2020/08/17

渡部淳(2020)『アクティブラーニングとは何か』岩波新書


  • 民主主義は、思想、制度、手続きと運用の3つの側面からなっている。
  • 総合的な学習のいちばんの特徴は、時間が設定されているものの、内容についての規定がなく、学校が自由に内容をデザインする点。いわば、空っぽの器。
    • ねらいの第1は、自ら課題を見つけ、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てること。
    • 第2は、学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにすること。
  • 学生は就職活動を経験して、表現力やコミュニケーション力を求められる社会の実際と授業のギャップを実感してアクティブラーニングの導入に賛成する。
  • 調べたことを発表したり自分の意見を発言することは、自分の表現力を高める行為であるだけでなく、周囲の生徒を豊かにすることにつながると考えられている(学びの互恵性)。
    • テストで得点でき、提出物を出せる人が授業で発言しないのは、他者への貢献を嫌う利己的な行為となる。そうでなければ、家庭内で抑圧を受け、そうした状態になっている可能性があると考える。
  • アクティブラーニングが成立するには、生徒が個別にその意義を理解しているだけでなく、教室の中に発表・表現することを励ます雰囲気が醸成されていく必要がある。
  • アクティブラーニングの多様な形態(山地 2014)
    • 活動範囲広・構造自由度高:知識の活用・創造をめざす(プロジェクト学習、創成学習、フィールドワーク、実習
    • 活動範囲広・構造自由度低:表現志向(プレゼン、レポート・ライティング、ディベート)
    • 活動範囲狭・構造自由度高:応用志向(問題基盤学習、シミュレーション、ケースメソッド、ゲーム)
    • 活動範囲狭・構造自由度低:知識の定着・確認をめざす(ミニテスト、クリッカー、演習、実験、調査
  • 教育方法の被規定性:教科書の要点を講義で解説する=知識の伝授を目標としている。
    • 目標・内容・方法・評価の4要件が関連している。
    • 内容と方法は表裏一体の関係にある。
  • なぜ教育ディベートがブームとなったのか。
    1. 90年代の教育現場にとってディベートが目新しく斬新な方法と映った。(おやつにはりんごとみかんのどっちがよいか、夫婦別姓は是か非か)。
    2. 新学力観がコミュニケーション能力を重視していたため、表現志向の活動に対する注目が学校現場で急速に広がっていた。
    3. バブル経済時で国際化の進展につれ、単なる英会話でなくディベート能力を備えた人材が必要という社会的関心と教育界のそれがパラレルな関係にあった。
  • アクティブラーニングのツールとしてのディベートの学校現場での意義:
    1. 討論の素材となる情報を集め、整序して提供するリサーチ能力の育成。
    2. 資料や情報をまとめ、そこから事実に即した有効な論理を組み立てる力(論理的思考力)の育成。肯定否定の両方の立場から複眼的にものを見る、資料批判をする批判的思考力の育成。
    3. 言葉による表現能力の育成。
    4. 演劇的表現力の育成(ロールプレイング)。
    • これらの能力をゲームの形で総合的に追求できる点がディベートのメリット。
    • 実践の頻度を高めようにも十分な時間が確保できない。ディベートをうまく活用するには、教師・生徒がまずゲームのルールに慣れることが先決。フォーマットをなぞるだけで精一杯で、論題を探究的に深めるまでに至らないのが実態。
    • 日本の討論文化がバリアになっている:意見と意見を発する人の人格を分けて考える発想を持ちにくい。人柄と事柄の区別が曖昧。話す内容が論理的かどうかではなく、誰がその意見を言ったかに意識がいく。