2008/07/15

川崎一泰(2006)「初等教育における少人数教育の政策評価 仮想市場法(CVM)を使った計量モデルによる検証」『会計検査研究』No.33, pp.239-258.

 本稿は、少人数教育導入の効果を、アンケート調査結果を用いて計量的に検証することに挑戦した、貴重な研究である。

 学習の価値Vは市場で決定する人的資本で表される。全生徒数をZ、教員数=クラス数をmとすると、クラスの構成員はn=Z/m、クラスを維持する費用をW、他人の学習を邪魔しない確率をp、これはクラス規模に依存し、確率p^nで規律が保たれ、1-p^nで学級崩壊を起こすと仮定。この時の社会全体の利潤は、

 Π=ZVp^n-Wm

 生徒一人当たりに置き換えると、

 π=Vp^n-W/n

 上式の最大化の1階の条件は、

 Vp^n ln(p)+w/n^2=0

 利潤が負になると教育を行う意義がなくなるので、非負条件Vp^n≧W/nをつけると、上式は次式へ変形できる。

 1+n logp≧0

 クラス規模縮小の限界効果を、規律の度合いpで微分すると、

 ∂(-d(Vp^n/dn))/∂p = -Vp^(n-1) (1+n logp) < 0

 この結果は、規律の低い生徒を対象とするほど、クラス規模縮小の限界効果が高くなるので、学級崩壊に陥ったクラスを立て直すためにはクラス規模を縮小することが解決策の一つとなることを示唆する。

 この枠組みを実証分析にのせるために、少人数教育に対する支払い意思(40→20人学級への移行希望と月間負担増額)をアンケート調査し、便益を推定する。成績を上位・中位・下位に分け、ダミー変数を作成し、次式を推定する。

 WTP = f(d, X)

 結果としては、OLSでもヘックマンの2段階推定でも、全成績グループで正値で有意な係数が得られ、少人数教育に関する正のネット便益が発生する可能性が高い。