山口周(2013)『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』光文社新書
- 日本企業からイノベーションが生まれない理由は,個人の創造性ではなく,組織の創造性に問題があるから。個人の創造性は十分に高い。
- 属性の多様性にフォーカスせず,思考の多様性や意見の多様性を,建設的な認知的不協和にしなければならない。
- ヘールト・ホフステードの権力格差指標(Power Distance Index):フランス68,日本54,イタリア50,アメリカ40,カナダ39,西ドイツ35,イギリス35
- 日本のパニック映画は,お上が常に正しくパワーがあり困った時に助けてくれる存在。日本人は,権威とリーダーシップを一体のものとしてしまう性癖がある。しかし,リーダーシップは本来,責任意識によって生まれるもの。杏自分で判断できない人が,明日権力を手にしても動き出さない。
- トーマス・クーンは,イノベーションは若造か新参者によって行われると指摘するが,日本の組織はこれらの声を圧殺する。日本は組織的なイノベーションにそもそも向いていない。
- 改善のためにフォーカスすべきポイントは組織風土しかない。そしてこれは,組織構成員の言動を変えられるかにかかっている。下層の人間が上層の人間に意見を言い,上層の人間が耳を傾けられるようになればよい。
- 幼児が保護者に示す愛情とそこから切り離されまいとする感情(アタッチメント)がセキュアベースとなるからこそ,未知の世界を探索できる。人が創造性を発揮するリスクを冒すには,アメ・ムチではなく,挑戦が許される風土が必要。アメがほしいとかムチが怖いから挑戦するものではない。
- 組織のネットワーク密度が重要。内部と外部を含む(多くの場合アイディアは外部からもたらされる)。
- 同質的な人で構成された組織は,意思決定のクオリティが低下する。組織内のリーダーは,階層間・職種間・内外上下へ拡張することが重要。
- 仕組みづくりには意味がない。仕組みは,場づくり(アイディアコンテスト,無料ビュッフェ)と制度づくり(15%自由研究ルール)の2つの方向がある。仕組みは必要条件でも十分条件ではない。他の制度やリーダーシップと組み合わされなければ意味がない。例えば,遊びに対する規律(新商品生み出し率など)もバランスさせるなど。
- イノベーションは七転八倒:きっかけ,プロセス,計画管理,環境変化,経営トップ,政治のプロセスを経て発生する。
- 経営において,合理的な解はそもそも合理的な解になり得ない。戦略は,本質的に差別化とスピードを求めるため,パラドックスが発生する。
- 質の悪い意思決定の要因:(1)集団凝集性が高い(同調圧力で異議が出ない),(2)外部からの孤立(機密保持の場合),(3)リーダーシップの弊害(トップが居るとおもねる),(4)問題解決のストレス(問題が重大だと早く終わりたいと思う)
- イノベーションの普及スピードを決める要因:相対的優位性(これまでのものよりよい),両立可能性(既存の価値観や過去の経験とイノベーションが一致する),複雑性(イノベーションを理解しやすい),試行可能性(採用決定前に試せる),観察可能性(イノベーションのもたらす結果が他人の目に触れやすい)
- リーダーは,ルールで判断できない,論理で説明できない例外事項について意思決定するために存在する。
- 賢い意思決定を行う集団の特性:多様性,独立性(他人の意見に左右されない),分散生(自分なりに情報を取得する手段がある),集約性(意見を一つにまとめるメカニズムの存在)
- 人数は多くなるほど解答の精度は上がる。
- ルソー:市民全体の意思=一般意志,これに基づいた統治こそが理想。テクノロジーのある今なら可能な統治。
- リーダーシップは文脈に照らし合わせないと有効性が議論できない相対的な概念。リーダーの属性として独立する概念ではない。
- 6つのリーダーシップスタイル
- 指示命令:言った通りにやれ=即座の服従。いつまでに何をやるか細かく指示し進捗をチェック。
- ビジョン:なぜをわからせる=長期視点の提供。なぜその仕事が必要なのかを背景や関連情報も含めて理解させる
- 関係重視:まず人次に仕事=調和の形成。情緒的関係,人とのつながりを重視。
- 民主:メンバーの参画=情報の吸い上げ。メンバーから意見を吸い上げ,意思決定の際に周知を結集させる。
- 率先垂範:先頭に立つ=模範の提示。仕事の進め方を行動で示し,困難の際には自ら対応する。
- 育成:長期的な育成=能力の拡大。多少時間がかかっても部下の成長を優先し,相手に合わせた指導やフィードバックを行う。
- イノベーティブな組織:ビジョン>率先垂範,日本の平均:ビジョン<率先垂範
- リーダーシップの本質の一面は移動,行き先を示すこと。
- ビジョンは共感できることがポイント。共感を得るビジョンは,Where,Why,Howの3つの要素が重要。
- Where:抽象的すぎるので共感されない。個々ではないどこかがビジュアルで分かること。フォロワーの人生を作る人でもある。問題がある場合,そもそも価値がないか,突き詰めて考えていないかのどちらか。
- Why:Whereを合理化する説明。わざわざ今を捨てる理由を見せる。
- How:どのようにしてそれを実現するか。
- 組織風土とは,経験的に学習された行動・意思決定のパターンの集積。多様性が尊重される組織風土にするには,人と異なることにポジティブなフィードバックがあることが重要。
- イノベーションとは,もともと自らを新たにするという意味。