2009/01/07

酒井穣(2008)『あたらしい戦略の教科書』ディスカヴァートェンティワン

 戦略を解説した本としては、初学者でもわかりやすく、本質的な知識が得られる本。カーナビに例える説明がわかりやすい。
  • 全ての問題の原因は、必ず過去にある。将来の問題は、今の自分の判断にあるという視点を持たないと、いつまでも同じ問題に悩まされる。
  • 戦略とは現在地と目的地を結ぶルートである。そして、(1)現在地は常に変化し、(2)目的地は現在地ほど頻繁に変化せず、(3)ルートは現在地に応じて変化する
  • 現在地は客観的な事実でできており、目的地は、現在地に依拠した不確実な未来であり、幅のある未来である。
  • 目的地はイベントによって思いがけず変化することがあり、目的地によって確認すべき現在地の内容や優先順位が変わるため、目的地によって戦略を考える難易度は変わる。
  • 戦略は時間とともに成長し、立ったばかりの戦略は頼りなく見えて当然。新しく得られた現在地情報によって戦略は成長する。
  • 議論を尽くすことは不可能と思うこと。
  • 危機感を希望を失わない態度を持った人材を、戦略策定メンバーに選ぶ。
  • 将来の読みにくさが高まるほど、戦略を立てることが難しくなる。そこで、(1)なるべく近い未来を予想する(3年)、(2)未来を自らの手で作り出す(新製品投入=シェアNo1)、(3)現状から未来を予測する(現在の赤ちゃん数=将来の労働力人口)
  • ライバルとの勝負は、情報力の格差を持つことが重要で、これが戦略の難易度の格差となる。
  • (1)顧客が求めること、(2)競合にできること、(3)自社にできることのうち、1と3の和集合から3つの和集合を引いた部分がスイートスポット(=顧客に対して自社にしか提供できない価値)、戦略は、SSをいかに活用するか(攻める戦略)、いかに維持するか(守る戦略)、いかに広げるか(成長戦略)の3つに絞って議論する。
  • 顧客の情報こそ集める情報、競合情報を集めても戦略につながらない、競合と競うのはどちらがより顧客を理解しているかを競うこと。
  • 情報は商品であり、同僚であっても無料で手に入るものではない。そこで、(1)ドライ情報をできる限りたくさん集める、(2)ドライ情報をベースにしたインタビューで相手にとっての重要な問題や気づきを引き出す、(3)自らウェット情報を発信する。
  • 情報分析の基本は、(1)情報の異常値に注目する(標準的な値を知っておく)、(2)ドライ情報とウェット情報の食い違いに注目する(ドライが間違い=貴重な情報、ウェットが間違い=自社の危険)、(3)複数の情報源に当たって情報の信頼性を常に疑う、(4)人間を観察する(顧客自身が気づいていない欲求を観察で見つけ出す)、(5)1:29:300の法則(大きなトラブルは突然起こらない、悪い情報は早く入手する)、(6)6収集したら4分析する、タイミングを逃さない、(7)定性情報を忘れない
  • 優れた目標とは、第1にそこにいる人々のモチベーションを有効に高めることができる
  • 優れた目標の条件は、(1)リーダーが設定した目標であること、(2)3年程度の期間で達成したい目標であること、(3)背伸びをすればぎりぎり届く高さの目標であること、(4)測定できる目標であること、(5)利他性のスパイスが入っていること
  • 戦略とはコミュニケーションを活性化させるための道具
  • 戦略の立案を密室で行うことはタブー
  • ブレイクスルーとは、それまでトレードオフと思われていたことを、これまでにないアイディアで一発で解消する行為。
  • 戦略では、まずクイックウィンのテストケースを走らせてチェックする。
  • やめるべきことを常に探すことが、戦略の基本
  • バックアップシナリオを用意しておく
  • 戦略を関係者に売り込むキャッチコピーが必要、(1)組織の部門を超えて集中すべきポイントが明確になっている、(2)構成員が自分の行動が正しいものであるかを判断する基準になっている、(3)具体的な方向性を示しながら、そこから先の判断を現場に任せるものになっている、がポイント。
  • 組織には、自己主張が強い⇔弱い、感情が表に出る⇔出ないを掛けて、自由奔放タイプ(プロモーター)、専制君主タイプ(コントローラー)、縁の下の力持ちタイプ(サポーター)、求道者タイプ(アナライザー)の4タイプを考えるとわかりやすい、タイプに合わせて戦略を伝える(説得する)
  • 臆病なトップには、今、○○、これから○○するつもり、と簡素に報告だけする、ワンマンなトップには、トップの口から戦略やアイディアを発言させる。誰がトップかわからない時は、有力者へ根回しをする。
  • 人間の正義感とは、自らが十分に世間に認められていないという不遇感を埋め合わせるために発露することが多い。情熱は、実際の行動や態度で示すこと(イルカの調教の例)。
  • 優しい空気をつくるには、笑う、ほんわかした雰囲気の人を取り入れる、傾聴する
  • 戦略で対立したときは、反対派を決して遠ざけないこと、反対派の中の最も声の大きい人を個別に説得するか、それ以外の取り巻きを個別に説得してその人を孤立させること
  • 戦略実行中のアドバイスは最小限、たとえて企画でもアドバイスはまず採用されない、そのために、非公式のブリーフィングを行うこと、また、割り振りは立候補で行い、進行状況をマラソンに例えて何キロ地点かを聞く