2025/02/27

林嶺那・深谷健・箕輪允智・ 中嶋茂雄・梶原静香(2020)「Q方法論 (Q methodology) の行政学への応用」『行政社会論集』32(3), 195-233

  • Q方法論:価値観を解明するアプローチ
    • 人々の主観的な考え(価値観・世界観・事象への意味づけ)から主要な視点を相対的に明らかにする
    • 視点を明らかにするためのアイテムセット(Qセット)を作成し、それを一定の分布に沿って並べるQ分類を参加者が実施する
    • Q分類を通して量的データを収集し、そのデータから因子分析で主要な視点を抽出
  • 参加者の主観的・一人称的視点の解明に用いる方法論(Watts & Stenner 2012)
    • 因子分析の改良から出発
  • 因子分析との違いを明確にするためにQの名称をつける
    • 基本3手順:Q分類でデータ収集、因子分析、定性データ加味
    • 変数による因子分析ではなく、人による因子分析
    • 変数因子分析=R方法論:相関係数に基づく
    • ↑ 個人を主体として定義できないと批判
      • R方法論=個人が母集団から相対的にどういう位置にあったか、個人を構成する諸特徴の共変関係に注目、共変関係から普遍的な因子を導出
      • Q方法論=個人の特徴そのものに関心を持つ、個人間の類似性・相違生の解明に焦点化、調査対象集団の特徴をうまく説明する類型を導出
  • 扱う問いの3タイプ
    • 代表に関する問い:特定の集団が当面する制度・文化的な状況において、ある問題やトピックがどのように理解されているのかを人々に問う
    • 理解に関する問い:個人が有する意味のない実に焦点化、状況を明確にした上で、あるトピックや問題に関する個人の理解のあり方を問う
    • 行為に関する問い:ある問題への応答のあり方を問う。いじめにどう対応すべきか、何が適切な行為と考えるかを問う
    • 実際は、3つを明確に区別できないのでは?
  • 調査設計
    • 単一参加者デザイン:一人を対象にQ分類の実施を、異なる指示のもとで何度も実施する
    • 多数参加デザイン:多くの人に同じ種類のQ分類を実施
  • Qセット:各個人によって順位づけられたアイテムの相対的な位置に関心がある
    • ⇔ R方法論=各個人の相対的位置に関心
    • Pセット・Pサンプル:Q分類を実施する調査参加者セット、200あるいは40〜60
    • アイテムは多くの場合、文章の形を取る、40〜80、表現が明快であること、否定的な表現を避ける
  • Q分類:アイテムを参加者が一定の分布に沿って並べ替える作業
    • 分布:最も同意する〜全く同意しない、1次元、0を含む±4、6、9、11、13段階分布
    • アイテム数で分布幅変える:40以下=-4〜+4。60以上=-6〜+6、尖りすぎずフラットすぎないこと
    • 馴染みのないテーマはどちらとも言えないが増えるので、0付近の幅を増やす
    • 重要、重要でない、どちらとも言えないの3つから始める
    • FlashQ、HtmlQ、Q-Assessor、Q-sorTouch
  • 因子分析
    • 結局普通に因子分析すればいいの?
    • より解釈が容易な構造を得るために回転を行う(=ある因子について0か1に近い因子負荷量が得られるような操作を施すこと)、因子相互の相関を認める斜交回転を行ったほうが単純な構造を得やすい
    • 各因子がどのような視点・世界観を表しているのかを推定する:単一の因子に対してのみ有意な因子負荷量を有するQ分類データの重みづけ平均を利用(二つ以上の因子に対して有意な因子負荷量を有するQ分類については交絡があると判断され、因子の推定には使われない
      • 1%水準で有意な因子負荷量を有するQ分類を使いたい:因子負荷量の絶対値が、1をQセットのアイテム数の平方根で割り、それに2.58を掛けた値を超えるかどうかで判断
      • 重みづけ:1) ある因子に有意な因子負荷量を有する各Q分類の結果に基づき、1から因子負荷量の2乗を引いた値で、因子負荷量を割る。2)そうして得られた値の中で最大のものの逆数をとる。3) 前2者の値を掛け合わせることで重みづけの指数を得る
    • 指数を使って因子が示す視点・世界観の推定を行う
      • アイテムを1から開始で得点化
      • 特典と重みづけ指数を掛ける
      • その値を標準化したZスコア作成
      • Zスコアの高い順にQ分類分布の右端からアイテムをおいて文流を完成(因子配置と呼ぶ)
  • 事後インタビュー
    • 文流を終えて、各アイテムをなぜそこにおいたのかを明らかにする
  • 結果の解釈
    • 各因子の中で高位・低位のアイテム、他の因子より高位・低位のアイテムについて、インタビューで得た情報(+情報を得た人物情報:性別・年齢・仕事等のコード)を追記、各アイテムの中で解釈上重要と思われるアイテムについてストーリー化する
  • 事例研究の2つの問い
    • 一般の公務員はどのような仕事観を持っているのか
    • 一般職公務員にとって理想の課長とは何を意味するのか
  • Qセット作成
    • 公務員の仕事に関する認識を解明するために有用と思われるアイテムを先行研究から100個収集 → 実務経験者助言を入れて包摂生・多様性・理解の容易さの3つを満たす47アイテム作成
      • 例:仕事に新しい工夫を施すこと、注意深く仕事を進めること、仕事上の人脈を構築すること
    • 20〜50代正規職員73名
  • Q分類実施
    • 2質問:「あなたが仕事を進める際のお考えについてお聞きします。」「あなたにとって理想的な課長像をイメージしてください。(実際に存在しない人物であっても構いません。)そのイメージされた理想的な課長像についてお聞きします。」+属性シート、ヒアリング協力可否
    • 実施手順:
      • 47アイテムのカードを問いに対して、重要性が高い・低い・どちらでもないの3山に分ける
      • 高い山から、最も重要性が高いカードを2枚選び、5の列に置く、同様に4〜1列が埋まるまでカードを置く、0列にカードを置かない
      • 低い山から、最も重要性が低いカードを2枚選び、-5の列に置く、同様に-4〜-1列が埋まるまでカードを置く
      • 残ったカードを0列に置く
      • 並べ終わった47枚のカードに書かれた番号を回答用紙に転記
      • 最短19分、最長62分、平気31分
    • データに因子分析
  • インタビュー同意者12名に45分のインタビュー実施
    • Q1:「~というカードからどういった状態や行動をイメージするか?」「その状態や行動はあなたにとってどれだけ重要か?それはなぜか?」 
    • Q2:「~から課長のどういった状態や行動をイメージするか?」「その状態や行動は課長にとってどれだけ重要か?それはなぜか?」
  • 結果
    • Q1:四つの仕事観の類型(調和型・堅実型・積極型・自律型)を提示
    • Q2:二つの理想の課長像の類型(バランス型・モチベーター型)を提示
    • インタビューで具体例提示
      • 調和型=他者との協力、職場の一体感、相手の立場に立つことなどを特に重視する仕事観(異動で大きく異なる仕事をするため、相互支援・サポートが重要)