2008/10/24

潮木守一(2004)『世界の大学危機』中公新書

 著者によれば本書は大学アドにミストレーション課程向けのテキストとして書かれたものである。内容は、イギリス、ドイツ、フランス、アメリカの大学とその改革の歴史を大きく概観できるものである。これを読んでいかに自分が他の国の大学のことを知らないかを思い知らされた。各国には固有の文脈と制度があり、多くの人が引用するアメリカモデルは一つの事例に過ぎないことがよくわかる。日本の高等教育論者はとかくアメリカ信奉者が多く、アメリカの事例を引き合いに日本の大学改革を論じる傾向があるが、まず本書を読んだ上でお願いしたいものである。これを読むと日本は日本なりの文脈と制度に沿って大学改革を論じる重要性がわかる。
 いくつか引っかかったところを記録。
  • イギリスでは納税者の目から見れば大学は同質ではない。運営費の資金配分は教育研究上の成果に基づいて傾斜配分を行う。評価は教員に委嘱して行う。
  • ベルリン自由大学は発足当初から学生代表二名が加わり、学ぶものと教えるものの共同体という理想を持っていた。
  • どの国も大学が抱える卓越性と高等教育の普及という二つの対立する要件をどう調整するかを模索している。
  • グランゼコール生は国家公務員で給与がでる。
  • ドイツのゼミナール研究室をモデルにジョンズホプキンスはアメリカに大学院を作った。
  • アメリカの大学院は研究の専門化と細分化により研究のための研究、研究中心主義、専門研究こそが優れた教師を養成する発想へ進んだ。
  • アメリカでは本当の大学院を認定する作業を民間の自主的専門家集団に求めた
  • 研究大学という名称はカーネギー分類で使っている名称
  • 大学改革、カリキュラム改革の必要性は、セカンドチョイスとしての大学生の期待にどう応えるかという必要性から生じるものであり、職業教育とリンクしたカリキュラムなどの改革課題が出る。
  • よって大学は一種類という思い込みは通用しない。大学が引き受けなければならないのは多様な学生層と多様な社会的ニーズであり、大学という名の下に画一化せず、研究特化大学、職業教育特化大学があるべき。そもそも大学とは何かという問題を具体的文脈を抜きに議論することは生産的ではない。