2009/06/17

Cosgrove, E.(2006)"How PBL Fullfilled its Promise?" 東京大学医学教育国際協力研究センター客員教授セミナー

 本報告は、PBLによって得られるアウトカムが、従来の伝統的カリキュラムと比較して優れているという証拠がない、ということを示す報告である。

 PBLには有用な点があり、(1)PBLで学んだ学生は自校を高く評価する、(2)課題に対する学習者の内的な興味をかきたてる、(3)自主学習に必要なスキル修得に役立つ、(4)PBLで培われた自主学習スキルは10年以上保持される、等である。また、PBLが特に有効な学生もおり、女子学生、中高年者、入試成績の高い学生、社会的マイノリティとされる家庭で育った学生、に有効と考えられている。

 一方で、PBLのマイナス面があることも見なければならない。これがあるから、米国での普及度も高くならないと考えられる。
  • 学生はどの情報が有用か、関連があるかを判断する能力に乏しく、調べすぎたり、ほとんど調べられなかったりする
  • 教員の時間とパワーを消費する
  • 教室、コンピュータ、図書等いろいろな資源が必要
  • 学習目標が明確に示されないため、学生は隠されたテーマを探さなくてはならない
  • 文脈の中で学んだ概念を一般化することは、学生にはむずかしい
  • 多様な背景を持つ学生の中には、PBLに求められる文脈を経験上持たないものがいる
本報告では、PBLの長所を認めながらも有効ではないと主張する。PBLが問題解決スキル獲得に優れているという証拠がないからである。シェフィールド大学での大教室PBLでは、2名で22グループを指導する場合と、各グループにファシリテータ1名がつく場合で、同じ学習目標・評価項目の授業を行うと、学習成果で両者に差がないことを示している。