坂井素思(2010)『社会経済組織論』放送大学教育振興会
- 社会組織とは,人びとの「社会的協力」を結集する仕組みのこと。組織における協力とは,複数の人びとが集まることで,一人ではできないような作業が可能になるということ。
- 組織といえば,近代では企業組織が代名詞として君臨してきた。しかし,企業組織だけに限って考察するのではなく,社会組織という広い視野から考えるメリットは,組織というものが個人にも集団そのものにも還元できないことをみようという点にある。
- 近代社会は協力関係を引き出すことに組織を利用してきた。この社会組織に存在する「集団効果」が 重要だと考えたからだ。
- 近代社会の全体に関わるテーマとして,人 びとの参加する組織(協力の及ぼす凝集性の程度)を大きくするか小さくするかという組織規模の問題がある。
- 社会に現れるルール化された一定のパターンを秩序と呼ぶ。近代社会はルール化を行って,社会の公式的な組織を発達させてきた。特に,社会経済のルールは暗黙のルールが非常に多く,すべてが成文化され法律のように一字一 句守らなければいけない文書になっているルールはほとんどない。誰も教えてくれない,体得しなければ 分からないルールがある(暗黙知)。→ 社会組織には協力を結集するための共通の基盤が 必要。
- 公式組織とは,明示的なルールによって定義付けることのできる社会的協力のこと。
- 表に出す公式的な方を積極化させ,裏に回る非公式的な方を消極化させることで,社会における活動に変化を与える近代社会のダイナミックな動きの一つ。
- 縦に公式・非公式,横に公的・私的をとると,政府・市場・家族・コミュニティが相当。
- 非公式組織:(1)態度,理解,慣習,制度を確立する機能を持つ,(2)公式組織の発生条件を創造する機能を持つ。
- 公式組織に対して持つ非公式組織の機能:(1)コミュニ ケーション機能,(2)公式組織の凝集性を高める機能,(3)各人の個性を維持する機能を持つ。
- なぜ近代社会はフォーマル化を必要としたのか:(1)社会的協力をあたかも大量生産のように,大規模に作り出すことが可能,(2)自らが「獲得していくもの」という動機付けの性格を強めた(人びとが社会的な協力を作り出すには,動機付けの装置が必要),(3)機械設備を通じて,労働にかかわる公式組織の問題への影響となって現れた。
- 個人が組織に参加し,協力を形成するとき,個人は人格としは二つに分裂していて,そこに個人人格と組織人格とを発生させている。
- 自己を分裂にまで追いやってまで,なぜ組織を形成するのか:
- 個人:二つに分裂して活動を行うことで,個人は自分の領野を拡大できる,
- 組織:より組織に適した個人の部分(エー ジェント)を手に入れられる。
- 本来の自分をプリンシパル(本人)と呼ぶのに対し,役割を演じる活動媒体としての自分をエージェント(代理人)と呼ぶ。
- もし組織の中で上下関係を受け入れる者が互いに協力しあって大きな仕事をする場合,個人にはエージェントとしての自覚が必要になる。
- 専門化が進めば進むだけ,生産過程に分業体制が浸透するので,分業が起これば起こるだけ互いの関係が分断されていく。
- X非効率:組織が大きくなればなるほど非効率性が存在するという問題。
- トップと底辺の距離が重要:この距離が広がるとエージェントが遠のき,分離を起こす。近い関係だと一体感や信頼 性が醸成されるが,遠くなればなるほどインセンテイプやコミットメン トが阻害される可能性が高くなり,信頼性も距離が遠くなるに従って薄 くなる。
- なぜ階層が必要なのか:
- ヒエラルヒーに位置づけられることで,個人は安定したアイデンティティを得られる場合がある。
- 階層制という上下関係が社会組織で維持されるためには,「統制原理」が必要。この原理が有効に働くためには,上位者の命令・指令に従うことが,業務の原則として人びとの間に共有されている必要がある。
- 上位者が重要な意思決定を行うために,情報の流れた集権的。
- ウェーバーの3支配:伝統的支配(主従関係),カリスマ支配,合法的支配
- 官僚制の特徴
- 精確性・迅速性・明確性・文書に対する精通・継続'性・慎重性・統一性・厳格な服従関係・摩擦の防止・物的および人的識用の節約」などは,きわめて人間関係の中でも中立的で技術的過程を特徴付ける性質。
- 「計算可能な規則」:将来の不確実な状態を安定に導くような技術的専門性(怒りも興奮もなく支配,「薄い」人間関係を要求)。
- 専門性:部門ごとに専門家が集まることで,その部門の仕事を正確に行い,糖通しているという利点がある。
- 分業:自分の最も得意な分野について,最大限能力を発揮できる ⇔ 権限が分割されており,役割が切り離され分離されてしまうため,共同の仕事が遂行できない。
- 規律:ルールの定めた権限の範囲内のことしか行ってはいけない=公平性の担保 ⇔ 硬直的・文書主義,柔軟な決定できない
- 非人格的:特定の人に対して奉仕するのではなく,不特定多数の市民に対してサービスを行うべき
- 近代的な権力というのは,有効性においてそれ以前の時代とはきわめて異なっており,強い権力の働く世界ではなく,弱い権力の働く世界へ移行したことをウェーバーは認識していた。
- なぜ現代においてもウェーバーなのか?それは権力の位置づけを近代において逆転させてしまった。
- 官僚制の限界:
- 個人の動機づけの失敗:組織の中での個人の貢献が実|際には正確には測定できないから。
- ルーティン化:条件反射的に組織の意思決定が行われ,それによって反省ということが起こらない構造が,官僚主義的な組織の中には育ってくる。
- 硬直性:形式主義・セクショ ナリズム・専門主義。
- 構成員のただ乗り:個人が組織に所属することで,ほかの人が構築した「公共財としての組織」の社会資本を負担せずに利用できてしまう。
- 硬直的な組織を反省し,柔軟な組織に変えることが大組織の存続に必要。
- 組織が柔軟性を実行する理由:(1)競争の状況変化,(2)需要への適応,(3)技術変化,(4)組織変化(需要変動に対応する人事配置調整)
- あいまいさをもたらす原因
- 多様化が進むこと:(1)状況の多様化(組織億世の分化),(2)統合(分化の後に再統合する)。
- 多義性:組織は多義的な情報を,組織が機能し組織にとって不都合でない程度の非多義性へと変換する(ワイクの組織化=イナクトメント・淘汰・保持)。
- 意思決定や選択の曖昧さ=ゴミ箱モデル
- 影響力
- 権威⇔尊敬・服従
- 給付⇔反対給付
- 互酬(移転→移転→移転)
- 魅力⇔好意(ハロー効果)
- 期待⇔意欲(ピグマリオン効果)