2012/09/26

CHEPS, U of Twente, "The extent and impact of higher education curricular reform across Europe," Final report to the Directorate-General for Education and Culture of the European Commission.


  • 欧州のカリキュラム改革に関する調査報告,医学,法学,工学,教師教育,歴史学の5分野を対象に,2サイクル,コンピテンスベースラーニング,学習過程の柔軟性,学生の移動,組織の認識の5つについて調査する。
  • その際に,アクセス,卒業率,雇用状況,移動率,質,費用対効果の6つの変数に着目して調査する。
  • リサーチクエスチョンは次の通り
    • カリキュラム改革における基本的な国家方針がどのようなものかと,各5分野においてどのような効果,およびその根拠データがあるか
    • 機関レベルにおいて,カリキュラム改革の方法はどのようになっているか
    • プログラム単位において,改革の影響はどのようになっているか
  • このために,32カ国のナショナルカリキュラムの比較,学部長への質問紙調査,グッドプラクティス校の事例調査を行う。
  • ECTSや構造的な改革は進んでいるものの,機関レベルでの完全な履行には温度差がある。
  • コンピテンスベースラーニングは,まだほとんど行われていない。これは,コンセプトの理解に関する混乱もある。
  • 2サイクルに関しては,学士の学位と労働市場との混乱・ミスマッチが分野ごとにある。
  • 改革においては,欧州政策など外的なものが駆動力で,専門職組織や学内組織は主導できていない。

2012/09/25

安冨歩(2010)『生きるための論語』ちくま新書953


  • 論語は,学習に基づいた社会秩序という思想を,最も早く,最も明瞭に表現した書物である。
  • 論語の思想の最も重要な特徴は,学習のダイナミクスにある。書き下された形の知識を求めるのではなく,書き下し得ない微妙なダイナミクスに真理を求める点が,論語の魅力でありわかりにくさの源である。
  • 孔子の追求する人間のあり方は,自分を常にモニタリングして人の言うことに耳を傾け,自分の間違いに気づいたら直ちにそれを受け入れ,さらに自分の行動を改める。
  • 「忠」とは,君主に率直な考えを述べ,君主が立派な政治をすれば協力するが,そうでなければ協力しないという態度であえる。君主を相手にしても,自分の心を偽らないことが忠である。
  • 自分のやりたくないことは人にするな,これは自分のやりたいことを他人にしろを意味しない。人に何かするとなれば,それは自分のやりたいことでなければならない。
  • 人は,無意識の衝動にかられて間違った行いをする。「克己」は,その無意識の作動に気づき,それを認めてはじめて行いを改めることが可能になる。無意識の部分を意識するのは容易ではなく,自分の認めたくない記憶と向き合い,恥じて悲しみ,乗り越える行為である。
  • 学問をやって思考が固まる人は,自分の感覚に従って思うことが欠けており,学んだ知識にとらわれて自分の相対的状態が見えず,危うい状態になる。一流の選手もコーチを必要とするように,自分の状態の把握は難しく,そのための学が不可欠である。
  • 結局,常に自分を開き,ありのままの姿でいることが,君子にとって最も大切なことである。過ちを犯したら言い逃れをせず,それを改めることに躊躇しないのだ。
  • 自らの心を閉ざし,学習回路を停止している小人同士の「同」の中で表面的な礼儀作法をやっても「礼」にはならない。人々の学習過程が作動するときに真の秩序が達成される。
  • 仁・忠・恕・道・義・和・礼という諸概念は,相互に関係している。仁は学習過程が開かれていること,忠はそのとき達成されている自分自身の感覚への信頼を表現すること,恕はそのとき他者との関係において自分のあるがままが開かれていること,この状態にある人が道を見いだし,その道を辿って出会う出来事においてなすべきことが義である。仁にあるもの同士の調和のとれた相互作用が和であり,そのときに両者の間で交わされるメッセージのあり方を礼という。
  • 觚を孔子は嫌う。人間は「名」によって世界の「像」を認識する。よって安全でないなら危険と言わねばならず,爆発がおきなたら爆発したと言わねばならない。名を正し,正しく名を呼ぶことが人間がまともに生きる第一歩である。これは聖戦,皇軍,転進,玉砕,特攻の例からも明らか。
  • 学習停止という悪には伝染性がある。誰かが悪の状態でコミュニケーションをとれば,その相手の学習過程が破壊される。一人が複数の人を悪に陥れると悪が指数関数的に増える。君子が学習過程を守り抜けば,他者の学習回路を駆動させる。「怒りを遷さず」とは,悪を直ちに自覚し,その当人に怒りを向け,他の人に向けないという意味である。
  • ガンディーの思想の中核の非暴力的抵抗は,サッティヤーグラハといい,それは真理にしがみつくという意味である。
  • 西欧倫理学の有名な問題に,5人を轢くか1人を轢くかという設定があるが,孟子によれば,どんな問題を出してもその答えは惻隠の心に従え,自分自身の自発的な作動をとらえてそれに従って動けということになる。身体が感じ取り,身体が判断する。頭で考えて合理的に判断してはいけない。
  • 子供が井戸に落ちたときの反応は,君子の場合直ちに心が動き,同時に身体が作動する。小人は心が直ちに動くが,他人が自分にどう見えるか考えないと行けない。アダム・スミスの同感の場合,他人が自分にどう見えるかに加え,他人がその行動をどう判断するかをシミュレートしないといけない。
  • ドラッカー経営学の最も重要な発見は,組織はフィードバックと学習なしには決して作動しないということである。
  • 事業を成り立たせるマーケティングとイノベーションは,市場調査とか革新ではない。マーケティングはコミュニケーションであり,革新とはマーケティングで得られた知識によって自らを変革することである。
  • 自らの行いを良く見て,自らのあり方を変える。これがマーケティング+イノベーションであり,これは仁である。
  • 仁を実現できるのは,制度でも仕組みでもなく,君子だけである。よって組織は君子によってしかマネジメントし得ない。ドラッカーが組織や仕組みではなく,マネジャーのあり方を重視するのはそのため。
  • 現代の問題の多くは,経営者が小人によって占められ,和が失われて同と盗におおわれているから。
  • では,なぜ君子が少ないのか。1つの理由は,人材の登用がおかしいこと。もう1つは,君子がそもそもまれなこと。
  • 孔子の教えの本質はフィードバックと学習であり,人間の知性は動的で循環的で文脈的なものであるが,それが文字の出現によって固定化,一方向化,辞書化され貶められてしまった。
すばらしい本。多くの教育関係者と経営者が読むべき本。教育学と経営学がなぜ似ているのかがよくわかった。

2012/09/24

Karseth, B. (2006) "Curriculum Restructuring in Higher Education after the Bologna Process: a New Pedagogic Regime?," Revista Española de Educación Comparada, 12, 255-284


  • ボローニャプロセスで求められるECTSと学生移動という要請が,近年のカリキュラムに大きな影響を及ぼしている。
  • このカリキュラムの変遷は,学生中心の教授法を求めることになるが,それは今のところ十分に受け入れられているとは言えない。

2012/09/23

大前研一(1999)『企業参謀』プレジデント社


  • 戦略的思考の根底は,一見渾然一体であったり,常識というパッケージに包まれた事象を分析し,ものの本質に基づいてバラバラにした上で,それぞれの持つ意味合いを自分にとって最も有利となるように組み立てた上で,攻勢に転じるやり方である。
  • 本質を問うには設問を解決志向にする必要がある。どうしたら残業を減らせるか → 当社は仕事量に対して十分な人がいるのか
  • 設問が的を得るには,問題点が正しく把握されている必要がある。それには,問題を現象追随的に絞る,すなわち,全ての問題を箇条書きにしてグルーピングする抽象化が重要である。あるいは,白い紙の上にイシューツリーを書く。
  • 財務指標は,絶対値の大きさではなく,利益率で見る。
  • 戦略の善し悪しで業績が左右されるのは中期(3±2年)である。長期でも短期でもない。しかし,実際はトップが日常に追われたり,遠大な計画や空想に時間を浪費する事例が多い。
  • 中期戦略の立案は,目標値の設定,基本ケースの確立,原価低減改善ケースの算定,市場販売改善ケースの算定,戦略的ギャップの算定,戦略的代替案の摘出,代替案の評価選定,実行計画というプロセスを経る。
    • 基本ケースでは,市場サイズとシェアの予想を仮定する必要がある。計画とは仮定の上に成り立つ目標値である。
    • 原価低減と販売改善を落とす人もいるが,そこには血のにじむ努力があり,狭義の戦略でしなかい。
    • 戦略ギャップは,現状の延長線上に解がないことなので,新しいものとしてでてくる。ここに,多角化,転出,統合,M&A,提携,分離,撤退・縮小・売却が出てくる。
  • PPMは,横軸に自社の強さを表す内的変数,縦軸に業種の魅力度を表す外的変数が入れば,変数は何でもよい。
  • これは政策でも同様で,横軸に日本の国際競争力,縦軸にマーケットサイズをとる。
  • 参謀五戒
    • もし状況がこうなったら,どのように考え・行動・反応したらよいかを常に問う
    • 完全主義を捨てる
    • 与えられた仕事のKFSを中心に考える
    • 制約条件は一度外し,その後障害物を除くことを考える
    • 記憶に頼らず分析する
  • どんな複雑な会社であっても,戦略を考えるときは,その基本思想を忘れない。それは,他律的要因(世の中の流れを見定め,その流れを上手く利用する)と自律的要因(競争相手と自分の差が最も大きくなるように努力を傾注する)に従って,防ぐ・選ぶ・守るを決めることである。

    2012/09/15

    Biggs, J., Kember, D. and Leung, D. (2001) "The Revised Two-factor Study Process Questionnaire: R-SPQ-2F," British Journal of Educational Psychology, 71, 133-149.


    • 本論文は,より簡素なdeep/surfaceの診断指標を開発することにある。
    • SPQの使い道には,クラスレベルで学習スタイルの違いを測定できる点がある。
    • 開発された設問は次の通り
      1. 学習が時に深い個人的な満足をもたらしたと思う
      2. 満足よりも自分なりの結論を得るために十分な勉強をしなければならないと思う
      3. 自分の関心はできるだけ最小限の努力で単位を得ることである
      4. 授業で扱われた内容だけは一生懸命勉強している
      5. 授業で触れた内容はどれもとても興味深いものだと思った
      6. 新たに学ぶ内容が面白く,授業時間外にも関連情報を集めていた
      7. 授業に全く興味が持てなかったので最低限の勉強をするようにした
      8. 内容が理解できなかったとしてもとにかく暗記で勉強した
      9. 学問的な内容を勉強することは映画を見る以上に興奮するときもある
      10. 大事なことは完璧に理解できるように,自分で自分をテストした
      11. 試験では理解するというよりも暗記することで乗り切った
      12. 特に必要と思うこと以外は不要と思ったので,最小限の勉強にとどめた
      13. 授業で触れた教材が興味深かったので一生懸命勉強した
      14. 自由な時間に授業で興味を持ったことについて独自に調べたりすることが多かった
      15. 物事を深く学ぶことは混乱するし時間がもったいないので,単位の取得に必要な分だけ勉強した
      16. 全てが試験に出るわけではないのだから,教員は学生が十分な時間をかけて勉強することを期待すべきでないと思う
      17. 授業に出るときにはいつも事前に質問を用意して出ていた
      18. 授業で示される文献には目を通して要点を押さえていた
      19. 試験に関係なさそうな文献にはあまり目を通さなかった
      20. 単位取得の早道は,最も出そうな問題にしぼって答えを覚えていくことだと思う
    • これらについて,とても当てはまる=5,当てはまらない=1として得点化し,スコアを出す。
    • Deep Approach = 1+2+5+6+9+10+13+14+17+18
    • Surface Approach = 3+4+7+8+11+12+15+16+19+20
    • Deep Motive = 1+5+9+13+17
    • Deep Strategy = 2+6+10+14+18
    • Surface Motive = 3+7+11+15+19
    • Surface Strategy = 4+8+12+16+20

    2012/09/14

    Pilz, M. and Li, J. (2012) "What Teachers in Pre-vocational Education Should Teach and What They Actually Teach: a comparison of curricula and teaching in Germany and China," Research in Comparative and International Education, Vol.7, No.2, 226-247.


    • 本論文の目的は,グローバル化や急速な社会変化などに直面する両国において,若者がどう社会へ出る準備をすべきかという問題に注目して,教育制度を比較することにある。
    • その際に重要なことは,カリキュラムの比較と,実際に何が教えられているかの両者を調査することである。
    • キャリア開発は,個人の関心や能力といった特質と,就業要件といった外的要因の複雑な結合で決まるものである。
    • Reetzは,カリキュラムは次の3つの視点で開発されると指摘する:ディシプリンに基づく設計,状況に基づく設計,個人の資質の基づく設計
    • いろいろ述べるも,結局両国の差異は,学校のおかれる状況,財政状況,教員の資質によるものと言ってしまい,何が示唆なのか曖昧なままである。

    2012/09/13

    山本繁(2010)『人を助けて仕事を創る』TOブックス

    • 失敗する人には,見切り発車,他人のせいにする,変化しないという3つの特徴がある。
    • これまでの教育は,どう生きていくかを規範として示してきたが,今日のどう生きていくかは戦略の問題である。従って,未来がどうなるかという仮説がなければ,どう生きていくかは考えられないが,予測のための道具や術がないために,若者はどう生きるかに漠然とした不安を感じている。
    • ビジネスをデザインする基本は,代替,補完,強化の3つ。
    • リーダーは言葉しか与えられない。だから,言葉を磨かなくてはならない。伝わる言葉,印象的な言葉,気付きを促す言葉。
    • チームを作る上で,モラル,要するに信頼できる人を選ぶ。モラルには潔癖なくらいがよく,モラルがなければどんなにスキルが優れていてもだめ。その上で,自分の強みと違う人が選べればいい。
    • 事業計画はコミットメントが大事で,立てる段階で多様な角度から意見を出してもらう。
    • 事業計画書は,いろいろな人に見てもらって意見をもらう。こうしてブラッシュアップされた事業計画は強固。30~40回は聞いて回る。
    • ビジョンとミッションは活用してこそ意味がある。実際に会議の中で,ミッションから考えると…,彼らのどちらがミッションへの理解が深いか…,と議論する。リーダーがそうした行動をすることで,構成員にビジョンやミッションが伝わる。
    • リーダーシップとは,率先して実行することで,みんなの模範になることである。
    本書をテキストにして,教養セミナーなどでビジネスモデリングをやると面白い授業ができそう。

    2012/09/12

    鈴木元(2012)『立命館の再生を願って』風濤社

    • 学校法人として将来を見通して大規模な土地を購入したり,キャンパスを3分割するといった戦略的計画は,参加・参画によって出てくるものではなく,トップダウンからしか提起できない。
    本書から何かを学ぶということは困難であるが,部分ごとにケーススタディの教材として利用するには十分なストーリーが描かれている。

    2012/09/11

    倉部史記(2012)『看板学部と看板倒れ学部』中公新書ラクレ422


    • 他大学の事例を見て,既に成功を収めている学部・学科を模倣する
    • 現在の受験生や保護者が求めているニーズを徹底的に分析し,そのニーズ通りのものを用意する
    • 既に学内にある教員・施設をそのまま流用しながら,より多くの受験生を集める学部に再編・改称する
    • 土地や施設・設備を安く・無料で提供してくれるパートナーを探す
    本書が看板倒れになりやすい発想として指摘するのは,この4点であるが,当たり前のことにすぎない。大学教育は玉石混交と副題をつけるが,大学教育の中身に関する考察は一切なく,ウェブや公刊資料で入手できる情報を整理しているのみである。確かにこの膨大な情報を整理した作業自体はすばらしいものの,逆に極めて表面的な内容にとどまる。日本の大学を全く知らない者が,日本にある数多くの大学を一望するためにはよいかもしれないが,大学教育に関する新たな知見は全く提供しない。

    2012/09/10

    石渡嶺司・山内太地(2012)『アホ大学のバカ学生』光文社新書561

     大学には様々な問題があることは間違いないが,本書はそれを第三者の立場から笑うもので,建設的な意見がみられないことが残念。タイトルにあるアホやバカとは,大学や学生がアホやバカではなく,著者らが大学や学生をどのようにアホとかバカと見ているかを書いたものであるといえる。

    2012/09/09

    Pilz, M. and Alexander, P. (2011), "The Transition from Education to Employment in the Context of Stratification in Japan - a view from the outside," Comparative Education, Vol.47, No.2, 265-280


    • 日本は,表向きには単層の教育システムとなっているが,インフォーマルには階層化された教育システムを持っており,これがうまく機能することで若者の労働市場への移行を円滑にしている側面がある。
    • とはいえ,中からは極めて常識的な内容であり,外から見たことで新たな知見が付加されたとは言えない。