認知心理学の転移:実験者が転移のゴールを決め、その期待する範囲解に参加者がいたったかで転移を評価→学習者中心論:実験者側の意図しない解法でも参加者視点から学んだことを一般化しようとしたものがあれば転移にならないか。(教師が高次の解法を教えても学習者は自分なりに了解した低次な解法を使い続けることはよくある。)

2022/08/17

Five Strategies to Give Life to Class Discussions

  1.  授業開始前に学習内容に触れておき、話す準備をする。
    • 5分以内のビデオを公開し、文献の要旨や注目してほしい論点に触れる
  2. 学生に質問や意見を持ってから教室に来るよう準備する。
    • リーディングに対して5つの質問を用意させる:不明確な点について明確にする質問を2つ、概念・原理・理論の活用や応用を問う質問を2つ、著者の結論の示唆や批判に関する質問を1つ。
    • 3-2-1アクティビティ:文献の内容を端的に捉える言葉を3つ、著者に質問したい言葉を2つ、文献の要点を表現する比喩・直喩の言葉を1つ
  3. 学生に自分が知っていること・知りたいことを毎回書かせ、相互に閲覧させる。
    • 高次の思考を促せる。
    • 学生の現在の理解レベルを把握できる。
  4. 議論を途中で打ち切り、知っていること・知りたいことを2分で書かせる。
    • 全員の知識の状態を知ることができる。
    • 学生がグループ内だけでなく、グループ間でつながりを持てる。
  5. 学生に教え合うことを求める。
    • 多人数授業でも個人の声が聞こえる環境ができれば、学生はどの程度他者に依存してよいかを自分で判断できるようになる。

2022/08/16

Tapping Into Higher-Level Thinking in Online Courses

  •  オンライン議論では、まず教員の期待を明確にする:期限、ネチケット、成績への反映、議論の目的、学習活動との関連性を伝える
  • 優れた議論は、問題基盤の焦点化された問いかけから始まる。それは、学生に論拠を示したり、前提を評価・検証したり、示唆を示したり、帰結を予測したりすることを求める。
  • 収束質問:ある内容を理解したことを示すために、新しい方法で情報を解釈することを求める質問。タキソノミーで言う、判断、説明、演示、支持。
  • 拡散質問:あるシナリオの代替的な帰結を問う質問。
  • 焦点化質問で思考の振り返りの後で、議論の促進を行う。ここでは、お互いのアイディアを尊重することを重視し、学生のコメントに対して裏付けを求めるコメントを行う
    • ○○という時、何を意味しますか?
    • この言葉はどのように言い換えられますか?
    • その点についてもう少し説明してくれますか?


2022/08/15

Fourteen Simple Strategies to Reduce Cheating on Online Examinations

 オンライン試験で不正を防ぐ

  1. 高次の思考を求める問題を出す
  2. 質問の形式を多様にする:正誤や多肢選択だけでなく、オープンエンドを入れる
  3. オンライン試験のガイドラインを説明したビデオを見せる
  4. 学術倫理文書に署名をさせる
  5. 試験時間を指定する(複数のタイムゾーンがある場合は、その数だけ試験を作る)
  6. 1画面に表示される問題を1つにする
  7. 後戻りを禁止する:1画面1問題、1回の回答が最終回答
  8. 問題の順番を回答者ごとに変える
  9. 同じ問題の別バージョンを用意する
  10. 受験機会を1回に制限する
  11. 技術的トラブル対応のための、予備試験を行う
  12. 得点をすぐに開示せず、回答や回答のヒントを先に示す
  13. 出版社のテスト問題バンクの利用を避ける
  14. 学生が間違えた問題のみをフィードバックし、解答を示さない


https://www.facultyfocus.com/articles/educational-assessment/fourteen-simple-strategies-to-reduce-cheating-on-online-examinations/

2022/08/14

The Difference Between Emergency Remote Teaching and Online Learning

 オンライン学習を分類する視点
  • Modality
    • Fully online
    • Blended (over 50% online)
    • Blended (25–50% online)
    • Web-enabled F2F
  • Pacing
    • Self-paced (open entry, open exit)
    •  Class-paced
    • Class-paced with some self-paced
  • Student-Instructor Ratio
    • < 35 to 1
    • 36–99 to 1
    • 100–999 to 1
    • > 1,000 to 1
  • Pedagogy
    • Expository
    • Practice
    • Exploratory
    • Collaborative
  • Role of Online Assessments
    • Determine if student is ready for new content
    • Tell system how to support the student (adaptive instruction)
    • Provide student or teacher with information about learning state
    • Input to grade
    • Identify students at risk of failure
  • Instructor Role Online
    • Active instruction online
    • Small presence online
    • None
  • Student Role Online
    • Listen or read
    • Complete problems or answer questions
    • Explore simulation and resources
    • Collaborate with peers
  • Online Communication Synchrony
    • Asynchronous only
    • Synchronous only
    • Some blend of both
  • Source of Feedback
    • Automated
    • Teacher
    • Peers



2022/08/13

Student-Centered Remote Teaching: Lessons Learned from Online Education

  •  オンライン授業のデザインでは3つの活動の設計から始める。
    • 学生と内容のインタラクション
    • 学生間のインタラクション
    • 学生と教員のインタラクション
  • 学生と内容のインタラクション
    • 基本は「意味のある何かを行うこと」「学習を振り返ること」
    • リーディングノアとの活動例
      • 要旨を書く
      • 要旨をスライドにまとめる
      • 学んだこと5点と質問1点を書かせる
      • 明快になったことと不明瞭なことを書く
      • 過程を図式化する
      • インフォグラフィックを作る
    • 同期講義の後の活動例
      • 質問を出しシンク・ペア・シェアで理解を深める
      • 投票で理解を確認する
      • ホワイトボードに考えを図式化する
  • 学生間のインタラクション
    • 高次の思考を促すために行う
    • 活動例
      • 掲示板に意見を書かせる(ディベートで賛成と反対の立場を事前に指定する)
      • アサインメントに対するピアレビューを行う
      • グループでプレゼンをする
      • 学習内容を理解するためのボードゲーム作成を行う
      • 次年度履修する学生のための学習ガイドを作成する
  • 学生と教員のインタラクション
    • 単に質問に答える以上のことを行うために行う
    • 活動例
      • 学生が掲示板に書き込んだことに絡む
      • よく出る質問に対する回答をまとめた短いビデオを公開する
      • アサインメントに対して詳しいフィードバックを返す
      • オンラインでオフィスアワーを設ける

2022/08/12

Hybrid, HyFlex, Online, and Everything in Between: Course Models at a Glance

 オンライン学習のモデルの分類

  • 3つの要素それぞれに2つの選択肢がある
    • 場所:教室 VS 遠隔
    • 時間:指定 VS 無指定
    • 媒体:デスクトップ VS モバイル
  • 対面授業=教室・時間指定・デスクトップ
  • ブレンド授業=教室・時間指定・デスクトップ/モバイル
  • ハイブリッド授業=教室/遠隔・時間指定/無指定・モバイル
  • ハイフレックス授業=全ての選択を選べる
  • 完全オンライン授業=遠隔・時間指定/無指定・モバイル

2022/08/11

Course Design Models: Blended, Hybrid, Flipped, HyFlex

  •  ブレンド
    • 対面とオンラインを学習経験として整合的に統合したもの。
    • オンライン学習は対面の補足として位置づける。
  • ハイブリッド
    • 対面の学習をオンラインに置き換えるもので、学習の中心はオンラインで行われる。
    • オンライン学習は同期と非同期のどちらもありうる。
  • 反転
    • 基礎学習をオンラインで事前に行うもの。基礎知己の拡張を対面学習で行う。
    • 反転授業はブレンドの一種であり、ハイブリッドで行うこともできる。
  • ハイフレックス
    • 授業を対面、同期オンライン、非同期オンラインで提供するもの。
    • 学生は参加方法、コンテンツへの接触方法を授業期間中いつでも変えられる。

2022/08/07

松嶋登・高橋勅徳(2007)「制度的企業家の概念規定:埋め込まれたエージェンシーのパラドクスに対する理論的考察」『神戸大学経営学部ディスカッションペーパー』2007−48

  • 制度的企業家:制度に埋め込まれながら制度を変革する企業家(矛盾を含む)
  • 古典的企業家論:企業家を制度変革主体と捉えた(=エリート主義的起業家像)←2つの方向で検討された
    • 企業家の心性の解明:プロテスタントとしての職業倫理が家庭教育・教育制度を通じて刷り込まれた心性である。
    • 経済発展それ自体が制度化されたものである:企業家の存在を前提としながら、彼らが新結合を遂行する際に初診機能を果たす銀行家、新結合のルーチンを維持する管理者との総合的な関係性のこと。
  • →経済発展の果てに、企業の大規模化・集中化が生じ、経済活動は合理化・非人格化され、企業家の役割そのものが消失すると考えられていた(=経済を1つの機械として管理する時代精神を生む→社会主義という新たな制度への移行)。←エリートの存在を前提にしている。
  • エリート像研究から企業家研究は問いを変えた:現実の企業家行動は何か
    • →イノベーションの担い手としての企業家という位置付けは継承されたため、既存制度を所与とした企業家による正当性獲得(=イノベーションの実現に必要な資源動員に利害関係者の説得が必要なため)の議論に。
  • 現在の関心:企業家による制度変革のメカニズム(これまでの研究は、企業家を制度の変革者としながらその論理を無視してきた)
    • 背景:制度変化への関心が高まった(新制度論は制度的環境への服従という単純モデルだった)
    • ただし、制度の中心・周辺議論に一貫性がない問題がある(新興産業で正統性を得る研究=周辺と、成熟産業でサービス多様化を描く研究=中心など)。←研究者の都合で、中心か周辺かが選ばれている。
    • いずれも、企業家は制度から距離を置いた特殊なエージェンシーの持ち主という前提を置いていることが問題(だから、制度の中心に位置づく企業家も、外部環境変化などの外生要因がないと制度変革ができない)。
  • →制度と企業家を二元配置せず、企業家のエージェンシーの発言論理が必要:企業家が制度的慣行を実践の内から経験し、埋め込まれた制度を見直していく省察能力について、企業家の能力に還元せずに説明する論理を確立すること。

2022/08/06

盛山和夫(1996)「制度論の方法について」『社会学評論』46(4), 466-468

  • 仮に制度がモノのように存在していたら、方法論が特に問題にならない。
    • モノの世界は直接に理論的な言語系によって記述できる
    • モノの世界は、それを貫くなんらかの普遍的な構造が存在すると仮定できる
    • しかし、制度的世界は人々の思念した意味から成り立っており、まず人々の一次理論によって記述される。
    • その意味は個人間、異なる文化間で同一とはかぎらない。普遍的な構造を容易に仮定できない。
    • 意味を記述する言語自体も何らかの制度的な文化圏に属さざるをえない。
  • つまり、意味という個別的存在について、普遍的な認識が可能かという解釈学的難関がある。

2022/08/05

Yuzhuo Cai & Nicola Mountford, (2022) Institutional logics analysis in higher education research, Studies in Higher Education, 47:8, 1627-1651

  •  制度ロジックの高等教育研究への応用は、いくつか誤解や混乱がある。
  • 制度ロジックは、旧制度論、新制度論、制度的企業家、制度的実践等に並ぶ制度理論
  • 現在確立した制度ロジックは8つ:国家、市場、家族、民主主義、宗教、+専門職、企業、+地域
  • 制度ロジックの中心的価値
    • 行為や葛藤に対して意味を付与する組織を超えたパターンを用いて、制度という抽象的な概念を具体的に描く
    • 複雑な制度環境を観察するレンズを提供する(組織、社会の双方の変化や革新の動態に複数のロジックを提供できる
    • 埋め込まれた主体の矛盾を説明できる。組織内の主体の行為が所与の制度に制約される時に、どのように・なぜ制度や組織の行為が引き出されるのか?
    • 社会レベルで機能的に使われたロジックは、市場、専門職、国家権威の3つ=クラークの調整の三角形(3つの力の間の調整や力学の中で高等教育システムのあり方が決まる)と同じ
  • 社会レベルの機能的アプローチ:多くは制度ロジックの理論と方法論に厳密に従う傾向にあるが、2つの問題がある。(1)社会ロジックの理念型が西欧社会に依拠し、非西欧の分析に限界がある、(2)高等教育研究では、西欧研究でも理念型の拡張がされる傾向にある(マネジリアルロジックとか組織ロジックとか、社会レベルのロジックではないのに事由に定義されてしまっている)。
  • フィールドレベルで使われるロジック:アカデミック、市場、専門職、商業、マネジリアル、産業としての高等教育、社会としての高等教育、科学、ビジネス、学問的自律等←これらは十分に定義されていないし、トレースもできない。また、著者によりロジックの解釈が違ったり、別のロジックを同じ意味で使っている。
  • フィールドレベルの演繹的アプローチは最も前途があるが問題が多い。高等教育分野の理念型を特定できる点で有望だが、先行研究のロジックの定義に従わずに事由にロジックを定義してしまうことは問題。
    • これは難しい問題でもある。1つはロジックが少なすぎてもよくない。基本の8つで本当によいのか。一方で、ロジックが量産されてもいけない。ロジックはシンプルであるべき。
  • 帰納的か演繹的かは、ミックスで考えるべき。データから見出せるロジックを整理することと、既存のロジックをデータで検証することはどちらも重要。

2022/08/03

Thornton, P. and Ocasio, W. (2008) Institutional Logics, in Royston Greenwood, Christine Oliver, Roy Suddaby & Kerstin Sahlin, eds, The SAGE Handbook of Organizational Institutionalism, Chapter 3, 99-129

  • 制度ロジックを理解するには、制度理論の歴史を知る必要がある。
    • 転機は1970年代のMeyer& Rowan (1977)など:組織は外部環境(ルール)に従わね馬ならず、テクニカルコアを守るために構造がルースカップルになるという指摘。
    • DiMaggio & Powell (1983)はこれを発展させて、新制度論(=合理性より正当性)、すなわち、模倣的同型化を指摘する。
    • これを経て、Friedland & Alford (1991)の制度ロジック=制度の内容と意味につながる。
    • 新制度論の関心は同型化、制度ロジックの関心は制度と行為のつながりが関心。つまり、ミクロとマクロを接続する理論。
  • 近代西欧社会の制度に埋め込まれた慣習と信念:資本主義、国家官僚制、民主主義政治の3つが制度的秩序(社会の中心的制度)であり、個人がどう振る舞うかの慣習や信念に差を生むもの。
  • 制度ロジックの定義:社会的に構築されるもので、個人が現実社会に意味づけを行ったり、時間や空間を調整したり、生存のための活動を生産・再生産することで作られる、日常の実践、仮定・価値観・信念、ルールの歴史的パターン
  • 制度ロジックの基本的な前提=個人が持つ関心、アイデンティティ、価値、仮定は、個人を覆う制度ロジックの中に埋め込まれている。意思決定や成果は、個人が制度構造との相互作用の結果として生じるもの。個人や組織は、権威や地位を求めるものの、それも制度ロジックの制約の範囲内でしか得られない。社会は3つの主体で構成される:個人(競争と交渉をする)、組織(葛藤と調整を行う)、制度(矛盾と相互依存を扱う)。つまり、社会に単一の合理性は存在しない。例えば、病院は市場、民主主義国家、医療専門職のロジックで形成される。
  • 制度ロジック研究では、動機づけや行為が合理的か否かではなく、複数の制度ロジックの相対的な葛藤や調和が、個人や組織の行動にどう影響するかを重視する。
  • 研究においては、イベントヒストリー分析、解釈的手法、トライアンギュレーション、理念型が重要。データには、インタビュー、ドキュメント、演説、新聞などが使われ、分析方法には、系図分析、会話分析、内容分析などが使われる。トライアンギュレーションには、解釈と仮説検証のミックスが望ましい。
  • 複数の理念型は、意味と行動について、仮説と現実を比較する物差しとして機能する。
  • 理念型はルーブリックのようなもの、縦にカテゴリー、横に市場や専門職など。

2022/08/02

奈須正裕(2022)『個別最適な学びの足場を組む』教育開発研究所


  •  個別最適な学びの2つの構成要素:指導の個別化、学習の個性化
    • 指導の個別化:個人の特性、学習進度、学習到達度に応じて、指導方法、教材、学習時間の柔軟な提供・せっていを行う
    • 学習の個性化:基礎的な資質・能力を土台として、興味・関心・キャリアの方向に応じて課題の設定、情報の収集・整理・分析、まとめ・表現を行う機会を提供することで、子ども自身が学習が最適となるよう調整すること
  • 日本の歴史では個別指導が中心、一斉指導は近代革命後の短い期間しかない
  • コンピテンシー:対象や場面と適切に関われる有能さ(competencyを訳出した行政用語)
  • これまでの学校は自立した学習者を育ててこなかった:臨時休業で指示がないと何をしていいか分からない子どもがいた
  • 一斉指導は発明されたもの、1対1指導がもとも生産的(一斉指導の4倍の速さで同じ水準に達成する)。個別指導は大学生でもできるが、一斉指導はうまくできない。
  • ドリル学習の問題は、なぜそれが正解かを理解せずに、単なる手続きや行動として学んでしまうこと。スモールステップのプログラム学習は、外化と即時フィードバックで状況の確認が行われるため、意味理解が促進されることも多い。
  • 繰り下がりの引き算をいつも間違える子:借りるものは返さないとと考えていた→プレゼントにしたら間違えなくなった。こういう指導はAIにできない。
  • マスタリーラーニングの手順=一斉指導+習熟度別指導
    • 指導単元の教育目標の分析と授業内容の具体化をする=学習内容を縦、行動目標を横に配列したマトリクスで目標の細分化表を作る
    • 一斉指導で教える
    • 形成的テストを実施する:15~20分で自己採点できるもの
    • 学習が成立しなかった子=個別指導、子ども同士の教えあい、視聴覚教材などによる補充学習、学習が成立した子=定着を促す課題、発展的課題を与える
    • 総括的評価のテストを実施
  • 能力別学級編成が効果を上げない理由:指導法や教材の最適化が行われていない。能力別学級編成自体は、個別最適な学びではない。子どもを小集団に分けただけで、同じ指導、同じ教材では学力は上がらない。
  • 言語性知能の高いこと低い子には別の語学指導を行う:高い=文法中心、低い=会話中心 ← 教材は柔軟に提供されるべき


  • 子どもが主体的になれないと言うが、単元の構成も、何時間で学ぶかも伝えず、シナリオである指導案を受け取らないのに主体的に考えられるわけない。まず、基本的な情報の共有から始めるべき。
  • 個別学習の実学習時間は、総学習時間の91%。学習効率は高い。時間が足りなくて教科書が終わらないというのは、一斉指導における学習効率が低いから。
  • 個別最適な学びは、顧客満足的なサービス提供に陥ったり、分断を作らないか心配になるが、理念やカリキュラムのレベルで検討されればできる。
  • 国語の物語学習を、生物学的に検討した例:異端の迫り方をしたことで、かえって文学的なアプローチをとることの意味の自覚かを促した。
  • 一斉指導はテレビ、個別指導は読書、自分が開いて読まないといつまでたっても始まらない。
  • 個別最適な学びの2つの意味:(1)個に応じた多様な教材・学習時間・方法の柔軟な提供、(2)自分に最適な学びを自力で計画・実行できるこどもの育成
    • 1は手段、2は目的だが、1がないと2は生じない。
  • 自由進度学習には早修(Acceleration)と拡充(enrichment)がある。日本は拡充を基本とし、外国は早修を認めている。

2022/08/01

Maassen, P. (2017) The university's governance paradox. Higher Education Quarterly.71:290-298.

  •  ガバナンスのパラドックス
    • (1)威信を高める大学のプロフィールをトップダウンで作ることは、特定の成果を伴わない活動である
    • (2)生産性の高い研究者の自律性を制限することで、大学の職場としての魅力を毀損し、優れた学生の忌避につながる
  • ボトムラインマネジメント:全体に同質の生産性や成果を求める単一解型マネジメント
    • 現実は高生産性研究者はボトムラインマネジメントから除外しなければならない
    • →いくつかの大学はそれに気づき、より柔軟で学術主体のマネジメントへ。
  • 執行部は改革計画の概念に沿った機関運営を志向し、改革の意図の実現がおろそかになる。
  • こうしたパラドックスは、大学の伝統・歴史と公式組織構造を無視することから生じる。
  • 実際、教員には教育者としての役割が期待されるが、採用プロセスでは学問分野の価値と選考基準にそってキャリアと研究成果が評価される。