2018/05/17

佐藤郁哉・山田真茂留(2004)『制度と文化』日本経済新聞社


  • オオウチのセオリーZ:日本企業が強いことを示したのではなく、米国にも日本企業と同様の特徴を持つ組織があることを示したことがポイント。→ エクセレンントカンパニーと同じ。
    • 行動の重視:戦略・市場分析ではなく、まずやってみる精神
    • 顧客密着:顧客との信頼関係とフィードバックで品質向上のアイディアを得る
    • 従業員の自主性と実験精神で健全な競争を尊重
    • 人を通した生産性向上:テクノロジーではなく信頼関係で結ばれた従業員の貢献を重視
    • 現場重視の価値観
    • 基軸から離れない:安易な多角化・M&Aを避ける
    • 単純組織・小さい本社:管理階層を薄くする
    • 中央集権と権力分散の共存:自主性と分権を強調、中核的な価値観に関してのみ中央で統制
  • このときの組織文化:組織を統合し、生産性や業績向上のツール(基本的な価値・信念について明確な認識を持つことでメンバーの行動を統合できる)
  • → 強い文化論へ(シンボリックマネジャー):4つの構成要素
    • 理念:基本的な価値観(スローガンでなく共有されたもの)
    • 英雄:メンバーの手本、行動意欲をかき立てるロールモデル
    • 儀礼と儀式:互いの呼び方、会議の運営方法(一体感を得られる経験)
    • 文化のネットワーク:非公式の情報チャネル(噂や物語を広める人)
  • 構造要因の説明に行き詰まったために生まれた文化研究(ソフトVSハード)
  • 企業文化論の基本的なストーリ:強い企業文化は、組織の一枚岩的結束につながり、それが良好な経営成果につながる

  • 社会学・文化人類学の文化:象徴システム(価値・観念・シンボルから構成される)、関係システム(人・集団の間の相互作用のあり方にかかわる)である。
  • 組織文化の定義:個々の組織における観念的・象徴的な意味のシステム(価値や信念のシステムに限定するとカバー範囲が狭すぎる、行動パターンや構造を含めると広すぎたり文化概念を用いる意味がなくなる)
  • 組織文化の要素
    • 儀礼:公式の行事
    • 遊び:非公式の行事(飲みなど)
    • 表象:ロゴ、ビジュアル
    • 共有価値:価値観(=望ましさについての観念 ⇔ 気持ちよさとは違う)
    • 無自覚的前提:望ましさが長期間蓄積して意識の下に伏在したもの
  • 構造と文化
    • 構造では、地位=役割が重要
    • 文化では、地位や役割にどのような象徴的な意味づけがされているかが重要(上司は仕事上の関係だけか、よりウェットな関係か)
    • つまり、構造には文化的な意味が含まれている場合がある
  • シャインの組織文化の機能
    • 外的適応:使命と戦略、目標、手段、測定、修正
    • 内的統合:共通言語と概念カテゴリー、集団境界と包摂・排除の規準、権力と地位、親密さ・友情・愛、賞罰、イデオロギーと宗教
    • 両者は相互に影響する(外的環境にうまく適応すると、共通の成功体験により内的に統合される)
    • → これは集合体に着目、個人を見ていない
  • アイデンティティ論
    • 個人は組織が大きく変わると深い喪失感を覚える ← メンバーは組織に象徴的な意味を見出しているから
    • アイデンティティ:複数の自己イメージを含みながら総体として1つである(自分が自分である)、そうした1つの主体が自分以外の何ものかに同一視している(自分が何ものかであること)
  • 統合・管理偏重の文化論は危険 → 文化を探求するには、統合(一貫性・共有性)、文化(回文か同士の対立・葛藤)、分裂(文化的諸現象の持つ曖昧さに焦点をあてる)の3つの視角が必要。
  • 結局いえること
    • 組織文化が効力を発揮するのは状況による
    • 組織文化は意図せざる結果を生むことがある
    • 組織文化は慣性を持ち、ときに組織の活動を阻害する
    • 過度に柔軟な文化は、組織や個人のよりどころになり得ない
    • 組織文化の中核には共有価値だけでなく、共有認知や共有経験が含まれる
    • 文化的源泉は組織体だけでなく、組織を包摂する次元(国民文化など)、組織を横断する次元(職業文化)、組織内の部分(部門文化)にも存する
    • 組織文化はときに曖昧さをはらむ
    • 管理者主導の文化的統制が、常に期待通りの効果をあげるとは限らない
    • 組織文化はその中身やあり方如何によって倫理的に問題のあるものとなる
  • 文化研究はどう進むか?
    • (1)統一文化仮説にこだわらない=統一性・独自性に注意を払わない → 組織シンボリズム論、新制度派組織理論(=マクロな制度・文化ルールに注目 → 同型性の強調へ)
    • (2)分化と独自性を一体に扱う(=組織アイデンティティ論に近い)← 組織場有する文化 < 組織の呈する独自性 という議論
  • 企業文化論のパラドクス:「ユニークであれ」という命令
  • 組織アイデンティティ:内集団と外集団を区別する成員性の認知(共有された価値や相互依存性はたいした意味を持たない ← 同じ文化が隣の組織でも共有されているならそれは独自性と言い切れない)
  • タイフェルの実験:人は価値共有や相互の魅力がなくても、成員性の認知さえみたされれば、集団が形成される(⇔ 成員性の認知がなければ、共有価値があっても集団が形成されない)
  • 基本命題
    • 成員性の認知は集団が存在する必要十分条件
    • 個人的、集合的な自己は、肯定的な価値づけをされる
    • 自他の区別について、低レベルと高レベル間で機能的な対立がある(集団間差異意識高 → 集団内個人間差異の知覚低)
    • 成員性の認知が顕著なとき、個人レベルの自己知覚は没人格化
    • 2集団の差異の認知が弱まらないと、集団間の協働行為は全体的な凝集性を生まない・相互の反感になる(近親憎悪が生じる)
  • (高品質を誇りに思っていなくても、福利厚生が手厚い理由で成員性の意識を高く持つ人もいる)
  • 組織アイデンティティ成立の1次要件
    • 独自性(組織の際立ち)、外集団の顕在性、組織内の同質性と組織間の異質性
  • 組織アイデンティティ成立の2次要件(不可欠でない要件)
    • 組織が個人の自己評価を高める度合い、組織の威信、組織の魅力、価値や活動の特異性、組織内競争の稀薄さ、組織と個人の接触度、組織の特性と個人の特性の親近性
  • 成員性をベースにした価値は大きな効力を発揮する・人は価値に対して可塑性に富んでいる(価値を調べて人は組織に入らない)→ 組織アイデンティティに機能がある
    • 共有価値の形成・維持・変革
    • 組織の魅力の増大
    • 成員の自己評価の向上
    • 動機づけ・参加意欲・忠誠心の増進
    • 安全性・連帯性・全体性に関わる感覚の形成
    • 成員の互換性感覚の形成
    • 含意・信頼・協力の強化
    • 全体的利害に則った行動の賞揚
    • 他組織との競争意識の増進
  • 部門アイデンティティの強さは、通常組織の活性化になる(部門が強すぎて組織全体のアイデンティティ形成が阻害されることはある)→ 長期的に組織全体を守りながらも、部門・個人アイデンティティを顕在化させることが求められる
  • 集団顕在性・高×集団間競争・有:最も集団へのアイデンティフィケーションと生産性が高い ⇔ 集団顕在性・高×集団間競争・無:最も低い
    • 特色ある学校作りをしよう → MEXT規制が相変わらずあり、特色を出して学校間で競争する余地なし → 独自性の強調は意味をなさないどころか害をなす
  • 新制度派組織論:組織を取り巻く社会的文脈に特徴的な文化的枠組みがメンバーのものの見方や世界観にどう影響を与えるかに注目する
    • 特に文化については、組織を取り巻く環境について、誰がどのようにしてシンボリックな意味を見出し、どのようなレンズでとらえて解釈を下すか、そのレンズ(解釈枠組み)はどのようなプロセスで形作られるか
  • 組織は戦略に従う:基本的な説明ロジックは効率性(より効率的で合理的な戦略とそれに沿った組織構造を採用した企業が成功する)= 最適解が客観的に存在する ⇔ 合理性や効率性は社会的な約束事、相対的なものさしにすぎない(=合理性の解釈が集団間で異なる可能性がある)
  • 新制度派組織理論でいう制度:ある集団や社会の中で自明視された文化的な規定
  • 企業コントロールの発展
    • 直接的:価格競争、カルテル、水平統合で他社を支配する ← オーナー・個人商店
    • 製造:垂直統合で生産を効率化・無用な競争回避 ← 職能別組織
    • 販売とマーケティング:新市場開拓・製品差別化で競争回避 ← 事業部制・コングロマリット
    • 財務:製品・サービスで直接関係ない組織同士を吸収合併 ← 事業部制・コングロマリット
  • 組織内の各職能集団は、組織全体が直面する問題にとって何が最適な解決策かについて、相互に異なる信念にもとづく答えを持っている。
    • → 組織内のパワーバランスの変化が、組織の戦略や構造変化を導く
  • 組織は戦略に従う → 組織は勝者の世界観に従う(フリグスタイン)
    • ある戦略や構造が効率的に見えるのは、それが主流を占め、その時代の効率性の社会的定義が変わったから
    • →このゲームには、競合他社に加え、政府や司法なども加わるため複雑
    • → ゲームのルールを巡る競争でもある=政治的要素を含むゲーム
  • 新制度派組織理論は、制度要因を強調しすぎる(制度が構造や行動を一方的に規定する) ⇔ 制度的枠組みそのものが形成・変容するプロセスに注目した意味でフリグスタインの貢献は大きい
  • シラバスの充実:MEXTのおぼえがよくなる ← 教育の質向上になるかどうかは別として、組織が生き残るには効率性とは異なる正当性が必要
  • なぜ官僚制が主流なのか:
    • 近代化で組織間の社会関係が緊密になった → 複雑な関係を効率的に運営できることが期待できる取り決め・仮定が社会的フィクションとして必要になった
    • 法規でトップダウン式に、特定の組織形態・慣行・手順に正当性が付与される
    • 自組織の規準を政府やメディアを通して正当化する
  • 制度的環境への対応は、技術的環境との間に矛盾をおこす(シラバスとは別に、初回の授業で本来のシラバスを配布する)
  • 制度的環境に含まれる矛盾を背景にした葛藤も起こす
  • 旧制度派組織理論:バートン・クラーク:一般教養大学の躍進の要因
    • 使命感に燃えたカリスマ的学長の献身、その理念を支持・強化し、学長退任後も組織モデルを維持した中核スタッフ、独自の教育理念・カリキュラムを誇りにする学生文化、愛校心を持ち続ける卒業生 → あり期待の大学でなく、独特の個性を備えたカルト集団になった
  • 新制度派理論の基本ストーリー:制度的な同化圧力 → 個人レベルの黙従的対応 → 組織レベルの黙従的対応 → 同じ制度的環境下にある組織間の類似性

  • 非営利組織・行政組織:技術的環境よりも制度的環境の圧力強い
    • 組織目標に様々なものが含まれ、目標間の優先順位が曖昧
    • 組織自体の管理運営や目標達成のための方法や技術も不明確
    • → 質の高いサービスよりも、形式的な書類がどれだけうまく書けるかが重要になる
  • 新制度派組織理論のキーワード:制度、組織フィールド、同型性
    • 制度:
      • 規制的ルール:法律、省令、資格認定規則
      • 認知的ルール:社会的なきまり・約束事 ← 人為的なのに当然の常識に思わせる → 制度化=自明性と正当性を獲得するプロセス、
      • 規範的ルール:組織/社員/社長はこうあるべきだ、教育はこうあるべきだ
    • 組織フィールド=業界:ある共通の生産活動に関わる組織・機関が全体として構成する影響関係の場
      • 構造化のプロセス:組織間の相互作用の増加→情報量の増加と情報密度の増大→中心・周辺構造の出現→フィールドとしての共通認識の形成
      • 同型化圧力の3タイプ:
        • 強制的:上位にある組織が下位にある組織に対する圧力で生じる(政府が定めた基準を満たすために右へならう)
        • 模倣的:勝ち組を他がまねる
        • 規範的:専門職従事者間のネットワーク
  • ただし、従属的な個人を仮定しすぎ
    • 組織や個人はいかにして文化や制度の枠組み自体を変えていくのか、そもそもその文化や制度の枠組みは誰が・いつ・どのように作ったのかを説明できない
  • 制度的圧力に対する戦略的対応(オリバー 1991)
    • 黙従:習慣(当然視された暗黙の規範に従う)、模倣(模範的な組織のまねをする)、遵守(規則に従い、規範を受け入れる)
    • 妥協:バランス(利害関係者からの多様な要求間でバランスをとる)、譲歩(制度的な要求の一部だけを受け入れる)、交渉(制度的圧力をかけてくる相手の利害関係者と交渉する)
    • 回避:隠蔽(不服従の事実を隠して見えないようにする)、バッファ(干渉してくる相手方との関係を緩やかなものにする)、逃避(目標、活動、ドメインを変えて相手方との縁を切る)
    • 拒否:無視(相手が押し付ける規範や価値を無視する)、挑戦(相手が押し付ける規則や要請に異議をとなえる)、攻撃(相手を攻撃する)
    • 操作:政治的吸収(影響力のある相手の関係者を丸め込んで味方にする)、影響(都合のよい価値や基準を自分で作ってしまう)、支配(相手を支配下に置く)

  • 燃え尽き症候群を生む強い文化:役割に一定の距離をおく人が出る ← 組織文化の要求に対して一定の役割距離を保とうとする試み
  • 組織も制度との間で役割距離をとろうとする(オリバーの戦略的対応)
  • これまでの理論は、社会化過剰の人間観・組織間があった → 組織→個人(メゾ→ミクロ)、制度→組織(マクロ→メゾ)だけでなく、逆方向のメカニズムを明らかにする必要がある
  • これまでのモデルの整理
    • 企業文化論:社会化過剰の人間観+社会化過少の組織観
    • 新制度は組織理論:社会化過剰の組織観+社会化過剰の人間観
    • チャンドラーの効率性モデル:社会化過少の組織観+社会化過少の人間観
    • 組織文化論:メゾレベルのプロセス解明
    • 組織アイデンティティ論:マクロ・メゾ・ミクロ関係の解明

  • 従来の社会学理論:文化は望ましい価値を人々が、追求すべき目標として設定することによって、人間の行動に対して影響を与える(=文化に染まることで望ましい価値を内面化し、自分が追及すべき目標として捉えるようになる)
  • → 貧困文化論で顕著な考え方(貧困層は特有の価値観を持つ)
  • ⇔ 行為戦略(特定の文化の中で身につけた生活上のスタイル)が違うだけで、同じ目標や価値を持っている
  • 社会化過剰の人間観=目的が先で手段が後に決まる → スウィドラーは逆に考えた:道具としての文化=手段が目的を規定する
  • 行為戦略は経営戦略のような意図的な行動プランではなく、行動プランを策定するときの前提、つまり幹部が企業生活で身につけた認知的枠組みと基本的な経営センスのこと
    • 行為戦略があると、自分が育った畑に特有の職業文化の影響で、他部門のコントロールに関する基本認識が現実的な選択と感じられなくなる(財務の人に教務がわからない)
  • 制度固有のロジック:それぞれの社会制度(家族、政治、国家、市場などの制度)に固有の基本的な構成原理
    • 市場制度=経済的利害と効率性の優先、家族制度=無償の愛や家系の持続性、国家制度=法律と官僚機構で行動を合理化する
  • 各制度固有のロジックには、相互に対立する要素が含まれている(個人の役割葛藤に近い)
  • → ロジックを使い分けることで行為戦略のレパートリーを持てるようになる(仕事を理由に家事をさぼる)
    • 文化が個人の制約条件でなく、利用できる道具箱になる
  • 「ツールキットとしての文化」「行為戦略」「制度固有のロジック」の3つは、文化と組織・個人の関係を考える視点を提供する
  • これまでのモデルの整理
    • 効率性モデル(過少型):組織や技術的環境に従う戦略に従う
    • 新制度派組織理論(過剰型):組織は制度と文化に従う戦略に従う
    • 複合戦略モデル(第3のモデル):組織は行為戦略に従う経営戦略に従う
  • 複合戦略と呼ぶ理由:制度的・文化的圧力が最終的に戦略に反映されるまでに2つのプロセスがあるから
    • 個人・集団レベルの行為戦略と経営戦略の間の複合性(制度的・文化的要請が個人や集団の行為戦略のフィルターを介して、戦略に選択的に取り込まれるプロセス)
    • 組織レベルでの複数の戦略案の間の複合性(個人・集団レベルで構想された戦略案が、組織内の政治プロセスを経て最終的な戦略へ絞り込まれるプロセス)