- ケース・スタディは,課題や困難に直面したときに,自分がどう臨んでいくかのAttitudeを形成するもの。それは,問題を直視して逃げない,不確実な中で複数の選択肢から解決策を選ぶ意志決定をすること,実行の過程を冷静に観察し感情に流されないこと。
- 四年制大学の卒業生は,1年生必修の作文コース後,ほとんど書く訓練をしていない。しかし,質の高いMBAコースは,学生に書くことを要求する。世界中に分散している社員に連絡を取る最も実践的な方法は,文章であり,よく書かれた文章は隠れた競争優位性となる。
- 権威や正式に認められた真実が与えてくれる安心感から離れて,学生個人が議論の結果に責任を持って教室を後にすることは,曖昧で何通りにも解釈できることに対する不安を経験することになる。
- ケースは,(1)ビジネス上の重要な問題がある,(2)結論を導くのに十分なだけの情報が記述されている,(3)結論は記述されていない,の3つの特徴を持つ。
- 学生は,ケースが論理的な順序で書かれていると仮定してケースを読むが,混乱をきたす枠組みでケースが書かれているためにまごつく。ケースは主体的に読まなければならない。ケースは,(1)受け止める,(2)見つける,(3)つくり出すという3つの読み方がある。ケースは意図的に何を意味しているのかを伝えないようにできており,自分で意味をなすように構築していかなくてはならない。
- ケースには,(1)問題,(2)意志決定,(3)評価,(4)ルールの分析課題が繰り返し出てくる。
- 問題は,重大な結果に関連した状況で,その結果に対する明確な説明がつかない状況をいう。何か重大なことが起こったが,なぜそうなったのかわからない状況。問題の分析は,問題を定義するところから始まり,次に原因と結びつけて説明する作業をする。その際に,ツールや専門手法が必要になる。
- ケースでは意志決定の場面が出てくるが,たいてい明確でなくその他の状況に左右される。これを,選択肢,基準,論拠の3つの視点で分析する。最重要は基準を決めることで,ケースの中に記述されることはあまりなく,専門的手法でケースの中から拾い出す。なお,客観的に正しい意志決定は存在せず,相対的なもの。
- 学生はケースの解釈基準は科学的なものと暗黙に想定するが,それは達成不可能。論を展開する際は,科学的に確実でなくても論理的で行動に移せるものであることが重要。わからないことに焦点を合わせず,わかっていることに焦点を合わせて知識を積み上げる努力をする。
- 議論では,自分の見方に責任を持つ,それに対する議論を展開する,議論を説明する準備をする,自分の意見に賛同しない人の意見を聞くという慣れないことを行う必要があり,当初は落ち着かないもの。
- すばらしいコメントを謝ったタイミングで発言するのは最悪だ。
- 議論でリスクを軽減するには,早いうちに発言する,ケースに書かれた情報を熟知する。
2011/03/29
ウィリアム・エレット(斎藤聖美訳)(2010)『入門ケース・メソッド学習法』 ダイヤモンド社
2011/03/28
若宮健(2010)『なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか』祥伝社新書226
本書の基本的な主張は,(1)韓国は政府が業界の反対にひるまずトップダウンで規制できたためにパチンコが全廃できた,(2)日本は政府や警察が業界から利益供与を受けているために規制できない,というものである。タイトルの「なぜ」全廃できたかの答えは,政府が規制したからというだけで,もう少し面白い社会構造分析が見えるかと思っていたため,やや残念な内容。いろいろ冗長に述べているが,これ以上の知見は皆無。
著者は調査研究のプロパーでなく,サラリーマン上がりの自称ジャーナリストのため,これは仕方ない。特に,自身宛のメールを紹介する論拠付けはなんともお粗末。
新聞の書評欄で見て題目が面白そうで手にしたが,久しぶりに外した。やはり買う前に著者プロフィールの確認とアマゾンレビューくらいは見ておかないといけない。
著者は調査研究のプロパーでなく,サラリーマン上がりの自称ジャーナリストのため,これは仕方ない。特に,自身宛のメールを紹介する論拠付けはなんともお粗末。
新聞の書評欄で見て題目が面白そうで手にしたが,久しぶりに外した。やはり買う前に著者プロフィールの確認とアマゾンレビューくらいは見ておかないといけない。
2011/03/25
馬越徹(2010)『韓国大学改革のダイナミズム』東信堂
- 韓国の高等教育環境は,日本の5〜10年先にあたり,得られる示唆は多い。韓国は,大学進学率が80%以上,学生の78%は私学在籍,学生のソウル志向と有力大学のソウル集中,地方大学の深刻な定員割れなどがあり,日本に似た側面が多い。
- 韓国の高等教育拡大は,国家政策による設立の準則主義導入と大学の昇格・乱立によるものであり,少子化に伴う深刻な定員割れから,再び国家主導による統廃合推進政策が進んでいる。大学側の反対は当然であるが,既得権を持つ大学へナタを振るうには,国家によるトップダウン改革の方が実質的に変革が進む。
- BK21など一部の有力大学を優遇する財政誘導政策により,一定の研究水準の向上を果たすことができた。この多くは教員採用や研究者の海外派遣など,ほとんどが人に使われた点が特徴。
- 一方,NURIの地方大学活性化事業は,優れた教育プログラムへの財政支援で,GP的な使い方。また,域内の中心大学が近隣大学や地域産業と連携することに使う点も特徴。
- 韓国の大学政策,常にカーネギー分類のような大学分類に基づいて,目標等が異なる形で示される。大学の機能分化を強く意識していることが伺える。大学側もこれを承伏しているのだろうか。
- 認証評価は一巡して,今後は自己点検報告書の公開と大学基礎データの政府一括公開という段階に入っている。認証評価は甘すぎ,結局,効率化やイノベーションにつながっていないという総括で,日本の数年先の状況がある。
- 私大の統廃合は,厳しい入学定員削減を伴う統合が進めば財政支援を,教員の専任比率上昇が達成できなければ入学定員削減をという誘導をする。これは,原則,域内で行う。また,大学拡大期に増えたオーナー系私大の民主化・透明化を図るために,理事の選任規定の変更を含む私立学校法改正を行った。
- 韓国では,個別大学が入試を行うことはできず,修能試験+内申書で入学を決める。しかし,マークシート式の修能試験の弁別力が落ちてきており,大学を悩ませている。高校修了試験を検討する日本の10年後の姿に見える。
- 韓国でも大学職員は人気で,50倍の求人倍率も珍しくない。弘益大学・教育経営管理大学院(大学行政専攻)と亜州大学・教育大学院(大学行政管理専攻)の2つは,大学職員向け専門職大学院であり,調査先としておもしろい。専任教授は少数で,ほとんどが実務家教員に委嘱している点が特徴。
2011/03/17
Biggs, J. B. (1987) Student Approaches in Learning and Studying, Australian Council for Educational Research, Melbourne.
Choy (2011)において参照されていた,Student Process Questionnarieの原典。しかし,個人の意識レベル,コースレベル,カリキュラムレベルと異なる階層の質問が混在し,活用方法が不明確。
同様の質問が複数出てくるのは,因子分析にかけるためだろう。
同様の質問が複数出てくるのは,因子分析にかけるためだろう。
- 個人の興味よりも卒業後の職業場面を想定してこの科目を履修した。
- 学習中は常に個人的な満足感が満たされた。
- ほぼ全ての科目で優をとれるような科目を選択して履修したい。
- 試験や課題に直結する勉強だけをしたく,その周辺の学習は時間の無駄だと思う。
- 学習中は,学んでる内容が実生活で役に立つと思うことがよくある。
- 教員から示された参考文献を読んで,要点をノートにまとめた。
- 試験であまりいい点を取れず,次のテストが心配である。
- 知の蓄積によって真実は絶えず変化していくものであるとわかっているが,現時点で真実であること見つけるだけの学習になっている。
- 全ての学習において自分は優秀でありたいと思っている。
- 単純な暗記学習をよく行った。
- 新しい文献を読むとき,いつも頭の中で自分が既に知っていることと新しい知識の対比を意識していた。
- 試験が終わると必ず振り返り,問われたことを念入りに考える努力をした。
- 好き嫌いはともかく,より高い教育を受けることが自分の場合はよりよい就職につながると思う。
- どの科目もとても興味深いものであった。
- 自分は志が高い方で,常にトップでいる努力をしたいと思う。
- 自分は,理論的な科目よりも実践的な科目の方を好んで履修する。
- 授業の満足より,自分なりの視点が持てるように授業では努力して勉強したいと思う。
- 課題が出されたら,できるだけ早く取りかかる努力をした。
- 試験に向けて懸命に勉強したが,よい点が取れるか心配だ。
- 学問的な内容の学習は映画などよりも刺激的だ。
- 時期が来れば,いい勉強と就職のために同級生とともに流行に乗るだけの生活をやめるつもりだ。
- 不必要なことを学ぶことがないように,常に勉強を抑えた。
- 1つの科目で学んだことを他の科目で学んだことと関連づける努力をした。
- 講義が終わると,学んだことが確かなものか確かめるためにノートを読み返す努力をした。
- 教員らは試験に出ない誰でも知っていることの学習に時間をかけすぎないことを望んでいると思う。
- 勉強すればするほど熱中する方だ。
- 授業の履修を決める際に重視することは,よい成績がとれそうか否かだ。
- 入念に準備された教材と手際よくまとめられた板書により,授業がよく理解できた。
- 新しく学んだことは興味深く,授業時間外に追加的な知識を得る勉強をした。
- 授業で学んだことが理解できているかを確かめるために,自分でテストをしてみた。
- 高校卒業後も勉強するのは気が進まなかったが,結果的に大学での学習は有益だった。
- 人生における目標は,自分自身の哲学や信念を確立することであり,それに従って生きていきたいと思っている。
- よい成績を取ることはゲームのようなもので,実際自分はそのゲームに勝っていると思う。
- 特定の状況下でのみ教員の考えを受け入れることが最適だと思う。
- 複数の授業で議論しておもしろかった内容について,自由時間に追加的な勉強をしている。
- 教員が紹介した文献はほとんど目を通すことができた。
- 大学に在籍している理由は,その方がいい仕事が得られると思うからだ。
- 大学での学習は自分の政治観,地域観,考え方を変えた。
- 今日の社会は競争社会であり,学校や大学もこの枠の中で生きているものだと思う。
- 教員は自分より知識が豊富なので,自分の判断よりも彼らがいうことの方が重要だと思っている。
- 文献を読むときは既に知っていることと新しく知ったことを関連づける努力をした。
- ほとんどの科目で,丁寧で整理されたノート作成を行った。
2011/03/09
楠木健(2010)『ストーリーとしての競争戦略』東洋経済新報社
- 優れた戦略とは,思わず人に話してみたくなるような面白いストーリー。項目ごとのアクションリストの戦略が多いが,それは戦略の構成要素の動きと流れがわからない静止画のような戦略。
- 戦略論のテンプレート偏重やベストプラクティス偏重には,ストーリーのある戦略作りを阻害する面がある。
- 論理とは,AならばBであるのように,2つ以上の思考や現象をつなぐ理由付けを指す。戦略の8割は理屈で説明できないが,2割の理屈を突き詰めていなければ理屈でない部分の嗅覚は磨かれない。
- 法則は,戦略論の対象になり得ない。経営や戦略は,科学でないから。経営学の答えは,法則はないが論理はある。経営学は,なぜ(Why)を明らかにする学問。
- 戦略の本質は,違いをつくり,つなげること。前半は競合との違いを意味し,後半は構成要素間の因果関係を意味し,次の重要なポイントがある。
- 経営の多くの問題は,分析の発想に基づく。マーケティング,アカウンティング,ファイナンス等の構成要素に分解される。
- しかし,戦略の神髄は綜合(Synthesis)にあり,分析の発想と相容れない。よって,戦略に対応する部署は組織の中に見つからない。
- 戦略は部署でなく,人が担う。戦略はサイエンスよりもアートに近い。
- 戦略は因果論理の綜合であり,特定の文脈に埋め込まれた特殊解という本質を持つ。よって,普遍の法則はない。
- ストーリーの戦略論は,アクションリスト(戦略部門の分業的分析では無味乾燥な静止画の羅列になる),法則(違いを問題にする以上,大量観察を通じて確認される規則性は平均的な傾向しか示せない),テンプレート(分析は要素間の因果論理を考える助けにならない),ベストプラクティス,シミュレーション(数字の背後の因果論理が考慮されない),ゲームではない。
- 静止画戦略論が好まれる理由:
- 忙しいから。テンプレートがあれば手っ取り早く戦略をつくった気分になれる。
- 経営企画部門は,戦略構想が仕事ではなく,戦略構想する人のための情報整理が仕事で,シンセシスに責任がない人にとってはテンプレートが有用。
- プロフェッショナル経営者という幻想。標準的なスキルセットではない。
- コンサルタントの存在。
- コミュニケーションが早い(共有するゆとりはない)。
- ストーリーという視点は,戦略をつくる仕事を面白くする。難しい顔で戦略を考えている人が多すぎる。所詮はビジネス,自分で面白いと思わないものが,他人が関わる組織で実現できるわけがない。
- 優れた戦略思考を身につけるために大切なことは,お話づくりを面白いと思うかどうか。むずかしい,思考様式が戦略と思い込んでいる人が多すぎる。
- 戦略は,競争戦略(事業戦略)と全社戦略がある。前者は他組織とどのように向き合うかに関わる戦略,後者は複数事業の資源配分と進出撤退をどう構築するかに関わる戦略。
- 目標を立てることと戦略をたてることを混同しやすい。戦略は,なぜ目標が達成できるかという道筋のこと。
- 競争戦略は,競争がある中で,いかに他より優れた収益を達成し,それを持続させるか,その手立て。完全競争から見えれば,競争があるにもかかわらず利益があるのは,不自然でもろい状態。競争がある中で儲かる不自然な状態をつくって維持することが競争戦略の課題。
- 違いの作り方には,種類の違い(ポジショニング)と程度の違い(組織能力)の2つがある。前者をStrategic Positioning,後者をOrganizational Capabilityと呼ぶ。
- SPのベースは産業組織論。産業のあり方が企業の行動を規定し,その結果としてその産業の収益性が予想され,その産業に帰属する企業の収益性も予想できるという考え方。SPは,無競争に注目する。
- SPは,競争優位の源泉を組織外のコンテクストに求める(位置取り)。OCは,自分たちの持つ強みを理解して,簡単にまねできないものに練り上げる。SPは質とコストのトレードオフ関係,OCはフロンティア拡張関係にある。
- SPでは,マネジメントは意志決定者。OCでは,マネジメントの直接操作が曖昧(だからこそ因果関係が不明確になり,経路依存的になり,まねしにくくなる)。MBAはSPを好む。
- SPは何をするか・しないか(What),OCはユニークなやり方(How),これを統合して戦略ストーリー(Why)ができる。
- 戦略ストーリーを組み立てる柱は,(1)競争優位(最終的な論理の帰結),(2)コンセプト(本質的な価値の定義),(3)構成要素(SPかOCか),(4)クリティカル・コア(一貫性の源泉となる中核的構成要素),(5)一貫性(因果論理)の5つ。
- どんな戦略も必ず,ハッピーエンドで終わる。バックワードに考えることで一貫性を組み立てやすくする。競争優位の中身は,WTP,低コスト,独占・ニッチの3つ。ただし,軸足を定める必要がある(バッティングしたときにどちらをとるかをはっきりさせる)。
- ストーリーは,終わりから組み立てる。軸足の選択は,ストーリーの基本的な性格を決める。
- 最初からストーリーがあったわけではないという指摘は,正しいが間違い。細部は出来上がっていなくてもストーリーの原型を初期からつくっている。ストーリー化の思考があるから,新しい打ち手をつくり,これまでの打ち手を修正できる。
- ベストプラクティスに学べという思考は,そもそも違いをつくるはずの戦略を阻害し,同質的な競争へドライブする面がある。(会議は時間を短くが常識だが,技術開発が事業の軸足の会社など,あえてダラダラやることにこだわる組織もある。)
- コンセプトは,本当のところ誰に何を売っているのか,どのような顧客がなぜどのようによろこぶのかを指す。
- たとえば,顧客を組織化して囲い込むにしても,それに先行して誰に何をを突き詰めなければ,コンセプトは動画にならない。そこまでの価値を認める顧客は誰か,なぜ彼らを囲い込めるのか,なぜ彼らが継続的にお金を払うのか,コンセプトはこうした一連のなぜに対する答えを含んでいなければならない。
- 本質的な顧客価値を突き詰めるとは,誰がなぜ喜ぶのかをリアルにイメージすること(アスクルの久美子さん)。
- コンセプト作りで重要な点:
- すべてはコンセプトから始まる。しかも投資が不要。本質的な顧客価値をとらえていると確信できるコンセプトが固まるまではストーリーの細部を考えても意味はなく,時間をかけて構想すべき。
- 因果論理の綜合という意味でもコンセプトは重要。ストーリーに含まれる全ての構成要素は,コンセプトの実現に向かわなければならない。コンセプトと因果論理でつながらない構成要素は意識的に切り捨てる。
- 全員に愛される必要はないことは,コンセプトを考える上での大原則。誰に嫌われるべきかをはっきりさせられることはビジネスの特権。行政サービスではそうはいかない。コンセプトは肯定的な形容詞を使わずに表現する。最高の品質がよいのは当たり前。空飛ぶバス,第三の場所には肯定的形容詞がない。
- コンセプトは人間の本性を捉えるものでなくてはならない。なぜ喜び,楽しみ,面白がり,嫌がり,怒るのかということ。機会を捉えることに終始すると,空疎なコンセプトしか出ない。
- ストーリーは長い話,20年くらい同じストーリーで利益を獲得できることが理想。そのためにも,人間の本性をとらえたコンセプトが重要。人間の本性は大きく変わらない。
- クリティカル・コアでは,一見して非合理が重要(スターバックスの直営方針)。時間的先行による専有は,できるものならまねしたいと多組織も思うが,非合理はまねする動機がない。
- クリティカル・コアは,先見の明ではない。先見の明は,外部環境の変化の先取りを前提にする。部分非合理を全体合理性に転化することがクリティカル・コア。
- どんな戦略も成功するかどうかは事前にわからない。その意味であらゆる戦略は実験。ストーリーを事前に共有すれば,実験の失敗に気づくことができる。大規模組織ほど失敗の正体が突き止められない。ストーリーを引っ込める基準も事前に作っておく。
- クリティカル・コアを見いだすには,日常的な小さな疑問に,なぜを考えることを惜しまない。大抵,技術的に無理とかコストが引き合わないなど,どうしようもない理由があがる。それが常識にとらわれ,簡単な論理で解決できることに気づくときが来る。
- 戦略思考を豊かにするには,歴史的方法が最も有効。つまり,過去に生まれたストーリーを多く読み,背後にある論理を読解すること。新聞や雑誌ではなく,ある組織の歴史や戦略をじっくり記述した本や,優れた経営者の評伝・自伝,あるいは昔の新聞を見て,ファクトの背後にあるなぜを考える。
- 優れたストーリーの条件は,そのストーリーを話している人自身が面白がっていること。必ず成功する条件ではないが,優れたストーリーの必要条件の一つ。
- 戦略は総力戦。何をどのようにも重要だが,なぜについての全員の深い理解がなければ,実行に関わる人のモチベーションは維持できず,総力戦にならない。
- 戦略を作ること,実行することは重要だが,伝えることの重要性もある。伝わらなければ実行はあり得ない。伝達は手間のかかる仕事。グラフを入れたドキュメントを配ってもイントラネットで共有しても戦略は伝わらない。リーダーがストーリーを語らなければ伝わらない。ストーリーを語るときはフェイス・トゥー・フェイスが基本。おもしろいストーリーをつくれば,思わず話したくなるので,共有したくなる。優れたストーリーをつくるには,おもしろいストーリーをつくるにつきる。
2011/03/08
木村達也(2007)『インターナル・マーケティング 内部組織へのマーケティング・アプローチ』中央経済社
- 統合的なマーケティングの実現には,(1)マーケティング部門内の諸機能の統合,(2)マーケティング部門以外の部門がマーケティング発想で考えることの必要性,(3)マーケティング部門とそれ以外の部門の間の良好な連携が必要。ここにインターナル・マーケティングの必要性がある。
- ここではIMを,組織がその目標を中長期的に達成することを目的として実施する,内部組織の協働のための一連のプロセスあるいはコミュニケーションの活動である,と定義する。
- IMでは,マーケット調査(フォーカスグループ),セグメンテーション(年齢,志向,役割,機能,能力でグループ分け),ターゲティング(職務に適した能力保持者に狙いを定めた採用),プロモーション(組織内広報)のツールがある。
- 取引コストの発生要因には,環境的要因(将来の不確実性,取引の複雑性)と人間的要因(限定合理性,機会主義)がある。取引コストは,市場を介するよりも組織内部の資源配分で調整する方が,(1)不確実性が減少するまで決定を遅らせられる,(2)継続的関係が続くことで機械主義的行動がとりにくくなる,(3)長期的関係のもとでは情報が偏在しにくいために,有利になる。不確実性と複雑性が高く,限定合理性による制約が大きいほど,ヒエラルキー型組織の方が選択される。
- 組織内の取引コストは,(1)目標の不一致・不整合があるほど,(2)成果測定が曖昧であるほど,高くなる。
- 成果測定の曖昧性が高く,目標の一致・整合が重要な仕事ほど(財務,コンサルティングなど),IMが必要な組織と言える。
- IMは,(1)従業員の動機付けと満足度向上,(2)顧客志向の実現,(3)部門間の統合と戦略の実行と,目的を拡張しながら発展してきた。
- 組織には,常にコーディネーション問題とインセンティブ問題がつきまとう。前者は,システムを中央集権化/分権化するか,つまり,専門性を保ちながらどう全体を統合するかにある。後者は,組織の目標を犠牲にして個人の目標を優先させる個人レベルと,全体の利益を犠牲にして自部門の目標を優先する部門レベルの問題がある。
- この問題を解決するために,ARCがある。Architectureは,コーディネーション問題から組織を論じ,社員をグループの分けた上で,グループの縦・横の連結性を強化(人脈,リエゾン,タスクフォースやチーム,インテグレータにより)する。Routineは,部門間コミュニケーションを最小化してコーディネーション問題を解決する。
- IMを実施する際は,メッセージ,メディア,マーケット,メジャーメントの4つのフレームワークでプログラムを作成する。
2011/03/04
吉田典生(2009)『なぜ,「できる人」は「できる人」を育てられないのか?』日本実業出版社
- できる人は,価値ある存在として期待されるが故に,できる人であることを求められ,本人も期待に応えるために全力疾走する。できない人は,できる人を横目に無力感や疎外感を味わい,自分を卑下するようになる。ますます,両者の格差は広がり,できる人の負担感が増す悪循環となる。
- できる人は,やれば結果が出そうだという感触を速やかに抱ける。好ましいゴールを生き生き描く心理的プロセスこそにがんばれる理由が潜んでおり,がんばったから結果が出たという結果論をまとめてはいけない。
- できる人が率先して答えを出していくと,周囲は答えをもらうことに慣れていく。これを受け身と非難するのは簡単だが,その状況を作り出しているのは当のできる人。できない人もたいていは勤勉な日本人で,自分なりに役割を果たそうともがいている。
- コンピテンシー論の問題は,行動に至る固有の動機を考慮していないこと。できる人がなせそれを「いきいき」するかという理由が無視されている。その行動が大事だと頭でわかっていても,それが自分らしい行動と思えず,行動から生まれるものが苦痛やプレッシャーになる。コンピテンシー論を人材育成に活かすには,行動を生み出す内面的な動機に目を向けなければならない。
- 目標は到達できる手応えがあるからこそ,厳しくても燃えることができる。この困難さのレベルは相対的なもので,目標はできない人にとって時に弊害となる。
- 生活の糧のために仕事に誠実に取り組む人が多くおり,それはできる人・できる人になる可能性を持つ人。できる人のワークライフバランスに沿った仕事の進め方や風土が,できない人の成長を阻んでいる可能性がある。
- できる人の自分のプラス面は,他社批判をすることで自分を正当化する罠になりやすい。
- できない人は,自分をどこまで追い込めるか,どこが限界なのかをなかなか理解できず,自己認識が甘い。よって,目標を挟んで,できる人とできない人の葛藤が起こる。目標が悪いのではなく,目標とのつきあい方の違いに目を向けないことが問題。できる人は,目標という概念にポジティブな印象を持つ分,できない人を目標によって無力化させることがある。できない人をゴールに到達させるには,プロセスの見える化が必要。目標が明確になれば動機づけられるという短絡的な理解がそれを阻む。
- できる人ができない組織を作る要因は,(1)単純な目標信仰,(2)低次元なことを低次元だと軽くみること(普遍的な低次元などなく相対的な問題で,何をどのくらい吸収するかはできない人の中にある),(3)できる人の頭の回転にあわせて指導すること(人間は受け取る準備ができた分だけ自分の中に取り込むことができる)。
- できる人とできない人の間の大きな溝は,自己信頼の度合い。これがコミュニケーションの違和感をもたらす。
- できる人は,失敗をHow(いかに~するか)でとらえ,できない人は失敗をBecause(~だから無理)でとらえる。
- できない要因は,技術や方法論の欠落とは限らない。基本的な心得はあったとしても答えは1つでなく,最後は当事者が自分で見いだすしかない。プッシュ型の指導ではできない人を引き上げることは不可能。
- リソースの棚卸し10のステップ:ハイポイント・インタビューの項目として使えそう
- (1)あなたが持っている技術・知識
- (2)それらの技術・知識を手にする仮定で得たもの(習慣,学習パターン)
- (3)それらの技術・知識を手にした結果として得たもの(地位,誇り,自信)
- (4)あなたが持っている成功体験
- (5)その成功体験の過程で得たもの(人脈,不屈の精神,偶然の機会)
- (6)その成功体験が今の自分に及ぼしている影響や与えた価値
- (7)あなたの中にあるやる気の種
- (8)やる気の種をまいて咲かせる未来の花のイメージ(新しい役割や仕事)
- (9)もう1つの未来の花のイメージ
- (10)あなたの次のステップを約束してくれる鍵
- できない人と接する際に,その人が今していること(Doing)以外に,今感じていること(Feeling)と人としてどうなのか(Being)に関心を持って接する。
- 影響力の6つのレベル:命令,指示(以上,強制介入),要求(判断の余地を与える),提案,意見(以上,助言して判断させる,委任。
- コーチ型マネジメントの基本
- (1)管理統制的な接し方と自立支援的な接し方の2つの対話力を身につける。
- (2)部下の状況に適応する接し方を特定する診断力を身につける。
- (3)部下と話し合い,合意して新たな関係で進む協働力を身につける。
- (4)部下の状況変化を見定め,診断と協働を繰り返す変化適応力を身につける。
- (5)時代に介入を減らし,自立を促す開花支援力(Enpowerment)を身につける。
2011/03/03
金井壽宏(2004)『組織変革のビジョン』光文社新書161
- 組織変革は組織を変えること,そのためにはそこに参加している大半の個人の発想や行動が変わることと定義する。組織が変わるは主語が違う,あなた自身が変わるかということ。
- それを確認するための問い:(1)組織にミッション・ビジョンがあるか,(2)それは組織・あなたにとって必要か不要か,(3)必要ならそれは何か,言葉にせよ,(4)それはわかりやすいか,思い浮かべると心躍るか,(5)普段から口にしているか,口にすると目指したくなるか,(6)ビジョンはビジュアルか(具体的な姿を語っているか),(7)組織の変革の姿を家族に語っているか,(8)そのために歩むべき自身の一歩を日々確認しているか。
- 10年目社会人は自分∈会社の図を書くが,大学生は大学∈自分という図を書く。
- 組織文化を理解する3レベルは,文物(像,額,写真,巻物),価値観,仮定(DNA)。DNAはどんなに組織が変わっても変わらない部分があった方がいいという考えと,DNAレベルの仮定が環境に合わなくなったことをいち早く見抜く2つの考えが重要。
- 個人と組織は心理的契約。アメリカでも組織と個人の関わり合いを定める雇用契約は本質的に心理的なものとして経営学では扱われる。
- いくつになっても無能レベルに達した(ピーターの法則)という認識を持ち,次のレベルへの挑戦が始めることが必要。厳しくて目をそらしたい現実から決別して挑戦することが,一皮むける経験につながる。
- 人から成り立つシステムを理解する最良の方法は,それを変えてみること(レヴィン)。変革の地図を手に入れるために変革がいる。アクション・リサーチの重要性を示す言葉。
- 適応は周りにあわせることで,過ぎると自己実現にはマイナス(マズロー)。適応と適応力の違いを知ることが重要(現在の仕事の合理化が適応,全く違う事業でやっていくことが適応力)。
- 「仕事上,例外的によかった体験」「例外的に悪かった体験」を聞いた研究(ハーズバーグ)。前者は,達成,達成の承認,仕事そのもののあり方,大きく任された責任があがる。後者は,監督のあり方,上司同僚との人間関係,福利厚生,作業条件など仕事を取り囲む要因。
- 組織をよくする特効薬はない。もしあったら,よい組織ばかりになる。変革のドラマは決定論的モデルに規定されるルーチンではないが,プロセスモデル(綱好きの石8つなど)にはある程度意味がある。
- 変革はきちんと終えることから始まる。トランジションには終焉,中立,開始の3ステップがある(ブリッジズ)。目指す先が何かを示すだけで,何が終わるかを強調しないと,未練がいつまでも残る。
- 変革への抵抗は起こって当然。変革の結果,大きな影響を被る人を個人・グループで変革が始まる前に参加させることが重要。
- 無力感は学習されるもの(犬の電気ショック実験)。やる気のあるミドルが大きな変革を志すほど,変革の大きさに比例した反対に遭い,無力感を獲得してしまう。
- Learning Anxiety<Survival Anxietyの重要性。LAを下げる知恵を経営者は働かせるべき。新しい世界に入るときに,ちょっとおもしろそうという気持ちをもたせた方が,緊張感や危機感をあおるだけよりもスムーズ。
- マネジメントとリーダーシップは違う。マネジメントの世界は,誰が上司部下で何をやるかが決まっているが,リーダーシップは何をなすべきかを仲間と一緒に自分も考え,誰を巻き込むかも自分で決めることにある。
- 経営学では見落とされがちだが,エモーションへの対応はきわめて重要。ポリティカルな行動が必要であることを知っておくべき。
- 変えようと思えばビジョンがいる。変革には危機感だけでなく,ビジョンや地図が必要。人々を鼓舞するビジョンを作った人たちは権威たちの指南ではなく,個人的で自分自身の欲求,期待,希望,夢を表現したビジョン。
- ビジョンを変えていきたい姿としてビジュアルに描くには,言葉で表現しなければならない。人を巻き込むためには言語化能力がないと優れたビジョンに人はついてこない。業務的スローガンでなはく,腑に落ちる(sense making)ビジョンなら受け止め方は変わる。
- 計画のグレシャムの法則:目の前の対応や処理が節目で描く大きな絵の計画作りを駆逐すること。それでも大きな計画を持っていれば,忙しくても大丈夫になる。
- ビジョンは組織の節目で編み直されても,ミッション(アイデンティティ)が揺れては困る。
2011/03/02
高間邦男(2008)『組織を変える「仕掛け」』光文社新書368
- メンタルモデルとは,人が日々判断し行動する際に用いる価値観,世界観,固定概念,枠組みのことを指す。組織やリーダーシップの文献は多数出ているが,従来の枠組みと新しい枠組みが混在し,2つのメンタルモデルが混在して互いに理解し合えない事態になっている。
- 経営トップになりたい人が減っているのは,若い人のやる気が下がったのではなく,若い人の価値観が出世から離れてきていることを示しているだけ。そうしたメンタルモデルでは,トップダウン的リーダーシップやマネジメントは通用しない。
- 変革は辺境から起きる。トヨタの三現主義(現場・現物・現実)スタイルをトップは認めるべき。
- 新しいマネジメントスタイルの前提は,3つの変化(変化のスピードの加速,複雑性の増大,多様性の高まり)。ここでの生産モデルは,参加型(コミュニティ,コラボレーション,自己組織化)が生産的。なのに,マネジメント手法は50年前と同じ(目標のブレイクダウン,進捗管理,評価,処遇・配置・給与)。
- PDCAはマネジャーが回すのではなく,メンバー個人が主体的に回してこそ意味がある。
- 組織を生命体ととらえるなら,人件費は費用に含まない。売り上げー費用=利益+人件費。
- 2-6-2は多様な尺度で考えればよい。業績という単一尺度でみることだけが強調されてきた。多様な強みが生命体としての力を高めて存在を安定化させる。
- ボトムアップがうまくいくには,トップに相当の柔軟性とリスクをとる覚悟が必要。メンバーのエネルギーは8割が組織内に,2割が顧客に向かう。リスクを減らし証拠や最適解を要求するトップでは,ボトムアップは多組織でうまくいったことしか提案されない組織文化を形成する。
- 従来の問題解決手法は,ギャップアプローチ(理想ー現状=課題)。それをうまく行う方法は,フレームワークの活用(4P,3C,SWOT,ABC)。ただし,誤ったフレームを使うと間違った答えをいくらでも出せる。機械の問題はこれで解決できるが,組織の問題にはシステムアプローチがよい。
- システムシンキングは,世の中すべて拡張プロセス(+→+)と平衡プロセス(+→ー)の組み合わせととらえる。
- システムには,家族,組織,他組織,顧客,行政,地域など考える人の認知によって広がる。ゆえに,教養が必要。教養とは,自分が生活者として関わるコアのシステム以外に,どれだけ幅広く自分に関係する周辺のシステムを理解しているかということ。
- 相手といい関係を築くには言いたいことを言い合い,お互いを正確に理解するという考えは幻想。肯定的幻想が好循環を生み出す。幻想が確信を与え,確信が安心感につながる。See HBR 2008.8, Gotman。リーダーシップの役割は,強みの連携をつくり,弱みを無関係にすること。
- ポジティブ・アプローチで組織を変える原則:(1)信頼感のある対話の場をつくる,(2)メンバーの察知力を高める(皿を洗って返すか?),(3)個人を尊敬し,強みを認める(問題解決の責任は問題に気づいた人にある),(4)主体性を引き出す,(5)自他非分離の場をつくる(リストーリー),(6)暗在的リーダーシップでサポートする(リーダーシップは個人能力ではなく組織能力,CCL ASTD Conf. 2003)。
- ハイポイント・インタビューを使った研修ができるとおもしろい。
- 効果がない研修の問題の4割は受講者のレディネス,2割は研修自体の悪さ,4割は研修内容を職場で実践する際の環境の障害(Brinkahof, ASTD Conf. 2007)。
- グーグルは20%,住友3Mは16%,今の業務ではない新しいものを生み出すための時間に使うことの義務づけ。
- 大きなアクションプランはつくらない。小さなアクションプランだけをつくる。そのときに,何を,誰が,いつまでに,どのレベルまで実行するかを明確にする(特に誰が)。
- 「コミュニケーションによる情報共有」というアクションの指標は,週1回の情報交換会の開催ではなく,全員が他のグループのプロジェクトの内容と進捗状況を知っているなど,状態指標。
2011/03/01
中田亨(2011)『事務ミスをナメるな!』光文社新書499
- 人間は能力の副作用でミスをする:(1)人間は情報に乱れや誤りがあっても即座に取り除けるため,細かい異常(誤字等)が発見できなくなる,(2)不十分な情報だけで短時間で決断できる(群馬の県庁所在地はタカサキかタカザキか?),(3)繰り返しで上達した作業では,思い込みミスが生じる。企業のミス対策は,個人の能力ではなく職場の体制改革で対応する。
- ミスの解決は6つの面で考える:(1)しなくてすむ方法を考える(FAXからメールへ),(2)手順を改良する(FAXは2人で送る),(3)道具や装置を改良・取り替える(大画面つき最新型FAXを使う),(4)やり直しが効くようにする(1頁だけ送り相手に着信を確認後リダイヤルで送信),(5)致命傷にならない備えを講じる(文面が第三者に意味不明にする),(6)問題を逆手にとる(すべて書留速達郵便に変える)。
- ミス防止の主役は,作業確実実行力から異常検知力に移っている。
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