佐藤仁(2017)『教えてみた「米国トップ校」』角川新書
- 入試
- プリンストンのリーダー:エッセイの臨時査読者(主婦などの地元民)
- バックグラウンドチェックの後、30時間の研修。
- 全願書は4名で査読、2名が個別ランク付け、合格圏者に3人目が地理・人種バランス、学業以外の実績で評価。
- 面接は卒業生。
- フィーダースクール:米国の灘・開成。
- エッセイに書ける活動をしたがる。(試験の点で差がつかないのでエッセイ勝負になるため。)
- ネタのパターン:逆境克服、グローバル体験、マイノリティ、リーダーシップ、課外活動
- スタートは13歳:入試のあり方が中高時代の過ごし方を左右する構造は米国も同じ。
- 人物入試の導入:人種差別批判をかわしながら、正統派(白人)学生を入れる方策。
- 日本の入試は、筆記のみでも多様な人が入っている、教員の負担コストが少ない、米国でも費用をかけながら本当に多様な人がとれていない点からみて優れている。
- 教育
- 講義科目(一定数以上の学生がいる授業)の1週間:50分の講義2回+1回のプリセプト(少人数ゼミ)
- 米国の教室:性別や人種などの見た目は多様だが、志向性・マインドセットが同質。
- カリキュラムの特徴:独立研究(3年次論文+卒業論文)、初年次セミナー、プリセプト(15名以下、課題文献に関する討論50分、TAが指導)。
- 週4科目履修が一般的。課題文献が多いため。毎週課題文献の感想(レスポンスペーパー)を求める授業も多い。週平均38時間の学習。課題文献以外を読まない=主体的に学べない。
- 東大=授業時間は長いが、授業外学習時間は短い。しかし課題の質は高い(米国は基礎学力にムラがあるため)。東大は基礎学力にムラがないが勉強へのやる気にムラがある。ただし、本質的な問題に切り込む学生は米国の方が多い?
- 授業スタイル:写真1枚で語る ⇔ 学生は文字が多いスライドの方が復習に役立つ。
- 企業が採用の足切りにGPAを使うため、学生が成績にこだわる。
- 授業評価をウェブで書き込まないと成績が見えない。
- 評価の高い教員を表彰することはあるが、低い教員を改善することはない。
- 授業の中間レビューの方が有益。
- 試験はオナーコードを宣誓するので監督がいない(なのでカンニングが多い)。
- 学生と教員の距離は日本より離れている:教員は研究が忙しいので学部生を相手にしない。オフィスアワー制度が必要な理由でもある(ほかに教員を縛る制度がない)。日本のゼミは優れた制度。
- 学生間の相互扶助がない(強い自立プレッシャ-)ために追い込まれる学生が多い。
- 自分で考えるゆっくりした過程がなければよい授業にならないのでは。
- 教員
- 教員給与は、概ね日本の国立大学の2倍。休み分は、外部資金かサマースクール手当を得る。
- 2セメスターで2コマ担当(ツー・ツー)が授業負担の標準。近年2・1にして院生を使う傾向に(外注化)。
- ノンテニュア・非常勤を増やす背景:経費を削減して組織的な抵抗が生じないようにしている(=会社化)。
- 人文社会系のテニュア審査:出版で決まる、助教1冊准教授2冊(研究者の採用や昇任を出版社が握っている)。
- 政治学では、トップ11校で50%のポストを独占、残り100以上の院生が残りの50%を競う。
- 日本の年功序列システムは、長期的・挑戦的な研究に適している(でも成果がでてないのでは?)。
- テニュアシステムでは、若手を雑用から守る。
- 公募でもネットワークは変わらず重要。
- 職員:教員=4:1(プリンストン)、5:2(東大)
- 研究会が多い。全教員が部局内で半年に1回はセミナーを行う。← ペナルティを科す仕組みはないが、研究しないと居心地が悪くなる雰囲気はある。
- グローバル
- 1878年の東大:半数以上は外国人教員。教授になるには国費で3年留学が義務。
- 米国の学生は国外に興味がない。多様な語学クラスを作っている。学内にグローバルを取り込むことに力点がある。
- 5人以下の授業は開講できない(会社化)。東大はマンツーマンもある。
- 人文系学問は、民主的な社会の創造と維持に必要な批判的精神を養い、異なる文化に共感する心を養うことにつながる点で重要。合理性が支配的な社会に余裕と潤いを持たせる。
- 何語で書くかよりも何を書くかが重要。
- 日本人はデータコレクター、米国はストーリーテラー。
- 結語
- 改革は一体的に考えなければ意味がない。個別の項目で日米の優劣を判定しても意味がない。
- 日本の問題点:教員が忙しすぎる(本務外で特に)、教員に協働する余裕がない(個別に熱心な教員はいるがカリキュラムを求心力にしていない)、改革が教員・学生よりも文科省を向いている(資金獲得手段としての改革)。
- → 職員の意思決定参加を。授業はコマ数削減とチームティーチングを(+TA活用)。学生が大学運営に参加を(学生アドバイザリー制度:選挙で選ばれた学生代表が的的に学部長らと会い、カリキュラムについて意見交換)。若手研究者を優遇(海外協定校で授業する経験をいれる)。
- → 守るもの=ゼミ・ラボ文化、マイナー科目の存続、日本語で学ぶ環境。