二宮皓(2010)『こんなに違う!世界の国語教科書』メディアファクトリー新書
- 公用語であり母語である日本語を国語として学べる国は少数。
- 米国公立校の生徒は毎朝星条旗に向かって起立し、右手を胸に当て私は合衆国の国旗に対し、国家に対し中性を誓いますと宣誓する。学校は社会に出る準備をしてあげる場所、高校まで無試験進学、学費不要。教科書は5〜7年使用するので落書きは弁償。教育委員会はLayman control、教科書採択は多文化主義。教科書からどの話を選んで教えるかは、教員の裁量。
- イギリスの教科書は詩が多い。詩にはユーモアが多く、紳士淑女にはユーモアが求められるため。教科書は自由発行・自由採択、教科書の定義が難しく教科書と教材が区別できない。教室に設置した貸与制で持ち帰りもできない。単行本を1冊読み切ることも重視。
- フランスは共和国が学校をつくり、学校が共和国をつくる、小学校教育の両輪は国語(フランス語)と公民教育。フランスには教科書はない。発行・選択・使用は自由。音楽・美術・体育には教科書がない。国語には教科書があり、移民大国のため文法の教科書もある。イラスト、漫画を多用。
- ドイツは教科書検定を行う数少ない国の1つ。16の州が教育に関する権限を有する。教科書は読本と言語の2種類に分かれる。
- フィンランドは就学前から大学院まで無償。義務教育も到達が不十分なら留年できる。教科書は楽しさを重視した物語中心。
- ロシアは、愛国心と郷土愛を育む教育。国旗、国章、国家や伝統文化の学習を重視。国語教科の時間が長く、文法・書き方のロシア語と、文学的読み方の両者を初等1年から実施。
- 中国は国語を重視、最長の授業時間を配分。作文が重要で、授業では漢詩を多用。最近は国語教科書の登場人物の版数が外国人。
- 韓国は家族による家族のための教育が残る。英語偏重主義の教育。国定教科書から検定教科書に切り替え。漢字の便利さは認めながら、義務づけられておらず、ハングルを制定した国王を賞賛。北朝鮮は4年生国語の全単元中8割以上が金親子関連で、プロパガンダ教育。
- タイの子供たちは登校すると必ず仏像の前でお祈りをする。当番が国旗を掲揚して朝礼が始まり、国旗に敬礼、国歌を歌い、国家に対する忠誠を誓う。通貨危機の打撃の経験から、国際人であると同時にグローバリズムにいたずらに翻弄されない人間像の育成が目標。タイでは、国語教育ではなくあくまでもタイ語教育。中国系やマレー系がいる中で、タイとしての国民統合を図っていくための共通言語がタイ語。仏教に根ざした教育で、入学式には僧侶が新入生に聖水をかける手続きが重要。教育省発行の教科書と審査に合格した民間発行の教科書がある。アイドルやヒーローは登場せず、国王や古典文学などが題材。家族像、いい親像、いい子像を重視。
- ケニアはスワヒリ語と英語が公用語、他民族国家であり、この2つを学校で学ぶ。学校は無償化されているが、裕福な生徒が集まる学校とそうでない学校間で、環境や教師の質に大きな差があり、実質上はかなりの格差が存在。勉強は暗記で、教育は試験対策。小学校卒業時の国家統一試験が強力なものさし。中学校以上は序列が厳しく、事実上大学進学への道もここで決まる。教科書はすべて英語で書かれる。教育省認定の教科書リストから学校が選択して使用。歴史上の偉人の話がない(対立の火種にもなるので)。
- 国語をNational Languageと呼ぶのは日本くらいで、各国はそれぞれ英語、ドイツ語、フランス語などと呼ぶ。国語教科書は動物中心の物語に偏し、日常生活に即した言語能力を豊かにする教材、人間関係の処理を題材にした教材がもっとあってよい。ごんぎつねはすべての教科書に載っているが、海外ですべての教科書に同じ題材が載る事例はない。