2018/07/16

藤本夕衣ほか(2017)『反「大学改革」論:若手からの問題提起』ナカニシヤ出版


PDCAサイクルは合理的であるか

  • 多くの大学人はPDCAサイクルを合理的であるとし、それに対する異議は愚痴にしかならないと考えるが、それは自明ではなく、実際に合理的・論理的な反論がある。
  • 反論は、(1)人間の物象化に対する批判、(2)経営学的な無理解に対する批判、(3)トップダウンであることに対する批判の3つに整理できる。
    • PDCAサイクルは、ズレを契機とする相互生成の可能性を抹殺する(人は能動的・主体的に反応するので、当初の目標と食い違うことが起こる)。
      • 教育の失敗は当期の学生に向けられない問題。
      • それが合理的としてもk、来期の学生も個別的で変化する。(生産と教育は違う。)
    • デミングのPDSAでは、点検ではなく研究とされている。目標と結果の差異を研究し、学んだことを積極的に生かして次の計画を立てる(差異を排除するのではない)。
    • 本来のPDCAの真意は協力と協調のボトムアップにも関わらず、政策や大学評価ではトップダウンと誤読している。
      • Pは目標と計画の両方の意味で使われるが、サイクルになるには目標は更新されないといけない(いかに目標を達成するかという計画(Plan)を指すもの)。しかし、実際は目標はトップからの所与であり、計画・実行(Do)だけがサイクルで更新されていく構造になっている。
  • PDCAサイクルは、あらゆる偶然性を排除することで、限りなく必然性を追求するシステムである。それが大学という現実を改善できるわけがない。
産学連携を問い直した結果としての産学連携

  • 2006教育基本法改正:大学の使命に教育研究に加え、教育研究の成果の提供による社会貢献が明文化。
  • MEXT:産学連携推進が大学文化を変えていない→管理志向を強める政策(公募プログラムで人文社会科学の参画や、学部自治の変革を求める)。
  • 産業界:大学の企業化を求める背景に、米国が中央研究所モデルからオープンイノベーションに急速に移行したのに、日本はバブル期の企業での基礎研究モデル(基礎から開発ま自社でやるリニアモデル)から抜け出せないことがある。
  • 大学:研究者評価で、研究費獲得が重視され、技術移転・社会実装志向が強まった。
  • パスツール象限:社会課題解決・社会ニーズと基礎科学推進を同時に満たす研究 ← シナリオ上の話で実際には大学と企業の間に大きな壁がある。
    • 研究成果の公開の扱いの違い
    • 研究成果を評価する時間感覚の違い
  • これまでの産学連携=大学の企業化で企業と大学の差異を解消しようとしてきた。← 大きな壁の無視がかえって連携を困難にしている。→ 大学の尺度で捉え直すべき。
大学教育と内外事項区分
  • 設置基準大綱化:各大学が特色を生かして自主的に教育課程をつくる ← MEXTの補助金交付で形骸化されていく。
  • 行政指導:法令や指示命令と異なる方法で要請を行う方法。
  • 補助金:(1)法律補助(根拠となる法令がある),(2)予算補助(それ以外)
    • 高等教育振興費はすべて予算補助
  • 教育行政学:教員の専門性に依拠して教育を行うことに関心(教育行政を一般行政と切り離し,政治の思いつきの提案の影響を小さくする)
    • 外的事項(財政・教員配置・開講日などの学校の形)と内的事項(教育の内容・方法)を分けることが重要。← 内的事項は教員に任せる。
  • 補助金は内的事項に踏み込んでいる ⇔ 政府と大学が利害を共にしている(減額された運営費交付金を補うために取り組む)
    • ただし,政府と教員が利害を共にすることは少ない。
      • 内的・外的の区分は概念としてわかりやすいが,実際に教育に関することをそれで区分するにはあまりにもあいまい。
パフォーマティヴの脱構築
  • ハイパーメリトクラシー化:ポスト近代型能力(対人・コミュ力など)の社会的重要性が無視できないほど増し,能力の多元化が進行すること。← 専門性で逃がす・かわす(専門性を身につけていればその範囲で要求に応えればよく,あらゆることに意欲的・創造的でなくてもよい)。
  • ハイパーメリトクラシーか専門性か:対立するように見えて,パフォーマンス信仰という点で同根。
理工系大学院の価値を問う
  • 産業界がなぜ博士人材に価値を見いださないか:修士である程度の研究経験があるなら,博士まで必要ないと考えている。
  • 日本は人口あたりの研究者は多い=博士を持たない民間研究者が多い。
  • 大学院が学部の延長にあるかアメリカのように切り離されているかが曖昧なままコースワークの実質化が図られ,研究活動の鈍化が起こっている。
  • 研究活動を通じた教育の実質化ができていないため,学位取得の基準が明確でなく,(研究が中心の博士課程の)人材育成目標が不明確。(とはいえ,それは困難)。

  • PROGのジェネリックスキル論
    • 知識を活用して問題解決する力のリテラシー,経験を積むことで身につく行動特性のコンピテンシーの2つの測定。

2018/07/13

山田礼子(2013)「高等教育における生涯学習推進の方向性」『日本生涯教育学会年報』34,21-40.


  • 25歳以上大学生:OECD平均20%,日本2%。
  • 教育再生実行会議:大学の社会人学び直し機能強化。4つの具体的提言。
    • 職業上必要とされるより高度な知識等の習得や,新たな成長産業に対応したキャリア転換に必要な知識等の習得など、産業界や地方公共団体のニーズに対応した高度・中核的人材養成のオーダーメイド型の教育プログラムを開発・実施する。
    • 産業界や社会人の学び直しニーズにマッチするよう,社会人教員の活用などによる先駆的な授業科目の開発,産業界との共同による実践的な職業教育プログラムの開発などの取り組みを進める(特に理工系)。
    • 社会人が学びやすい環境を整備するため,短期プログラムの設定や通信による教育の充実,ICT等の活用を進める。企業は,サバティカルや労働時間の弾力化等,社員の学び直しする環境づくりを行う。
    • 国は,大学・専門学校等で学び直しをする社会人を5年間で倍増(12万人→24万人)を目指し,支給要件の緩和など奨学金制度の弾力的な運用,雇用保険制度の見直しによる社会人への支援措置の実施,従業員の学び直しプログラムの受講を支援する事業主への手厚い経費助成等の支援策を講じる。
  • 社会人大学院:2009年から減少。
  • 日本の大学院拡大は80年前後:工学系修士が増加したため。今でも修士の半数は理工系。⇔ 日本の大学院は研究者養成。
  • 86年臨教審2次答申:修士を研究者養成でなく,高度専門職養成とする政策。
  • 専修学校での社会人受け入れも07年以降増加(特に専門課程)。
  • リカレントモデル:教育→職場ではなく,教育⇔職場。
    • 米国ではプロフェッショナルスクールとコミュニティカレッジがモデルの代表(職業の定義に応じて職業教育機能をそれぞれ果たす)。
    • プロフェッショナルスクールは,学位名称を分けている(MBA,JD,MEdなど)。
    • プロフェッショナルスクール,産業界,専門職(アクレディテーション)団体が連携しているので,リカレントが成立している。
  • 学士課程教育:生涯学習基盤という概念が今後定着するのではないか。
  • クオリフィケーションズフレームワーク:学習の達成レベルに応じた一式の基準にしたがった,クォリフィケーション開発と分類のための道具(舘)。
    • 様々な職業分野において複数段階の評価基準を整備し、学校段階との対応関係を明らかにするような能力評価制度。
    • ⇔ 学士課程段階での学習成果がようやく議論。より大きい枠組みのQFは議論なし。
  • 社会政策としての機能のみならず知識基盤社会におけるリカレント教育機能を充実することが,日本の高等教育に期待される生涯学習振興。

2018/07/12

三上直之・木村純・飯田直弘・児玉直樹(2016)「研究総合大学における全学型公開講座の運営動向」『高等教育ジャーナル─高等教育と生涯学習』23,87-100


  • 北大公開講座:8人の教員が多様な専門を講義。
    • 受講者の半数が70歳以上。
  • 全学型公開講座:各大学の中長期目標と関連付けて拡大傾向。
    • 北大の基本的方向:(1)超高齢化への対応,(2)多様な市民との対話を通じて大学改革の方向性を探る触覚としての役割の強化,(3)高等教育研究部門と学務部が協働して企画運営していることの強みの活用(三上ほか 2015)。
  • 共通テーマの設定=総合大学の総合力が問われる場。
  • 北海道・東京・大阪・名古屋=全学企画委員会型 VS 京都=事務局・担当理事主導企画(臨機応変に講師先行・企画先行を変えられるのが強み)。
  • 名古屋も受講者の半数が7~80代。
  • 休日昼間開講すると多様化できるともかぎらない。
  • 評価の高い企画を作る体制の維持が重要。

2018/07/11

飯嶋香織・行木敬(2016)「シニア学生の入学動機と入学後の学びの関連について」『神戸山手大学紀要』18,1-11


  • シニア50+制度:50歳以上の学生を正規学生として入学させる。
    • 筆記なし、AO入試、実質学費減免。
    • 年齢層50~70で広い。
  • 入学者に面接・質問紙調査。
    • なぜシニア講座(分離型)でなく統合型なのか。(→ 単発の講座では見えてきにくい学問の広がりを実感=学びの好循環)。
  • 質問紙→因子分析
    • 入学動機:学問追求、一般教養、人間関係、目的曖昧の4因子。
    • 入学後の学び・大学生活:学び因子、生活全般・友人関係の2因子。
    • 入学理由・期待と入学後の学びの関係:「高い専門性を身につけたかったから」「幅広い教養を身につけたかったから」「色々な人に出会えるから」「何もしないでいると呆けてしまうと思ったから」のプラス回答・マイナス回答の2群について、学び因子、生活全般・友人関係の因子得点を比較を比較して有意差検定。
      • 「高い専門性を身につけたかったから」:学び*、生活NS
      • 「幅広い教養を身につけたかったから」:学びNS、生活NS
      • 「色々な人に出会えるから」:学び**、生活NS
      • 「何もしないでいると呆けてしまうと思ったから」:学びNS、生活*
  • 教養目的では、どちらも高くない。
  • 入学動機は学習だけではない。
  • シニアであっても友人関係は重要。

2018/07/10

The Role of Organizational Design in 21st Century Organizations: The Future of Higher Education


  • 組織デザインは単に構造や権威階層に関する話ではない。関係性,実践内容,プロセスを形成する行動のバランスの中で設計するもの。
  • 組織デザイン=プロセス,構造,役割,戦略を立て直すもの。また,メンバー・情報・技術の統合プロセスを支えるもの。
  • それなのに垂直的な指揮命令系統を組織デザインと考える人は多い。
  • むしろ組織デザインのフレームワークが重要。これがデザイン選択の基礎となる。
  • フレームワークは,複数のデザインポリシーで構成される。ポリシーは,メンバーの行動に影響を与えるマネジメントによってコントロールされる。
  • その結果,多くの組織は官僚制としてデザインされている。コントロールポリシーとして,ルール,方針,手続きが決められている。
  • しかし,21世紀になって,マネジャーとメンバーが共同して,学生ニーズを見定めていくモデルが推奨されるようになった。いわゆる,フラット化・中間管理職廃止組織のこと。これは,共同を促進し,サイクルタイムを短くし,コストを下げ,質を上げる(本当?)。
  • フラット組織は医療・軍では機能しない。ソリューションが不確実でメンバーが各自で環境と相互作用する組織で機能する。また,組織文化を無視してフラットにしてもうまくいかない。
  • 結局組織デザインは,誰が決定するか,成果を形作るか,変化をリードするかを決めること。
  • 大学で優れた組織デザインは,知識,経験,各人の専門性を取り入れられる組織のこと。すなわち,何が自分たちのニッチか,強みか,独自性かをつくれること。
  • 環境変化が激しい時代では,バウンダリーレス組織になっていく。(バウンダリーレスなパートナーシップをいくつ作れるかということ)。
  • どうやって柔軟で適応的な組織デザインにするか。
    • 市場調査:自分の強みと弱み,競合の特徴,学生のニーズを知り,柔軟性,適応性,持続的発展の重要さを認識する
    • 戦略とプロセス:組織の進む方向性を決めて,必要な情報を組織内に流通させる。
    • コミュニティを作る:学科,地域,執行部が集まる機会をつくる。
    • 報償システム:目的にあう行動ができる人を報償する。
https://thenewfuturist.com/free-resources/guest-articles/the-role-of-organizational-design-in-21st-century-organizations-the-future-of-higher-education/

2018/07/09

Wilkesmann, U. (2013) "Effects of Transactional and Transformational Governance on Academic Teaching: Empirical evidence from two types of higher education institutions," Tertiary Education and Management, 19(4), 281-300

  • ドイツの大学:ボトムアップ組織だった
    • 年に1回の総投票制度など→ 近年NPM型に変化。
    • 組織構造もクラブ型から企業型へ。
  • 変革型ガバナンス:
    • 職場での自己決定感高→より内発的動機づけ発揮
    • 職場での自己決定感低→外部から動機づける必要あり
    • 専門職組織=社会的規範で統治された組織
  • 研究目的:教員が学術教育の有効さを認知する上でどのようなガバナンスがより効果的か
    • 仮説1:取引型ガバナンスは専門大学でより効果的と考えられている
    • 仮説2:新しい管理手法は教育の有効さの認知にプラスの効果がある
    • 仮説3:高い自己決定性はより高い教育の有効さの認知につながる
    • 仮説4:学生中心教育であるほど、教育の有効さの認知につながる
  • 分析の背景にある概念
    • ドイツの研究大学VS専門大学
    • 組織における意思決定プロセス:ボトムアップ(クラブ=全構成員参加意思決定)VSトップダウン(PAモデル)
      • 専門大学=より管理型、研究大学=クラブ型
    • PA理論:教育活動の成果が見えにくい=インセンティブが機能しない(selective incentiveは研究に対してなら機能する)
      • →これは、教員がマルチタスク問題に直面していることを意味する。教員は教育と研究の双方に時間を割かねばならない。そこで、新たな教育インセンティブが必要。ドイツで主に使われる選択的インセンティブ:業績給、パフォーマンスベース予算配分、目標管理制度、教育賞
    • ドイツの給与体系:年齢給(C-salary)VS能力給(W-salary)
      • 目標管理制度入れた大学もある:学長・学部長と教育・研究目標を交渉して決定
    • 自己決定理論:内発的動機づけは変革型ガバナンスで重要な要素の1つ
      • 組織構造と動機づけには相関がある(Ryan and Deci 2006)。
      • 内発的動機づけは教育へのコミットメントを説明できるか?という課題にぶつかる。
    • 文化化理論:PA理論は、エージェントが学習しない・社会化されないと仮定している→教員は学生時代・教員時代を通して教育に関して社会化される。→教育アプローチを見れば、どのような社会化がされたかわかる
      • 組織内の社会化行動を見るために、Prosser & Trigwellの教育アプローチに注目する(=教員中心教育VS学生中心教育で見る)。
  • 調査設計
    • 研究大学と専門大学で別に調査
    • 前者は8000教員に調査、1119回答、回答率14%、業績給・年齢給別に調査
    • 後者は学部長に依頼、942教員が回答
  • 調査の関心=教員の教育行動(≠教育の質)
    • ~は自分にとってどのくらい重要か?で質問←従属変数
      • 教育にエフォートを投入すること
      • 新しい教授法を試すこと
      • 学習プロセスを豊富にすること、など
  • 独立変数は、新しい管理手法が使われているか
    • Merit pay:制度があるか?自分は使っているか?のダミー変数で測定
    • 目標管理:予算配分フォーミュラにおいて、教育成果は何%考慮されていますか?
    • 教育賞:自分が獲得可能な教育賞がありますか?取りましたか?で測定
    • 自己決定性:Work Tasks Motivation Scale for Teachersを使用。
  • 結果:
    • 仮説1:棄却、仮説2:棄却、仮説3:採択、仮説4:採択

2018/07/05

藤村正司(2017)「高等教育組織存立の分析視角(2) ― 「脱連結」論から見た改革・実践・アウトカム ―」『大学論集』49,37-52


  • 改革:一回限りの永 続的変化をもたらすもの ⇔ 改革それ自体がスタンダードな反復活動となり,改革が改革を招いている。
    • → 組織内部に改革と実践を連結させようとする強い圧力(=PDCAサイクルの確立)がかかっている。
    • → 改革をスタートさせることは容易であるが,改革を遂行することがいかに困難であるかを物語っている。
  • モニタリングや誘因を欠いた改革=成果を得ているのかどうか査定しなくても,アウトカムが得られているであろうと見なす「信頼の論理」がある。
    • ← アウトカムの精査を回避するメカニズム=「脱連結」
  • 新制度主義組織論は組織内部には立ち入らない。
    • 新制度主義は超越論 的視点から高等教育が提供するローカルで個人的な経験(カレッジ・インパクト)に先だって存在する「意味秩序」を問う。(大学でどんな教育を受けたかよりも,学生の資質が同じであれば,「卒業生」になる事実が,何よりも個人の将来生活にクリティカルな影響力をもつ。)
  • 2つの脱連結(Bromley & Powell 2012)
    • (1)改革を儀礼的に選択,仕事のルーチンを変えるモニタリングや評価は意図的に回避(教育・公的組織など,アウトカムに関する情報が外形的評価にとどまる組織で多い)。(=従来の脱連結)。
    • (2)実践とアウトカムの脱連結:改革が日々の実践の変更を余儀なくするが,新たなアウトカムが得られているかは不明なケース(総合改革支援事業のKPIや国立大の中期計画など)。

2018/07/04

原義彦(2015)「大学の社会貢献機能の位置づけ把握の試み」『日本生涯教育学会年報』36,57-73


  • 目的:現在までの約20年間に大学の社会貢献機能がどのように捉えられてきたか。大学の機能における社会貢献機能の位置づけの把握を試みる。
    • 社会貢献機能は、教育・研究と同列か定まっていない → 2005年答申(我が国の高等教育の将来像):社会貢献を明示 → 国際協力,公開講座,産学官連携などより直接的に。
    • なのに未だ,大学の社会貢献機能と教育・研究の関係は不明確。
    • → 3つの課題を設定
      • 大学の社会貢献機能がどのような内容として,また,それがどのような背景の中で示されてきたか
      • 大学の機能の中で社会貢献機能がどのように位置づけられてきたか
      • 現在,大学に求められている社会貢献とは何か
      • → 国の審議会会議等の答申,報告提言,文部科学省から出されている行政資料事業に関わる資料,パンフレットの各種資料で分析
  • 答申の動向
    • 1999「21世紀の大学像と今後の改革方策について競争的環境の中で個性が輝く大学(中間まとめ)」:地域社会への生涯学習支援機能を重視する大学という在り方が新たに示された。
    • 2005「我が国の高等教育の将来像」:大学の機能別分化で,従来の「地域の生涯学習機会の拠点」に加え,「社会貢献機能」が新たに示された。
    • 2008「中長期的な大学教育の在り方について」:機能分化に加えて,グローバル,ナショナル,ローカルという機能が及ぼす範囲・空間の違いによる分化の考え方が加わった。
    • 2014「イノベーションの観点からの大学改革の基本的な考え方」:国立大学に,3つの類型選択を求める。
  • COC事業(地域再生の核となる大学づくり構想)
    • 背景にある批判:大学の教育研究が社会の課題解決に十分応えていない,学生が大学で学んだことが社会に出てから役立っていない,地域と教員個々の人のつながりはあっても大学が組織として地域との連携に臨んでいない
    • 事業で期待する大学像:(1)自治体等と連携し,全学的に地域を志向した教育・研究・社会貢献を進める大学,(2)全学的に地域再生・活性化に取り組み大学の改革につなげる,(3)地域の課題(ニーズ)と大学の資源(シーズ)のマッチングにより地域の課題解決,(4)自治体と大学が協働して地域振興策の立案実施を視野に入れて取り組む。
  • COC+へ
    • 自治体や企業等と連携して学生にとって魅力ある就職先を創出・開拓し,地域が求める人材を養成する大学の支援を通じて,地方への人の集積を図るということが主眼に。
    • COC=地域課題解決・再生・活性化の拠点となる大学づくり→COC+=人口減少課題に焦点化し,地域における雇用の創出学生の地元定着を促進
  • これらからわかる社会貢献機能
    • (1)記述内容について
      • 地域社会への生涯学習機会の提供に力を注ぐ大学=大学公開講座(大学開放事業)
      • 大学の社会貢献は,時代によって強調される内容が変容する ← ある意味当然:変化しにくい教育内容に対して,社会の変化に敏感に反応することが求められる。 → 大学の社会貢献の内容は幅が広く,明確な範囲を規定しえない。
      • 社会貢献は,大学改革の議論の中で生じた。
    • (2)大学機能における位置づけ
      • 2005年以降は第3の使命=教育・研究とは異なるもの定義。← 地域貢献や生涯学習支援の活動が広がる中で,別機能として捉える必要性があった。
      • 一方で,機能間の序列化を進めた=社会貢献は「第3」の使命。⇔ 社会貢献は教育・研究に含まれる機能という考え方(COCでは「全学的に地域を志向した教育・研究・社会貢献を進める大学を支援」とある)。
    • (3)現在求められる社会貢献
      • 自治体等と連携しながら地域活性化や地域の課題解決を支援していくこと。
      • → 教育や研究そのものに社会貢献を志向する視点を取り入れる必要がある。(もし教育・研究に社会貢献が含まれるなら。)→ カリキュラム自体を地域志向にする必要あり。

2018/07/03

光本滋(2018)「高等継続教育と大学改革 : 国立大学における生涯学習部門の動向を中心に」『北海道大学大学院教育学研究院紀要』130,151-162


  • 国立大学協会大学運営協議会『大学改革に関する調査研究報告書』(1973年12月):国立大学における生涯学習部門の理念的な基礎を与えたもの。
    • 大学教育の開放は,技術革新などの必要から生れたものではなく,大学が自らその使命を主体的に認識した場合,当然生ずる理念であると指摘。
    • → 現実の大学は大学開放を十全に行うだけの人的物的条件を欠いている。
      • 選抜性の高い大学では,大学開放は自分たちの本務ではないという意識を生む。
  • 国立大学生涯学習部門
    • 1973:東北大学大学教育開放センター→金沢(76),香川(78)
    • 90年代~03:省令施設増加,大学開放やめて生涯学習教育研究センターを名乗る。
    • 04法人化以降:改廃(07年から加速),4パターンで再編。
      • (1)高等教育開発部門との統合,(2)地域連携(産官学連携)部門との統合,(3)高等教育開発部門・地域連携部門両方との統合,(4)生涯学習教育研究センターとしての存続
  • 大学改革との関係
    • 政府要請の強化:COC=大学と自治体の組織的・実質的な連携の下で教育内容を作って実施 → COC+=雇用創出・地元定着率の向上,数値目標要求,習得能力明確化
    • COC+は国立改革施策でもある(COCより採択数激増)

2018/07/02

木田竜太郎(2012)「高等継続教育の日本的展開に関する一考察 : 私立短期大学の消長・変遷過程を中心に」『早稲田教育評論』26(1),159-172


  • 短期大学:戦後高等教育の量的拡大に大きく寄与。
    • ← これに注目しながら、日本における高等継続教育の特質・性格・今後の方向性を探求した。
    • 国際的分類:短期高等教育(short-cycle higher education)、非大学セクター(Non-University Institutions)
    • 制度史的には、戦後教育改革の過程において、新制(四年制)大学への昇格が見送られた旧制専門学校群を救済するための暫定的な措置として発足。
    • 高度成長期:女性の社会進出、地域社会への大学教育機会の提供、高等教育進学率の向上に貢献
    • 近年:四年制大学量的拡大の主要因
  • 世界の高等教育大衆化:非大学セクターの創設と拡大によって支えられた。
  • 本稿は、大学設置基準大綱化が、短期大学に与えた影響について検討する。
    • なぜなら、大綱化以降短大は市場化の直撃を受けたから。
  • 日本の継続教育:社会教育の見地から施される職業・技術教育を指すことが多い(しかも正規の教育機関に在籍していない低学歴の青年・成人に対して)。
    • → 近年の継続教育:高等教育の修了者を含め、より広範な市民一般に提供される継続的専門教育。
    • → 短大は、21世紀型学習社会における「高等継続教育機関」として捉え直せるのではないか。
  • 短大廃止の3パターン:
    • 吸収廃止型:短期大学を「大綱化」以前からある系列四年制大学などに「吸収」(短大資源を使って新学部・学科増設)
    • 昇格廃止型:短期大学を「大綱化」以後に改組・転換して四年制大学に「昇格」
    • 撤退廃止型:短期大学の廃止によって設置者法人が大学教育から完全に「撤退」
  • なぜ廃止されるか:
    • 学生定員を充足できず経営上行き詰まっても、ただちに大学や短大が廃止されたり、学校法人が解散することは意外に少ない(山崎 1989)。
    • 資格志向と職業志向に対応できない+女性の進学先の変化の2つが主要因。