2018/02/28

「大学教員の変貌」『IDE 現代の高等教育』No.594,2017.10

金子「大学教員 名分の変質」

  • フンボルト理念下のドイツの正教授
    • 特定の学術領域の研究・教育を包括的に委任される
    • それに伴う大学での雇用保障(永任権)
    • それにふさわしい学術的達成について厳しい評価を経なければならない
  • → 育成過程は不明確 → アメリカの「大学教授職モデル」
    • 正教授に至る准教授・助教授をつくる
  • 正教授が公正性や意欲を欠くことを防ぐメカニズム=昇任は移動を伴う+州政府の承認
    • → 結果として教員の流動性が、ドイツやアメリカの学術水準向上に貢献

2018/02/27

「認証評価第3期」『IDE 現代の高等教育』No.595,2017.11

工藤「大学基準協会による第3期認証評価」

  • 基準協会の内部質保証:PDAサイクル等を適切に機能させることによって、質の向上を図り、教育、学習等顔適切な水準にあることを大学自らの責任で説明し証明していく学内の恒常的・継続的プロセス。
    • 3つのポイント
      • 質の向上に結びつく改革サイクルの確立が必要
      • サイクルを通じて教育、学習の水準の適切性を自らの証明すること
      • 証明の営みを継続させること
前田「認証評価の現状と課題」

  • 協会=プロセス重視型、機構=結果重視型
  • 機構:教育課程の基準は13の質問、これに適切に記述すれば適合、PDCAサイクルに関する記述は必須でない。
  • 協会:教育課程の評価の視点は5つのみ、ただし妥当性の判断には各大学の検証と改善の視点が必要(=内部質保証に対応している)
山田「認証評価と教育改革」
  • CPにおける学修成果は、個別学生だけでなく、プログラムレベルの学修成果を指す。
  • 一方で、学位プログラム全体の学修成果をどう評価するかが確立していない。
米澤「高等教育室保証の国際動向と認証評価」
  • 認証評価は、米国の適格認定(相互価値保証、連邦政府による奨学金給付に関わる認証)とは異なる者として設計された。
    • しかし、機構の用語集では、認証評価を certified evaluation and accreditation としている。
    • もともと基準協会が、日本で一貫して適格認定をしてきた。
    • 日本の大学の質保証を国として対外的に示すために、適格認定が入ったのか。
  • ただし、適格認定は世界的に標準ではない。
    • 欧州の質保証は、各国・評価団体のイニシアティブのもとで多様に発展。評価の相互尊重を軸とした質保証概念を使ってきた。
  • 認証評価の要求が高度化する一方、基準を満たした機関にとって認証評価が質向上にはたす役割は小さく、義務感と徒労感が多い。
  • 認証評価は人の国際流動を生み出す基盤であるべき。

認証評価は一発評価。継続改善へのプロポーザル、コミュニケーションがあれば別だが、それはあまりにも高コスト。

2018/02/22

苅谷剛彦(2017)『オックスフォードからの警鐘』中公新書ラクレ587


  • 日本は講義、オックスブリッジがチュートリアルであるのも、大学が国家をつくったか国家が大学を作ったかに反映されている。
  • 非英語圏では、リアルな競争では圧倒的に不利。
    • 英語で発信しなければリアルな競争とは無縁。
    • 実際にリアルな競争に巻き込まれていないのに、リアルな国際競争力をつけようとしているから効果がない。
  • (冠名に対する欧米人・欧米社会と日本人・日本社会の見方に違いはあるか?)
  • 文系不要通知:国家と大学のパワーバランス、大学の弱体化、社会からの信頼の薄さを露呈した。
    • オックスフォードの入試は主観的な評価中心でも社会が受け入れている(大学の権威を受容している)。
  • チュートリアル:イギリス社会の個人主義(自立した個人=市民の相互承認によって社会が成り立っている)の思想と結びついている。
    • 共通知識基盤を作った上で、個人が知識を用いてどう考えるかを重視。
    • 入試で主観が尊重されるのも、相互に個人を尊重しているため。
    • 日本では公平性・客観性が重要(講義でも。→ 個別学生が見えにくい学習中心になる。)
  • チュートリアルシステム:
    • 週1回約1時間、学生2~3人に教員1人、全8週間
    • 毎回エッセイ論文の課題
    • 課題に答えるための課題文献が指定される
    • 課題文献を読んで毎回A4で10頁程度のエッセイを提出
    • 試験問題も課題文献をもとにエッセイ課題ににた問題が出る
  • パブリックスクール・グラマースクール・セカンダリーモダンの3階層
    • 階層移動の手段と思われたグラマースクールは、階級再生産とわかり、グラマー+セカンダリーのコンプリヘンシブスクールに統合された(70~80年代)。
    • 学校選択制により自由に中東学校を選ぶ時代へ(80年代)。
    • アカデミースクール(地方教育当局の運営から離れた公立学校)設置(90年代)。
    • エビデンスの時代:グラマースクール復活論(ESB低の生徒がいくと高い成績など)。
  • サービス業の生産性が低いのは、価格に転嫁できない過剰なサービスとそれを支えるパート人材のため?
  • グローバル化という概念は、実態としての社会変動を指す面と、それらに関するイデオロギーを意味する2つの面がある(広田)。
    • ネオリベラル改革(規制緩和・市場化・民営化)が国外で進み、日本が遅れているから対応せよというイデオロギー。
    • グローバル化が曖昧な概念であるがゆえに、イデオロギーの影響力が大きくなる。
  • 需要側から見た高等教育のグローバル化は、英語圏主導の動きではなく、中国化。
    • 流出する中国留学生をどの国が獲得するかという競争。
    • 中国は買える学歴ではなく、厳しい教育を提供する質の高い教育を求めるようになった。
    • イギリスから見たライバルは、オーストラリア、ニュージーランド。
  • 欠如理論:日本にないものを過度に普遍的と思い込むこと(日本にしかないものも逆に欠陥の原因とされる)。
    • 過去の教育(詰め込み)にネガティブな印象を与え(実体験があるので具体性がある)、主体的な学び(抽象的で理想的なイメージ)を語って改革を求める(脱連結した理想化)。
    • この基盤は、外部の礼賛。
    • 外部の現実ではなく理念を参照点にするので、実体験よりも理想が勝ってしまう。
    • 理想と現実を埋める役割を果たすのが、外来のランキング。
  • グローバル化の正体:英語(言語資本)を利用できる国が、大学という機関(=制度)を使って、資金や人材を集める競争をしかけ、市場での優位を確保し、知的生産・伝達のヘゲモニーを握ろうとしたこと。

2018/02/20

土屋雅子(2016)『テーマティック・アナリシス法』ナカニシヤ出版


  • 質的研究:
    • 数値で表すことのできな事象の意味や経験を深く理解し解釈すること。
      • そのため、RQはどのようにして起きたのかというプロセス重視になりやすい。
    • 今まで明らかにされていないことを探索することが目的。
  • 質的研究の厳密性:調査者の技術・分析の技術で、データの質と分析の質を担保する。
    • 分析時に中立的な見方ができる訓練が必要 → テキストデータに変換して分析することが多い。
  • インタビュー法:半構造化面接=共通質問を設定し、追及質問を加えながら協力者の語りへの理解を深める。
    • 共通質問に聞き忘れがあってはいけない。→ インタビューガイドの作成とシミュレーションが重要。
  • 初学者は分析手法が気になるが、データありきであることが重要。
  • TA:質的データの中にパターンを見出すための体系的なプロセス
  • Boyatzis(1998)のTA:演繹的分析手法、帰納的分析手法、ハイブリッドアプローチを提案。さらに、コードブックで分析プロセスを可視化する。
    • 3段階で構成される:(1)研究デザインとサンプリングの設定、(2)コードとその信頼性の確認、(3)2のコードの全体への適用と再コード化、結果の解釈。
  • 分析方法
    • 演繹的:既存の理論・先行研究を基盤にしてデータを分析。理論が用いるテーマ名でコーディングする。(まれな方法。追試や不慣れな人向き。)
    • 帰納的:データからテーマを生成する方法。単独・ミックスどちらも使える。
    • ハイブリッド:帰納的分析で生成されたテーマを、既存の理論を用いて再分析・解釈する方法。分析単位が1つ(一人・一組織)の場合、帰納的分析に必要な比較基準が不明瞭な場合に使う。
  • コーディングユニット:構造的コーディング=インタビューガイドの各質問をコーディングユニットにする(全員から回答を得ていることが前提)。逐語録の1ページ、1段落単位でもよい。
  • コーディング:テキストデータにラベルをつけ、コードを階層的にまとめて生データの分量を縮小する作業のこと。
    • 2つの方法:(1)RQに関連があると思われる語やコンセプトを探す、(2)RQに関わらず重要と思われる語やコンセプトを探す。
    • 第1段階は、生データの言葉をそのまま使う(GTAでのin vivo code)。
    • コードブックは、No、コード、定義、該当箇所、語りで構成する。定義は、コードが何を含み何を福間中井を詳述するもの。
    • 類似したコードをまとめることで、コード、旧No、旧コードを含むコードブックに発展する。
    • 協力者間比較はコードブックの追加で、グループ間比較はコードと語りの類似税と相違性の比較で行う。
    • コードの信頼性は、(1)2週間以上あけて再コーディング、(2)複数者でコーディングで行う。
  • 演繹的TA:既存のコードを生データに当てはめる。
  • 語りを用いて結果をまとめる:
    • 協力者数が少ない場合、結果の一般化を求めない場合、結果に強い特異性が認められる場合に適している。
    • 示し方:TAから生成されたテーマを見出しとしてテーマに対応する語りを記述する。
      • テーマを支えるサブカテゴリーがある場合は、それぞれを小見出しにして対応する語りを記述する。
  • 数量化してまとめる:
    • 読み手が質的研究に明るくない場合に適している。
    • (1)テーマやサブカテゴリーにおける回答数を集計して示す。(2)クラスター分析でパターン化する。

2018/02/19

松嶋登(2016)「制度ロジックスの組織化と制度としての組織」『経営学論集』87,60-69


  • 制度:多様な物質的実践を産出する超越的な言語(=理念型)
    • 矛盾を含んだ多元的な社会的価値(制度ロジックス)として存在している
    • その中でも有機体として存続を求める価値を有する組織は、矛盾する価値を混合することで二律背反する多様な実践を産出してきた。
  • 伝統的な企業家概念:制度化されて硬直した組織に外部から変化を持ち込む主体
    • 西欧エリート概念がルーツ。
    • 重要な研究1:企業家=新たな共通の意味やアイデンティティを形成していく社会的スキルを有する者。(ただし、企業家も制度から生まれるという循環論法)。
    • 重要な研究2:企業家には、社会的スキルを文化に埋め込むために制度的ポジションが必要。
    • 重要な研究3:制度的ポジションでは見過ごされたさまざまな価値(制度ロジックス)の矛盾を契機とした制度変化に注目。
      • 制度ロジックス間の矛盾が顕在化したコンフリクトを経験した企業家は、制度変革へ動機づけられる(内生的な制度変化)(Friedland and Alford 1991)。(企業家は,制度ロジックスの最適均衡に至る予定調和に従うだけの存在になってしまう?)
  • 共通の問い:制度化された主体による制度変化はいかに可能なのか?
    • 研究の主流:制度外部のエリートを置いて制度変化を求める → 内生的な制度変化の探求へ。
  • DiMaggioの制度化:人々は制度化されるほど、戦略的なエージェンシーを獲得し、同じように制度化に反応して多様な利害を持つ人々(補助的制度)の組織化を行うことで、新たな制度を生み出す。← これが制度的企業家。
  • Friedland and Alford(1991)の制度ロジックス:
    • 個人と組織が、物質的実存を再生産および時空間を組織化する基礎となる超組織的な活動のパターンであり、同時に、その活動のカテゴリ化および意味付与の基礎となる象徴システム。
    • 西欧=資本主義市場、官僚制国家、民主主義、 核家族、キリスト教を主要な制度ロジックとする社会。
  • 手続き合理性が貫徹する近代では、貫徹するほどに矛盾する価値領域が混合された実践が作られ、それまで潜在してきたコンフリクトが生じ、そのコンフリクトが新たな価値領域の参照を生み、新たな実践を作り出していく。
    • 制度ロジックス:排他的に置き換えられるようなものではなく、二律背反的な 実践を産出し続ける。
  • 2つの制度論
    • 悲観的立場:社会レベルの制度ロジックスは外部環境としてとらえ、環境適応の不能は制度化されて機能不全になった組織が原因。
    • 積極的立場:制度が生み出す主体の戦略的エージェンシーのもと、政治的なアリーナと化す組織フィールをを論じる。
      • ← 制度ロジック概念もこちら:社会的価値の矛盾と混合を繰り返しなが ら、新たな実践が生み出されていくプロセスに注目。
  • 矛盾を含んだ組織ロジックスを混合し続ける実践の力はどこから来るのか?
    • 機能主義パラダイムにある
      • 進化の妨げになる硬直性が克服すべき課題となり、組織変化を論じること が研究者の美徳と化した(eg. 官僚制批判 → フラット化・ネットワーク化・ポストモダン)。

2018/02/16

舟津昌平(2017)「析出する制度ロジックの複雑性」『組織学会大会論文集』6(1),38-43


  • 目的:2つのILがLMをもたらす状況下で、LM がどのようにコンフリクトを生じさせるのか。
  • LM はきわめて普遍的な制度環境である。
    • LM 下の IL 同士は常に共存できるとは限らない。
    • LM は企業活動を妨げるコンフリクト・制度複雑性(IC)を起こす。
    • 先行研究は、IC が引き起こすコンフリクトの低減に注目。=コンフリクトは所与 ← LM 下においてコンフリクトはどのようなメカニズムによって生じるのかを考察すべき。
  • コンフリクトのために IL 同士が両立不可能である状態をICと呼ぶ。
    • → IC が新たなILを創出する機会であると捉え、IL同士を複合せよ ⇔ ILを複合することは危険
    • ドミナントILは、ミッション・資源依存パターン変更で決まるという研究もあり。
  • 事例:A社の科学的知識とB社の事業化のプロジェクト
    • 15名18回面接+会議・WS観察+文書資料のデータの二次分析。
    • 専門ロジックと市場・事業ロジックが影響し合うLMが生じる状況。
      • → AからBへの知識の移転が滞る。
      • → Bが積極的にコミュニケーション、移転が進む。
      • → 
      • テーマ:「ホワイトカラーの生産性向上」→(期限内に結果を出せ)→「プロポ ーザルライティングシステムの開発」→(より大きい事業的成功を)→「エスノグラフィという知識のスキルを広めていく」→(事業に貢献しがたい)→「ヘルスケア事業での活用」→ プロジェクト終了。
    • B内では、一貫して市場・事業ロジックドミナントである一方、エスノグラフィ以降はメンバー間で専門ロジックがドミナントになりコンフリクトが発生。
    • 事業Lの推進で科学Lが生じた点が重要。
  • ドミナントLにとどまったメカニズム:
    • あるILは別のサブ IL を自らに内在させているが、サブILは通常は顕現せず、ドミナントなILの構成要素の一部として機能するに止まっている。
    • → サブILが析出・顕現し、LM を生じさせる。
    • → ドミナントなILから異物であると認識され、コンフリクトを生み、排除の危険性に晒される。

2018/02/15

早坂啓(2013)「制度派組織論における制度分析の意義の消失に関する一考察」『神戸大学経営学研究科大学院生ワーキングペーパー』201307a


  • 分析とは何かという問い
    • 意味をいかに分析するかは厄介 ← 意味が人々によって作り出され、かつ、その意味が人々の社会 的現実を作り出すという双方向的な関係による。
    • ← ただし、分析者も意味の網の目に埋め込まれている。この前提にいかに取り組むかが課題(← これが分析とは何かという問い)。
  • ここでは、制度ロジック概念の方法論的含意を、ウェーバー理解社会学との関連から 明らかにする。
  • 制度派組織論による、制度と主体の関係の議論:社会化過剰、社会化過小、不可知の制度という3つの課題を提示。
  • 社会化過剰:
    • 組織が影響を受ける環境は、技術的環境と制度的環境の2つがある。
      • 非営利組織は、技術的環境よりも制度 的環境による影響を源泉とした組織構造の選択がなされる。
      • 経済的合理性を犠牲にして、社会的正当性の要求に応えることで、その構造の同質化が導かれる。
  • 制度ロジックへ:
    • そうした二項対立では組織は理解できない(Friedland and Alford 1991):制度ロジック概念を提示(複数の制度ロジックにしたがい組織が形成される)。
    • これらは、制度によって一方的に主体が形成されると想定する点が共通。
  • 制度的企業家:
    • → 制度的企業家論で制度ロジックの課題を克服:制度化の進んだポジションから制度化の遅れているポジションへと企業家が移動することによって、制度変化が導かれる。
    • → それは論点ずらしという指摘:制度変化を説明する根拠を、完全には制度化されない主体に求めた時点で、制度に埋め込まれたエージェンシーのパラドクスという固有の問題が失われてしまう。
      • 制度に埋め込まれながらにして変化を内生的に生み出していく行動原理の探求こそが課題。
  • 制度的実践が切り込む:
    • 実践:共有された制度を参照した行為の遂行的差異化を、現実の構成として捉えるための概念。
      • 従来の研究=制度と主体の関係を一義的に決定
      • 実践=両者を不可分の関係として捉える
      • → 制度変化だけでなく制度を維持させるような行為を含む、多様な行為を具体的に明らかにできる。
  • 制度的実践は、制度分析を見失う。
    • 制度の意味は主体が参照した行為としてしか把握されない(遂行的に差異化を遂げていく現実の構成として)。
    • → 制度の意味は分析的には不可知という前提を置く。
    • → 不可知の制度という前提を徹底して、制度を参照した行為の多様性に注目する研究は制度分析にならない。
    • ← 研究者もまた制度を参照しているという前提に対する自覚の不足による。
      • 社会化過剰は制度の拘束性を、社会化過小は制度の機会性を、それぞれ物象化したために生じた。
  • いかにして制度の意味を分析するのか、制度分析とはいかなる意義をもつのかという課題にどう取り組むか?
    • → 制度ロジック概念は、方法論的前提として理念型と価値自由を取り入れ、ウェーバーの理解社会学に依拠した。
    • Thornton and Ocasio(1999))はどう貢献したか?:物質的実践、期待、価値、信仰、ルールなどの社会的に構築された歴史的パターンであり、個人はこれらを用いて物質的実存を生産・再生産し、時間と空間を組織化し、社会的現実に意味を与えると定義した。(Friedland and Alford 1991では制度ロジックは不明確だった。)
  • ウェーバーの理念型:中立的かつ近似的であると考えられているような知識。
    • 例:支配の三類型(カリスマ的・伝統的・合理合法的)。
    • 理念型が現実と対応するとは限らない。理念型=認識のための手がかりとなるような準拠点。
    • この理解にはカントの認識論(超越論的観念論)が必要。
      • 決定論であれ存在を疑う観念論であれ、空間や時間、因果関係などの超越的なカテゴリーの存在が前提にある(地動説も天動説も宇宙の存在という想定が創りだしたという意味では等価)。
      • これを方法論にする
        • (1)超越論な存在 として認めざるを得ないカテゴリーのみ、認識の出発点となり得る。
        • (2)理念型を通じた意味理解は常に比較でしかない。複数のカテゴリーが独自に比較されるのではなく、他者の行為の参照を通じてなされる。すなわち、カテゴリーの存在とその比較のあり方が「客観的」であるという了解に基づいて、「主観的」な意味理解が可能となる。
        • (3)理念型は歴史的に条件付けられた個々人にとって有意義なカテゴリーとして構成される。
  • 制度ロジック=特定の「実在」を中心とした実践の束であり、そうした実践の規範性に由来する副次的な派生。
    • 実在:物事の物理的な側面を表す質料と、質料に構成的(constitutive)な働きを持つ形相からなる。
      • 薪割り=単なる運動 vs 市場での実践
    • 物事の本質は、その偶有的性質や物質性(質料)からは導かれないが、質料なしの形相はあり得ない。
    • 象徴的かつ物質的な制度の存在という想定(実在)と、これを参照した実践が共に構成的であるがゆえに、制度ロジックという理念型を通じた比較でしか意味理解はあり得ない。
  • Thornton and Ocasio(1999)の批判:資源依存理論などの権力理論が、リーダーの権力の源泉を普遍的に想定している。
    • 権力関係とは行為の結果によって生じる。その行為を説明するために決定的に重要な資源の要件が普遍なものと想定してよいのか?
    • → 専門家と市場という二つの制度ロジックに注目して、出版とは何か、いかにあるべきかという意味の変化を分析。
  • 価値自由と制度ロジック
    • 価値自由:研究者もまた価値を持ち込むという前提を尊重すべく、 自らの価値判断を表明し自覚すべしという原則。
      • ウェーバーが価値自由という方法論的前提を示した意図=理念型という超越的なカテゴリーを手段ではなく目的として理解させないため。
      • ← 科学主義への懐疑:科学的な成果を参照した人々が、科学という制度に備わった支配の力によって、意味を付与する自由を放棄する危険性 ← 価値自由=社会科学の越権行為を阻止しつつ、人々の自由と固有性を保証するという方法論的含意。
  • Thornton and Ocasio による制度分析
    • 産業レベルを分析対象にした:多様性を明らかにしやすく、産業は共通のアイデンティティーや評価基準が強烈に形成されると想定できる分析レベ ルだから。

2018/02/14

佐藤仁(2017)『教えてみた「米国トップ校」』角川新書


  • 入試
    • プリンストンのリーダー:エッセイの臨時査読者(主婦などの地元民)
      • バックグラウンドチェックの後、30時間の研修。
      • 全願書は4名で査読、2名が個別ランク付け、合格圏者に3人目が地理・人種バランス、学業以外の実績で評価。
    • 面接は卒業生。
    • フィーダースクール:米国の灘・開成。
      • エッセイに書ける活動をしたがる。(試験の点で差がつかないのでエッセイ勝負になるため。)
      • ネタのパターン:逆境克服、グローバル体験、マイノリティ、リーダーシップ、課外活動
    • スタートは13歳:入試のあり方が中高時代の過ごし方を左右する構造は米国も同じ。
    • 人物入試の導入:人種差別批判をかわしながら、正統派(白人)学生を入れる方策。
    • 日本の入試は、筆記のみでも多様な人が入っている、教員の負担コストが少ない、米国でも費用をかけながら本当に多様な人がとれていない点からみて優れている。
  • 教育
    • 講義科目(一定数以上の学生がいる授業)の1週間:50分の講義2回+1回のプリセプト(少人数ゼミ)
    • 米国の教室:性別や人種などの見た目は多様だが、志向性・マインドセットが同質。
    • カリキュラムの特徴:独立研究(3年次論文+卒業論文)、初年次セミナー、プリセプト(15名以下、課題文献に関する討論50分、TAが指導)。
    • 週4科目履修が一般的。課題文献が多いため。毎週課題文献の感想(レスポンスペーパー)を求める授業も多い。週平均38時間の学習。課題文献以外を読まない=主体的に学べない。
    • 東大=授業時間は長いが、授業外学習時間は短い。しかし課題の質は高い(米国は基礎学力にムラがあるため)。東大は基礎学力にムラがないが勉強へのやる気にムラがある。ただし、本質的な問題に切り込む学生は米国の方が多い?
    • 授業スタイル:写真1枚で語る ⇔ 学生は文字が多いスライドの方が復習に役立つ。
    • 企業が採用の足切りにGPAを使うため、学生が成績にこだわる。
    • 授業評価をウェブで書き込まないと成績が見えない。
      • 評価の高い教員を表彰することはあるが、低い教員を改善することはない。
      • 授業の中間レビューの方が有益。
    • 試験はオナーコードを宣誓するので監督がいない(なのでカンニングが多い)。
    • 学生と教員の距離は日本より離れている:教員は研究が忙しいので学部生を相手にしない。オフィスアワー制度が必要な理由でもある(ほかに教員を縛る制度がない)。日本のゼミは優れた制度。
    • 学生間の相互扶助がない(強い自立プレッシャ-)ために追い込まれる学生が多い。
    • 自分で考えるゆっくりした過程がなければよい授業にならないのでは。
  • 教員
    • 教員給与は、概ね日本の国立大学の2倍。休み分は、外部資金かサマースクール手当を得る。
    • 2セメスターで2コマ担当(ツー・ツー)が授業負担の標準。近年2・1にして院生を使う傾向に(外注化)。
    • ノンテニュア・非常勤を増やす背景:経費を削減して組織的な抵抗が生じないようにしている(=会社化)。
    • 人文社会系のテニュア審査:出版で決まる、助教1冊准教授2冊(研究者の採用や昇任を出版社が握っている)。
    • 政治学では、トップ11校で50%のポストを独占、残り100以上の院生が残りの50%を競う。
    • 日本の年功序列システムは、長期的・挑戦的な研究に適している(でも成果がでてないのでは?)。
    • テニュアシステムでは、若手を雑用から守る。
    • 公募でもネットワークは変わらず重要。
    • 職員:教員=4:1(プリンストン)、5:2(東大)
    • 研究会が多い。全教員が部局内で半年に1回はセミナーを行う。← ペナルティを科す仕組みはないが、研究しないと居心地が悪くなる雰囲気はある。
  • グローバル
    • 1878年の東大:半数以上は外国人教員。教授になるには国費で3年留学が義務。
    • 米国の学生は国外に興味がない。多様な語学クラスを作っている。学内にグローバルを取り込むことに力点がある。
    • 5人以下の授業は開講できない(会社化)。東大はマンツーマンもある。
    • 人文系学問は、民主的な社会の創造と維持に必要な批判的精神を養い、異なる文化に共感する心を養うことにつながる点で重要。合理性が支配的な社会に余裕と潤いを持たせる。
    • 何語で書くかよりも何を書くかが重要。
    • 日本人はデータコレクター、米国はストーリーテラー。
  • 結語
    • 改革は一体的に考えなければ意味がない。個別の項目で日米の優劣を判定しても意味がない。
    • 日本の問題点:教員が忙しすぎる(本務外で特に)、教員に協働する余裕がない(個別に熱心な教員はいるがカリキュラムを求心力にしていない)、改革が教員・学生よりも文科省を向いている(資金獲得手段としての改革)。
    • → 職員の意思決定参加を。授業はコマ数削減とチームティーチングを(+TA活用)。学生が大学運営に参加を(学生アドバイザリー制度:選挙で選ばれた学生代表が的的に学部長らと会い、カリキュラムについて意見交換)。若手研究者を優遇(海外協定校で授業する経験をいれる)。
    • → 守るもの=ゼミ・ラボ文化、マイナー科目の存続、日本語で学ぶ環境。

2018/02/13

中原淳(2012)「学習環境としての「職場」」『日本労働研究雑誌』618,35-45


  • 人材育成(Hall 1984):「企業が戦略目的 達成のために必要なスキル、能力。コンピテンシーを同定し、これらの獲得のために従業員が学習するプロセスを促進・支援することで、人材を経営に計画的に供給するための活動と仕組み」
  • 雇用慣行の変化
    • 職場での学習・自己研鑽の動機づけを失わせる
    • 多忙化とフィードバック人材不足が進み、一部の人員に仕事が集中する
  • OJT=上司が部下に仕事を計画的に与える ← 職場での多様な社会的相互作用を通した学習を見逃している
    • Clarke(2004):インフォーマル学習情報源が多様であることを実証
  • OJT vs Off-JT=両者の連携による統合的な学習環境が構築できない(← 両者を俯瞰する学習理論体系がない)
    • Brinkerhoff(2008):効果のない研修の8割は研修以外にある(研修前の準備4割、研修デザイン2割、研修後のサポート4割)
  • 従来のOJT研究=教育指導と権限委譲が能力向上に有効 → 内省支援をいかに職場の他者から得るかが能力向上にとって重要(内省・精神・業務の3つの支援を多様に受けている実証研究)
    • 互報性規範が高い職場ほど、他者支援が提供される。互報性規範を高めることがマネジャーのリーダーシップ。

2018/02/07

形成的評価は成績に含めるべきか?


  • 一般に、形成的評価は成績評価に含めるべきではなく、フィードバックのために行うものとされる。しかし、現実には理論と実践は矛盾する。
  • 多くの教員は、形成的評価に真剣に取り組んでもらうには、成績への加味が必要と考えている。

  • Caroline Wylie
    • もし取り組むなら、フィードバックを先にしてどう学習を改善するかを考えてもらってから、成績を伝える方法もある。
  • Kathryn Mitchell Pierce
    • オンライン学習では成績のフィードバックは重要。フィードバック時に伝えるべきだが、それを最終成績に入れなければよい。(?)
    • 課題に真剣に取り組まないのは成績の問題ではなく、エンゲージメントの問題。モチベーション次第で課題に取り組む。課題が最終課題のパスにおいて重要なら取り組むはず。
  • Lorrie Shepard
    • 成績に加味すると、内発的な学習意欲を削ぐ点が問題。
    • 課題提出時に、どれくらいの成績がとれるかを聞く方がよい。
  • Scott Filkins
    • 成績への加味=練習量でバスケットボールチームをランキングするようなもの(フィンク)。
    • 一度成績に加味したら、生徒は形成的評価で弱みを見せなくなってしまう。
    • 形成的評価課題はあくまで練習のためだと明確に言うべき。



https://www.edweek.org/ew/articles/2015/11/11/should-formative-assessments-be-graded.html