本書は、独自の統計調査に基づいて、現代の社会階層の実態の説明を試みる文献である。本書の特徴は、独自調査の数値を根拠に、若い世代の価値観や消費生活を批判的に論じる点である。巷で大変売れてるとのことで読んでみたが、政策的な内容ではなく娯楽書と捉えるべきであり、残念な点も多かった。
本書でいう下流とは、中の下を指す。物の所有から見ると絶対的に貧しいわけではないが、意欲がないために中流から落ちる人を下流という。
下流の人間に圧倒的に不足しているのが、コミュニケーション能力である。働く・学ぶ・消費する・生活する能力も低い特徴があるが、コミュニケーション能力が低いために、恋愛がむずかしく、一人でいることを好み、仕事も消費も意欲がないという、上流との分断が生じる。
下流は、自分らしさを求める傾向があるが、その選択によって非正規雇用となり、所得の上昇と結婚の機会を低下させ、生活満足度を落としている。自分らしさ志向が強い若者は、自分らしさにはこだわるものの、性格が内向的で、仲間が少なく、就職活動がうまくいかず、非活動的で一人でいることを好む傾向がある。
55年時点での恋愛結婚率は約35%、75年時点で65%まで上昇する。民主化が進まないと自由恋愛ができないため、階層が中流化する過程では、恋愛結婚は理想的な形態であった。しかし、近年にかけて上流化と下流化が進むことで、階層化が進むと逆に、結婚が進まなくなり結果として晩婚化している。
本書の論拠は独自調査のデータであるが、サンプル数等の問題があり、検討の余地がある。
2009/02/25
2009/02/22
Parker, J., Duffy, J, Wood, L., Bond, B. and Hogan, M. (2005) "Academic Achievement and Emotional Intelligence: Predicting the Successful Transition from High School to University," Journal of the First-Year Experience, vol.17, no.1
本稿は、初年次移行の成功要因を社会心理学的な調査に基づいて検討する研究である。移行の達成を初年次の学業成績(多くの研究ではGPAを用いる)80点以上、失敗を59点以下とすると、対人関係能力、適応力、ストレス管理の高い学生ほど成功する相関が見られる。こうした関係を調査した研究は既に多数あり、本稿もこの延長線上に位置づけられるものの、EQ-iショートスコアとGPAとの相関を見る点が新しい点である。
しかしながら、学業成績と学生の感情面の相関は弱いとする研究もあり、本稿の結論から含意を得るのは早計といえる。むしろ初年次のジャーナルがあることに感心した。
しかしながら、学業成績と学生の感情面の相関は弱いとする研究もあり、本稿の結論から含意を得るのは早計といえる。むしろ初年次のジャーナルがあることに感心した。
2009/02/17
日戸浩之(2006)「少子化時代の教育ビジネスと大学経営」知的資産創造 3月号
民間コンサルによる大学経営に関する論稿。
- 教育産業の特徴:費用負担者の市場の分断、外部性、情報の非対称性、労働集約産業
- 大学の事業多角化の道は2つ:(1)個客の拡大(学生→行政社会→社会人→企業)、(2)機能の拡大(教育→研究→産学連携、地域貢献付帯事業)
メモ
- BSCは、財務、顧客、組織内業務プロセス、学習と成長という背反しかねない4つの管理側面を多面的にバランスよく再編すること。
2009/02/15
Swing, R. (2004) "What's So Special about Assessment in the First Year of College?," Assessment Update, vol.16 no.2, pp.1-4.
初年次プログラムと初年次学生の形成的・総括的評価指標はどのようなものがあるのか。本稿は、こうした問題を考察している。
従来の評価は、初年次から2年次への残存率で行っていたが、現在は学習への関与度を明確な目標に到達する学習期間で測る傾向がある。大学初日の時点を変化分の基準点にするという点は、従来と変わらない。
learning community, first-year seminar, experiential education, critical thinkingといったジャーゴンを避けよというメッセージは重要。まして評価項目のタームとしてはナンセンス。結局、本稿の主張は評価のために具体的で明確な評価項目を立てよということであり、その開発の上で配慮すべき点を示したものである。
従来の評価は、初年次から2年次への残存率で行っていたが、現在は学習への関与度を明確な目標に到達する学習期間で測る傾向がある。大学初日の時点を変化分の基準点にするという点は、従来と変わらない。
learning community, first-year seminar, experiential education, critical thinkingといったジャーゴンを避けよというメッセージは重要。まして評価項目のタームとしてはナンセンス。結局、本稿の主張は評価のために具体的で明確な評価項目を立てよということであり、その開発の上で配慮すべき点を示したものである。
2009/02/14
Swing, R. (2004) "Tools and Techniques for Assessing the Frist College Year," Proving and Improving Voluume 2, The First-Year Experience Monograph Series no.37.
本稿は、初年次教育プログラムの評価方法をまとめた論考である。実際の評価業務に携わる者へ向け、概念と実践的方法論をコンパクトにまとめている。
まず、評価を行うにあたり、どの評価方法にも必ず限界があり、複数の評価方法を組み合わせる等、必ずその限界を認識しておく。次に、プログラムを評価するのか、個人を評価するのかを決める必要がある。前者は平均であるが、後者は固有の情報を持つ特徴がある。時間と費用を勘案して組織に適切な評価方法を決める必要がある。特に、個人の評価とプログラムの評価が逆方向に解釈される時は注意を要する(プログラム→個人の方向で)。
評価には4つの方法がある。(1)Criterion Referenced:要するに、Cut scoreとかMinimum scoreによる評価であり、成果の達成水準を客観的に把握できるものの、どの実践が成果に貢献したかを特定するには非常に限定的な情報しかもたらさない。(2)Value-Added Assessment:要するにAstinのIEOモデルである。Outcome-only、Environment-only、Input-Output、Environment-Outputで評価を行う。(3)Benchmarking:ある成果が、通常期待されるような水準なのだろうか、を確かめるために、他の機関の成果と比較することを指す。基本的にIEOモデルの応用。(4)Prediction Assessment:この方法は、GPAの低迷、退学など目標の達成に向けて達成見込みの低い個人を特定する活動を指す。これもIEOモデルの応用である。
評価でよく聞かれる定性的・定量的という意味について確認しておく。この両者の違いはデータタイプの違いであり、前者が文字の資料、後者が数値の資料を指す。質の高い評価は、必ず複数の観点から複数のデータを用いて行われている。これらを集める方法としては、(1)Institutional Record:IR部門等で収集される大学の基礎データ、(2)Student Interview:収集時間がかかるが、データの質が高く、内容に応じて個別インタビュー、グループインタビューを使い分ける、(3)Student Writing:学生のレポート・小論文・ポートフォリオを集めることで、インタビューよりはデータ数が多く集められる。(4)Survey:マークシート等による授業評価アンケートがこの方法で、入学前調査、初年次成果調査、学生総合調査(行動態度・学習スキル・満足度)、プログラム別調査、特定階層調査、成績振り分け調査・試験、授業評価等がある。
まず、評価を行うにあたり、どの評価方法にも必ず限界があり、複数の評価方法を組み合わせる等、必ずその限界を認識しておく。次に、プログラムを評価するのか、個人を評価するのかを決める必要がある。前者は平均であるが、後者は固有の情報を持つ特徴がある。時間と費用を勘案して組織に適切な評価方法を決める必要がある。特に、個人の評価とプログラムの評価が逆方向に解釈される時は注意を要する(プログラム→個人の方向で)。
評価には4つの方法がある。(1)Criterion Referenced:要するに、Cut scoreとかMinimum scoreによる評価であり、成果の達成水準を客観的に把握できるものの、どの実践が成果に貢献したかを特定するには非常に限定的な情報しかもたらさない。(2)Value-Added Assessment:要するにAstinのIEOモデルである。Outcome-only、Environment-only、Input-Output、Environment-Outputで評価を行う。(3)Benchmarking:ある成果が、通常期待されるような水準なのだろうか、を確かめるために、他の機関の成果と比較することを指す。基本的にIEOモデルの応用。(4)Prediction Assessment:この方法は、GPAの低迷、退学など目標の達成に向けて達成見込みの低い個人を特定する活動を指す。これもIEOモデルの応用である。
評価でよく聞かれる定性的・定量的という意味について確認しておく。この両者の違いはデータタイプの違いであり、前者が文字の資料、後者が数値の資料を指す。質の高い評価は、必ず複数の観点から複数のデータを用いて行われている。これらを集める方法としては、(1)Institutional Record:IR部門等で収集される大学の基礎データ、(2)Student Interview:収集時間がかかるが、データの質が高く、内容に応じて個別インタビュー、グループインタビューを使い分ける、(3)Student Writing:学生のレポート・小論文・ポートフォリオを集めることで、インタビューよりはデータ数が多く集められる。(4)Survey:マークシート等による授業評価アンケートがこの方法で、入学前調査、初年次成果調査、学生総合調査(行動態度・学習スキル・満足度)、プログラム別調査、特定階層調査、成績振り分け調査・試験、授業評価等がある。
2009/02/13
栗田佳代子(2006)「アメリカにおけるon-line型授業評価」『大学の諸活動に関する測定指標の調査研究報告書』pp.17-28.
本稿は、米国で先行して取組んでいるウェブによる授業評価アンケートについて言及した論稿である。
米国で、オンライン回収を実施している大学の特徴としては、規模が小さい、宗教的ポリシー等特色のはっきりした大学である、コンピュータ関連の研究領域に強いという特徴があり、大学規模が小さいために学生および教員への周知が容易である、学生および教員が比較的等質であるために大きな変化への適応が容易である、コンピュータを使う環境に抵抗がない、という導入上の長所があるという。
日本でも近い将来、必ず取組まれると思うが、米国の経験に基づけば、回収率を高める工夫が必要であるという。米国では、学生が授業評価の意義をよく理解しているため回収率が高い(個人的にはそうは思わないが)。また、日本の学生は一学期に履修する授業数が多く、回答の負担を軽減しなければ回収に影響が出る。米項では、回答者に抽選で賞品を出すような動機付けまでしているようである。費用面では、10年単位で見れば確実に安いので、中期計画を立てて導入すべきである。カーネギーメロンでは、紙からオンラインへの移行に3年かけたという。
米国で、オンライン回収を実施している大学の特徴としては、規模が小さい、宗教的ポリシー等特色のはっきりした大学である、コンピュータ関連の研究領域に強いという特徴があり、大学規模が小さいために学生および教員への周知が容易である、学生および教員が比較的等質であるために大きな変化への適応が容易である、コンピュータを使う環境に抵抗がない、という導入上の長所があるという。
日本でも近い将来、必ず取組まれると思うが、米国の経験に基づけば、回収率を高める工夫が必要であるという。米国では、学生が授業評価の意義をよく理解しているため回収率が高い(個人的にはそうは思わないが)。また、日本の学生は一学期に履修する授業数が多く、回答の負担を軽減しなければ回収に影響が出る。米項では、回答者に抽選で賞品を出すような動機付けまでしているようである。費用面では、10年単位で見れば確実に安いので、中期計画を立てて導入すべきである。カーネギーメロンでは、紙からオンラインへの移行に3年かけたという。
2009/02/09
Scott, B. (2000) "Alverno College Ability-based Learning Program," in Mentkowski, M. eds. Learning that Lasts, Appendix A, Jossey-Bass, pp.415-423.
本稿は、Alverno Collegeので開発されたカリキュラムを紹介したものである。同校が指すAbilityとは、(1)Communication、(2)Analysis、(3)Problem Solving、(4)Valuing in Decision-Making、(5)Social Interaction、(6)Global Perspectives、(7)Effective Citizenship、(8)Aesthetic Responsiveness、の8つを指す。
Alverno Collegeでは、この8つのコア能力について、1~6の発達レベルを設定しており、それぞれ科目目標レベルの内容である。これらがどのように設定されたかはわからないが、Bloom's Taxonomyと似たようなものなので、理解できないものではない。問題はこれらを具体的な開講科目の中でどのように獲得させているかであり、その開発プロセスこそが報告されるべきであろう。
Alverno Collegeでは、この8つのコア能力について、1~6の発達レベルを設定しており、それぞれ科目目標レベルの内容である。これらがどのように設定されたかはわからないが、Bloom's Taxonomyと似たようなものなので、理解できないものではない。問題はこれらを具体的な開講科目の中でどのように獲得させているかであり、その開発プロセスこそが報告されるべきであろう。
2009/02/07
金子元久(2008)「転換する学士課程教育の質 学生のニーズや学習行動の把握を」アルカディア学報 No.348
適格認定制度(アクレディテーション)で保証する教育の質は、カリキュラム、施設、組織などについて大学が管理するなど、基本的にはインプットの管理にすぎない。
質の改善は大学がその組織をあげて取り組まねばならない課題であることが改めて認識される。そうした意味で、これからの大学経営の最も重要な課題は、学士課程の質的転換であるといえよう。
Smith, K., Sheppard, S., Johnson, D. and Johnson, R. (2005) "Pedagogies of Engagement Classroom-Based Practices," Journal of Engineering Education, pp.1-15.
本稿は、工学教育分野で学習者参加型の教育実践に関するサーベイ論文である。この中で、PBL実践に関する研究に触れた部分があり、PBLをはじめて全分野で行った大学はデンマークのAalborg大学であることが示されている。本稿におけるPBLの位置づけは、Pedagogies of Engagementの中に、Cooperative LearningとPBLがあるという前提で書かれている。 医学教育ではPBLが効果的な教授法であることを示した研究がある一方、工学教育ではそれほどの効果がないという研究がある。この点については、医学教育では7~10人の学生グループに専属のテュータがついて指導するが、工学教育では3~4人の学生グループで課題に取組み、専属のテュータがいないという環境要因が大きいと指摘されている。
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