2020/02/25

森利枝(2015)「米国の高等教育におけるCompetency-Based Educationの展開に関する考察」『大学研究』41,29-40


  • CBE:ぱらつきのある学修者の能力に応じた「足し算」の教育ではなく、最終的に獲得すべき能力の定義に基づいた「逆算」の教育。
  • 1970:成人の高等教育機会の拡大を支える手法=Prior Learning Assessment。
  • PLA単位化の方法
    • 全国標準化テストの受験(AP、CLEP、DDST、Excelsior Collegeテスト)。
    • 個別大学が提供するテストを受験。
    • アメリカ教育協議会(American Councilon Education:ACE)が提供する企業・軍における教育訓練を単位化するプログラムを利用。
    • 主としてポートフォリオに基づいた個別の審査を受ける。
  • 2000年以降の再注目:
    • (1)説明責任の問題:学習時間よりも獲得した能力を重視(DQPとCBEは齟齬ない)。
    • (2)コスト削減:学費が高騰しすぎた=既に能力があるなら迅速に単位認定。
    • (3)学生の学修のモードの変化:オンライン学習が従来の単位計算になじまない。
どうやって評価するのかという肝心な部分が分からない。

2020/02/24

青木久美子(2017)「「新しい」大学教育 ─ コンピテンシーに基づく教育(CBE)の実践」『日本労働研究雑誌』687,37-45


  • コンピテンシーを適切に客観的に評価するためには,コンピテンシーの定義と,それを可視化したルーブリックが欠かせない。
    • 従来の教育=教える内容・教材の制作に重点
    • CBE=コンピテンシー評価のためのルーブリック・メト リクスの開発にリソースが割かれる
  • 大学のプログラム内でのコンピテ ンシーの習得の評価
    • (1)単位等価の科目ベース(course-based with credit equivalency)←大多数
    • (2)直接評価(direct assessment)←少数
  • 1単位に相当するコンピテンシーユニットを定義→12コンピテンシーで12単位=フルタイム。
    • コンピテンシーユニットは成績が出ない⇔奨学金換算にはGPAが必要→合否のみだが合ならBの成績にする
  • ソフトウェア開発など、大学カリキュラムに取り入れにくい変化の早いものが対象(=ブートキャンププログラム)。産業界からは人気ある。

2020/02/09

花田真吾(2016)「国際教育政策の借用メカニズムに関する一考察」『国際教育』22,10-34


  • 教育政策の借用理論(Educational Policy Borrowing)(Phillips & Oches 2003):借用する側の政策決定者が、明確な意思を持って他国から学び、それを自国のコンテキストに適応させることで、自国の教育をより良いものにしていくこと。
    • 類似理論:Policy Learning(Hall 1993)、Lesson Transfer(Rose 1991)
  • 教育政策の借用プロセスを、(1)動機づけ(Cross-Cultural Attraction)、(2)意思決定(Decision)、(3)政策実施(Implementation)、 (4)内在化(Internalisation / Indigenisation)の4つの段階に分類し、各段階における借用メカニズムを分析する。
    • 動機づけを探る:(1)自国の教育の現状に対して不満足がある、(2)教育制度が重大な欠陥を抱えている、(3)第3者機関からの外部評価が悪い、(4)経済環境の変化、(5)政変、(6)経済社会で求められる人材の資質(知識や能力)の変化。
    • 意思決定の分類:理論的意思決定(Theoretical Decision)、現実的意思決定(Realistic/Practical Decision)、緊急措置的意思決定(Quick fix)、まやかし的意思決定(Phoney)。
    • 政策実施:政策実施の手法とその進行過程、 実施に関係するアクターの役割について考察。
    • 内在化:(1)自国の教育制度への影響、(2)借用した政策が自国の教育制度へ適応するまでの観察、(3)3自国の教育政策との調和を踏まえて、借用の効果を考察。

2020/02/08

林隆之(2018)「内部質保証システムの概念と要素:先行研究のレビューと「教育の内部質保証に関するガイドライン」の定位」『大学評価・学位研究』19,3-22


  • 内部質保証における質
    1. 非凡さ(Exceptional):議論の余地なく他大学より特別、あるいは、高水準・卓越(Excellence):優秀な入学生・優れた教育環境・優秀な卒業生(プロセスは入らない)
    2. 完全性:プロセスにおける無欠陥
    3. 目的適合性
    4. 投資に見合う価値
    5. 変容(学生への付加価値)
    • 質保証機関は3つめを重視する傾向がある→内部質保証はPDCAサイクルを基本にする傾向がある。
    • 政府等は4つめを重視、5つめこそ重視すべきという主張もある。
    • 結局ステークホルダによって重視する質は異なる→異なる視点を広く考慮せよ。
  • 内部質保証における保証
    • 点検によって目的・水準が達成されていることを確保し、アカウンタビリティと改善に資すること→実際は3つの意味も含まれる。
      • 質向上を含む、質文化の形成を含む、質に関する価値・信念・責務を共有しているという文化的・心理的要素を含む。
  • なぜ外部質保証だけではダメなのか?(Kis 2005)
    • 改善に必要なニーズを把握し、実現手段についての知識が得られる。内的モチベーションを持てる。(外部=説明責任、内部=改善)。
  • 内部質保証が機能する条件
    • 教員自身がオーナーシップを有すること。
    • リーダーシップ、パートナーシップ、コミュニケーションがあること。
    • 教員の自己評価能力が高いこと。

2020/02/07

戸村理(2019)「大学組織研究のレビューと展望:関連諸学との対話から」『教育社会学研究』104,125-145


  • 大学組織の複雑性の源泉(Sporn 1996:42):目標の曖昧さ、教員本意の組織体、目標達成の基準設定の不確かさ、教員の自律性と自由への要求、環境に対する脆弱性。
    • → マネジメント(共同作業の統率)が確約されない。
    • → 教員の行動は部分最適となり、葛藤・阻害・抵抗を生む。
  • 大学の管理と運営:管理=設置者の管理権、運営=大学内部における管理(羽田 2005:32)。
    • 経営=運営に含まれる(?)。ガバナンス=定義が広範。
  • 大学組織で生じる問題を安易な葛藤にすべきでない。レベル(層)によって異なる原理や価値を信奉するもの同士の対話と考えるべき(広田 2013)。
    • 国家・政府、社会、市場 ⇔ 機関・基本組織・構成員
  • 大学組織の理念モデル:複雑性・多層性を考察できるクラーク、コーガン・ベッチャー。
    • クラーク:学科→政府・国家までの6レベル垂直構成
    • コーガン・ベッチャー:個人・基本組織・機関・中央権力の軸と、各層に準拠する運営・規範形態の軸の2軸
    • マクネイ:同僚制・官僚制から法人制・企業制への変容
  • 機関レベルの組織:政府による大学管理と、大学内部の管理
    • 前者は、歴史・理念考察と現行のガバナンス法制の考察の2つ
    • 後者は、法人と教学、理事会と教授会の権限の整理
  • 基本組織レベル:講座制の研究
  • 構成員レベル:大学教授職研究・大学職員論
  • 今後の展望:教育経営学と組織社会学(組織論)
    • 組織社会学:環境に対する組織への適応に注目
    • → 大学組織特有の組織慣性が何か、それを発生させる要因やメカニズムを探る研究が必要。

2020/02/06

Elliott, C. and Goh, S. (2013) "Does accreditation promote organizational learning? A multiple case study of Canadian university business schools" Journal of Management Development, 32(7), 737-755.


  • 社会的構築主義に基づく組織学習:学習は次のプロセスで進む。
    • 意味の共同生成→行動→新しい知識の生成→制度プロセスの改善→暗黙の仮定の更新。
  • 4大学から、7〜10人に面接、全31サンプル。認証評価時の関係者(学部長、副学部長、認証評価コーディネータ、プログラムディレクター等)、一般教員。
  • 「認証評価は継続的な改善を促進してますか?」の問いにポジティブに回答するか否かで判定(7割以上=4、4割以上=3、2〜3人=2、2+1以上の根拠文書=1)。
    • 分析視点は、(1)OLがみられるか、(2)持続性が不足しているか、(3)OLが内部で牽引されているか、(4)関与が不足しているか。
    • 機関A=4・1・0・1
    • 機関B=0・0・0・0
    • 機関C=2・4・0・0
    • 機関D=2・2・2・2
  • 認証評価はある程度学習を促進するが、シングルループ中心。

2020/02/05

Get Your Large Classes Fired Up and Ready to Discuss

https://www.facultyfocus.com/articles/effective-classroom-management/fired-up-and-ready-to-discuss/

Smith, W. and Lewis, M. (2011) "Toward A Theory of Paradox: A Dynamic Equilibrium Model of Organizing" Academy of Management Review, 36(2), 381-403.


  • 組織内葛藤の研究:コンティンジェンシーからパラドックスへ
  • 組織内葛藤の論点:学習・成果・所属・組織の4軸での葛藤がある
    • 学習:過去を壊すことと学習を重ねることの葛藤
    • 成果:組織の有効性を巡る多用・競合的な目標の同時追求の葛藤
    • 所属:個人の価値観・役割と集団の価値観・役割の葛藤
    • 組織化:組織内での共同と競争、指示と委譲、管理と柔軟性の葛藤
    • 学習・所属:適応への必要性と変化への要望への葛藤
    • 学習・組織化:明確化・安定化のためのルーチン化と柔軟性と迅速な成果のためのダイナミクスの付与の葛藤
    • 学習・成果:将来の能力形成と現在の成果の保証の間の葛藤
    • 所属・組織化:個人と集団、個人行動と集団行動の間の葛藤
    • 所属・成果:個人が追求したい目標と組織が職業として要求する目標の葛藤
    • 成果・組織化:目的と手段、メンバーと顧客、高いコミットメントと高い成果の間の葛藤
  • 動的均衡論:組織は常に逆方向に適応しながら維持される。
    • リーダーの役割は葛藤を維持し、継続的な改善を進めること。
  • 動的均衡モデル
    • 潜在的な葛藤→(環境変換・メンバーの葛藤認知)→顕在的な葛藤→(安定性を求める認知と行動、保守性と感情的不安、組織的な怠惰)→崩壊
    • 潜在的な葛藤→(環境変換・メンバーの葛藤認知)→顕在的な葛藤→(認知・行動の複雑さ、感情の平穏、組織のダイナミックケイパビリティ)→受容→パラドックスの解決→安定性(=長期成功の源泉となる短期のピークパフォーマンス)

2020/02/04

Kezar, A. and Holcombe, E. (2019) "Barriers to organizational learning in a multi-institutional initiative" Higher Education, online first


  • 大学における組織学習は困難。促進には、データ部門に信頼と透明性が必要。
  • 学外主体が組織内の学習を促進する可能性がある。学内者は適切な学外情報を持っていないことが多いため。
    • 例えば認証評価は学習促進の契機になる場合がある。
  • 学習の障害:心理的・認知的障害と組織要員の2つがある。
  • この研究では学外の優れた実践に触れながらも、それから学べない組織の特徴が示される。

2020/02/03

Crossan, M., Lane, H. and White, R. (1999) "An Organizational Learning Framework: From Intuition to Institution" Academy of Management Review, 24(3), 522-537


  • 4Iの3段階目、Integrating:共通理解を作る上で、対話と共同行為が重要。それが組織的に調整され、繰り返され、意味あるものになると、組織化へ進む。
  • 4Iの4段階目、Institutionalizing:タスクが定義され、行動が特定化され、特定の行動が行われるよう組織的な制度が導入された状態。
  • Interpriting:個人とグループレベルの架橋が必要。
  • Integrating:グループと組織レベルの架橋が必要。
  • Intuiting:主観的で個人の経験に根ざしている。
  • Interpriting:共通言語、共通イメージを磨き、共有された意味・理解を作る社会的な活動。個人の理解と行動に焦点化。
  • Integrating:一貫性のある集団の講堂に焦点化。ストーリーテリングが重要。ストーリーは実践における複雑さを包含している。教室で教えられる抽象化されたものと違う点。
  • Institutionalizing:制度、構造、戦略、ルーチンに落とし込むことで、メンバーが替わっても行動が維持される。これは不連続な変化なので、急進的で大変革と見なされてしまう。
  • Feed forwardとFeedbackは同時に起こる。当然緊張関係にある。
  • 最も難しいのは、Interpriting→IntegratingのFeed forwadと、Institutionalizing→IntuitingのFeedback。
    • 前者は、既に存在する共通理解を壊すという困難がある。そのためには、共同で何かを行動する経験が必要。認知では既存の共通理解を書き換えることは困難。共同の行動は経験が共有される。
    • 後者は、創造的破壊が必要という困難がある。

2020/02/02

Maguire, M. and Delahunt, B. (2017) "Doing a Thematic Analysis: A Practical, Step-by-Step Guide for Learning and Teaching Scholars" All Ireland Journal of Teaching and Learning in Higher Education, 8(3). 3351-33514


  • Thematic analysis:方法論というよりは方法である。
    • 他の方法論が特定の認識論や理論パラダイムに紐付いているのに比べて、柔軟な手法であるため。
  • ありがちなミス=インタビュークエスチョンを主題としてしまうこと。
    • これは単にデータを要約したり整理しただけ。分析ではない。
  • 主題には、意味的と潜在的の2段階がある。
    • 意味的=データに表れた意味
    • 潜在的=背後にある考え、前提、概念を特定したり検証する
  • 分析はトップダウン(特定のテーマに沿って分析)とボトムアップ(データからテーマを析出)の2つがある。
  • 分析は6段階
    • データに馴染む:ノートや第1印象を書き留める。
    • 初期コードの生成:データを小さい意味の塊にする。ある程度意味の塊を見つけてコード化する。
    • 主題を探す:コードを関連づけてより大きな主題にまとめる
    • 主題を検証する:6つの問いで見直す:(1)主題は意味があるか?、(2)主題はデータに根ざしているか、(3)主題に当てはめすぎていないか、(4)重複がある時、本当に分ける必要があるか、(5)副主題はないか、(6)他に主題はないか
    • 主題を定義する:各主題は何に関するものか、主題は何を言おうとしているものか、副主題がある場合、それらはどう主題と関連しているか、主題同士はどう関連しているかを明確にして、図にする。
    • 文章化する

2020/02/01

Bree, R. and Gallagher, G. (2016) "Using Microsoft Excel to code and thematically analyse qualitative data: a simple, cost-effective approach" All Ireland Journal of Teaching and Learning in Higher Education, 8(2). 2811-28114


  • 主題分析:データにある主題(パターン)を特定、分析、報告する手法。
  • コーディング:コメントを短冊に切り、主題に沿って並べ替え、適切な見出しをつけること。
    • オープンマインドが重要:常に新しい主題の付け方を歓迎して受け入れる。