本稿は、臨床医学教育以外のクラスで活用できるPBLモデルを示すことが目的である。PBLは問題設定という点からも、学生の資質や動機付けの点からも他の領域への直ちに応用できるものではないからである。以下、順にモデルを示していく。
(1)医学教育モデル:これは症例を通じて基本的な概念を学ぶ方法で、8~10のグループにチュータ(教員・院生・医師)がついて議論をする。
(2)教員巡回型:大人数でグループにチュータを割り当てられない場合は、4、5人のグループで自律的に学習を進めながら各グループを教員が巡回し、理解度の確認と質疑応答を行うことになる。必要に応じてクラス全体への簡易レクシャーを行い、各グループには学習成果のプレゼンテーションを行わせる。問題が示され、時間外学習を挟んで初回の議論を迎えたクラスにおける活動を例示すると、次のようになる。
(i)授業のスケジュールを示す。(ii)各自が学習した結果に基づいて、学習内容の説明、今後学習すべき課題の提示を行う。これらをグループ内で15~20分間報告・議論をさせる。ここで、グループ内で学習課題のリストアップ、優先順位付けも行う。この間教員は各グループを巡回する。多くのグループが議論が止まっている場合には、クラス全体への短い講義を行う。(iii)各グループから最重要学習課題を報告させ、グループ間で議論をさせるとともに、各グループの学習課題が適切かを再考させる機会を与える。(iv)学習課題を設定できたら、調査の方法を検討させる。問題を解決するために必要な学習や学習資源のリストアップの活動を含むが、重要な学習課題を落としていたり、必要な学習資源を逃しているグループには教員がアドバイスを加える。(v)グループ内で議論をまとめる。次の授業までに、教員はこれらの授業をまとめて重要な問題、キーワードなどを示しておく。
(3)学生チュータ活用:医学教育モデルを基本に、チュータに学生を活用する。学生チュータを使うことで、議論が円滑になり、過去の受講生のチュータは自身の学習も強化される。
(4)大人数型:教員巡回型を基本に、クラス全体のマネジメントを強化する。具体的には、クラス全体へ次のような働きかけを行う。(i)教員が投げかけた質問や学習課題について議論させる、(ii)学習課題に優先順位をつけさせる、(iii)プレゼンテーションの代わりにレポートを要求する、(iv)共通の学習資源を用意しておき適宜紹介する、(v)問題発見につながるような質問を投げかける。
モデルを示すということだったが、医学教育以外では実質的に教員巡回型しかなく、内容も決して具体的ではないく、多少裏切られる内容でもある。教員巡回型では、教員が学習課題を指示してしまったらだめなのではないか、学生チュータ型ではだれがチュータになり得るのか、前年度の履修生を使えばいいのかなど、いくつかの疑問もある。まだまだ議論が抽象的で、実際に教員が実践するためには、更なる方法論の探求が必要と思われる。