2017/03/22

西谷勢至子(2008)「組織学習に関する学説研究」『三田商学研究』50(6),325-346


  • 組織学習論の理論的停滞:アージリス学派とマーチ学派対立
  • アージリス学派
    • 問い:組織はなぜ不完全で,歪曲したフィードバックによって硬直化してしまうのか。
    • 学習:組織の意図と現実を適合させること。しかし,ダブルループ学習はめったに実現されない。
      • 人はモデル1の行為を取るため((1)失敗の責任から逃れるために問題を隠蔽,(2)自分への非難を避けるために,部下の批判を避ける = コミュニケーションが機能しない)。
      • その経験により,組織メンバーは熟練した無能力によってフィードバックが機能しなくなる。
      • 問題解決にはモデル2の行為が必要 ← 研究者がコンサルタントして組織に介入する必要がある。
  • マーチ学派
    • 問い:経験的な知恵を生み出す同じプロセスが,なぜしばしば迷信的学習,能力の罠,間違った推論をもたらすのか。
    • 学習:ある行動の結果が組織の目標を達成したかどうかを解釈し,その知識に基づいてルーティンを変化させるという学習によって,継続的に環境に適応すること。
      • ルーティン変化は難しい
      • 代替ルーティンよりも現行ルーティンの方が成功しやすいために,代替を排除する傾向がある(能力の罠)。
      • 経験の解釈をフレームを通じて行うため,過去の行為と結果の関係を謝って特定したフレームに基づいて解釈をすると謝ったルーティン変化をしてしまう(迷信的学習)。
    • 学習が常に組織の有効性を高めるものではない点が重要。
  • 両者の問題
    • A:DL学習を実現できる組織にする方法に注目。DL学習は,組織が支配変数を意図的に変えたかどうかという基準。
    • M:環境に適応した組織が学習したかどうかはわからない。学習の評価基準は,組織の個別目標でなく,環境の適応を可能としたか否か。
    • しかし,認知と行動のいずれかの次元を重要な変化として強調することによって,必要以上に組織学習の見方を狭めている。→ 双方重視することで統合できないか。

2017/03/21

朴澤泰男(2001)「現代日本における大学設置認可行政の構造分析のための基礎的考察」『東京大学大学院教育学研究科教育行政学研究室紀要』20,107-115


  • 許認可制度は,裁量現象としての組織活動とセットでよりよく理解できる。
  • 行政活動のルールには2タイプある
    • 統制ルール:行政活動を外部から拘束し,違反することが許されないルール(外部者による官僚制統制)
    • 行動ルール:官僚制の構成員になすべき行動内容を指示し,行政活動を円滑に実施するためのルール(内部者による活動円滑化)
    • 部下から見ればどちらも統制ルール,ルールにできない部分は,個人的な行動ルールでの行政活動が期待される → 行政裁量分析では区別の必要なし。
  • 政策:政府が行う将来の活動の体系についての案。→ 目的と手段を含む(多重な目的-手段関係からある一対を取り出したもの)。現実の政府の活動そのものでない。
    • 異なる目的を頂点とする目的-手段連鎖の体系がある。
    • ex. 大学教育の水準維持と高等教育の量的規模抑制は独立の頂点目標
  • 行政裁量分析:単一の政策や行政活動に着目,垂直的な分業と統治の問題を扱う(=ミクロ)⇔ 複数の政策や行政活動の間での分業・統合問題を扱う調整や計画の分析はメゾ・マクロ分析。
    • 行政裁量は,プリンシパル・エージェント・クライアントの三者関係で分析する。
    • 裁量現象を生じさせる基盤は,三者間のルールと情報の共有形態にある。
  • 窓口行政
    • 行政官(エージェント)は審議会(プリンシパル)とは異なるルールを用いているが,それが審議会に受容される行動であれば,そこに行政官の裁量領域が存在する。
  • 実際の分析は行われない。

2017/03/20

河井亨(2014)「大学生の成長理論の検討」『京都大学高等教育研究』20,49-61


  • 60年代の4つの学生成長研究
    • Sanford(1966):成長を人と環境の相互作用として捉え,成長の条件にレディネス・チャレンジ・サポートの3つがあると指摘。成長のためには,環境との関係でのチャレンジとサポートのバランスが重要。
    • Heath, D.(1968):成熟の4つの領域=知性・価値観・自己概念・対人関係。5つの成長局面=経験を象徴的に表現できる,他者志向になる,統合的になる,安定的になる,自律的になる。
    • Heath, R. (1964):自我機能と個人的スタイルの2つの軸。
    • Feldman & Newbomb(1969):カレッジインパクト研究をレビュー,調査とデータに基づく学生の実態把握の必要性指摘。
  • 学生の成長理論
    • 一般理論
      • Erikson,アイデンティティ形成理論
      • Kohlberg,道徳発達理論
    • 大学・大学教育・学生対象理論
      • Chickering,7ベクトル理論
      • Perry,認知的・認識論的成長の理論
  • Erikson:8つの段階からなる発達の漸進論的図式
    • 基本的信頼/不信,自律/恥・疑惑,自発性/罪悪感,勤勉/劣等感,アイデンティティ/役割混乱,親密性/孤独,世代継承性/停滞,自我統合/絶望
    • 前者が優位になるように葛藤を解決することが発達
  • Chikering:ベクトル=方向と大きさを持ち,方向は単なる直線よりもステップやスパイラルによってより適切に表現される。
    • コンピテンスの発達:知的・身体的・対人関係的に課題に取り組んで目標を達成し,自信を獲得していくこと。
    • 感情管理:自分の感情を自覚して受容してコントロールし,行動と統合していくこと。
    • 自律を通して相互依存に向かうこと:自己主導性において依存から自律へ向かい,相互依存の重要性を認識・受容したうえで,互助的な自立に至ること。
    • 成熟した対人関係の発達:差異を受容・理解し,持続的な親密性のある関係を築くこと。
    • アイデンティティの確立:身体・外見・ジェンダーの安定した感覚と社会・文化・歴史的ルーツの認識,役割とライフスタイルを踏まえた自己概念,重要な他者からの承認といったことを通じて,自己受容と自尊心を持ち、,パーソナルな安定性と統合に至ること。
    • 目的の発達:意義ある活動と対人コミットメントを持って明確な職業上の目標を抱くこと。
    • 統合の発達:多様性と個性化を両立した成熟した価値観をもって,その価値観と社会的責任に応える行動とを調和的に実現すること。
    • これらは,直線的なものでなく,1 人ひとりに個性化された形で実現する。
  • Evans 1996:4つの構造:二元論,多元性,相対主義,相対主義の中でのコミット

2017/03/17

大学改革支援・学位授与機構(2017)「質保証、 だれが何をどうするか」平成28年度大学質保証フォーラム報告書

Hawkins (UCLA)
  • Traditionally, the word quality was associated with ideas of excellence or outstanding performance., but the most commonly now accepted is “fitness for purpose”. This allows institutions to define their purpose in their mission and objectives, so “quality” is demonstrated by achieving these. This definition allows variability in institutions, rather than forcing them to be clones of one another. (Quality and Internationalisations in Higher Education, D. Woodhouse (OECD, 1999)).
  • 「質は見ればわかる」
  • 評価文化が広がった背景
    • 国際競争・ランキング
    • 学習成果に注目が集まった
    • → 説明責任の高まりで評価が複雑に。
    • → 学生が学んだことを示せない・示さない(2000年代)
  • なぜ学習成果の測定が困難か
    • 学習成果の測定自体に懐疑的(測定の手段・方法の理解不足)
    • 教員の抵抗
    • 教職員の訓練不足(少人数で過大な業務)
  • ヤング学長
    • データを全て出せ ← 教員は選りすぐりの人,そんなことはしない。
    • 一般的な事項は自己評価している,そこに含まれない重要な事項について悪レディテーションしてはどうか。
    • → テーマ別アプローチ,4年かけて3つのテーマに取り組む,
      • 大規模大でのキャップストーン実施
      • 学祭委的な教育・研究
      • 学習経験強化のための教育テクノロジー利用
http://www.niad.ac.jp/n_kokusai/event/no17_NIAD1612-REPORT03-WEB3.pdf

2017/03/07

Nicholas Hillman (2016) "Why Performance-Based College Funding Doesn’t Work," College Completion Series: Part Four


  • Performance-based funding:仕事が単純・定型,目標が明確,メンバーが生産に直接関与する状況でのみ機能する。
  • 高等教育機関では効果がないことを確認した先行研究が多数ある。
    • → 財政的インセンティブがなくとも,高等教育機関は十分なアウトプットが出せる。
  • PFが機能するための前提条件
    • インセンティブがパフォーマンスの低い機関の改善につながること
    • 結果を得るための明確な方策があること
    • 効果が継続的にあること
  • 非伝統的学生を支援するための機関支援に重点を置くべき。
https://tcf.org/content/report/why-performance-based-college-funding-doesnt-work/

    TABLE 1. SUMMARY OF QUANTITATIVE RESEARCH ON EFFECTS OF PERFORMANCE-BASED FUNDING
    Authors*
    Outcome
    Years studied
    Effects on outcome
     1
     Shin & Mitlon (2004)
    Graduation rates
    1997-01
    Null
    2
     Volkwein & Tandberg (2008)
     Accountability score
    2000-06
    Null
    3
    Shin (2010)
    Graduation rates & research funds
    1997-07
     Null
    4
     Sanford & Hunter (2011)
     Graduation & retention rates
    1995-09
     Null
    5
    Rabovsky (2012)
     Revenues & expenditures
     1998-09
     Mix, mostly null
    6
    Radford & Rabovsky (2014)
    Graduation rates & degrees
    1993-10
    Null, sometimes negative
    7
    Hillman, Tandberg, & Gross (2014)
    Bachelor’s degrees
    1990-10
    Null
    8
    Tandberg & Hillman (2014)
    Bachelor’s degrees
    1990-10
     Null, some + over time
    9
    Tandberg, Hillman & Barakat (2015)
    Associate’s degrees
    1990-10
     Mix, mostly negative
    10
    Hillman, Tandberg, & Fryar (2015)
    Associate’s degrees & certificates
    2002-12
    More short-term certificates
    11
    Umbricht, Fernandez & Ortagus (2015)
    Degrees, diversity, & admissions
    2003-12
     Null, more selective, less diverse
    12
    Kelchen & Stedrak (2016)
    Revenues, expenditures, & financial aid
    2003-12
     More merit aid, less Pell aid

    2017/03/03

    「大学評価のいま」『IDE現代の高等教育』No.583,2016.8-9

    濱中義隆「日本における大学評価の展開」

    • 認証評価=行政が評価機関に委託の構造
      • → 評価の主体が第三者組織か行政当局かが曖昧
      • → 事前規制から事後チェックの中で,国際標準に準拠した大学評価制度を確立することが政府主導で急がれた結果。
    • 国立大法人評価=本来はアカウンタビリティ
      • しかし,法人化が独法制度のスキームを援用して実行されたために複雑になった。
      • アカウンタビリティ評価=達成度評価=法人間比較不能→資源配分のために何らかの基準が必要→想定される関係者の期待する水準という主観性の強い基準を用いて判定。この構造的複雑さは未だ解消されていない。
    早田幸政「認証評価の現状・課題と内部質保証」

    • 2014の高大接続答申:内部質保証を認証評価の重点項目として位置づける。
      • 内部質保証の意義:(1)3Pに沿った効果の検証を大学・学部・学科単位で行う,(2)検証を学生の成長の測定・評価中心に行う,(3)全学レベルの質保証は,ミッションベースの観点で,機関としての活動の有効性が点検・評価されること。
      • → このことは評価報告書をストーリー性に満ちたものにする?(インプット評価からアウトプット評価へ)
    浅野考平「認証評価制度に求められるもの」

    • 内部質保証は,教育そのものへの統制を避ける方法。
    • 2005年,「共通の観点」が設けられる。
      • 自律的に設定した目標だから達成して当然の克服。
    • 第2期:個性化を図る=全ての活動を記載する必要なし(100項目以下)。
    林隆之「英国における研究評価・教育評価の新たな動き」

    • TEF:大学単位で評価,期待を満たす,優秀,卓越の3段階判定
      • 観点:教育の質,学習環境,学生のアウトカム・学習の効果の3つ。
      • (1)全国学生調査に基づく学生満足度,(2)高等教育の在籍非継続率,(3)卒後6ヶ月後の雇用・進学状況の3つが主要指標+機関が提出する15pいないの申請書で評価
    西郡大「確実な計画達成と評価を支援するためのIR」

    • メンバーを兼務にする=実質的な横串機能を発揮する仕組み
    • KPI:
      • 取組の成果を事後的に評価する尺度(Outcome)=中期目標KPI
      • 成果達成に向けた行動計画・行動目標の実績を評価する尺度(Performance Driver)=中期計画KPI
    • Quality Indicator:
      • Structure(施設,設備,スタッフの種類や数に関するデータ)
      • Process(実施した診療・看護内容に関するデータ)
      • Outcome(サービスを提供した結果に関するデータ)

    2017/03/02

    「大学経営の課題」『IDE現代の高等教育』No.587,2017.1

    久保千春「九州大学における経営の課題」

    • 経営=事業目的を達成するために継続的・計画的に意思決定を行い,事業を管理遂行すること。
      • ビジネスにおける経営=マネジメント:ヒトモノカネの最適配分,顧客満足・適正利潤,組織存続・発展
    • 運営=組織や機構の今ある資源の機能を働かせ,うまく機能するよう組織をまとめて動かすこと。
      • 今日の大学は運営から経営へ。
    武田廣「大学経営の課題」

    • 神戸大:6年間で教員人件費5%を拠出,3%を交付金補填,2%を学長枠として機能強化・外部資金獲得分野へ集中配分するマイルドな資金移動スキームを確立。これを動かすには,教員組織と教育研究組織を分離する必要があり,2016/10より実施。
    田中優子「長期ビジョンから見えてきたこと」

    • 大学経営=財政基盤となる黒字部門と,赤字であっても大学の理念と固有の価値を実現するために必要と判断し他部門を寄せ合う「内部相互補助」によって教育の質を維持し,可能な限りその質を高めていく営み。
    • 大学経営の要は,収益を多くすることではなく,収入の賢い使い方。
      • → 教育研究の実際(教職員人件費+全体管理費)と環境(建替,修繕,ICT入替など)の2つの柱。
      • → これらをマネジするのが長期的な財政計画。
    金子元久「経営課題と学長の役割」
    • 3つの視点が見える
      • 教育研究の理念:もともと抽象的→現実的にする必要あり→大学の個性とはすでにあるものではなく,恒常的に作り上げるもの=リーダーの役割が大きい
      • ガバナンス・組織・資源:既存の利害を再編する必要があるが,現在の分権システムでは軋轢がある=リーダーがどう乗り越えるかが問われる。
      • 資金獲得