2018/06/04

マーチ,J. ・オルセン,J.(1986)『組織におけるあいまいさと決定』有斐閣


  • 組織でよく見られる事象
    • 膨大なエネルギーを投入した意思決定が実行されない
    • 重大な意思決定がわずかな参加者で決められる
    • 意思決定への参加は積極的だが実行段階では無関心になる
  • 組織における4つの曖昧さ
    • 意図:組織は矛盾した不明瞭な目的を持っている
    • 理解:組織が置かれる世界の因果律が不明確(環境解釈不明確、組織の行為と結果の関係も不明確)
    • 歴史:過去は重要だが、解釈は難しい。歴史は作り変えられ、捏造される。
    • 組織:個人が決定に払う注意、参加のパターンがバラバラ。
  • 組織の選択の完全サイクル(とその限界)
    • 諸個人が持つ認識や選好が行動の影響する
      • 注意は参加可能な選択状況の束に依存し、最も高い期待報酬を持つ選択から順に参加する。
    • 諸個人の行動(参加)は、組織の選択に影響する
      • 組織の行動は各個人の行為から導かれるのではなく、個人と組織の行為の繋がりはルーズ。組織行為以外の、友情・好意・忠誠・グループの関心とも結びついている。
    • 組織の選択は、環境の変化(反応)に影響する
      • 環境自身の要因と構造との関係も重要。
    • 環境の変化は、個人の認識や選好に影響する
      • 環境で何が起こったかは曖昧であることが多い。
  • 組織理解の潜在的誤謬
    • 生じたと見えたものが実際に生じたと思うこと
    • 生じたものは生じるよう意図されたものと思うこと
      • (組織内の意思決定の無垢な過程は、参加者の意図的行為よりも強力な外征要因によって簡単に蹂躙される)
    • 生じたものは生じなければならなかったと思うこと

  • 官僚制組織:主眼を問題解決に起き、選択は問題を解くために行われる
    • 目的が正確に設定され、選択と結果の因果関係は十分知られ、個人・グループは安定した分業を通して決定に専門化していると仮定。
  • 政治的組織:選択は問題に対して共通の解を強制するだけの十分な力を持ったグループを形成することでなされる
    • 参加者の選好は明確で、政治ゲームの構造も明確で、参加パターンとパワーが安定していると仮定。
  • これらの関連性はいずれも明確でない:特に教育組織では、選好(多様な目的のルーズな集まり、因果関係(メンバーは生き残りのメカニズムを理解していない)、参加(流動的で労力をやりくりしながら参加する)が不明確。
  • ゴミ箱式決定過程
    • 選択機会は参加者が問題や解を投げ込むゴミ箱
    • 問題:キャリア、ライフスタイル、不満、集団関係、地位・仕事・資源配分、イデオロギーから生じる。
    • 解:問題からではなく、問題と関係ない誰かが生み出す。
    • 参加者:出たり入ったりする(参加者が他のものにどれくらい時間を使わなければならないかに左右される)
    • 選択機会:定期的に現れる
  • ゴミ箱過程では、3つの意思決定がある
    • 見過ごし:問題が全て他の選択機会に振り分けられた時に、選択機会が新たに生まれる。そこに選択のためのエネルギーが入れば、問題うんぬんではなく、最小の時間とエネルギーで選択が行われる。
    • 飛ばし:問題にとってより魅力的な選択機会がやってくるまで問題を抱えたままにする。
    • 解決:ある選択機会は、一定時間をかけたのちに、問題が解かれる。(多くの人が思うのはこれ。)
  • ゴミ箱過程は説明できるものの、これを前提にコントロールすることはできない。

  • 注意のパターンは基本的に不安定である
    • システムについて情報を持つ者とそうでない者では、活動レベル・注意配分が異なる。
    • 議論の内容がスポーツから予算の話になると、話の主役が一変する。
  • 注意配分の構造(=注意の配分を制約する強制力のあるルール)
    • 上限規定:誰が何に参加してよいか、どの問題がいかなる選択に際して議論されてよいか、どの解とどの問題をマッチさせてよいかの指示。
    • 下限規定:何が生起しなければならないかの指示。
    • 3つの型
      • 無差別構造:注意配分への制限が一様(上限:誰でも全てに参加、どんな問題もどう議論してもよい。下限:全ての人に参加が強いられ、全ての問題は議論されなければならず、全ての解がどの問題にも適切。)
      • 専門的構造:注意配分は、個人・選択・問題・解の専門により行われる(ある人は関与してよい・関与しなければならない)
      • 階層的構造:注意配分は、個人・選択・問題・解の序列により行われる(低層の人は重要でない問題に関与できる)
  • 組織内の注意配分構造に違いを生み出す要因
    • 相互依存性:強いほど集団による意思決定の正当性が大きくなる
    • 能力のばらつき:能力が多様化するほど、専門・階層(差別的)注意配分構造の正当性が強くなる
    • 価値と資源のばらつき:主流派内で同質だが組織全体で異質な場合は差別的、主流派内で異質な場合は無差別的。
  • 注意の取引:相互作用にも注目しなければならない
    • 注意は買える:代理を雇って参加義務を果たす
    • 注意は取引できる:2人の間で一方の会議に出て双方の利益を重視する代わり、他方が別の会議に出る
    • 注意をまとめる:代表を通して多くの他者の注意を反映する
    • 注意を強迫する:出席しないことで、自分の反応を他者に計らせる

  • 組織の知は2つの基本的過程から成り立つ
    • 合理的計算:計画、分析、予測により選択する
    • 経験による学習:フィードバックに沿って選択する
    • 合理性による意思決定の限界 → 試行錯誤による知を活用して決定
  • 学習の不完全なサイクル
    • 個人の確信 →× 個人の行動:役割制約学習
    • 組織の行動 →× 環境の反応:迷信的学習
    • 個人の行動 →× 組織の行動:傍観者的学習
    • 環境の反応 →× 個人の確信:曖昧さのもとでの学習

  • 合理的選択の前提
    • 目的の先与:選択は目的を前提にして解釈するのが当然
    • 首尾一貫性の要請
    • 合理性の優先:結果と目的は整然と関連づけられる
  • 価値前提が十分定まっていない・定まるわけない場合は、合理的選択で説明できない。
  • 遊びを理性の対として機能的に補えるようにする。
  • 遊び(フーリッシュネス)のための仕掛け
    • 目標を仮のものと考えよ
    • 直感を重視せよ
    • 偽善を讃えよ(変化を阻止しないために良い意図を持つ悪人の実験を励ます)
    • 記憶を敵とせよ
    • 経験を便宜論の1つと考えよ

  • マネジメントの各手法の効果は、参加者によって正当とみなされる程度に左右される。
    • =リーダー・フォロワーの関係は、リーダーの活動が組織の基本的イデオロギーと一致しているか。
    • =リーダーが規範から逸脱→フォロワーの抵抗とリーダーシップの失敗
  • 組織化された無秩序
    • 現実の選択に適用できる首尾一貫した選好システムがない代わりに、みんながありがたがる象徴(民主主義、自主性)が好まれる
    • 決定を下さなければならない状況では、因果についての知識は明白でない。どんな解がどの問題を解くかは、個人の判断に属する。
    • 決定への参加者はルールや義務で定まらない。誰がどの選択に参加するかの予測は困難。
  • 意思決定とは、結論に次第に近づいていくダイナミクスだと思うかもしれないが、実際はそうではない。
    • 主役のメンバー:組織の古顔、会議に皆勤、活発なグループに属する(と自分をみなしている)、交際範囲は狭い

  • 意思決定に関する支配的な見方
    • 時間の分節:決定過程には初期段階と最終段階があると思われている
    • 参加者の分節:決定過程は明瞭に区別され安定した参加者が牽引すると思われている
    • 意図の分節:意思決定過程の行為者は明確な意図を持っていると思われている
    • 重要性の分節:意思決定の行為者は、特定の決定を重要視していると思われている
  • これらは当てはまらない
    • 問題は解かれるのではなく、問題をキャッチボールするなかで副産物として決定が生み出される。

  • 組織の再編成も、問題が生じ、分析され、再編成され、問題が解決されるというよりもゴミ箱式であることが多い。
  • 組織再編成は、問題と解が自由に近接できるため、実務的な問題に加えて象徴的な問題も引きつけ、一層解釈が複雑になる。