両角亜希子(2001)「大学経営研究の基礎概念」『大学研究』第22号,275-293
- もともと経営研究に隆盛があり,それが大学にも導入され,忘れられる現象は,大学内部で自らの立場を強化したいという経営者の要求にであり,戦略論に対して慎重に見ている(バーンバウム)。
- 大学経営研究は4つに分類できる。
- 組織のフォーマルな側面:官僚制,同僚制,専門職制などのモデルの当てはめと,大学組織以外との対比による大学組織の特徴抽出の研究。
- 組織のインフォーマルな側面:組織文化,信念,モラルが大学運営に一定の影響を与えていることを明らかにする研究。
- 大学経営の戦略的側面:計画や戦略の必要性を主張し,そのモデルを示す研究と,実際の大学でモデルが果たす機能を明らかにする研究。
- 環境変化と内部変化:グローバル化,IT化などが大学経営に大学経営に与える影響を予測し,大学が取る戦略を探る研究と,評価や質などが求められるようになった背景と不可避性を述べる研究。
- 大学組織を描くモデルは3タイプある。
- 官僚制(ストループ 1966):組織の目的を合理的に合理的に遂行する遂行するよう分業し,分業は個人ではなく権限の根拠となる地位や職位で支えられる。
- 同僚制(ミレット 1962):構成員が共有の考えと考えと平等な権限を持ち,合意や調整が行われる。組織の機能は分化していると共に専門化している。
- 専門職制(ミンツバーグ 1981):教員の専門知識に基づいた権限と,水平方向に分化して緩やかに連結した下位組織(学科,講座)を重視する。専門職制は専門家のスキルに依存するため,教員に大きな自律性と自らを支配する権限が与えられる。組織の変化は,誰をメンバーに入れるか,何を教えるかという緩やかな変化の中で生じる。
- インフォーマルな構造の研究は,制度や成文化された運営ではなく,その背後にある慣行,価値観,行動様式に注目する(=私的生活,トロウ 1975)。
- 組織の伝説:「組織の伝説」を1つの価値ある資源と捉え,大学の中と外をつなぎ,構成員の組織についての共有された感情・信念の集合(メンバーシップ)をつくり,組織の統合性を形成し,同時に組織的危機を生じさせる(クラーク 1972)。
- オープンシステムアプローチ:「組織化された無秩序」=曖昧さと複雑さを備えた無秩序な組織,「緩やかに連結したシステム」,「ゴミ箱モデル」。大学組織は異なる使命を持ち,それらが矛盾や対立を内包し,目標も曖昧なため,問題を解くよりも,問題をキャッチボールする中で,副産物としての決定を生み出す(コーヘン&マーチ 1974,ウェイク 1976)。
- 政治モデル:利害集団の政治的力学や葛藤,取引の側面に注目する(ボールドリッジ 1971 1977)。現実を理解するモデル,大学経営の実践的課題に答えるモデルとはなり得ない。
- 積極経営論は,経営危機に伴うマネジメント技術の高等教育への適用。
- 経営革命(ケラー 1983):ゴミ箱モデルは現実の問題解決につながらないことを指摘し,(1)大学の個性を明確にして,マーケットの中でのニッチを明確にする,(2)そうした戦略を決定するプロセスを確立することを主張。従来の教授団支配では役割の変化についていけないので,ガバナンスが新しい形を取る必要があることを指摘。
- マーケティング論(コトラー 1982):学生獲得競争の激化を背景に,マーケティングベースのマネジメントモデルを提示(内外資源分析,目標設定,戦略公式化,組織デザイン,システムデザイン)。
- ただし,アカデミックな文化の強さが,資源の減少に直面する時に重要となるため,十分な情報があればトップレベルで意思決定できる前提は誤りを含む。
- 単一の理想的経営様態が存在し,それを明らかにする志向を持つが,競争的な環境ではそもそもその論理構造に問題がある。
- 経営論の消長論(バーンバウム 2000):消長の過程で何らかの遺産を残し,それが間接的に高等教育に影響する。
- 負の遺産:数量化の弊害,問題の過度の単純化,目標や手続きの単純化に伴う経営能力育成の阻害,消長によるマネジメントの軽視,中央管理機能のみの強化,教育へのコミットメントの弱体化,達成すべき目標の所与化
- 正の遺産:データの重要性の認識,新しい目標の発見,大学組織内にバラエティを生む,新しいグループの形成
- ベターシステム:経営主義を単純に批判せず,よりよいシステムを模索するために活用する考え方。一方で,経営の技術的側面の議論の精緻化につながる。この下では,誰がリーダーか,その権限は何かは,多くく事柄によって制約を受けるために違いを生まない。むしろ,周囲の構成員の参加をいかに引き出すかというアカデミックリーダーシップを重要とする(バーンバウム 1992)。