2008/08/22

Yonezawa, A. (2002) "The New Quality Assurance System for Japanese Higher Education: Its Social Background, Tasks and Futuer," Research in University Evaluation, No.2, pp.23-34.

本論文は、日本の大学において評価が必要になってきた背景と、新しい評価システムについて述べることを目的としている。しかしながら、その論旨を一言で述べると、評価のための情報収集の方法を確立し、そのデータベースの活用を早急に進めるべきであるというものにとどまっており、研究論文としてはほとんどインプリケーションのないものになっている。本論文は、大きく分けて(1)質の保証(Quality Assurance)の複雑な文脈の中における大学評価学位授与機構(NIAD)設置の背景、(2)新しい質保証システムのデザイン、(3)大学評価活動の大学へのインパクトについて考察する。
まず、日本の高等教育の特徴であるが、(1)行政組織は欧州型に近い、(2)大学の序列が明確、(3)私学セクターが大きい(この点は韓国も特徴的)という点があげられる。こうした中で、教育・研究・社会サービス活動のQAについては、日本が複雑な背景を負っていることが指摘されている。すなわち、戦後QAの責任は文部省が負っており、大学基準協会は実質的な機能を果たしてこなかったが、その後、質の保証は大学の自己評価が基本であるというトレンド、大学の社会的な存在意義を高める動きとしてJABEEなどに代表される専門団体による認定の動きが現れ、第三者評価の要請とそれを束ねる機関の設立が要請されるに至った点である。評価システムとしてはアメリカ型がよく知られているが、高等教育の制度からみるとイギリス型の評価システムを日本は注目すべきである。
第三者評価機関は(1)教育・研究活動の改善活動と成果を各大学にフィードバックする役割であることと、(2)評価手法の専門職団体であることの二つが求められ、本論文でいうNIADによる新しいQAシステムはこれである。そのために、NIADには大学評価、大学改革と質的評価に関する研究、大学評価に関する情報の収集・分析・公開の機能が付加されている。
次に、評価プログラムについてであるが、前提としてNIADは質保証は大学の自律的な仕事ととらえている。すなわち、自らゴールを設定し、それに基づいて外部評価を行うということである。その評価プログラムは3つのタイプに分けられ、(1)テーマ別評価(特定領域において日本の大学全体を評価する)、(2)専門分野別の教育評価(ミッションが評価の鍵になり、5年ごとに行う。教育の目的とゴール、教育の内容と方法、学生支援・教育成果、社会サービス・交換プログラム、教育の質の向上と改革のシステムの5点を評価する)、(3)専門分野別の研究評価(ピアレビューが質を保証する。研究の目的とゴール、研究の内容と水準、社会・経済・文化への貢献、機関の目的への到達、研究の質を向上させる組織的対応の5点を評価する)とまとめられる。
こうして、いわゆる「機構評価」が行われるようになった結果、NIADは、機関がミッションを明確にし、機関の差別化を図るための高等教育の情報の提供、すなわち、高等教育の巨大なデータベース作りと活用を進めるというインパクトを与えたと論じている。しかしながら、こうした形でNIADの存在意義を主張するだけでは、QAの本質を語っていることにはならないだろう。本論文は非常に重要な問題意識を持っているものの、その論旨が主観的な点と、論旨をサポートするバックが論理性や学術性に欠ける点が非常に悔やまれる。まず、QAにあたって「質」というものをどのように考えるのかという議論が前段階に必要となるだろう。