2011/06/30

岩田雅明「大学経営の基本に立ち返って」『文部科学教育通信』No.269, 2011.6.13

  • 学校教育というサービスはホテル等と違い,リピーターがいないことが特色。従って自らがある大学で学生生活を体験してから選ぶということができない。
  • そこで,その大学を取り巻く環境の中で形成されたイメージが選択基準の一つになる。
  • そこで、わすがながらも不合格者を出すこと,英検二級+情報処理二級で学費免除(反対側から考える経済的サポート)を実施。

2011/06/22

北森義明(2008)『組織が活きるチームビルディング』東洋経済新報社


  • 人は誰でもポジティブ・ストローク(存在そのものを認めること)を待っている。最大のポジティブ・ストロークは聴くこと。
  • 相手の話を聴くことで自分の内面に起こった反応をその都度素直に出すことで,聴き手の豊かなメッセージを話し手に伝えられる。組織やチームで必要なのは,話し合いではなく聴き合い。
  • 改革は尋ねて聴くことから始める。大きな組織の持つ慣性の源を変える唯一の方法。
  • 人間関係の中で相手の態度に問題がある時,相手を変えてやろうという意図を持った指示や命令は,その通りの相手が変わることはない。〜と感じるけどどう思います?という鏡になる。フィードバックとは,相手の自分を変える力を信頼すること。
  • アリバイ(自分の正当化)がチームワークを崩す。しかし,自分の行動にアリバイはあり得ない。何事も自分で決めてやっているという自己決定を明確に認識すると,力の発揮につながる。
  • 自己成長には自分の価値観に気づくことが重要だが,それは他人の価値観と触れることで生まれる。
  • チームとチームになるためのプロセスは違う。岩を落とすために欠かせないことは,話し合いをすることでも合意をつくることでもなく,タイミングよく力を合わせて岩を動かす十分な力を出し切ること。
  • 和をつくるためには葛藤から目をそらさず,正面から向かい合い,個々の違いをはっきりさせて違いを認めて受け入れていくしかない。
  • リーダーシップを発揮する足場には,地位・肩書き,知識・経験・技能,その人自身の3つがある。
  • 仕事が分かっているとは,リーダーもメンバーもお互いに常に気をきかせているいること。気のきくメンバーになってもらうには,リーダーの目配り・気配りと率先して行動する姿勢が重要。
  • 本当に仕事を進めたいのなら,上向き,横向きのリーダーシップがカギ。上司を動かせる範囲内でしか部下は活かせない。
  • エンパワーメントは,本気からしか発揮されない。
  • チームビルディングの研修の壁は,葛藤,本当の自分をさらけ出す場。もっと自分を出してもいいと思えるかどうかで,プログラムの成否が決まる。そのためには,自分を出したい,自分を変えたいというモチベーションで参加してくる人の存在が不可欠で,この人を触媒にして目的の雰囲気をつくる。
スポーツチームなど,同質者が前提のチームビルディング。そういう意味で,本書の肝は第1章でほぼ言い尽くしており,残りは後付け。日本的なチームビルディングを端的に示した本。

2011/06/19

安藤史江(2001)『組織学習と組織内地図』白桃書房


  • 組織学習論が注目された背景は,コンティンジェンシー理論などの静的な視点による研究が行き詰まり,その突破口として動的な現象への関心が高まったため。
  • 個人が勝手に学習を行っても学習する組織にはならず,組織メンバー間には共有ビジョン(達成すべき将来像の共有)の構築が求められる。チーム学習では対話の仕方や共同思考の仕方を学ぶ必要がある。Strategic Human Resource Management:戦略実行という責任を伴った行動を一般従業員に譲り渡し,自分たちの特権を失うことを快く思わなかった。(外国の事例)
  • 組織学習研究はプロセス研究と考えら得るが,質問紙調査はプロセス研究に適さない。個人の学習しか測定できない。
  • 組織文化には,組織特性と,組織メンバーが組織文化を咀嚼するプロセスの2つがある。
  • 組織メンバーによって咀嚼され,各自が利用しやすいように加工された組織文化(=メンバーの主体性が深く関わる組織文化)を組織内地図と呼ぶ。
    • ただ,後の実証分析では,トップの経営方針と自分の仕事の関係を考えながら仕事をしている,21世紀の自分の会社のあるべき姿を認識している,上司から職場の目標をはっきり示されている,の3変数でとらえてしまう。
  • 社内の様々な物事の解決に,社内の誰に相談したらよいかを与えるプログラム(JIL 1997 大卒ホワイトカラー人材開発国際比較)。
  • バブル期のA社の優先事項は仕事の迅速処理で,ある程度の質であればこだわらずに割り切って行動できる人材がもてはやされた。バブル後,かたくなに質を重視する社員が求められるようになった。
  • 議論の関心,組織観,学習主体,目標学習水準,学習範囲,学習対象,研究方法の比較
    • Hedberg系:アンラーニング,1つのまとまった有機体,経営トップ,ダブルループ学習,アンラーニングのみ,戦略などの全体的組織価値,理論フレームワーク→事例分析
    • Argyris系:組織への介入,個人の集合体,全メンバー,モデル1,低次から高次前,仕事の進め方などあらゆる価値,事例分析→共通点・理論
    • March系:組織ルーチンの変化,組織ルーチンの束,ルーチンの入れ物としての組織,低次学習,低次学習,仕事の進め方の具体的価値,シミュレーション

2011/06/18

「「経験から学ぶ」自ら育つ新入社員を育てるには?」リクルートマネジメントソリューションズ

  • 目標が明確であるほど,経験学習が促進される
  • 何かをやり遂げた経験から自己信頼が芽生え,自己信頼があるがゆえに新たな経験にもチャレンジできる,という循環が重要で,新入社員には「やり遂げた」と感じられる経験を早期に積ませることが重要。
  • 新入社員を動かすには,チャレンジの奨励や目標に対するプレッシャーよりも,良好な人間関係と,「自分は職場で認められている」という安心感のほうが重要。
http://www.recruit-ms.co.jp/issue/feature/shinjin/201106_1/index.html

2011/06/10

潮木守一(2009)『職業としての大学教授』中公叢書


  • 新堀が40年前に問うたことは,日本の学界を支配する年功序列人事,エスカレーター式昇進に対する告発。学問成果を上げても報われない学界,いくら怠けても制裁を下さない学界への疑問・疑惑・義憤。
  • イギリスの大学は,教授13%,上級講師・上級研究員25%,講師27%,研究員27%という構成。
  • 大学教員には4タイプあり,教育と研究の両方に義務がある教授,教育にのみ義務がある学生指導専門の教員,研究だけに専念する特別著名教授,研究だけに従事する研究補助員の4つ。タイプ2は入門科目の指導が中心,タイプ4は任期付きで若手に偏っている。学生数の増加で教員を多く採用したが,教授は増えず講師層が増えた。
  • フランスの大学は,教授22%,講師41%,助手0.1%,中等教育資格教員5%,臨時教育研究補助員7%,語学教員1%という構成。
  • フランスは,中等教育資格教員から出発し,やがて大学教員になるキャリアを辿る。高校でフルタイムで働きながら助手ポストの空きを待ち,そこから講師・教授を目指す。学生の急増にこうした教員の対応がよく,大学拡張期に採用されたことも遠因。
  • ドイツの大学は,教授22%,講師・助手5%,研究員69%という構成。研究員はタイプ4教員で,教える資格を持たず,研究プロジェクトに参加して収入を確保しながら,資格を取る準備をしている(任期制)。これには,博士号志願者がつく。
  • ドイツの大学には大学院がない。学部修了後,指導教授を選び,そこで研究助手として働きながら博論を書く。ただし,研究員には学位取得後教授資格試験を目指すものも含まれる。学部卒後博士まで6年とポスドク6年の間で教授職を得る必要がある。
  • アメリカの大学は,教授25%,副教授20%,助教授24%,指導教員15%,講師4%,その他12%という構成。他国と比べて煙突形。ただし,アメリカの大学は大学間の序列が鋭く,一流大学2%,研究大学2%,博士課程大学2%,修士課程大学15%,学士課程大学18%,短期大学42%,特別目的大学19%という構造で,上へ行くほど給与が異なる。トップ100大学の教授ポストを目指しての競争が熾烈。
  • 日本の大学は,教授40%,准教授24%,講師12%,助教20%,助手3%という逆ピラミッド型。これは私立大学の方がよりその傾向が強い。私立大学は教授定員を各大学で自由に決めることができるため,給与面での処遇が難しい大学がポストで処遇している可能性がある。
  • 日本の純血主義は,大学の面子の問題。自分の大学の学問水準は十分に高く,自前で後継者が養成できるという信念。
  • 日本の大学は私立から始まり,慶応,早稲田,同志社などは明治初期にはできあがっていたが,明治政府は正式の大学として認めず,専門学校のままで,最初の大学は東京帝国大学であった。帝大は教員を外国から,私大は教員を帝大から集めていたが,自前での後継者育成を目指したのは,他大学出身者の排斥ではなく,宗主国からの独立を求める民族運動のようなもの。
  • 終身職を得る適切な時期は難しい。学問的実力の見極めには時間が掛かるため,若い時期からの終身職付与は危険だが,その時間が長いとその職業を選ぶ学生がいなくなる。学問の世界に避けられない途中淘汰を保ちながら,同時に若者を引きつけることに世界中が苦慮している。
  • ドイツでは,博士号に加え,教授資格試験を受けて教授資格を得なければ教授になれない。これは19世紀初頭からの制度。縁故人事などが横行したために導入されたもの。博士論文以上の水準の論文を提出して,公開の試験講義をする。平均学位取得後7年,年間2000人が合格。
  • ただし,有資格者の内,実際に教授になるのは約4割。残りは教えることはできるので,給与のない私講師のとして,研究プロジェクトの研究員をしながら生活を支える。
  • ドイツは内部昇進禁止の原則がある。公平な人事には身内より外部の評価が健全という理由。教授試験に合格しても招聘がなければ昇進できない。さらに,教授の中でもW1〜W3の3段階があり,上位への昇格も外部招聘。
  • フランスは,各大学が教員を採用せず,全国共通の基準で資格審査をする(コンクール)。教授間,講師間の異動は現職者に優先権あり。これを差し引いたポストは公開公募の対象。講師の場合,倍率が5倍。
  • アメリカの教授は自分の値段を知っている。私立研究大学の教授の平均年収は10万ドル,私立教養大学の教授は6万ドル。ビジネス,工学,医学の給与は高く,人文,芸術ではその半額。ただし,研究大学でない州立大学では,公務員型で給与が決まる(専門分野の差が少ない)。
  • イギリスは150以上の大学があるが,全てが同格ではない。高校最上級学年の2年間は3教科に絞り込まれ(歴史・国語・社会とか数学・物理・生物などの組み合わせ),それぞれA〜Gの7段階評価で,AAA出なければ入れない大学がある一方,GGGでも入れる大学がある。
  • 研究実績評価をみると,鋭いピラミッド型で,90点台2校,40点台2校,30点台5校,20点台18校,10点台12校,0点台28校(歴史学科の場合)。これで研究費配分が決まる。
  • イギリスの大学は,(1)中世設立の,オックスフォード,ケンブリッジ,グラスゴー,エディンバラ,アバディーン,セント・アンドリューズ,(2)1936年以降の赤煉瓦大学,マンチェスター,リヴァプール,(3)1963年ロビンズ委員会勧告設立の7大学,サセックス,エセックス,イースト・アングリア,ウォーリック,ヨーク,ケント,ランカスター,(4)1992年以降ポリテクからの昇格大学の4分類。
  • イギリスで大学経営・人材獲得を複雑にしているのは,競争相手が全英語圏との競争のため。経営者の腕の見せ所で,収支をバランスさせながらスター教員を獲得しなければならない。
  • 大学教員にとってマンネリは致命的。いったん大学に職を得ると,異動しなくなくなる。住宅,子供の学校,配偶者の職場などのため。フランスでも一時期内部昇進を禁止した。またフランスは強いパリ指向のため,流動性を高める政策が必要であった。
  • フランスでは教授の55%が同じ大学で講師だった者の内部昇進。教授になるには,研究指導資格試験をつける必要があり,これがないと博士の指導ができない。受けたくない者は受けなくてもよい。
  • ボイヤー:一生涯大学教員として働くために必要なのは,変化する環境への柔軟性と適応力である。
  • 日本は非学歴社会,非資格主義。博士校取得者の所得は,学部卒のフランスで1.4倍,アメリカで1.6倍。
  • フランスの大学は,2,3,4年課程修了で出る者もいる。博士を目指すならまず大学内の選抜を切り抜け,4年課程を修了し,さらに博士課程のための準備課程1年を経て高等研究資格を取得する必要がある。これから本格的な博士課程が始まる。入学試験がなくバカロレアを持っていれば誰でも入れるが,学年ごとの勝ち抜き競争がある。
  • ドイツは博士取得後時間差なく就職している(一般雇用市場に開かれている)。ドイツの経営陣の5割は博士取得者,学生中にインターン(企業実習)へ出かけるなど,博士課程が大学と企業を往復するキャリアのため。
  • 日本以外の国は,大学教員へのキャリアが他の職業機会と比較して十分な競争力を維持できるかどうかを絶えず測定し,危険があれば警報を発する機関を持っている。
  • アメリカの大学の学長は,豪邸に住む物乞いというジョークがあるほど,寄付金集めが学長の職務として学長に関する規定の中に明記されている。
  • アメリカの学長は,学生には友達,教授には同僚,卒業生にはいい奴,理事には健全な経営者,一般大衆には立派な演説家,財団や政府には機敏な交渉家,州議会には政治家,寄付者には説得力ある外交官,自分の研究分野では立派な学者,課程ではよき夫・父・熱心な協会員。
  • 現在の大学は,かつてのように一様ではなく,各大学の理念・目標・存在意義があり,それをどれだけ達成できているかを逐次評価確認する必要がある。
  • 終身在職権とは特権。誰にでも保証される者ではない。この人間ならば大丈夫と保証できる少数者を選び出して与えるべき。教授の名を使えるのは,こうした選抜を抜けてきた少数者の権利。

2011/06/07

遠田雄志(2005)『組織を変える“常識”』中公新書


  • 組織の特徴は,規律性と持続性。組織では個人の行為は,共同して行動するために良くも悪くも調整される必要がある。組織では,メンバーの顔ぶれが変わっても,共同行動が維持されていなければならない。
  • もう1つの特徴は,適応性。組織は環境の変化に応じて長期にわたって存続・成長しなければならない。適応は,認識・意志決定・行為という3つの活動のサイクル津を繰り返して行われる。
  • 組織では,コミュニケーションによって個々人の持つ意味世界が共有される。組織が共有する意味世界は,関与する人々の交代で左右されない頑健性があり,これが組織の必要十分条件である。
  • 私見(Private sense):個人の意味世界,互解(Mutual sense):私的コミュニケーションを通して共有された意味世界・仲間内の共有意味世界,常識(Common sense):公的なコミュニケーションや教育を通して伝えられる意味世界・カルチャー。
  • 個人の意見が常識を覆す力がないのは,私見が客観性が低いため。異論や批判も常識の対立とならない。常識に対立するのは互解であり,それには共鳴する仲間がいなければならず,常識の持つ強制力以上の説得力・魅力を有していなければならない。
  • 互解は不安によって形成される。常識が予想外の結果をもたらす時に,不安が増大し,互解の形成を促進する。
  • ただし,互解は自動的に常識とならない。不安は未練によって,常識に引き戻される。また,互解は臆病によって不安へ引き戻される。この2つのハードルを乗り越えて,互解は常識へ形成される。
  • 未練とは,不安が増大しても,とりあえず今の常識に依拠してみようというもの(ex. 過去の成功体験にとらわれる),臆病とは,今の常識が互解の軽々しい増加によって疑われたり批判されたりするのを防ぐもの(ex. 出る杭は打たれる,不確実なことにかかわらない)である。未練の多い組織はなかなか互解が形成されず,臆病な組織は優れた互解でもなかなか伝播せず実験・実現されない。組織の革新とは,新しい常識がその信頼性を確立するまでの期間であり,確立されたものであるほど未練と臆病のハードルは高くなる。
  • 戦略的意志決定とは,依拠すべき常識がなく,その決定の結果を予測することも評価することもできない状況で行われる。常識の中で行われる意志決定は戦術的意志決定である。前者の意志決定はゴミ箱モデル,後者の意志決定は合理モデルである。
  • 未練で臆病な組織は鈍重型,淡泊で臆病な組織は慎重型,未練で大胆な組織は試行型,淡泊で大胆な組織は性急型と,4分類できる。
  • 互解は組織が適応する上で不可欠で,互解の形成次第で組織の適応が決まる。よい互解の形成につながるコミュニケーションは,よい組織メンバーが,開かれた人間関係の下で,豊富な語彙を駆使して行うという3つの特徴がある。
  • レトリックは,新しい視点や認識を喚起し,世界を一新する力を持つ。レトリカルな表現のためには,語彙が豊富でなければならない。組織が語彙を豊富にし,レトリカルな表現に努めるようになると,組織の視野が広がり認識も良質になる。
  • コミュニケーションは,教育に代表される公的なものと,インフォーマルグループ内や派閥で行われる私的なものの2つで構成される。
  • よき互解の形成はしっかりした常識から生まれる。初中等教育では常識を,大学教育は互解の形成に注力すべき。

2011/06/06

安部悦生(1997)『ケンブリッジのカレッジ・ライフ』中公新書


  • イギリスの大学は事実上全て国立で,教員は実質的に国家公務員である。しかし,カレッジは独立採算の私立である。大学全体としては,国立大学と私立のカレッジの混成物である。教員は公務員として学部に所属すると共に,カレッジにも所属する。前者は税金で賄われる組織,後者は(学生数に応じた補助金があるが)独立採算。
  • 教員と同様,学生も経済学部に籍を置くと共に,キングズ・カレッジに籍を置く。学部は講義の機能しか持たない。学生は,国立のケンブリッジに入るのに,私立のカレッジの入試にパスしなければならず,合格すれば自動的にケンブリッジの学生になれる。カレッジの入試は,各カレッジが独自に企画・実施する。
  • 教員には,Professor,Lecturer,Assistant lecturerの資格しかなく,これは大学のものである。通常,大学の教員になるとカレッジからもオファーがあり,二重に所属する。病院勤務教員や管理職など,オファーがなければ所属できない。一方,カレッジ雇用のCollege lecturerもおり,不安定身分で一段低く見られる。
  • カレッジでの教育は,スーバーヴィジョン(個人指導)が中心で,週1回1時間カレッジ教員と1対1で指導する(オックスフォードではチュートリアルというが,ケンブリッジの方が生活指導を意味する)。1,2年性はカレッジのスーパーヴィジョン中心,3年以降は専門家集団の学部スーパーヴィジョンが中心。この教員負担は非常に重い。
  • 大学の教員には職位があるが,カレッジの教員は全員フェローであり,席次はSeniorityで決まる。よって,学部では教授でも,カレッジでは講師よりも後の席次の人もいる。カレッジのトップはマスター。カレッジの呼び名は他に,ハウス,ホールがある。
  • ケンブリッジでは,カレッジも家具も,オールドであることがよいこと。
  • カレッジの芝生はフェローズオンリー。
  • 大学は3年が原則だが,語学習得の必要があるコースは4年制。
  • カレッジのダイニング・ライトをもらえると,ランチができる。フェローはハイテーブルで食事を取り,学生と区分する。カレッジの食事は,フェロー間のインフォーマル・コミュニケーションの場。政治と宗教の話はよくないが,内部の話を聞けるのはここくらい。
  • アメリカは小規模研究会をワークショップといい,イギリスではセミナーと呼ぶ。
  • カレッジの役職は,トップのマスター,教務関係責任者のシニア・テューター,財務担当のバーサー。バーサーは教員である必要はない。マスターは一度なると退職までマスター。
  • イギリスの教授比率は10〜15%。医者もミスターで呼ぶ。ケンブリッジのマスターは30人,教授は200人,マスターの方が重要な職。教授が3〜4割いるアメリカの教授を,アメリカン・プロフェッサーと言う。
  • ケンブリッジのVCは各カレッジから輪番で選ばれる。大学の政治力学は,大学全体の組織,学部間,カレッジ間で働く。財政力のあるカレッジが強い。
  • 成績評価はファースト,セカンド,サード,フェイルセカンドは2・1,2・2に分かれる。ファーストの条件は上位1割かつ80点以上,ただし科目でまちまち。学生はせめて2・1を取りたい。奨学金と大学院進学に関わるために,希望者はファーストに必死になる。
  • イギリスの就職は,企業がファーストや2・1の指定をすると成績が重要になる。ただし,ケンブリッジの成績と地方大学の成績は別で見てもらえる。
  • マスターは,フェロー以外の職員,食堂や事務スタッフにも気配り,家族の様子などもよく知っている。上に立つものは気配りが重要。
  • 京都の間口が狭いのは,かつて間口で課税したため。イギリスの部屋は広さで考えない,単にスリー・ベッドルームなどの区別のみ。
  • 築25年以下の住宅が日本は50%,アメリカ25%,イギリス15%。家は中古住宅が普通。
  • イギリスには国教徒(Anglican),非国教徒(Nonconformist),カトリック(Catholic)の3つの主要宗派があり,国教徒は信心深くないが,残りは信仰心が厚い。数では圧倒的に国教徒。アメリカはピューリタン(非国教徒)がバックボーン,アメリカは宗教にこだわるが,イギリスは日本同様冠婚葬祭宗教に近い。
  • イギリスは北部が工業地帯で労働党,南部が保守党。

2011/06/03

谷聖美(2006)『アメリカの大学』ミネルヴァ書房


  • 大学とは様々な機能や権限を持つ期間や役職が協力・牽制しながら動いていくプロセスの束のようなもの(ゴミ箱モデル)。学長がトップダウン的に組織全体を動かす一元的組織とはなっていない。
  • アメリカの大学世界では,共同統治をプラスイメージで用いるが,強力な権限・リーダーシップ不在による不能率ももたらす。
  • 大学の設置認可を取り仕切る中央官庁はなく,認証協会に認証された機関が大学。認証協会は大学以外にも,小・中・高の認証も行う。
  • 日常感覚でよく使われる分類は,research university, teaching university, national university, regional university(CCやJCは含まない)。
  • 研究大学は,教育をおろそかにすることはないにしても,人事考課には反映されず,研究業績のみが評価対象。教育中心大学になると,教育面の評価が重視されるようになる。リベラルアーツ・カレッジの力点は教育にあり,全寮制・小規模・少人数教育で人格陶冶も含めた教育を行う。一方,CCは研究面は重視されず,教員は修士資格,近くの研究大学の大学院生の非常勤というものもある。評価は,学生による授業評価に過度に依存することになる。
  • CCは学費が約17万円,とりあえず自宅から近いCCへ行き,四大への編入を目指す学生の多さはここに理由がある。
  • 私立大学の理事会は,一部に卒業生代表などを含むものの,基本的に辞任・死去の際に欠員を補充する自己充足的団体であり,州法・監督機関以外に制約を受けない自治機関である。
  • 州立大学の理事は,州議会の任命か有権者の選挙で選ばれる。理事会は,学長の任命,大学の運営方針・財政政策・研究教育基本政策,教員採用・昇進発令の決定権を有す。一般に無給で,尽きに1・2回理事会を開いて大学側の用意する案件を審議する。教員や学生の代表が理事会に陪席する権利をもつ大学も多い。
  • 執行部の頂点は学長。実質的な役割は,対外的なもの(広報,対連邦・州政府,同窓会,寄付金集め)にあり,学内の権限はProvostへ委任されている。PresidentとChancellerの使い方は州によってかなり違う。
  • 学長は理事によって任命され,研究者としての一定の経験を持つ人の中から選ばれる。通常は,公募方式で選考委員会が設けられる。私立は自校関係者から選ぶ傾向があるが,州立大学ではその傾向はない。当初は研究者として出発しながら,大学行政・経営に才能を発揮してそちらの分野へシフトした人たち。あちこちの大学で,学部長,副学長,Provostを歴任した後にどこかの学長に抜擢され,さらに業績を上げると有力大学の学長に引き抜かれる経歴を辿る。要するに,学問業績ではなく,大学経営上の手腕・見識・リーダーシップで選ばれる。
  • 学長が強力なリーダーシップを発揮する機会はそれほどない。大学が高度に分権化されており,自律性と自治権を持って集まっている組織や機関を束ねて方向性を与えていく仕事は容易ではなく,トップダウンで大学を動かせる権限を持っているわけではない。(そもそも強大な権限があるなら,命令すればいいのだから,その地位に就く人にリーダーシップの能力がある必要はない。)
  • 学長は,政府の構造と同様に,理事会,全学評議会,学部,学生団体,同窓会などと交渉・説得・脅しながら,協力と同意を取り付けて大学を動かしていく。権力関係の中心にはいるものの,頂点にいるわけではない。優れたリーダーシップを発揮する学長とは,中心と頂点の差を,人望とスキルで埋めることができる人。
  • 学長の業務は,理事会の方針を実現し,状況を報告することと,寄付金集めである。
  • 大学の事実上の最高責任者はProvost。副学長職を兼任することが多いが,「副」学長の一人ではなく,不在の学長に代わって大学を預かる長のような存在。主席副学長と言う訳も無理がある。あえて言えば,学事最高責任者。College Deanの名をつけるところもある。
  • Provostの包括的職務を補佐する訳としてAssociate Provostがあり,教職員人事担当,研究・教員関係庶務担当,学事・予算担当,予算・企画・管理担当など。学部長(Dean)と研究所長,図書館長,博物館長もProvost直属(ミシガン州立大の場合)。理財,法務,広報,大学振興,対政府関係,学生を担当するProvost直属でない学長直属副学長もある。
  • 学部・研究科の長(Dean)は執行機関の長であり,選挙で選ばれることはない。学部(School・College)は自治の単位ではなく,自治の単位は学部・研究科を構成する学科(Department)である。ただし,日本の学部規模の学科もあるので注意を要する。学部・研究科が単科大学のような存在。
  • 一般に大学院は機構上は独立しており,そこにもDeanがいるが,専属の教員はおらず学部の教員が兼務する。
  • 分権と集権の圧力の接点にあるのがDean。理事会・学長の基本方針に沿って学部を運営すると共に,学部のパフォーマンスを上げるよう経営的な手腕が求められる。そのため,学部長は学科長の任免権,予算配分と執行の監督権,学科カリキュラム点検の権限を持つ。学部独自の寄付金集めも行う。
  • 学部長は,統治・執行機関に属する役職で,Provostによって任命される。学部内から選ぶよりも,全国を見渡して優秀な学部経営者候補を探して絞り込む(コンサルタントが選抜する)。学部には教授会がなく,学部長は学長とProvostに責任を負うため。ただし,学部長になると,どこかの学科に教授としてのポストも与えられ,学部長を解任されても,教授としての身分保障は受けられる(学長も同じ)。
  • 私立大学の財源は,授業料28%,投資収益・事業収益(病院・企業)25%ずつ,寄付金12%,政府から10%。州立大学は,州政府36%(州からある程度自立した存在),委託研究費・事業収入22%,授業料19%,連符政府11%。
  • 常勤職員数が常勤教員の3倍〜8倍いる点(ただし,病院看護師を含む)が特徴(東大で1.3倍)。
  • ファカルティは,教員全体という意味で使う用語。学生は大学に所属し,教員がいる学科とはつながりを持たない。所属学科が決まるのは1〜2年生の段階で先行を選んだ後(専攻の決定は履修上の問題だが)。よって,担任制度はなく,教育以外で学生を指導する発想はない。
  • 分業が徹底されているので,卒業や進級を巡って教授会がもめることはあり得ない。寮の管理や問題学生対応は学生部が,成績管理や卒業認定,成績不振学生への勧告,表彰は教務部(Registrar)が,卒業要件を満たすかの判定は学位審査官(Auditor)が,入試については入試部が行う。(選抜基準は委員会で審議)。
  • ただし,教員・学生交流はある。寮があれば,配偶者も含めて積極的な交流がある。授業負担は週数コマ。優秀教員はその数コマを減らす交渉をしたり,外部資金で非常勤を雇って任せることもある。ただし,シラバスなど担当科目に割くエネルギーは大きい。
  • 教授会は教育研究上の組織であり,入試,予算管理,学生生活については権限も責任も持たない。そもそも研究に必要な費用は自分で調達し,配分校費などない(そのため校費配分で会議する必要がない)。ファンドが取れない教員向けに,30〜40万円ほどの学内ファンドもあるが,これも学内審査で優秀と判定されないと支給されない。
  • 教授会の任務は,学科がカバーする学問分野の研究と教育,教員人事。議決権は常勤講師(Assistant Professor)以上。(参加は,非常勤,客員もできる大学もある)。
  • 教授会を率いるのは学科長。基本は任命だが,学部長がメンバーの意見を聞いて候補者を説得し,指名する。通常は待遇の交渉も含む。公募でどうしても取りたい人がいれば,配偶者のポストを用意することもある。
  • 正規大学教員の道は,InstructorかAssistant Professorから始まり,3年任期で更新保証はない。教育研究で評価され,2回目の任期終了頃(6年目)の本格審査に耐えるとTenureとなる。耐えられなければ,1年ほどの猶予後に契約終了になる。Tenureであれば,大学を移っても通常はTenureとなる。昇任は教授会の投票2/3以上で決まる。
  • アメリカでは,出身大学よりもいい大学へは行けない。公募では推薦書が重要であり,有力大学の推薦状が得られる方が有利だが,推薦状を得られる業績と人間性がないとそもそももらえない。
  • 教員の評価は,教育,研究,学内サービス,地域貢献の4つだが,そのウェイトは大学でかなり異なる。リベラルアーツ系で60:30:10:10,研究大学は0:100:0:0。これに基づいて給与が決まる。博士課程のある大学の教授で約1000万円,コミュニティカレッジで約700万円。
  • アメリカの教員は必ずしも業績が出ている訳ではないが,研究大学教員の生産性は高く,その源泉は厳しい業績主義の環境。個人研究費はない,コピーも上限1000枚など決められている。研究者は原則自前で必要なものを買いそろえる。外部資金はいったん取れば使用は比較的自由。長い夏休みとサバティカル,スタディリーブも業績の原動力。(学期は9月初〜12月,1月半〜4月末)。ただし,夏休み中は義務がない代わりに,給与も出ない。
  • 学科教授会は,カリキュラム,出願資格要件,卒業要件,学位審査,組織や手続き,教員採用と審査の権限と責任がある。
  • 評議会は大学のあらゆることに関与し,執行部や理事会へ勧告を行えるが,拘束力は持たない。(大学によってかなり違うので注意)。
  • アメリカには大学入試がない。入学要件は学科が決めるが,選抜はアドミッションズ・オフィスが行う(多段階の審査なのでアドミッションズ)。入試枠はなく,個別志願者について選考を行う。選抜は,全入式(CC),通常式,早期決定式(合格したら必ず入学),早期判定式,先着順選考式がある。通常式は,高校最終学年のはじめ(4年の秋)に願書を出すと,大学は高校の推薦書,SAT成績をみて合格者を決め,4月頃結果を通知する。入学までの2,3週間で学生はどこへ行くか決める。
  • 学生は一般に10校ほど出願する。併願制約もなく,試験もない。大学から見ると,来てほしい学生が来ない問題がある。そこで,どうしても入れたい学生は奨学院を出す。AOerの腕の見せ所は,学生に逐次電話してとどまらせること。
  • 志願者が万単位の州立大学では,SATと高校のGPAで一定割合を選抜し,残りを成績と課外活動を併せて評価する二層選抜が一般的。
  • 学士教育の柱は,一般教育,高度学芸教育,専門職教育。非実学的な学部教育が主流で,LA学部で学士を取る学生は6割。学生に求められるものも多様。LAから出発し,後から職業教育が加わった歴史の反映。
  • ハーバードのコア・カリキュラムは,幅広い科目を選択することを義務づける広領域教育。
  • 学科以外のプログラムとは,相互に関連する学科や他学部教員が集まって作る教育単位で,専任教員が要らない分,安価にできると共に学際教育も行える利点がある。学生は,入学時点ではどの教育単位(学科・プログラム)とつながりを持たない。自由に選択する中で,遅くとも2年の終わりまでに専門を決める。専攻を決めるにも,定員があるので成績がよくないといけない。卒論はないが,授業の中で研究論文が求められる。コースワークに耐えて際知恵のGPAを獲得すれば,卒業認定の申請をする。要件が満たされたら,次に学位記の請求を行う。学位記は,学士学位だけが書かれ,専攻は記されない。BAとBSの二種類のみ。
  • 入学後のフレッシュマンセミナーは,通常名誉教授など経験豊かなスタッフが担当する。15人または25人上限のゼミ。大規模講義とセットのゼミもある。
  • アメリカでは単位を一律の時間数ととらえておらず,講義自体の時間数に基づく(単位時間,Credit hourと表現する)。単位数は難易度や学習に必要な時間・労力を示すものではない。
  • アメリカでも成績評価の全学基準はなく,仏や鬼がある。成績評価で重視されるのは期末試験。UC Berkleyでは全て筆記試験で実施しないといけない。中間試験の実施は教員の裁量(シラバスで示す)。口述試験は学部レベルではほとんど見られない。
  • セメスター制では,授業は約12週,講義は週2〜3回あり,授業も9時から19時まで,ゼミは22時まであるので,集中的。クォーター制では約9週。

2011/06/02

渡部哲光(2000)『アメリカの大学事情』東海大学出版会

  • 大学は公私の区別なく州高等教育委員会(Commision of HE)の監督を受ける。予算の審議,教育水準のチェックを行う。
  • 理事には,学長や教員,職員は理事にならない(SCの場合)。教授団と学生の代表は議決権はないが発言権のある者として理事会に出席できる。
  • 学長は教授として特定の学科でTenureを持つ。Provostは専門分野で業績を上げた学者で,かつ行政手腕を持つ教授が任命される権威ある地位。事務局長(Secretary)は理事会が選出。経理局長(Treasurer)も理事会選出。副学長(VP)は経営・財務担当,人事担当,学生担当,大学振興担当があり,理事会選出。学部長は学長任命でProvost直属,学部内学科にTenureを持つ。学科長(Dept Chair)は学部長任命,学長・Provost承認。
  • 学長はほとんどの大学で公募。Provostと学部長は,広く学界から公募,内部からも応募可。Provostは学部長以上の役職経験者から,学部長は学科長経験者から選ばれる。三役選考は書類で10名程度に絞られ,大学で3〜4日幹部と面接,教員団,学生との会談やセミナーをこなす。順位が決まると,俸給交渉に始まり,運営方針や学外活動の承認などを調整し,合意すれば任命。決定まで数年かかることもある。
  • 学科長は,公募であったり選挙であったりする。立候補はあり得ず(多忙で研究ができないため)同僚の説得で決意する。
  • 教員団は多数なので,参議院団が構成されて会議をする。
  • Freshman,Sophomore,Junior,Seniorは1年〜4年ではなく,30単位,60単位,90単位などを修得した者をその学期の終わりまでSophomore等と呼ぶ。卒業は4年が普通だが,学年は規定ではない(学期変わり目に進級し,留年や落第という概念はない)。
  • アメリカの大学では講座制はない。個々の教員の集合で構成される。俸給は希望額と提示額の折り合いで決まる。自らの評価を低く評価すると,初任給が低くなり,大学を変えない限り昇給に響く。
  • FTEの考え方:俸給の全てを学科から支給される教員Aが3単位科目を30人に教えると,3×30×1=90,これを3人で教えると一人30。俸給の半分をX学科,残りをY学科から支給される教員Bの場合,3×30×0.5=45。FTEは教授公立の表現方式の一つ。