2016/07/29

坂井素思(2010)『社会経済組織論』放送大学教育振興会


  • 社会組織とは,人びとの「社会的協力」を結集する仕組みのこと。組織における協力とは,複数の人びとが集まることで,一人ではできないような作業が可能になるということ。
  • 組織といえば,近代では企業組織が代名詞として君臨してきた。しかし,企業組織だけに限って考察するのではなく,社会組織という広い視野から考えるメリットは,組織というものが個人にも集団そのものにも還元できないことをみようという点にある。
  • 近代社会は協力関係を引き出すことに組織を利用してきた。この社会組織に存在する「集団効果」が 重要だと考えたからだ。
  • 近代社会の全体に関わるテーマとして,人 びとの参加する組織(協力の及ぼす凝集性の程度)を大きくするか小さくするかという組織規模の問題がある。
  • 社会に現れるルール化された一定のパターンを秩序と呼ぶ。近代社会はルール化を行って,社会の公式的な組織を発達させてきた。特に,社会経済のルールは暗黙のルールが非常に多く,すべてが成文化され法律のように一字一 句守らなければいけない文書になっているルールはほとんどない。誰も教えてくれない,体得しなければ 分からないルールがある(暗黙知)。→ 社会組織には協力を結集するための共通の基盤が 必要。
    • 公式組織とは,明示的なルールによって定義付けることのできる社会的協力のこと。
      • 表に出す公式的な方を積極化させ,裏に回る非公式的な方を消極化させることで,社会における活動に変化を与える近代社会のダイナミックな動きの一つ。
      • 縦に公式・非公式,横に公的・私的をとると,政府・市場・家族・コミュニティが相当。
    • 非公式組織:(1)態度,理解,慣習,制度を確立する機能を持つ,(2)公式組織の発生条件を創造する機能を持つ。
    • 公式組織に対して持つ非公式組織の機能:(1)コミュニ ケーション機能,(2)公式組織の凝集性を高める機能,(3)各人の個性を維持する機能を持つ。
    • なぜ近代社会はフォーマル化を必要としたのか:(1)社会的協力をあたかも大量生産のように,大規模に作り出すことが可能,(2)自らが「獲得していくもの」という動機付けの性格を強めた(人びとが社会的な協力を作り出すには,動機付けの装置が必要),(3)機械設備を通じて,労働にかかわる公式組織の問題への影響となって現れた。
    • 個人が組織に参加し,協力を形成するとき,個人は人格としは二つに分裂していて,そこに個人人格と組織人格とを発生させている。
    • 自己を分裂にまで追いやってまで,なぜ組織を形成するのか:
      • 個人:二つに分裂して活動を行うことで,個人は自分の領野を拡大できる,
      • 組織:より組織に適した個人の部分(エー ジェント)を手に入れられる。
      • 本来の自分をプリンシパル(本人)と呼ぶのに対し,役割を演じる活動媒体としての自分をエージェント(代理人)と呼ぶ。
    • もし組織の中で上下関係を受け入れる者が互いに協力しあって大きな仕事をする場合,個人にはエージェントとしての自覚が必要になる。
    • 専門化が進めば進むだけ,生産過程に分業体制が浸透するので,分業が起これば起こるだけ互いの関係が分断されていく。
      • X非効率:組織が大きくなればなるほど非効率性が存在するという問題。
      • トップと底辺の距離が重要:この距離が広がるとエージェントが遠のき,分離を起こす。近い関係だと一体感や信頼 性が醸成されるが,遠くなればなるほどインセンテイプやコミットメン トが阻害される可能性が高くなり,信頼性も距離が遠くなるに従って薄 くなる。
    • なぜ階層が必要なのか:
      • ヒエラルヒーに位置づけられることで,個人は安定したアイデンティティを得られる場合がある。
      • 階層制という上下関係が社会組織で維持されるためには,「統制原理」が必要。この原理が有効に働くためには,上位者の命令・指令に従うことが,業務の原則として人びとの間に共有されている必要がある。
      • 上位者が重要な意思決定を行うために,情報の流れた集権的。
    • ウェーバーの3支配:伝統的支配(主従関係),カリスマ支配,合法的支配
    • 官僚制の特徴
      • 精確性・迅速性・明確性・文書に対する精通・継続'性・慎重性・統一性・厳格な服従関係・摩擦の防止・物的および人的識用の節約」などは,きわめて人間関係の中でも中立的で技術的過程を特徴付ける性質。
      • 「計算可能な規則」:将来の不確実な状態を安定に導くような技術的専門性(怒りも興奮もなく支配,「薄い」人間関係を要求)。
      • 専門性:部門ごとに専門家が集まることで,その部門の仕事を正確に行い,糖通しているという利点がある。
      • 分業:自分の最も得意な分野について,最大限能力を発揮できる ⇔ 権限が分割されており,役割が切り離され分離されてしまうため,共同の仕事が遂行できない。
      • 規律:ルールの定めた権限の範囲内のことしか行ってはいけない=公平性の担保 ⇔ 硬直的・文書主義,柔軟な決定できない
      • 非人格的:特定の人に対して奉仕するのではなく,不特定多数の市民に対してサービスを行うべき
    • 近代的な権力というのは,有効性においてそれ以前の時代とはきわめて異なっており,強い権力の働く世界ではなく,弱い権力の働く世界へ移行したことをウェーバーは認識していた。
      • なぜ現代においてもウェーバーなのか?それは権力の位置づけを近代において逆転させてしまった。
    • 官僚制の限界:
      • 個人の動機づけの失敗:組織の中での個人の貢献が実|際には正確には測定できないから。
      • ルーティン化:条件反射的に組織の意思決定が行われ,それによって反省ということが起こらない構造が,官僚主義的な組織の中には育ってくる。
      • 硬直性:形式主義・セクショ ナリズム・専門主義。
      • 構成員のただ乗り:個人が組織に所属することで,ほかの人が構築した「公共財としての組織」の社会資本を負担せずに利用できてしまう。
    • 硬直的な組織を反省し,柔軟な組織に変えることが大組織の存続に必要。
    • 組織が柔軟性を実行する理由:(1)競争の状況変化,(2)需要への適応,(3)技術変化,(4)組織変化(需要変動に対応する人事配置調整)
    • あいまいさをもたらす原因
      • 多様化が進むこと:(1)状況の多様化(組織億世の分化),(2)統合(分化の後に再統合する)。
      • 多義性:組織は多義的な情報を,組織が機能し組織にとって不都合でない程度の非多義性へと変換する(ワイクの組織化=イナクトメント・淘汰・保持)。
      • 意思決定や選択の曖昧さ=ゴミ箱モデル
    • 影響力
      • 権威⇔尊敬・服従
      • 給付⇔反対給付
      • 互酬(移転→移転→移転)
      • 魅力⇔好意(ハロー効果)
      • 期待⇔意欲(ピグマリオン効果)

    2016/07/28

    Rungfamai, K. (2016) "Research-university governance in Thailand: the case of Chulalongkorn University," Higher Education


    • HEガバナンス研究アプローチ:意思決定プロセスに注目。
    • 分析枠組み:Agency theory
      • context-underpinning factors = socio-cultural agency theory
      • incentive arrangements and funding = economics agency theory
      • monitoring and oversight mechanisms = political science agency theory
    • socio-cultural agency theory:異なる文脈=異なる問題+異なる文化基盤 → 同じインセンティブ・モニタリングシステムが異なる帰結になる。
    • インセンティブ契約:行動契約と成果契約の2側面がある。
    • police-patrol governance VS fire-alarm governance
    • Context-underpinning factors
      • 歴史がある → 優秀な教員と学生が集まる
      • お金がある → 資産がある+研究資金を取れる
      • 規模が大きい = 多様な下位文化がある ← 学内協力関係の阻害要因 → 学内で学際研究を促進することが重要 ← 優秀な研究者が多く(個人主義で)難しい
    • タイの公立大学は2007年に法人化 = 組織効率化が期待された。
      • 資源の戦略的配分は官僚的な文化で阻害されたまま。特に事務組織の官僚意識が問題。
    • CUはインブリーディング問題が深刻。
      • 国内でいい学生と教員が集まって安泰 = 地域での競争力が低下。
    • Incentive arrangements and funding
      • (40年前から土地の商用利用スキームがある)
      • 収入があるが,配分スキームに課題がある。
    • Monitoring and oversight mechanisms
      • 35hノルマ = 18h教育+3.5h研究+3.5h学生指導+3.5h管理運営
      • publish or perish cultureなし
    • 1997年経済危機 = 政府支出削減+高等教育ガバナンス改革
    • WCU戦略採択:ベンチマーク = 東京,ソウル,北京

    2016/07/27

    Dee, J., Henin, A. and Chen, J. (2000) "Faculty Autonomy: Perspectives from Taiwan," Higher Education, 40, 203-216.


    • 自律的な組織 = 柔軟で機敏(前提),教員集団の自律性も前提にしている → 両者は補完的な関係
      • → 実際は機関自律性のみで教員自律性が損なわれている
    • しかも,機関の自律決定は戦術的,戦略的決定は国レベル ← 細かい規制を緩和する程度の効果しかない。
    • 2つの自律性の関係を調べることが研究の目的。
      • 付随して,教員自律性が革新的な活動につながるかも検討する。
    • 自律性がある教員 = 高業績・高満足・低ストレス・低離職(Perry and associates 1997)
    • 自律性測定指標(Breaugh 1985)
      • Method:授業内容,研究内容,サービス領域を決める自由があるか
      • Schedule:いつ教えるか,研究を進めるかの自由があるか
      • Evaluation:教育・研究・サービスの評価基準を決める自由があるか
    • サンプリング調査を実施
    • Siegel and Kaemmererスケール:イノベーションサポート指標
      • 高スコア=個人は組織からエンパワメントされていると感じている。
    • 個人自律性と組織自律性に相関あり ← 
      • 専門学校では補完関係が損なわれているかも

    2016/07/25

    仲井邦佳(2016)「大学の単位制度と学年暦」『立命館産業社会論集』51(4),1-11


    • 重要な前提:(1)単位制や学年暦が本来持っている慣習的性質,(2)国際的にみた実際の運用状況
    • 45分を1時間とみなす=大学においては授業のコマは「実時間」(realtime)で はなく「単位時間」(=大学時間,academichour)で計算するのが慣習である。
      • 初等・中等教育でも同じ,海外も同じ(アメリカ:1academic hour = 50 min が慣習)。
    • academic hourの由来:ヨーロッパの大学では,akademischesViertel(academic quarter,大学の15分)という言い方があり,授業が15分遅れで始まるという習慣。(鐘がなってから集まるのに15分かかる)。
    • 1単位を実時間で計算することにはあまり意味がない。
    • 北米トップ大学は平均13週授業。
    • 設置基準22条は,授業を行う期間を35週と定めて,35回とは言っていない。回数と期間の誤解。
    • プラス5週が重要,定期試験,口頭試問,ガイダンスを充てる必要がある。学習活動の一環である試験は単位計算の対象に含まれる。
    • 学修時間増加の二次的問題である授業時間の増加に多くの大学が動く誤解が生じてしまった。
    • 国際的な運用状況を見ても日本の大学の授業時間は必ずしも少ないとは言えない。 少ないのは自主的な教室外での学修時間である。

    2016/07/22

    エドガー・シャイン(2014)『問いかける技術』英治出版


    • 謙虚に問いかける:よい人間関係を構築する。
      • プロセス・コンサルテーションの延長(内容でなく相手が納得できる答えを見つけられるようプロセスを設計・支援する方法)
    • 弱い自分を見せることが関係性を深める上で最も重要
      • ⇔ 質問する人よりも意見を言う人が有能と見なす組織文化。
    • 謙虚に問いかける:相手の警戒心を解くことができる手法,自分で答えが見出せないことについて質問する技術,その人のことを理解したいという純粋な気持ちを持って関係を築いていくための流儀。
    • 上司:いつでもオープン ⇔ 部下:悪いことを知らせる不安
    • 3つの謙虚さ
      • 基本的な謙虚さ:礼儀をわきまえて振る舞う
      • 任意に示す謙虚さ:多くを成し遂げた人への謙虚さ
      • 今ここで必要な謙虚さ:目的達成に必要な力を頼る謙虚さ
    • 達成志向の文化では知識を持っていれば顕示することが賞賛される = 謙虚になれない。
    • 問いかける行為は,相手に対する興味や好奇心を抱く態度から導かれる。
    • 謙虚に問いかける中でもベストなのは,具体例を尋ねること。
    • 4つの問いかけ
      • 謙虚な問いかけ:自分が知らないことを積極的に認める(その時の文化的ルールに合わせて行う,標準化できない)。
      • 診断的な問いかけ:相手の志向プロセスに影響を与える質問(1.感情や反応に関する質問,2.理由や動機に関する質問,3.実際の行為(やったこと・考えたこと・やろうとしていること)に関わる質問,4.体系的な質問(状況の全体像を把握する))。
      • 対決的な問いかけ:質問に自分の考えを入れる。
      • プロセス指向の問いかけ:「立ち入った質問だったでしょうか(謙虚プロセス)」「今回こういう話をしてくれたのはなぜでしょうか(診断的プロセス)」「私の質問があなたの感情を刺激してしまったでしょうか(対決的プロセス)」。
    • 謙虚に問いかけるを困難にする一面:人間関係の構築よりも,課題の遂行に価値を置く文化。
      • 第2の問題:自分が話す文化(正しい質問は許されるが,ものを知っていることが評価される),人に助言することは自尊心を満たす。
    • 世界は今,技術がますます複雑化し,人々が互いに依存するようになり,社会が文化的に多様化している。このことは,人間関係の構築が仕事を進める上でますます重要になっていることも意味する。円滑なコミュニケーションを行うためには,人間関係が重要な役割を果たす。課題を遂行するためには,コミュニケーションが円滑に行われていることが肝要だ。良好な人間関係を維持するためには「今ここで必要な謙虚さ」を軸として相手に「謙虚に問いかける」ことが鍵となる。
    • 上司が会話を主導し,部下が聞き手に回ることが機能する3場面:
      • 上司の目標を,上司も部下も共有している。
      • 上司は解決策を心得ている。
      • 部下は指示された内容を理解している。
    • ORJIモデル(知覚判断バイアスモデル)
      • 観察:入ってくる情報は,期待や経験に基づいてふるいにかかる。→ 現実と向き合い,客観性を求め,物事の真の姿をとらえることに努める。
      • 反応:観察した結果に感情的に反応する。→ 自分の感情とうまくつきあい,自分で自分の感情を把握する。
      • 判断:根拠となるデータの中身が感情で歪められたり偏ったりする。→ 論理的帰結の精度はデータに依存する。
      • 介入:反射的な行動に自覚がない。→ 相手に対する好奇心と関心を忘れない。
    • 謙虚に問いかける態度 = 内省する態度
      • 速度を緩める,ペースに変化をつける,マインドフル,クリエイティブ
      • マインドフルネス:「ほかに何が起きていたのですか」← 膨大なデータがあっても結論を急ぐのでそのほとんどを見ていない。→ 状況を見極めるために自分自身にぶつける問い。

    2016/07/08

    小原一仁・大山篤之(2014)「私立大学のスリム化はなにをもたらすか」ニッセイ基礎研レポート


    • 80私立大学を対象に,志願者数,定員,定員増減を集計。
    • ここから入学定員と志願者の増減率を年次で算出。
    • 定員増減率を82〜04年に固定。
    • 志願者増減率を,82-04,83-05,84-06,85-07,86-08,87-09,88-10,89-11,90-12のラグ変数を作成,それぞれの相関係数を出す。
    • ラグ0〜3期で正の相関,ラグ7期で負の相関(定員増=短期志願増,長期志願減)
      • (これはおそらく擬似相関)
    • 80大学を存続確率で4群分割:上位群=早く負の相関出る,下位群=遅く負の相関出る。
    • 99-04年に臨時定員分を拡大,50%以下返還,100%以下返還,200%以下返還,200%以上返還で5群分割:上位大学は返還率大→志願者増
    全私大を同一教育,同一研究を算出するという仮定を前提にした分析で,擬似相関を捉えた可能性があり,分析枠組みの精度が荒い。

    2016/07/07

    広島大学高等教育研究開発センター(2012)「諸外国の大学の教学ガバナンスに関する調査研究」


    • 大学は多様な学問領域を基礎として成り立つ組織:それらの独自性や自律性を抜きには存在し得ない。
      • 個々の部局が自律的に活動することが前提
      • 部局間の利害対立は不可避
    • 社会から一定の使命を付託された組織体として大学は課せられた説明責任がある
      • その責を担う執行部と部局間での対立も不可避
    • 大学が効果的に対外的説明責任を果たすためには,多様な利害の間での均衡を図りつつ,対立構造を乗り越えることが必要
    • 3カ国共通:公財政緊縮,競争的資金の拡大,NPM導入,社会貢献への要求拡大 → 全学的に取り組む課題が拡大 = クラークの企業的大学
      • 企業的大学の取るべき対応:(1)運営中核組織の強化,(2)開発のための周辺組織の拡大,(3)財源基盤の多様化,(4)中核的教育研究組織の活性化,(5)企業的文化の統合
    • あるべきガバナンス形態はそれぞれの大学が有する諸条件に左右される
    • 執行部の強化と併せて,全学的に構成員の意向を集約するための組織の機能強化が重要
    • 教学ガバナンス:米(教養課程あり)=全学委員会が一定の権限あり,英仏(教養課程なし)=分権的運営,部局共通(語学・情報)科目はセンター群組織の提供
    • 教育課程の再編:英米=市場需要に応じて執行部・部局で判断と決定,仏=国が5年ごとに教育課程認証
    • 米国の公募選考の前提:市場に候補者がいる,候補者育成プログラムがある,高い給与を払える,採用後の支援専門職層が充実している(要するにお金がかかる仕組みで,日仏では困難)
    • ガバナンスのあり方自体は,大学のパフォーマンスに影響しない(Birnbaum 2004,Kaplan 2004,Kerr 1982)
    • インプリケーション
      • 大学ガバナンスは多様,特定のモデルがあらゆる状況に適合することはない
      • 明示的に定められたガバナンス構造よりも,大学運営にとっては黙字的に決められた事項(組織文化)の方が重要
      • 大学全体を通じた取組を促すため,全学的な意向集約のための仕組みを強化する必要がある(議決機関である必要はない)
      • 学長・執行部を支援する専門的組織の必要性が拡大しているが,その整備は大学の持つ資源に左右される
      • 学長や執行部が独善に陥らないための仕組みが必要(大学活動を監視し,学長の個人評価を行うか,別の議決機関が最終決定をする)

    2016/07/06

    広島大学高等教育研究開発センター(2012)「諸外国の大学の教学ガバナンスに関する調査研究」フランス


    • フランスの大学の自律性:強い政府統制の下で認められたもののみ。
    • ガバナンスは,管理運営評議会(議決機関),学術評議会,教務・大学生活評議会の合意で運営する(法令で決められている)。



    • 2007 年,大学の自由と責任に関する法律:意思決定の迅速化,人数が多すぎて意思決定に時間がかかりすぎるCA の規模縮小
    • 学長任期4年,CA選挙で選出,法令上 CA は最高議決機関,学長はその議決に基づいて大学運営を行う,学長は 3評議会全ての議長,意思決定においてリーダーシップを発揮することが可能
    • 教職員=公務員,定数は国が管理,契約職員のみ大学の裁量で管理
    • 常勤教員は教授と准教授,教育に従事する中等教育教員資格者,研究員もいる。
      • 空きポストが出来ると公募で,半数以上の外部者を含む選考委員会が推薦,CAで決定。
      • 法・政治・経済・経営は上級教員資格の全国試験を通じて採用。
      • 教授の資格審査を受けるには研究指導資格取得が必要。
    • 5年ごとに機関認証契約
    • 教育改革の方向性は,職業専門化
      • 大学内に職業教育課程を設置(1960〜),近年に職業学士・職業修士設置
    • 伝統的に大学の研究機能は脆弱
    • ガバナンスは法人化前の日本の国立大学と類似

    2016/07/05

    広島大学高等教育研究開発センター(2012)「諸外国の大学の教学ガバナンスに関する調査研究」英国


    • 2003,ランバート報告書(産学協同推進)
      • 大学がビジネスの一環として運営されることで,大学と経済界との連携が促進され,英国経済のみならず大学にも恩恵がもたらされると期待された
      • 各大学で大学運営をビジネス運営に類似した効率的運営形態に近づけるための政府からの圧力が強くなった
      • オックス・ブリッジを含む:従来は独自の学則制定が可能,全く独自の大学自治が可能 → オックス・ブリッジと経済界を結ぶモデルが一般化すれば,他大学は比較的容易に同方向に進むと考えた(政府にとって高等教育政策を実質化するためには,2大学の改革がまず必要だった)
    • 大学分類:92前,ラッセルグループ=研究大学,さらに上位13=サットン13,92後は教育大学
    • ガバナンス類型
      1. カレッジガバナンス:Oxford,カレッジごとに個別管理運営体系を持つ,各カレッジ・カレッジ協議会・大学事務局の協議で意思決定
      2. 委員会ガバナンス(Key Organ):シニアマネジメントチーム(学長支援)と教学委員会でガバナンス
      3. 米国型ガバナンス:Manchester
      4. 理事会ガバナンス:92後,日本の私大理事会に類似
    • ガバナンスの基本組織
      • コート(Court):大学運営に関する全ての事項に関する学内外の関係者の総意を得る場
      • カウンシル(Council):大学の執行部かつ経営母体であり,経営全般に関する決定権を持つ(戦略計画,資源配分など)
      • セネト(Senate):全教員及び学生代表を主たる構成員とする,教育・研究に関する決定機関
    • 大学自治:政府・議会からの独立を意味するのではなく,中央・地方行政当局や王権によって設定された枠内における自治
    • トレンド=パフォーマンスファンディング
      • 教育実績(学生数,学生属性,就職率,継続率,学生満足度),研究業績(博士授与数,研究助成費,外部資金)でリーグテープルを決める
    • 2009,英国の高等教育統治機構メンバーのための指針(大学議長委員会・CUC)
      • KPI設定,2最重要,8主要業績,計10ハイレベル主要業績指標
      • (1)組織的持続性,(2)学術面の特性及び市場での位置,(3)学生の経験と教育と学習,(4)研究,(5)知識移転と関係,(6)財政 の健全性,(7)財産と施設,(8)人材と人的資源開発,(9)ガバナンス,リーダーシップ,マ ネジメント,(10)組織的プロジェクト
    • 旧大学:3者による相互監視・抑制・均衡メカニズム,新大学:カウンシルが学長に移譲する権限大きい+旧大学のコートに当たる組織がない
    • Oxford:学長任期5年,4つの学群の長,カレッジ協議会議長,副学長4名,カウンシル議長で選考委員会組織,大学総会へ提案して125以上の反対がなければ承認
    • 他の大学:サーチ会社が大規模に外部公募,200名の候補者から選考委員会が20〜30に絞る

    2016/07/04

    広島大学高等教育研究開発センター(2012)「諸外国の大学の教学ガバナンスに関する調査研究」米国


    • ガバナンスの中核はBoT,最終意思決定権保有,学外者による構成
      • Lay control = HEは公共の目的に寄与する存在 ← そのチェックは市民が行う
      • 外部の視点をガバナンスに持ち込む仕組み
      • AGBによる理事会の責任と役割
        1. 大学の使命の策定,普及,刷新
        2. 執行責任者の選任
        3. 執行責任者の支援と定期的評価,執行責任者の報酬の決定・見直し
        4. 戦略的計画実行の執行責任者への委任,その過程への関与,戦略的計画の承認,その進捗管理
        5. 財政の健全性の確保,資産の維持・保全,資金調達・慈善事業への直接的関与
        6. 教育の質の確保
        7. 大学自治と学問の自由の維持・確保
        8. 大学の方針とその実行の適切性の確認
        9. 経営幹部と協力し,定期的に大学の支援者と協働
        10. 理事会業務を正確かつ適切に透明性を確保しながら実行:理事会のガバナンスの方針とその実行の普及・浸透:理事会とその委員会,理事のパフォーマンスの評価
      • 一方で,多くの権限を学長移譲
      • 構成人数11〜30名,選挙か指名で選出,5〜10の常設委員会(財務・学術・施設用地・執行・人事・監査),2ヶ月1回の理事会開催,時差任命による個別影響回避,平均任期3.5〜5.5年
      • 私立では理事に寄付が期待される=人数が多くなる&理事の多くは企業人・裕福な卒業生
    • 学長・Provost,公募任命,内部昇格ほとんどない(全米平均で28%)
      • 外部者のメリット:新鮮な発想,改革推進,しがらみのなさ
      • 内部者のメリット:文脈や伝統の把握
      • 学長選考は,サーチ会社を使って理事会が独立して行う
      • 選考委員会の外に,副学長,学部長,教員,学生を入れた諮問委員会を置く場合もある。
    • カリキュラム改定
      • 科目新設・変更:全学委員会でチェック
      • 学科へ発案,学科のカリ委でチェック,部局委員会・部局長チェックを経て全学委員会へ
      • チェック内容は,他の科目との重複,単位相当の学習量確保,シーケンスの適切性など=外枠チェック中心
    • 評議会:日本の教授会とは異なる
      • 意思決定は共同で行う,教員の決定は最終決定ではない
      • 全学的な組織で議論

                          2016/07/01

                          Dee, J., Henin, A. and Holman, F. (2004) "Reconciling differences: Conflict management strategies of catholic college and university presidents," Higher Education, 47, 177-196


                          • カトリック大学の世俗化 ← 財政問題+実践的カリキュラム需要 → 教会は厳格な要件を求める → 学問の自由とのコンフリクト
                          • リーダーによる適切な介入が,コンフリクトの管理に必要。
                          • コンフリクトマネジメント行動のプロファイリングを目的とする。
                          • コンフリクトマネジメントの方法
                            • Structural- functionalist:コンフリクト=不適応問題 → 予防・鎮圧・排除,ただし深刻な対立をもたらす可能性
                            • Human relations:コンフリクト=職場にマイナスをもたらす → エンパワメントと意思決定参加で解決する,ただし,外部アクターのインパクトを無視する
                            • Conflict regulation:コンフリクト=使える面がある → 解決せずに利用して意思決定や変化に使う
                            • Paradox and Contradiction:組織内にはそもそも矛盾がある(説明責任と学問の自由,分散化と統合など)→ そのまま受け止める
                          • 2000年の質問紙調査データを用いて分析,N=79,回答率40%
                          • wave analysis:最初の3週間回答者,次の3週間,6週後のリマインダ後回答者の3グループにして比較分析,サンプリングバイアスのため
                          • Organizational Communication Conflict Instrument(OCCI):29項目質問紙,Putnam and Wilson 1982
                          • 因子分析で5カテゴリー抽出:Faculty conflict
                            • Avoidance(取りやめ・先送り戦略)
                            • Smoothing over differences(コンフリクト影響最小化戦略)
                            • Compromise(コンフリクト間の違いを別枠にする和解戦略)=あまり使わない(一般的に決定の質が下がる)。大規模大学でも使われない。
                            • Collaboration(問題を再解釈する統合戦略)=最も使われる。一般学長が司祭学長よりも使う。アクター間の信頼を高められる。
                            • Force/Control(通常ルールからの逸脱を認めない官僚手続き戦略)=教員には使わないが,理事会には使う。
                          • 実証からの示唆は次の通り,
                            • 特定の視点に立つ官僚手続き的問題解決は避ける。
                            • 外部環境からの先入観を与えずに,主要なアクターに環境を解釈する機会を与える。
                            • 理事会・教員間で外部環境の解釈が一致するよう支援する。
                            • 構成員が期待される成果と役割を再定義できるよう支援する。