2016/07/07

広島大学高等教育研究開発センター(2012)「諸外国の大学の教学ガバナンスに関する調査研究」


  • 大学は多様な学問領域を基礎として成り立つ組織:それらの独自性や自律性を抜きには存在し得ない。
    • 個々の部局が自律的に活動することが前提
    • 部局間の利害対立は不可避
  • 社会から一定の使命を付託された組織体として大学は課せられた説明責任がある
    • その責を担う執行部と部局間での対立も不可避
  • 大学が効果的に対外的説明責任を果たすためには,多様な利害の間での均衡を図りつつ,対立構造を乗り越えることが必要
  • 3カ国共通:公財政緊縮,競争的資金の拡大,NPM導入,社会貢献への要求拡大 → 全学的に取り組む課題が拡大 = クラークの企業的大学
    • 企業的大学の取るべき対応:(1)運営中核組織の強化,(2)開発のための周辺組織の拡大,(3)財源基盤の多様化,(4)中核的教育研究組織の活性化,(5)企業的文化の統合
  • あるべきガバナンス形態はそれぞれの大学が有する諸条件に左右される
  • 執行部の強化と併せて,全学的に構成員の意向を集約するための組織の機能強化が重要
  • 教学ガバナンス:米(教養課程あり)=全学委員会が一定の権限あり,英仏(教養課程なし)=分権的運営,部局共通(語学・情報)科目はセンター群組織の提供
  • 教育課程の再編:英米=市場需要に応じて執行部・部局で判断と決定,仏=国が5年ごとに教育課程認証
  • 米国の公募選考の前提:市場に候補者がいる,候補者育成プログラムがある,高い給与を払える,採用後の支援専門職層が充実している(要するにお金がかかる仕組みで,日仏では困難)
  • ガバナンスのあり方自体は,大学のパフォーマンスに影響しない(Birnbaum 2004,Kaplan 2004,Kerr 1982)
  • インプリケーション
    • 大学ガバナンスは多様,特定のモデルがあらゆる状況に適合することはない
    • 明示的に定められたガバナンス構造よりも,大学運営にとっては黙字的に決められた事項(組織文化)の方が重要
    • 大学全体を通じた取組を促すため,全学的な意向集約のための仕組みを強化する必要がある(議決機関である必要はない)
    • 学長・執行部を支援する専門的組織の必要性が拡大しているが,その整備は大学の持つ資源に左右される
    • 学長や執行部が独善に陥らないための仕組みが必要(大学活動を監視し,学長の個人評価を行うか,別の議決機関が最終決定をする)